盲目の少女   作:torinikuyakiyaki

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半年以上ぶりの更新です!
おまたせしすぎました!!
ついにデルフィーニと例のあの人の対決(前篇)です!
ぜひ応援してください!


Ⅱー10

「ブラック!ブラック!大丈夫ですか!?」

 

遠くで女性の声がする。いつの間にか、意識を取り戻していたようだ。私が体を起こしてその人物の声をしっかりと確認すると、声の主はマクゴナガル先生だった。

 

「あぁ、ブラック!無事で良かった!あなたに伝えるのはとても辛いことなのですが、グリフィンドールから生徒が二人消えたのです。それは、」

 

「ハーマイオニーとジニー…ですよね?」

 

「なぜわかるのですか?もしかして、なにか知っているのですか?」

 

襲撃の犯人と思われる人物は、私にかくれんぼをしようと言ってきた。おそらく犯人は私と二人きりで会いたいと考えている。教師に告げ口をすれば、ハーマイオニー達の命はないと言うことを、かくれんぼという言葉でこちらに警告したのだ。

 

「いえ、私にグリフィンドールの生徒について聞くということは、ハーマイオニーとジニーについてのことくらいしかないと思ったので。…残念ですが、私はなにも知りません。」

 

マクゴナガル先生は納得していないような様子だったが、私が怪我などをしていないことを確認するとスリザリン寮まで送ってくれた。

 

秘密の部屋に関する情報が足りない。特に秘密の部屋の場所についてはまったくわかってない。中に住むのはバジリスク、そして秘密の部屋を開けられるのはスリザリンの後継者。しかし、重要な秘密の部屋の場所についてはだれも知らないのだ。つまりスリザリンの後継者以外は部屋の場所を知ることすら出来ないのかもしれない。

 

……。だが、あのクソが私にふざけた賭けを持ちかけるということは、私にもその部屋に入ることが出来るということだろう。つまりは、場所だけを知ることが出来れば……。

 

考えている内に寮の入り口に着いた。マクゴナガル先生は、私が寮に入るまで見張るつもりのようだったので、合言葉を言って寮の談話室に向かった。

 

私が寮の談話室に入ると、ドラコが、

「50年前に秘密の部屋が開いたときは、生徒が一人犠牲になったんだ。だから今回も犠牲が出るはずだとは思ってたけど、それが二人も出るなんてな…」

と、周りに話しているのが聞こえた。

 

まだ二人は生きている……私は歯を食いしばった。あまりに強く食いしばったため、歯からギリッという音がなった。

 

このままだと、またトラブルを起こしてしまう。私は深く深呼吸をして、心を落ち着けた。

そう、まだ二人は絶対に無事だ。私は自分に言い聞かせた。

 

そして、少し考えた。

かつて、生徒が一人犠牲になった。

犠牲になった生徒はバジリスクに睨まれたか、かまれたかして亡くなったのだろう。そんな死に方をしたら、誰だって未練が残るはず。

 

そう、ゴーストになるくらいに。

 

ゴースト……

 

この学校に、生徒の姿をしたゴーストがいるのかもしれない。私は談話室に入り、まっすぐにドラコの方に早歩きで近づくと、

 

「ドラコ。君が秘密の部屋に連れ去られた生徒を冷やかして楽しんでいたのを不問にするから、生徒の姿をしたゴーストの名前とどこにいるのかを教えて。」

 

私は努めて笑顔で聞いた。

 

「さ、三階の女子トイレだよ。あの、嘆きのマートルだよ。」

 

ドラコはなぜか怯えながらそう答えた。

 

私は自室に行き、準備をした。

手持ちのほとんどは、子供レベルのいたずらが出来る魔法のグッズだったが、いくつかは自分で改造して殺傷力のある道具にしていたものもあった。

改造したグッズをポケットに突っ込み、動きやすい服装に着替えて部屋を出ようとした時、何かに呼び止められた感じがした。

 

 

 

あぁ…そうだ…あの杖も使えるかもしれない……

 

 

 

トランクの底にしまわれていた杖も取り出して、右足につけていた杖ホルダーに入れた。普段使っている杖は手に持てばいい。

 

もう猶予はない。

私はドラコの言葉で、談話室を飛び出して、3階の女子トイレへと駆け出した。

 

怒りで頭がどうにかなりそうだった。

 

あの時、自分が油断しなければ。

あの時、自分がジニーの異変を先生に伝えていれば。

 

