敵部隊がついに眼下まで進出ーー敵部隊との交戦距離まで近づかれた。
その様に電磁加速砲型のーーその中の亡霊は歯噛みする。この防衛機能の使用は、
仕方ない。
《コーラレ・ワンよりコーラレ・シンセンスーー防衛機構を最小限使用》
視界の端の爆発ボルトが作動した。固定された鉄骨の梁が全て落ちる。
要塞頂上の一つ下。第四層第三フロアの床全てが……
「なっ……!?」
アンカーを掛け、進出した所だった。〈アンダーテイカー〉はひとたまりもなく落下する。同様に登っていたサンダーボルト戦隊機も。
続けてその下。第四層第二フロアのボルトも落下して落下する。
第一層にいた僚機が慌てて柱の側により、また第三層に飛び降りて着地のために空間を開ける。鉄骨の雨をかろうじて避けつつ、第四層第二フロアの壁面に身軽な〈アルカノスト〉だけが取り憑いて残る。
第四層第三フロアの梁の上に飛び上がった、崩落の瞬間。空中で姿勢制御し、どうにか第四層第一フロアの梁の一つに着地する。
「っ……!」
いくら高機動用に強力なショックアブソーバーが取り付けられても意識が持っていかれる。
人であるが故の致命的な棒立ち。その一瞬の隙。上から何かが壁を伝って降りてくる。レーダーにもセンサにも映らない。けどそこに居る亡霊の声……
アドレナリンで遅く感じる時間。とてもでは無いが避けられない。目だけが虚しく、モーターで回転を始める機関砲を見上げてーー
『ーーダーニャ』
『御意に』
直後に第四層第三フロアから〈アルカノスト〉八機が飛び出す。〈ジャガーノート〉を庇える位置に。
『ではみなさん。次の戦で』
回転機関砲の掃射。
四〇ミリ機関砲の膨大な破壊力で引きちぎられた〈アルカノスト〉の華奢な機体がコックピットごと引き裂き、なかの高性能爆薬が炸裂。目の前の視界を朱く照らす。
墜落した〈ジャガーノート〉は続く熱戦の攻撃から逃げる。見上げてホッと息を吐き、それから唇を引き結ぶ。それでいいとは言うが……レーナとて慣れていい犠牲では無い。
「……ヴィーカ、すみません。助かりました」
『構わん。あれらの役目だ』
無駄に時間を使うなと言外に言われた短い返事が返る。
「今の罠は」
『次はない。何度もできるならそもそも〈ジャガーノート〉が突入した時点でやっている』
見解は同じ、か。
この要塞はレールガンの砲陣地。それも高い塔の形状のため強烈な横風が吹き付ける。そのため梁を落とせばそれだけ命中制度は落ちる。射撃精度を上げるためにそれは許容できない悪条件だ。そう容易く、フロアは落とせない。
『むしろ第二波、不明機の攻撃の方が厄介だ。自走対空砲が体外にも隠れている可能性がある。そちらの解析は受け持つ。ヴェーラ、ヤニーナ、〈ジャガーノート〉が避けられない時は自己判断でカバーに入れ』
単純な行動であれば管制無しで実行可能だ。ヴィーカは命令をした後、どうやら解析のために〈カデューカ〉のシステムを立ち上げたらしい。
『レルヒェ、一旦下がれ。〈ツィカーダ〉展開。……全て見ろ』
同じ頃、〈アレグランサ〉では艦長の指示で先ほどの熱線攻撃がビーム兵器の可能性を見ていた。前哨戦でリノが受けた攻撃の中にレーザーらしき物があったからだ。
『ビーム攪拌膜、展開!』
その攻撃をみた〈アレグランサ〉艦長が指示を出し、艦首ミサイルランチャーから数発のミサイルが発射される。空中で爆発するも爆炎らしき物は見えなかった。しかし、知覚同調で艦長は叫ぶ。
「こちら〈アレグランサ〉艦長。ビーム攪拌膜を展開した。以後、実弾兵器の使用を優先せよ」
吹き荒れた爆風に阻電錯乱型の蝶の群れは靡く様に天をさす。その織りなす紗幕が一瞬だけ剥ぎ取られる。
電磁加速砲型の威容が一時〈レギンレイブ〉の前に曝け出される。
基本形状は一年前と同じ。天に広がる、銀糸を編んだ二対の翅。黒い荒天に鬼火の様にぼうと浮かぶ、蒼い光学センサ。装甲モジュールを連ねて竜の鱗のような漆黒の装甲。全高十一メートルの見上げるばかりの巨躯。そして何より特徴的な一対の、今は折れたままの砲身。
天候と相まって悪しき竜の様にも見えた。
唯一異なるのは二対の翅の間から伸びる四対八本の鋼鉄の脚。まるで羽の落ちた鳥の翼の様なーーその先に四〇ミリ回転機関砲を煌めかせるガンマウントアーム。
機関砲が回転し、照準がそれぞれ別の〈ジャガーノート〉に向く。
掃射ーーしたのはリノの駆るガンダムだった。頭部の六〇ミリバルカン砲二門がガンマウントアームを攻撃し、一部は爆発する。
『シン!乗れ!』
そう叫び、接近してくるリノのガンダム。下ではSFSに乗ったジェガンが接近し、〈レギンレイブ〉を回収し始めていた。
「助かった……」
ガンダムが通過する瞬間にシンはアンカーを外し、落下した途端。通過するウェイブライダー形態に変形したハミングバードの上に乗っかる。機体を壊さない様に慎重に機体の背中に取り付くと、その直後。頂上階の底面、何もないーーそれどころか声も聞こえぬ虚空から突如火線が吐き出される。
