盲目の少女 作:torinikuyakiyaki
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ドラコと話さなくなって何日も経った。怒りのあまり魔法を放ったのは自分が悪い。でも、ドラコのあの発言は絶対に許せない。頭のなかでぐるぐると考えが回る。私は図書室で大きなため息をついた。
それに最近はハーマイオニーもなにやら忙しく学校を駆け回っている。もちろんポッターとウィーズリーと一緒に。それだって嫌だ。
最近はジニーがいつも側にいるが、彼女といるとどうしても彼女とハーマイオニーと比べてしまう。ハーマイオニーの方が賢いのにとか、ハーマイオニーならもっと良い考えを生み出すのにとか。人を比べるのは絶対に良くないことだが、気持ちとしてはどうしても生まれてしまう。
そんなことを考えていたら、消灯が迫っていた。急いで、図書室を出ると、ドラコが入り口に立っていた。
「デルフィーニ。話がある。」
彼がそう声をかけてきた。周りに人の気配はない。
私は寮に向かいながら彼の話を聞くことにした。
少し歩き、図書室から離れると彼はようやく話し始めた。
「僕は別にグレンジャーのことを本当に血が汚れているなんて思っていない。」
いきなり言い訳か。怒りで殴り掛かりそうになるのを必死にこらえた。ドラコの次の言葉を待つ。
「でも、ああやって周りに純血を尊んでマグル出身者を蔑んでいる姿勢を見せつけないと、僕の立場が、」
「自分の立場のためにあんな言葉を使って他人を蔑むのか?」
「僕だって本当は嫌だよ!」
泣きそうになりながらドラコは叫んだ。
「僕はデルフィーニみたいに強くないし、勇敢でもない。だから、学校では、スリザリンらしい生徒でいないと……父上にそうあるべきだってずっと教えられてきた。」
空気。
スリザリン寮にまとわりつく嫌な空気。
親から子へ、子から孫へと教えられてきた思想。
パンジー達だって本当はマグル出身者とかを気にしていない。
でも、純血主義者らしく振る舞わないと寮の中に居場所がなくなる。親の期待に背いてしまう。
パンジー達は、私と友人でありながら持ち前の“狡猾さ”で上手く立ち回っている。
私は、自分の持つ力で恐怖を与え、私に逆らい、害をもたらす者を寄せ付けない。
じゃあドラコは?
彼には蛇のごとき狡猾さも、障害物を払いのける力もない。家柄のみが、彼を守り、そして誇りとなっている。マルフォイの名を持つからこそ、彼はスリザリン寮の中でそれなりの地位に居られる。
……今のドラコに、家名のもたらす安寧から抜け出すように言うのは酷なのだ。父親の教えに背いて生きられるほど彼は強くないのだ。
「ドラコの言うことはわかった。でも、ハーマイオニーには謝るべきだ。人は生まれによっての貴賤はない。」
「……わかった。でも、直接謝りに行くのは誰に見られるかわからなくて怖い。手紙を書くから、彼女に渡して欲しい。」
ドラコはとても反省しているようだ。
私も彼に謝るべきだろう。
「私もドラコに言わないといけないことがある。……あのときは、いきなり魔法をぶつけようとしてごめん。」
あの時、『血統が全て』と言われて我を忘れてしまった。もしドラコが言った、『血統が全て』ということを認めてしまえば、私は…犯罪者の娘だから、いずれ犯罪に手を染めると言われたのと同じ…そう感じたのだ。
ドラコは私の謝罪を聞き、
「デルフィーニが怒ったのは当然の事だよ。誰だって友達を貶されたら怒るさ。」
と受け入れてくれた。ハーマイオニーのために怒っていると思ってくれたようだ。
こうして私とドラコは仲直りをした。
後日謝罪の手紙をハーマイオニーに渡したら、
「謝罪は受け取ったわ。…ドラコ・マルフォイに謝られるのは何か変な感じね。彼、絶対に謝らないと思ってたわ。」
と言った。ドラコの本当の事情は伝えていない。それでも、賢い彼女だからなんとなく察していたのかもしれない。
そして少し日にちが経ち、クィディッチの試合の日が来た。スリザリンVSグリフィンドールの試合は、ホグワーツで一番熱い試合になるといわれている。
ドラコは、最初の全体練習のときよりも緊張していた。ご飯が喉を通らなかったし、震えているし、最後には私のところに来て、
「負けたらどうしよう…」
と弱気になっていた。
「負けることを考えたら、相手の思うつぼだ。ドラコは今まで誰よりも努力してきた。それを全て出すだけ。」
私はドラコをそう鼓舞した。ドラコはそれで吹っ切れたのか、
「今日の試合、絶対に勝つから。」
と言って駆け出していった。
私も競技場に向かい、スリザリンの応援席に座った。周りの生徒はすでに熱狂の渦だ。これが、みんなが楽しみにしていたスポーツなのか。パンジー達もそれぞれ音が鳴る応援グッズを鳴らしながら、スリザリンチームの応援歌を歌っている。
そして、両チームの選手達が競技場に入場した。
マダム・フーチがルールの宣言と試合開始のホイッスルを吹いた瞬間、選手達が一斉にぶつかり合い、箒が風を切る音が聞こえた。
スリザリンチームはラフプレーを好むらしく、グリフィンドールからは度々ブーイングが聞こえる。逆にスリザリンからは、ラフプレーの度に歓声が上がる。そして、実況はグリフィンドールよりらしく、グリフィンドールを応援するような実況を行っている。
実況の解説と、ミリセントの解説からわかることは、シーカー以外の実力は五分五分らしい。最新の箒で揃えたスリザリンチームにグリフィンドールは長年培った経験で応戦しているようだ。
つまり、今回の試合はシーカー対決ということだ。
試合開始から少し時間が経った。両シーカー共にスニッチを見つけられていないようだ。
その時、観客席から試合への歓声とは別の声が聞こえた。
「なんかブラッジャーおかしくないか?さっきからポッターばかり追いかけているように見えるぞ!」
ブラッジャー…あの球は前にドラコが『ブラッジャーは暴れ球で、手当たり次第に選手に襲いかかってくるんだけど、特定の人をずっと追いかけ続けるってことはない。』言っていた。
何かがおかしい。
だが、今はドラコが怪我をせずに勝利してくれればいい。この状況はスリザリンに有利だ。だが、ドラコは緊張やプレッシャーでいつも通り動けていないようだ。スニッチを探すには、集中する必要がある。雑念があれば、あるほど状況は悪くなるだろう。
私は立ち上がり、思いっきり叫んだ。
「ドラコ!!!!集中だ!!!!今までの練習を思い出すんだ!!!!」
私の声が届いたのか。
それはわからない。
だが、次の瞬間、ドラコは動いた。
ドラコはスニッチを見つけ、追いかけ始めた。
同時にポッターも、ドラコの動きに気付き、スニッチを追いかけ始めた。
ここからは、一対一の真剣勝負になる。
私は、ブラッジャーを操っているものを探すことにした。ポッターとドラコが近くで飛んでいるということは、ドラコがポッターに巻き込まれる可能性がある。
集中して、ブラッジャーに魔法をかけている者を探す。だが、魔法をかけているということはわかるものの、かけている術者の所在がわからない。
確実にこの競技場周辺にいるはずなのに。
そして、気づいた。この魔力の感じは魔法使いの魔法じゃない。ゴブリンや妖精が使うような特殊な魔法だ。
…でもそれならますますポッターが襲われる理由がわからない。ゴブリンや妖精は、闇の帝王とその勢力から酷い弾圧を受けていた。だから、闇の帝王を消滅させたポッターは救世主のようなもののはず。
しばらくして解説の生徒が叫んだ。
「ハリー・ポッターがスニッチを獲得!!グリフィンドールの勝利!!!」
試合は、グリフィンドールの勝利で終わったようだ。少し悔しいと感じていたとき、悲鳴が上がった。
試合が終了してもブラッジャーは暴れるのをやめず、ポッターを襲い続けていた。その被害をドラコも受けたのだ。
実は最後のスニッチを掴む瞬間、ポッターとドラコはもつれ合うように飛び込んだのだ。だから、今二人はかなり接近している状態だった。
襲いかかってきたブラッジャーを、ポッターは紙一重で身をよじって避けたが、地面に落ちた衝撃で動けなくなっていたドラコは、そのままブラッジャーの攻撃を受けてしまった。
ドラコは左足にブラッジャーが当たり、動くことが出来なくなっていた。
私は急いで杖を取り出し、
『レダクト!!!』
呪文を唱えて、ブラッジャーを砕いた。
そして競技場の中に急いで向かった。
ポッターは右腕を、ドラコは左足を骨折していた。私は痛みに呻くドラコに声を掛けながら、担架が来るのを待っていた。
