盲目の少女   作:torinikuyakiyaki

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Ⅰ-3

 トロールの遺体は頭が消し飛んでいた。その惨状を目にした教師陣は、デルフィーニに対して恐怖心を持つ者、興味をもつ者、何やら企む者等、それぞれ分かれた。例えばフリットウィック先生は、デルフィーニを将来有望な若者だと評価した。危険な状況の中で友を守りながら戦い、そして勝利するだけの知識と力量を示した素晴らしい生徒だと思い、ぜひ自分がよりよく導きたいと思った。一方で、マクゴナガル先生はデルフィーニに恐怖を抱いた。ダンブルドア校長から、デルフィーニがヴォルデモートと容姿が似ている、もしかすると彼の娘かもしれないという話を聞いていた彼女は、最初から彼女に対して疑ってかかっていた。今回の事でさらに疑いは深まることとなる。このように教師陣でも、この事件で受けた印象はそれぞれで大きく異なった。

 

 デルフィーニが身なりを整えてから寮に戻ると、同室のパンジーたちとドラコが談話室でデルフィーニの帰りを待っていた。「デルフィーニ!心配したんだぞ!トロールが出たっていうのに君が大広間にも来ていなかったから、みんなトロールにやられたんじゃないかって噂していたんだ。一体今までどこにいたんだ!」

 ドラコがすごい剣幕で迫ってきた。パンジーやミリセント、ダフネも同じ意見らしく、肩をつかまれ前後に激しく揺さぶられた。

「と、図書館にいたんだよ。調べたいことがあって。でも、疲れていたのか居眠りしちゃってて、さっき先生に起こされたんだ。」

 ドラコたちは、すさまじい剣幕から一転してあきれ顔になった。

「図書館にいたのか…。夕食の時間はせめて大広間に来てくれ頼むから…」

 そして、みんな疲れていたのか寝室へと向かった。私は夕食を食べ損ねていたので、談話室にあるお菓子を少しつまんでからベッドにもぐりこんだ。大きい怪我は治したけど、擦り傷などの細かい怪我は残っていたし、怪我を治すための強い薬も飲んでいたのですぐに寝付くことはできなかった。

 

 その後の大きな変化と言えば、フリットウィック先生が私の魔法の操作や加減の仕方について指導してくれるようになった。あのトロール事件を受けて、私は目で判断が出来ないから、自分の魔力を加減できないまま魔法を使ってしまう事が課題となっていた。物を浮かせることなどの簡単な魔法なら大丈夫なのだが、切羽詰まった時や決闘に使う呪文は、先生が監督した方が良いとのことで、放課後に教えてもらう機会をもらった。そのため、図書館でハーマイオニーと会う機会が減っていった。さらに、その減った機会ですらなぜかハーマイオニーに避けられているような気がした。トロール事件の時に、私が何かをしてしまったのだろうか。それと同時に、ハーマイオニーはウィーズリーやポッターと一緒にいるようになった。同じ寮生同士仲良くなるのは、とても良いことなんだけど、なんか胸がモヤモヤした。

 

 そうしてハーマイオニーと喋ることがない日々が過ぎ、スリザリン対グリフィンドールのクィディッチの試合の日が来た。その少し前から寮ではクィディッチの話題で持ちきりだった。私は、クィディッチより普段の課題や自身の研究、そしてハーマイオニーの事に気を取られてあまり話題に乗れなかったものの、寮杯がかかっているため楽しみだった。

 しかし、運命とは残酷なものだ。クィディッチ当日、私はベッドの中から出ることが出来なかった。元々、月経が不順だったのだが、この日は一番重い日に当たってしまった。腹痛と腰痛、そして頭痛のトリプルコンボによって、一歩も動けなくなっていた。パンジーたちは寮に残ってくれようとしたけど、痛み止めを飲むからと言ってクィディッチに行ってもらった。