いいや。

もっと前から出来ることはいっぱいあった。

ジニーのことをもっと気に掛けていれば、こんなことにならなかったかもしれない。

 

後悔に押し潰されそうになりながら、廊下を走り、階段を駆け登り、そして、三階の女子トイレにたどり着いた。トイレの戸を開けると、中から少女の泣いてる声が、天井に近いところから聞こえた。

 

「嘆きのマートル。あなたに聞きたいことがある。あなたを殺したのはバジリスク……巨大な蛇ですか?」

 

私が質問すると、泣き声はピタリと止まった。

そして、彼女はまるでとても面白いものを見たかのように笑いだした。

 

『あなた、目が見えないだけで本当に彼にそっくりなのね!アハハハハハ!』

 

彼女は笑いながら私の前に降りてくると、

 

『えぇ、そうよ。あの時、トイレの籠って泣いていたら、男の子の変なささやく声がした。私は彼に文句を言おうと、個室の扉を開けたの。………そしたら、大きな黄色い目がこっちを見てたの。そして、気づいたらゴーストになっていたの。』

 

彼女は、自分の最後の瞬間を語ってくれた。

 

これでわかった。

男のささやく声というのはおそらく蛇語だろう。そして、秘密の部屋を作ったのはサラザール・スリザリン。蛇語が鍵なのかもしれない。

 

私は、蛇と話していたときの事を思い出しながら、手当たり次第にあらゆる方向に蛇語で語り始めた。

 

だが、どうも上手くいっていない。なにかが変わる気配も動く気配もない。蛇語をかける場所が悪いのだろうか?もしかすると、なにか目印になるものがこの場所にはあるかも知れない。

 

「Ms. マートル。ここには蛇が描かれているものとかありませんか?」

 

マートルが空中を飛び回る気配がした。

 

『あら、蛇口に蛇が描かれているわ。蛇口だから蛇を描くなんて、ユーモアのセンスが足りていないんじゃないかしら!』

 

私は蛇口に近づいて、

 

『開いて』

 

私のささやきが終わると共に、蛇口だけではなく洗面台全てからなにか大きいものが擦れる音と、動き出す気配がして後ずさった。

 

数秒ほどがたっただろうか。

 

『あら、こんなところにこんな入り口があったのね!』

 

マートルが天井付近を飛びながら話した。

 

一歩足を進め、洗面台を触り入り口を探る。円形の洗面台は、中央部分に穴のように地下への入り口が開き、そこから生臭く、カビ臭い生暖かい空気が漂ってきた。

 

『もし、ここに飛び込んで生きて帰れなかったら、あなただけは私のトイレに住み着くことを許してあげる。』

 

私はマートルの言葉に応えず、入り口に飛び込んだ。

私は絶対に生き延びる。何があろうとも。

だからゴーストになったあとのことなんて考えている暇などない。

 

 

長い滑り台のような道のあと、いきなり広い空間に出た。地面になにかが敷き詰められている。手を伸ばし、地面から何かを拾った。よく触ると、これが骨だということがわかった。大きい骨じゃないから、おそらく小動物の骨なのだろう。それが地面いっぱいに敷き詰められている。

 

これはバジリスクが食べた残骸なのだろう。そして、床が骨でいっぱいになるまでの時間をバジリスクは生きてきたのだ。

 

気持ち悪い骨の道を乗り越えると、次は下水道らしく濡れた道になった。ただ、その道もすぐに行き止まりになっていた。ここまでは一本道で、ここ以外にあいつが隠れられる場所はない。

 

白杖を伸ばし、目の前の壁を軽く叩いた。壁が薄ければこの先に空間があることを教えてくれるが、残念なことに目の前の壁は石でできているため何もわからない。引き返すしかないのか?

 

 

いや、待てよ。

 

ここはスリザリンが残した怪物を隠し、自分の継承者にのみ開けられるように作られた場所だ。女子トイレの入口だって蛇語が鍵だった。ならば、蛇語がキーワードになっているのかもしれない。

 

目の前の行き止まりの壁に向かい、蛇に向かって話すイメージで、

 

『開け』

 

目の前にあった壁は、まるで扉が開くかのように無くなった。この先がまだあるのだ。壁の先の道は、小動物の骨がなくなり、代わりに床は水浸しになっていた。

この場所はホグワーツにおける下水道の部分でもあるから、このように水が溜まりやすいのだろう。

 

 

私は水浸しの床を一歩一歩慎重に歩きながら、犯人とバジリスクに勝つ方法を考えていた。

 

ハーマイオニーが連れ去られたとき、油断していたとはいえ、私は手も足も出なかった。今は準備を万全にしたとはいえ、勝算は限りなく0に近いだろう。いや、奇跡が何回も起きない限り勝てる見込みは無いと言える。

 

理由の1つ目はもちろん相手の魔法の技量の高さだ。あの一瞬で私も知らない魔法を放ち、動けなくさせた力はこのホグワーツだと、戦闘に長けた教師と同レベルだと思われる。

そして2つ目の理由はバジリスクだ。バジリスクは魔法がかなり効きにくい。それにあの目と牙に持っている毒。私と犯人が戦っているときに、手を出さないで傍観してくれるとは思えない。

 

かなりの実力者である犯人とバジリスクを同時に相手して生きて帰る事が出来るのは、悔しいけれどもダンブルドア校長以外にいないだろう。

 

でも、彼は今ホグワーツにいない。

 

一瞬逃げ出してしまいたい気持ちに駆られる。だが、なんとか踏みとどまってその先へと足を進めた。

 

 

 

やがて広い空間にたどり着いた。

 

 

『ここまで来れるとはね。やっぱり君は僕が考えている人間なんだね。』

 

 

不意に、後ろからあのとき私を襲った人物の声が響いた。ただ、あの時と違うのは、あの時はジニーと犯人の声が入り混じったような奇妙な声だったのが、今は男の声ただ一つになっていることだ。

 

「二人はどこ!?」

 

いつでも魔法を使えるように杖を手に忍ばせる。目の前の男は、

 

「二人とも意識はないけど、今のところは無事だよ。今のところはね。」

 

私は、目の前の男に気づかれないように魔力の痕跡を探して2人の居場所を探る。どうやら、目の前の広い空間の真ん中で二人は倒れているようだ。

 

「あなたとのお遊びには勝ったわ。さっさと2人を返して。その後でお前に友達の報復をさせてもらう。」

 

「そんなに急ぐこともないだろう。少し二人でお話しようじゃないか。…それとも今すぐバジリスクを呼んであげようか?」

 

二人を守りながらバジリスクと戦うのは、できれば避けたい…せめてバジリスクを封じる策が思いつくまで時間を稼がないと……

私の沈黙を肯定と受け取った男は話し始めた。

 

「君は僕の正体が知りたくて知りたくてたまらないだろう?」

 

正体……。気にはなっていた。だが、同時に本能が知ることを拒否していた。

 

「あなたは一体誰?」

 

震える唇を押さえつけ、平気なふりをしながらなんとか声を絞り出した。

 

「僕は…トム・マールヴォロ・リドル。勘の良い君なら何か気づくんじゃないかな?」

 

「気取って名乗ってくれたところ悪いんだけど、

トムっていう平凡な名前だということ以外さっぱり気が付かないわ。」

 

一瞬彼の纏っているこちらを馬鹿にしているようなからかうような雰囲気が消え、目の前の男は怒りを抑え込むように深くため息をついた。

 

「君は賢いと思ったんだけど…。まぁいい。ヒントを与えてやろう。君は蛇と話せる。そして僕も蛇と話せる。そして……君は目が見えないから気づいていないけど、僕と君の顔は瓜二つなんだよ。ここまで言えば、もうわかるよね?」

 

私と同じ顔……同じ力……。

導き出される人物は唯一人。

 

「ヴォルデモート……。」

 

「アッハハハハハ!僕も君を見て本当に驚いたよ!最初は、顔がそっくりだから穢れたマグルの父の血縁かと思ったけど、ブラックという名と蛇語を話せる君がマグル生まれなわけがない!未来の僕が残した後継者が君なんだと!……そう思っていたのに。」

 

目の前の男の感情が喜びから、失望へと変わっていく。

 

「目も見えない出来損ない…それだけならまだしも穢れた血や血を裏切る者達と仲良くしているだと……?僕の、いやスリザリンの尊い血を受け継いでいながら、なぜ自らの血を誇りに思わない、なぜだ?」

 

「尊い血だと…?私は、私に流れている血を誇りに思った事なんて一度もない!ただの薄汚い犯罪者の血だ!!」

 

あぁ。そうか。ヴォルデモートなら秘密の部屋の開け方も、バジリスクを手なずけることもできるだろう。1つの疑問が解消されると同時にもう一つの疑問が生まれた。

 

「なぜジニーからあなたの気配がしたの?どうして私の友達を傷つけたの?」

 

 

「フフフ……。気配がしたのはジニーが僕の魂が込められた日記を持っていたからさ。もっとも本人は不審に思いもしなかったけどね。」

 

ヴォルデモートはしゃがみこんで、床に倒れているジニーの頬を撫でた。気持ち悪い魔力がジニーを通して伝わる。

 

「ジニーは僕の魂が込められた日記を手に入れてから、ずっと色んなことを書き込んでくれたよ。学校のこと、家族のこと、そして君のこと。」

 

ヴォルデモートはジニーの手元から杖を抜き取り、まるで恋人の手を撫でるかのようにさすった。

 

「君のことをずっと書き続けてたよ。やれ君が声を掛けてくれた、やれ君が笑顔を向けてくれたってね。ようするに彼女は、君に自分だけを見てほしかったんだよ。」

 

そんな。私がハーマイオニーに抱いていたような感情を、ジニーもまた私に向けていたなんて…。

 

「でも君は、一度も彼女を見なかった。君の目には、同寮の友人達と、そしてあのハーマイオニー•グレンジャーだけが”映る”。彼女はずっと妬ましかったんだ。悩みを聞く僕にずっと想いを注ぎ続けてくれたよ。」

 

「あんたがジニーを惑わせたんじゃないのか?!」

 

「それは違うよ。ジニーの記憶にはないが、彼女の嫉妬する心が、スリザリン寮の我が後輩たちを傷つけるきっかけになった。そして、彼女は意識を奪われつつある中で、あの穢れた血の元へと向かったんだよ。」

 

たとえ、嫉妬する心をジニーが持っていたとしても、普段の彼女ならそんなことはしないはず。嫉妬を煽るようなことを吹き込んだに違いない。そうに違いない。

 

「あなたのたわごとなんて聞く意味が全くないとわかった。さっさとジニーとハーマイオニーを連れて帰らせてもらう」

 

二人に駆け寄り、ジニーの手に触れた瞬間、氷のような冷たさに思わず手を引っ込めてしまった。人間の肌ってこんなに冷たくなるものなの?

 

驚いて手を引っ込めた私を見て、ヴォルデモートはもう耐えきれないという様子で大笑いした。

 

「ジニーは、日記を通して僕に命を捧げたんだ。今はまだ死んではいないが、僕が完全に復活するとともに彼女は死ぬ。」

 

 

「ディフィンド・マキシマ!!」

 

怒りに任せて放った暴走気味の魔法は、彼の杖によって彼の目の前で消滅した。明らかに力量差がある。でも、こいつを倒さないとジニーは死ぬ。

今まで身につけてきた知識を、練習してきた全てを使ってあいつを倒す。

 

 

「君が何を考えているのかなんて、僕には全てお見通しだよ。でも……そうだね。」

 

ヴォルデモートは杖先から何らかの呪文を飛ばした。私は、その呪文を盾の呪文で防ごうとしたが呪文は私の足元に当たり、水がまるで石の礫のように襲ってきて一瞬怯んでしまった。

 

なんとか杖を振るい、まるで吹き付ける雨のように飛んでくる礫を払い、弾いたが、その間にヴォルデモートは私の目の前から居なくなっていた。

 

 

ヴォルデモートは部屋の奥に向かい、待機させていたバジリスクに向かって、

 

『あの娘を殺せ。』

 

と、命じた。バジリスクはすぐに命令を聞いて、デルフィーニに襲いかかるとヴォルデモートは思っていた。しかし、バジリスクはその場を動こうとはしなかった。

 

 

『何をしている?さっさとあの娘を殺しに行け!』

 

 

『あの娘は、あの方の血を引く者……わが主の命令に、血族を殺すようには言われていない。』

 

バジリスクは躊躇っている様子だった。バジリスクの主とは、サラザール・スリザリンのことを指すのだろう。

 

滑稽だ。自分をスリザリンの後継者と名乗っていても所詮は後継者に過ぎず、主だとすら思われていないのだ。もうあのバジリスクの主はこの世にいないというのに。

 

「エクスペリアームス!!」

 

この好機を逃すものか。

あいつを倒し、ジニーとハーマイオニーを助ける!!

 




次回は半年以上かからないように頑張ります
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