しかし、そこにあの愚か者が到着してしまった。
「私が来たからもう大丈夫!さぁ折れたところを見せなさい!」
あの男は自信満々にそう声をかけてきた。私はドラコを自分の背に隠すように立ち、
「余計なことをしないでください。この学校には優秀な先生が多くいます。あなたのような技術の伴わない教師は必要ない!」
あの男が近づけないようにした。ドラコに近づけないとわかると、彼はポッターの方へと向かい、彼の折れた腕にでたらめな魔法をかけた。
そして、でたらめな魔法によってポッターの腕の骨が失くなってしまった。
もし、ドラコにこの魔法をかけたら、この男を血祭りにしていただろう。もし、そうなったらお母様に確実に連絡が行ってしまっていた。本当に危なかった。
その後、ドラコとポッターは医務室に運ばれ、それぞれ治療を受けた。ドラコは折れた骨を繋げるだけだったので、その日のうちに寮に戻ってこれた。しかし、ポッターは骨が無くなっていたので、骨を生やす治療が必要となり1日入院となった。
そして、また事件が起こってしまった。
今度は猫じゃなく、人間が石になったのだ。
学校中の好奇心は、一気に恐怖心へと変わっていった。
学校中が恐怖に陥っていたが、スリザリン寮ではさほど影響はなかった。というのも、スリザリン寮は純血がほとんどだ。そして、スリザリンの怪物はスリザリンの生徒を襲うはずはない。そう根拠もなく確信していた。
余裕なスリザリンを少しだけ悲劇が襲った。魔法薬学の時間に誰かが“うっかり”花火を鍋に投げ入れたのだ。投げ入れられた鍋は、クラッブとゴイルの側の物だった。しかも運悪く、膨れ薬という、人体にかかったら問題が起こるような物を作っている最中だった。
犯人は見つからなかったが、恐らくグリフィンドールの誰かなのだろう。程度が低くて呆れるような悪戯だ。
生徒の不安を受けてなのかわからないが、決闘クラブが開催されるという掲示が出された。
私はその掲示を知り、自分の力がどれほど通用するのか試してみたくてたまらなくなった。この瞬間だけ、スリザリンの怪物もロックハートという愚か者のこともスリザリンの嫌な伝統も吹き飛ぶくらい興奮していた。
私は大広間へと急いだ。
大広間には多くの生徒が集まっており、パンジー達はすでに来ていた。彼女達は、本物の決闘が見てみたいという興味で参加していた。余裕なスリザリンの一方で、グリフィンドールはピリピリとした空気だった。それもしょうがないといえる。被害にあった生徒はグリフィンドールの一年生だったそうだから、この決闘クラブにかけている想いは他の寮生以上だろう。
ところで、この決闘クラブは誰の主催によるものなのだろう。順当に行けばフリットウィック先生が開きそうな気がするのだが。何ていっても彼は決闘のチャンピオンだったし、1年生のときに彼から多くのことを学ぶことが出来た。彼ほどこのクラブの主催にふさわしい人物はいないだろう。
しかし、舞台に上がったのはロックハートだった。彼が舞台に上がると、女子生徒から黄色い声が上がった。もう…帰ろうかな。
しかし、ロックハートは自らの助手にスネイプ先生を起用していた。それだけで見る価値はあると思いその場に留まった。
彼はスネイプ先生と模範演技をすると言い、舞台の上で決闘のマナーや礼儀を話し始めた。
向かい合って礼をし、お互いに杖を構えて、3つ数えたら最初の魔法を掛けるというルールだと説明していた。本物の戦いならこんな格式張ったことはやらないで、即魔法の掛け合いになるだろうから、礼儀を知ることが出来たのは収穫のひとつだといえる。
説明の後、舞台の上の二人は互いに礼をし、杖を構えた。ロックハートがあのよく響く声で3つ数え、二人は同時に呪文を唱えようとした。
素早く呪文を唱え終えたのはスネイプ先生だった。
『エクスペリアームス!』
彼の唱えた魔法は鋭く、ロックハートを吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
スネイプ先生の魔法技術がこんなにすごいとは思っていなかった。彼の担当が魔法薬学という、実戦的な科目ではなく、どちらかというと座学に近い科目だったがゆえにそう思い込んでいたのかもしれない。
唱える速さ、威力、繊細さ。全てが完璧な武装解除の呪文だった。
壁に叩きつけられ、蛙のように床に伸びていたロックハートは、自分の失態を誤魔化すかのように、
「さすがスネイプ先生!生徒の前であの呪文を披露したのは素晴らしい考えです!でも、見えすいていましたね。止めようと思えば簡単に止められた。」
などとほざいていた。誰か事故に見せかけてあいつを永遠に黙らせてくれれば良いのに。
「では次は生徒にやってもらいましょう!ポッターとウィーズリーに…」
「ウィーズリーの杖は折れていてまともに魔法が使えない。ポッターが粉々になるかもしれませんな。代わりにマルフォイでどうかね?」
名前を呼ばれた二人が舞台に上がる。
二人はお互いに礼をし、そして杖を構えた。
ロックハートが武器を取り上げるだけとルールを伝え、3つ数える。
「1、2、」
しかし、ドラコはロックハートが3を言う前に魔法を唱えた。
『エヴァーテ・スタティム!(宙を踊れ)』
ポッターは後ろに吹き飛ばされた。
しかし、さすがは最年少のシーカー。
すぐに立ち上がり、素早く呪文を唱えた。
『リクタス・センプラ!(笑い続けよ)』
呪文が当たったドラコは大笑いしながら床を転げ回った。そして、ヒーヒー言いながら、
『フィニート・インカンターテム(呪文よ終われ)』
と唱え、リクタス・センプラを解除した。
二人はまた杖を構え合い、お互いに次の出方を探った。
最初に沈黙を破ったのはドラコだった。
『サーペンソーティア!』
ドラコは蛇を呼び出す呪文を唱えた。
『ここはどこ!?なんでこんなに人間がいるの!?』
まるで少年のような声が舞台の上から聞こえた。
ドラコの声でも、ポッターの声でも、ましてやロックハートやスネイプ先生の声でもない。
可能性があるとしたら、それは蛇の声しかない。
しゃべる蛇を呼び出すなんて、ドラコも呪文に失敗したのかな?
「どいてなさい。私が追い払ってあげよう!」
ロックハートがつかつかと前に出て、蛇に向かってでたらめな呪文を唱えた。
蛇は宙に打ち上げられ、そして地面に叩きつけられた。
『痛いよ!やめてよ!』
蛇の悲鳴が聞こえる。なぜ周りは助けようともしないのだ。
『こっちにおいで!私が守る!おうちに帰してあげる!』
私は居ても立っても居られず、蛇に声を掛けながら舞台に登った。蛇は
『あぁ!美しい人!助けてください!』
と、言いながら私の方に向かってくる。
私の方に蛇の声が近づき、私の差しのべた手に蛇の体が触れるまで数センチと言ったところで、私は冷静になって周りの様子に耳を傾けた。
驚くほどに周りが静かなのだ。
そして気づいた。
ドラコはしゃべる蛇を呼び出したのではない。
私が蛇と話せたのだ。
自分の鼓動が早くなるのを感じる。
今の私の状況は本当にまずい。
一瞬冷静になったことで、自分の右側から聞こえる近づいてくる足音と、その人物が杖を振り上げた衣擦れの音に気づいた。
私は杖を取り出し、
『プロテゴ!!!!』
間一髪のところで、その人物から蛇を守った。
近づいてきていた人物は何らかの焼却呪文を唱えていた。私がぼんやりしていたら、目の前の蛇の命は無かっただろう。
私は呪文を唱えた人物に向かって、
「スネイプ先生!いくらなんでもいきなり生き物の命を奪うべきではありません!」
と叫んだ。スネイプ先生は、
「我輩は追い払ってあげようと思っただけ。それをまるで動物を虐待するかのように言われるのは心外ですな。」
とうんざりしているかのような声で言った。
スネイプ先生はただ、蛇をこの場から消そうとしただけだった。私が気を付けないといけなかったのは、スネイプ先生ではなく、私が蛇と話せる人物だと目の当たりにした生徒たちだった。
彼らの目には、私がサラザール・スリザリンの生まれ変わりか何かのように見えていたのだ。
サラザール・スリザリンは蛇語を話せた。
それすなわち、私が純血主義の名の元に純血ではないマグル生まれの生徒を襲撃する事件を起こしている人物だと思い込むのに十分な要素だった。
彼らがヒソヒソと話す声が聞こえてきた。
耳を澄ませば何をいっているのか簡単にわかる。
私は、彼らの話を聞くのが怖くなり、蛇を大事に抱えたまま大広間から逃げ出した。