 持っていた痛み止めを飲むと少し楽になったが、結局は医務室に行き新たな痛み止めをもらう事になった。医務室の痛み止めは、私が持っていたマグルの痛み止めより良く効き、次の日には痛みはほとんどなくなった。クィディッチの結果はポッターがスニッチを取ってグリフィンドールが勝利したらしい。ドラコは、来年は自分がシーカーになりチームを勝利させると私に宣言した。ドラコは努力もできる人だ。おそらくシーカーには何としてもなるだろう。私は応援していると伝えた。

 

 久しぶりに図書館に行ける日があり、図書館に向かうとハーマイオニーがいた。クィディッチでのグリフィンドールの勝利を称え、次はスリザリンが勝つといった話をしたあと、また一緒に勉強をした。少し前までの避けられているような感じは杞憂だったのかもしれない。そして勉強を終えた後、ハーマイオニーが、

「ねぇデルフィーニ。あなたはニコラス・フラメルについて聞いたことない?」

と聞いてきた。ニコラス・フラメルという名前はどこかで聞いたことがあるような。

「ごめんハーマイオニー。どこかで聞いたことはあると思うんだけど、思い出せなくて…どうしてその人のことを聞いたの?」

「あー…えっと…なんとなくよ!なんとなく…。もう一つ聞きたいのだけれど、スネイプ先生の事あなたはどう思うかしら?」

「スネイプ先生?う~ん…やたらポッターに突っかかる変な先生だよね。スリザリンの中では私になんとなく冷たいし。でも、魔法薬学研究者としては一流って感じかな?いきなりそんなことを聞いてどうしたの?」

ハーマイオニーは慌てて、

「なんでもないわ!ただ、グリフィンドールに厳しいなって思ってたから聞いただけよ!そういえばもうすぐクリスマスね。あなたはどうするの?」

なんとなく話を変えられた気がしたけど、私は、

「私は家に帰るかな?久しぶりにお母様に会いたいし。ハーマイオニーも家に帰るでしょ?クリスマスプレゼント送るね。」

と言った。ハーマイオニーもクリスマスと楽しみという話を始めた。

私たちは図書館が閉まるまで一緒にいて、その後それぞれの寮へと戻っていった。ハーマイオニーには、どんなプレゼントを選ぼうかな。

 

 寮に戻ると、ダフネに呼ばれた。彼女とともに二人だけで私たちの寝室に入ると、彼女は扉を閉めて、

「デルフィーニ。あなたグレンジャーと友達なの?いえ、あなたとグレンジャーが図書館でいつも一緒にいるのに気づいていたわ。いったいどういう事?」

ダフネはかなり慌てているようだった。私は、

「ダフネの言う通り。グレンジャーとは友達よ。でも、表立って会うことはしていないし、誰にも迷惑をかけていない。」

「そういうことを言っているわけじゃないわ。相手はマグル出身のグリフィンドールなのよ!あなたが純血とかそういうのを気にしない人だっていうのはわかっている。だからって彼女といるのは、彼女を間接的に傷つけているのと同じことよ。それに、スリザリンでも立場がなくなるわよ。みんながマグル生まれに対してどう思っているのか知っているでしょ?」

ダフネの言う通りだ。私といるところを他のグリフィンドール生に見られたら…。私はただでさえグリフィンドールには好かれていない。それどころか、ドラコの親戚だとか、ブラックだとか、そのほかにも嫌われる要素がありすぎる。私が嫌われるのはどうだっていい。でも…

「わかっている…。でも彼女は友達だし、彼女は私にとって特別なんだ。だから、もう少し考える時間が欲しい。」

ダフネは小さなため息をつき、そして

「私もデルフィーニの事は大切な友達だと思っている。だから、私から周りに言いふらすことはないわ。よく考えることね。」

ダフネは寝室から出ていき、私も少し待ってから寝室を出て談話室に入った。その日は眠る直前まで、ダフネの言葉がぐるぐると頭をめぐった。どうするべきなのか、どんなに本を開いても答えなどどこにもなかった。私にできることはハーマイオニーに警戒しようと伝えることだけだった。