「っ!?」
『問題ない』
しかし、直後。火線はゆらゆらと陽炎のようになって消えていく。
『さっきビーム攪拌膜を撃った。実弾しか使えないが、功を奏したな……』
そう言った直後、格子を刻むように先ほどいた場所から朱く煌めく熱線を射爆するも、リノ達に届くことは無かった。ーー自動工場型の子機にして護衛機、攻撃子機型。
「……」
一旦要塞の周囲を旋回し、シンは背中に乗ったまま凝視する。本来はこんな運用を想定していないので危険極まりないのだが、少しくらいは問題なかった。
そして、攻撃子機型もそうだが、一部の回転機関砲の姿も見えなかった。こちらもやはり。
傍ら、セオが小さく呻く。
『光学迷彩……!!』
初めは高機動型で使われていた技術が、ついに他の機種でも使われ始めた。
一瞬焼き落とされた蝶の翅の後に見えた灰色は唐突に消える。……迷彩を織りなす群れを合流して欠けた分を補う。反撃の為に機銃を向け……けれど撃てず、逆に照準されて飛び退くライデンが苦く溢す。
『駄目か。……面倒な巣に篭りやがって』
『……攻撃子機型も射爆の時以外は出てこないのね…厄介だわ』
目標が鎮座する頂上階と第四層の間。攻撃子機型が逃げ込んだ頂上階底面はそこだけで何重も鋼鉄の梁が、鉄格子が防壁の様に複雑に張り渡されている。直線的に飛ぶ戦車砲、機銃弾の射線はこれではほとんど取れない。
「ビーム兵器は……」
『無理だ、ビーム攪拌膜を撒いたから暫くは……』
声が聞こえる以上、光学迷彩に隠れていようが動きは見える。が、数が多すぎる。射爆の度に全員に警告は出せない。回転機関砲は制御系が一つ一つあるわけではないので、動きさえ看破できない。
『くそっ、こんな時。広範囲に攻撃出来ればな……サーモバリック爆弾でも持ってこればよかった』
攻撃子機型の攻撃は全ては追えない。機関砲に至っては動きすら見えない。
それでも回避さえさせられればーー戦力は維持したまま時間を稼ぎ、情報を集められれば。
「ーーレーナ」
嵐の中、不安定な足場の元。シンは知覚同調を起動する。
「……ええ。光学迷彩については私が」
レーナは頷き、連邦軍服の下に纏う〈ツィカーダ〉を、淡く紫銀に仄光らせる。
ただ、要塞を覆う外壁パネルが思いの外頑丈で、砲兵使用の八八ミリキャニスター弾程度では貫通できない。対ビームコーティングでメガ粒子砲でも破壊は困難な上に、ビーム攪拌膜でビーム兵器系は一時使用不能。頂上階上部の遮蔽、大型の砲弾やモビルスーツからの攻撃を防ぐための円蓋はすり抜けるだろうが、それだけでは火力が足りないだろうからーー……。
傍ら、イシュマエルとエステルが小声で交わす会話が聞こえる。おそらく全て任せきりで歯痒いのだろう。映し出される要塞を見ながら。
「ーー援護射撃に〈ステラマリス〉の主砲かましてやってもだめかな」
「おそらく貫徹に至りません。それにあの至近距離です。友軍誤射にもなりかねません」
「〈レギンレイブ〉の装甲じゃあ誤射じゃなくても四〇センチ榴弾は破片でも不味いか……主砲以外は?」
「破竜砲を?この距離と風の中で?」
「……悪い、もっと無理だな」
『ねぇ、こっちからバズーカ撃って攻撃して上から穴開けた方が良いんじゃないの?』
仕舞いにはクラウからハイパーバズーカによる攻撃まで提案される始末。そんな中レーナは思考を回す。
風……穴……っ!!
ぱっとレーナは顔を上げた。外側からは難しくても。
「艦長、ご協力をいただきたく。……〈ステラマリス〉の主砲を貸してください」
レーナの案を知覚同調越しに聞き終えて、続けてヴィーカは言う。〈チャイカ〉で記録させた、攻撃子機型の射撃パターンを、〈カデューカ〉のホロウィンドウに映して。
「こちらの解析にはもう少しデータがいる。ノウゼン、クロウ、すまんが暫し耐えろ」
今更この注文に不満を言うエイティシックスではない。そしてレーナが続ける。
『解析次第反撃に移ります、報告を。ーーシン、ユート』
歴戦の号持ち達はさらりと応じる。
「……先に回転機関砲と攻撃子機型を、でしょう」
『回避を優先しつつ、そのつもりで配置しておく』
そう言うと、シンは下で飛行するリノに言う。
「下ろしてくれ。そっちも必要な装備があるだろ」
『了解、気をつけろよ』
そう言うと、リノは速度を落として要塞に接近するとそのままシンは要塞に飛び降り、リノはそのまま〈アレグランサ〉に一時帰還していった。
今更ながら、ザクマシンガンの構造が自分が思っていたのと違った事に唖然……。
ブレンガンとかと同じ構造かと思ってた……。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい