盲目の少女   作:torinikuyakiyaki

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Ⅰ-2

図書館に行ける日は、毎回ハーマイオニーに会うことが出来た。あまり話すことが出来なくても、一緒に傍で勉強できるだけでも私は嬉しかった。だから、ハーマイオニーに会えない日は余計に寂しく感じた。寮には、友達もドラコもいるけど私の思考や学ぶ速度に追いつける人はいない。例えば、私がレポートを終わらせて自分の研究を始めたぐらいのときに、彼らはやっと教科書を開き始めている。ゴイルやクラッブはもっとひどい。彼らはABCを読むところから始めなくてはいけないレベルだった。寮杯で優勝するのはスリザリン全体の目標だったから、私とドラコが中心となって遅れている一年生に教えていたけど、私の勉強のスピードは人と違うらしく、合わせるのが大変だった。大変すぎてもうやりたくないって思っていても、頼まれると断れない私の性格も大変さの原因になってはいるのだけど。

 

 さらに、最近ハーマイオニーも元気がないような気がする。図書館で隣に座って勉強していても、心ここにあらずというかぼんやりすることが増えたというか。理由を聞いたけど、

「大丈夫。心配しないで」

と言われてしまった。ハーマイオニーの事が心配だったけど、深く聞くのも失礼かと思って、それ以上聞くことが出来なかった。友達が何かを悩んでいるときに、どうすれば励ませるのか、そもそもこういう時はどうしたらいいのか。ハーマイオニーの力になりたいのに、どうするのが一番なのか。すべてが初めてでわからない。

 

 そんなことを悩んでいたら、スリザリンとグリフィンドールで合同の飛行訓練を行う日が来た。そもそも、飛行術についてのお知らせが出たときから、グリフィンドールとスリザリンはピリピリしていた。スリザリンは魔法族の出身がほとんどのため全員が箒に乗ったことがある一方で、グリフィンドールはマグル出身者も多く箒に乗るのが初めての生徒が多かった。ハーマイオニーなんか「クィディッチ今昔」という本を暗記するまで読み込んでいる。私は、レポート提出だけで授業を受けたことになるけど、飛行術って理論でなんとかなるのだろうか?ドラコもわざわざロングボトムをからかいに行って一触即発ムードになっているし。なぜ仲の悪い者同士で、ある意味スポーツともいえる授業を受けるのだろう。ヒートアップして喧嘩になるだけだと分からないのだろうか。

 

 当日、スリザリン生はグリフィンドール生よりも早く集合し、地面に置かれた箒のそばで先生を待っていた。私は、見学をするという事になっているので、城壁にもたれて座っていた。授業開始のギリギリになってグリフィンドール生が集まりだした。座っている私を見て、何人かのグリフィンドール生は「あいつ目が見えないとか絶対嘘だろ」とか「ずる休みできてうらやましいな」とか、まあそれなりの陰口は言っていた。そんな陰口しか叩けない阿保より、ハーマイオニーが心配だった。彼女が、他のグリフィンドール生と親しくしている感じがしない。話していたとしてもロングボトムくらいだ。もしかして、寮の中で孤立してしまっていることが悩みになっているのだろうか。

 その時、飛行術の教授であるマダム・フーチがグラウンドに入ってきた。まさしくスポーツ系といった感じの先生らしく、かなりはきはきした様子で生徒に指示を出し始めた。箒を自分の手元に上げる方法を指示した後、箒にまたがり笛の合図で飛ぶように指示を出した。初めての生徒が半数位いるのに大丈夫だろうか。こういう心配をするときに限って的中するものだ。ロングボトムが先生の笛が鳴る前に、空に飛び立ってしまいコントロールが出来ない状態になってしまった。ロングボトムの悲鳴が響く。私は杖を出し、彼の声に耳を澄ませる。すでにかなりの高さまで飛んでしまっており、城壁にぶつかろうとしている。そして、ロングボトムは城壁に激突した。ロングボトムは箒から手を放し、地面に向かって悲鳴を上げたまま落ちていく。その悲鳴を目掛けて、私はすぐに呪文を唱えた。

 『アレスト・モメンタム!』

 ロングボトムの落ちる速度は徐々に遅くなり、最後はゆっくりと地面に着地した。先生は、

「けがをした生徒を医務室連れていきます。それまで待機していなさい!あと、ブラックの人助けと高度な魔法技術に対してスリザリンに5点をあげます。」

 と言った後、ロングボトムを抱えて医務室に向かった。得点を挙げたことに対してスリザリンでは喜びのムードもあったが、同時になぜグリフィンドールを助けたという声もあった。パンジーやミリセントが、なぜグリフィンドールを助けたのかと質問してきたため、

「最近読んだ本の知識を試したかっただけだよ。」

 とごまかした。本当はとっさに体が反応しただけで、読んだ本の知識が頭に浮かんだのもたまたまだった。結果的に、ハーマイオニーと仲が良さそうな感じのあるロングボトムを救えてよかったけど。

パンジーたちだけでなく、グリフィンドールからもまだ納得いかないみたいな顔で詰め寄られそうになった時、ドラコがロングボトムの落とした思い出し玉を拾い、ポッターともめ始めた。言い合いがヒートアップしていき、ドラコが思い出し玉をどっかに隠そうとして箒に乗り、それを追いかけてポッターも箒に乗った。そのことをハーマイオニーは止めていたけど、ポッターは無視してドラコを追いかけた。そこからは、ドラコが空中に放り投げた思い出し玉を、ポッターが空中でキャッチし一躍グリフィンドールの英雄に。それを見ていたマクゴナガル先生が、ポッターをグリフィンドールのクィディッチのキャプテンのもとに連れていき、シーカーに推薦したようだった。ドラコはずるいと文句を言って、ポッターにまた喧嘩を吹っ掛けようとしていたため、さすがにそれは分が悪いと止めた。

 

 私がこの事件に不満に思うのと同じく、ハーマイオニーも一連の事件と先生の采配に文句を言っていた。ルールを破ったのに褒められるのはおかしいという彼女の意見は正しい。そもそも、ポッターがドラコの行いを無視していれば、ドラコが勝手に怒られて減点されただけの事。なのに、現実はドラコもポッターも怒られていない。今回はケガがなかっただけで、授業によっては教師の指示を無視した場合重大な事故を起こす可能性がある。今回、彼らはそのことを学ばなかった。という事はいつか痛い目を見ることになる。

 

 そんなモヤモヤが残ったまま、ハロウィンの日を迎えた。その日は朝から甘ったるいにおいが学校中に充満していた。スリザリンでも、甘い匂いに浮かれて授業に身の入っていない生徒が多かったが、何とか事故なく授業を終えることが出来た。そのまま大広間に夕食を食べようと向かっているとき、グリフィンドールと思われる数名の女子が、

「……でさ、グレンジャーが地下の女子トイレで泣いているらしいよ。友達もいないから午後からずっと泣いてるんだってさ。」

 私は大広間から引き返して、地下の女子トイレに向かった。一人でずっとトイレで泣いているなんて。私がトイレにたどり着くと、すすり泣くような声がかすかに聞こえた。

「ハーマイオニー。そこにいるんでしょ?」

「!!…デルフィーニ…」

「どうしたの?…私がそばにいるからさ。一人じゃないよ。」

 少しの沈黙の後、ハーマイオニーが話し始めた。曰く、寮の中に友達がいない事、そして口うるさいとウィーズリーに言われたらしい。

「私だってわかってる。私、こんな性格だから友達は出来ないし、人には好かれる方じゃないって。でも…でも…。」

 話しているうちにハーマイオニーはまた泣き出してしまった。確かにハーマイオニーの性格は万人に好かれるという方じゃない。気になることはすぐに口に出るし、規律に厳しい。そんな彼女は、同じ年代の子供の中では嫌な奴になりやすいのかもしれない。でも、

「私は、ハーマイオニーの正しいと思ったことにまっすぐなところ好きだよ。それに、私の目の事に関して、憐みとかそういうのじゃなくて普通に接してくれる人、いままでいなかったから本当に救われているんだよ。」

 私は目が見えない事について、スリザリンでは憐みの、他の寮からは蔑みの目で見られているのを知っている。スリザリンはまだいいのだが、他の寮の特にグリフィンドールからはそのことを理由にした嫌がらせを受けている。誰にも言ってないし、被害自体は出ていないし、嫌がらせは何倍にもして返しているから、表立って問題になっていないだけ。だから、ハーマイオニーの存在は、私の心を癒してくれている。

私の言葉を聞いて、ハーマイオニーは少し落ち着いたようで、トイレの個室から出てきた。

「ありがとうデルフィーニ。」

「礼なんていらないよ。友達は助けないと。ね?」

 ハーマイオニーがまた泣き出してしまい、私はその背中をさすりながら慰めた。その時、甘ったるいハロウィンの料理の匂いなんて消し飛ぶような鼻の曲がるような獣の臭いが辺りに漂ってきた。この臭いは普通じゃない。臭いはどんどんきつくなり、それと共に重い足音が大きくなってきた。

「ハーマイオニー、トイレに隠れて。絶対に声を出しちゃダメだよ。」

 私はハーマイオニーと共に個室に隠れた。足音はどんどん大きくなり、ついにこの女子トイレに何かが入ってきた。ハーマイオニーが悲鳴を上げそうになり、私は彼女の口に手を押し付けた。侵入者はゆっくりと引き返し、トイレの入り口の方へと戻っていく。私は、気が抜けてしまい、ハーマイオニーの口に押し付けた手を放してしまった。侵入者がトイレの扉につく直前で、カチャンと鍵が掛けられた音がした。侵入者と私たちは、一緒にトイレに閉じ込められてしまった。あまりの絶望的な状況にハーマイオニーが思わず、

「い…いや……そんなトロールが何で…」

と声を出してしまった。侵入者が、いやトロールが声のする方に戻ってくる。トロールと言えば棍棒を持っている。そして、次はこの個室ごと潰しに来るはず。私はハーマイオニーを抱きかかえて外に飛び出した。

『ウオオオオオ!』

 雄たけびを上げながらこっちに向かってきていたトロールは、その勢いのまま私たちのいた個室に棍棒を振り下ろした。あのまま、あそこにいたら私たちは潰されていただろう。ハーマイオニーは腰が抜けてしまい動くことが出来ない。私は、ハーマイオニーをかばいながら手当たり次第に本で読んだ呪文を唱える。

「ディフィンド!インペディメンタ!…!…!」

 魔法は当たっているようだが、どこに当たっているのか、ダメージはあるのかまったくわからない。トロールは、こちらにじりじりと近づいてくる。トロールの棍棒が振り上げられる。私は、ハーマイオニーを安全な洗面台の方に突き飛ばし、盾の呪文を唱える。

「プロテゴ!」

 盾の呪文にひびが入り、私は壁に叩きつけられた。頭がくらくらする。わき腹が今まで経験したことがないほどに痛い。眼鏡と音を聴くための杖はどこかに飛んでしまい、いま自分がどこにいるのかもわからない。トロールは一歩も動けないハーマイオニーではなく、しぶとく抵抗していた私から殺すつもりらしい。トロールがゆっくりと近づいてくる。

 

死ぬ…?

 

………死にたくない

 

殺してやる

 

私が先に殺す!!!

 

トロールの声が響く。声を目掛けて杖を振り、

「フリペンド!!!!」

魔力をすべて込めて魔法を撃った。

 

 何かが吹き飛ぶ音がして、トロールが倒れる音がした。私も、立っていられなくなり膝をついた。ハーマイオニーがそばに来て私が倒れこまないように支えてくれた。私はハーマイオニーに、

「眼鏡と杖を取ってくれない?」

 と言った。ハーマイオニーはすぐに眼鏡と杖を取ってきてくれた。眼鏡は壊れていたようで、ハーマイオニーは修復の呪文をかけてから渡してくれた。

「ありがとう。ハーマイオニーは怪我してない?」

「デルフィーニ。私じゃなくあなたの方が重傷よ。すぐに医務室に行かないと。」

 ハーマイオニーの肩を借りながら、医務室へ向かおうとしたとき、トイレの扉が勢いよく開いた。複数人の足音が、トイレの中に入ってきた。

「これはどういうことですか!?どちらでもいいので説明してください!」

マクゴナガル先生の声だ。私が答えようとしたとき、

 「私の体調が悪くて、トイレにこもっていたのを心配して付き添ってくれてたんです。そしたらトロールが入ってきて。デルフィーニが助けてくれたんです。」

 ハーマイオニーが代わりに答えた。やや正直に答えすぎだけど、マクゴナガル先生なら信じてくれるだろう。他の、特にスネイプ先生ならグリフィンドール生の言葉なんて信じてくれない。

「本当に幸運ですよ。その幸運さと友達思いに15点をスリザリンに。すぐに医務室に向かいなさい。」

 私たちはすぐに医務室に向かい、私は骨をつなげる呪文とその他消毒などを受けて寮へと戻った。道中なんかハーマイオニーの態度がよそよそしかった気もするけど、あんなことがあったからだと思い込むことにした。

 

 

私は見てしまった。トロールに呪文を撃つ直前、デルフィーニの目が赤く染まるのを。目が赤くなる人なんて魔法界では普通なのかもしれない。でも、生き物を殺しかねない呪文を撃つときに、楽しくてたまらないといった笑顔をする人間がいるだろうか。彼女の撃った魔法は、トロールの頭に命中し……。そこからは、トロールの状態を確認していないが凄惨な状態になったのではないだろうか。

 彼女の眼鏡は、目の色の変化を隠すため?だったら何のために?それにあの表情…聞きたいことはいっぱいあった。でも、それ以上に彼女に恐怖を感じて聞けなかった。

 

 

 

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