 

そうしているうちにクリスマス直前になった。荷物をまとめて汽車に乗ろうとしたとき、ドラコに、

「クリスマスパーティーをやるんだ。デルフィーニも来てよ。」

と誘われた。クリスマスはお母様と過ごすつもりだと言ったら、

「じゃあ、ベラトリックス伯母さんとくればいいよ!家族と寮の友達だけ呼ぶつもりだから安心してよ!」

お母様は人前に出たがらない気もするけど、ここでドラコの誘いを断るのも気が引ける。

「う~ん。一応聞いてみるけど、行けなくても怒らないでね。」

と言ってコンパートメントに入った。クリスマスはホグワーツに残る生徒もいる関係で、入学式の時よりも空いていた。ダフネの言葉が不安だったのかあまり眠れていなかったのか、汽車の揺れのおかげもあったのか、駅につくまで眠ってしまった。

 

夢の中で、私はある男性になっていた。

彼は森の中で何かを追いかけていた。

そして何かに追いつき、杖を振った。

辺りに馬のいななきが響く。

男が追っていたのは馬のようだ。

馬が倒れる音が響く。

男は馬に近付き…そして………かみついた!

男は馬から流れる血をすすり始めたのだ。

口の中にねばついた血の味が広がって……

 

「デルフィーニ起きて!」

ハーマイオニーが私を揺すって起こしてくれた。

「起こしてくれてありがとうハーマイオニー。」

「大丈夫?すごくうなされていたみたいだけれど。」

ハーマイオニーの言葉で、私は自分が全身に冷や汗をかいていたことに気づいた。あの夢は一体何だったんだ?馬の血を吸う変態になる夢を見るなんて本当に疲れていたのだろう。

「大丈夫よハーマイオニー。なんか馬の血を吸う変態になる夢を見ていたのよ。」

「それは…変な夢ね。」

「本当に変な夢よ。」

ハーマイオニーは、私の正面に座った。列車が走り出してから私のいるコンパートメントに来たようで、だれにも見られないように気を付けてくれたようだ。

「ごめんね。コソコソと会うことになってしまって。」

「いいのよ。そんなこと気にしなくて。」

私はハーマイオニーと話し合おうと思っていたことを口に出した。それは、ダフネに指摘されたこと…彼女を間接的に傷つけているかもしれない事。つまり、私とハーマイオニーが一緒にいることについて。

「あのね。少し前にダフネに気づいているって言われたの。最近私が二人で会うときに警戒しようって言ったでしょ?そのことについての相談。ハーマイオニーは私と友達で居続けても平気?」

最後の方は声が震えてしまった。正直ハーマイオニーの返答がYesでもNoでもどっちでも怖い。Yesならお互いに傷つく覚悟が必要になる。Noであればそれはわたしとハーマイオニーの友情の終わりという意味に。ハーマイオニーは返答に時間がかかると思ったが、すぐに答えを出した。

「わたしはデルフィーニと一緒にいたい。前にトロールから命がけで守ってくれた友人を、自分が傷つくのが怖いからってどうして手放せるの?それに私はグリフィンドール。勇気だけは誰にも負けないわ。……それとも、デルフィーニは私と友達でいたくないの?」

 

私は…

 

「私はハーマイオニーと友達でいたい。スリザリンの友人も大事だけど、ハーマイオニーは私の初めての友達で、私自身を見てくれる人。これからも一緒にいたい。」

ダフネの言う通りの心配ももちろんある。でも、私にはハーマイオニーと友達でいることについてひどいことを言う方が間違っていると思う。ハーマイオニーは私を選んでくれた。私にできることはハーマイオニーをスリザリンから守ること。この友情を傷つけさせるものか。私の表情を見て、ハーマイオニーは何かを言いたそうな表情をしていたけど、私は気づくことが出来なかった。もし、私の目が見えていたのなら彼女の表情に気づけていたはずだ。

 

 汽車は駅につき、汽車を降りるとお母様が待っていた。お母様は久しぶりにあったがとても元気そうだった。久しぶりの家は、いつもと変わらない温かさで、学校とは違う居心地の良さを感じた。今年のクリスマスは、クリスマスプレゼントを選ぶことと、あとはドラコが誘ってくれたクリスマスパーティーに参加するかどうか決めないと。

 

 クリスマスプレゼントはお母様に相談しながら決めた。グリフィンドールの友達にプレゼントを贈るとは言えなかったので、本が好きな友達という事にして、どこの寮なのかはっきりとは言わなかった。お母様がおすすめしてくれたのは、本に挟む栞だった。本が好きな子であればいつでも、どの本にも使える栞の方がよいだろうとのことだった。私はダイナゴン横丁の小物を扱う店にお母様と行き、クリスマスプレゼントを選んだ。ハーマイオニーに贈る栞は、猫の絵が自由に動くものにした。パンジーやダフネ、ミリセントにはそれぞれに似合いそうなヘアアクセサリーを選んだ。それぞれ花をモチーフにしており、その日の気分で色が変わるように魔法が掛けられている。ドラコには、ハンカチを贈ることにした。見た目の綺麗さももちろん、濡れてもすぐに乾くハンカチにしたので、普段使いに良いものだと思う。

 

 クリスマスプレゼントを買って家に帰ってきた後、お母様にドラコにクリスマスパーティーに誘われている事を話した。ドラコが、お母様も誘っていたと伝えたが、

「ドラコの家のクリスマスパーティーに私は行けないわ。昔の…知り合いも来るだろうし、いろいろと折り合いが悪いから。」

と断られた。ドラコの家のクリスマスパーティーに闇の帝王の元配下が来るって意味なのだろう。私のことをヴォルデモートと結びつけられる人はいないだろうから大丈夫だけど、お母様は私のために逃げた裏切り者だから会わない方が良いということだということかな。わざわざ危険を冒す必要もない、私も家でお母様とゆっくりクリスマスを過ごすことにした。

 

 ドラコたちやハーマイオニーに贈るクリスマスプレゼントは、屋敷しもべに運んでもらうことにしよう。みんなに手紙を書かないと。私は羽ペンを取り出し、魔法をかけようとしたとき、ハーマイオニーがニコラス・フラメルについて聞いてきていたのを思い出して、本棚にそれっぽい本がなかったか探した。そして私は、『最も有名な錬金術師』と書かれた本を手に取った。この本は、錬金術は魔法を超えられるのかを知りたくて昔読んでいたなと思い出した。本を開くと、目次の一番初めに書かれていたのが、ニコラス・フラメルだった。私は、みんなへのクリスマスの手紙とプレゼント、そしてハーマイオニーには本も一緒に屋敷しもべのグレイに持たせて、

「この本と一緒の荷物についてはお母様には誰に贈ったのかを内緒に。相手は魔法族の家じゃないから見つからないようにお願いね。」

と伝え、彼を送り出した。グレイは昔から口が堅かったから、お母様に問い詰められない限り大丈夫だろう。

 

 お母様と二人のクリスマスはいつも通り、でも今年は少し違った。私はお母様へのクリスマスプレゼントとしてクリスマスケーキを作った。いつも料理してくれているグレイの手伝いも借りながら、ほとんど私の力だけで作り上げた。プティングは時間がかかりすぎるから、ケーキにすることにした。それでも、ケーキというのは時間のかかるもので、魔法で工程を短縮しても2、3日かかった。これを見たお母様の反応がすごく楽しみ。お母様とのクリスマスのディナーは、この時だけはお母様が手作りで料理を作ってくれていた。お母様の作る料理は、グレイが作るものに比べたら焦がしていたり、味が少し濃かったりしたけれどもいつも楽しかった。それにプティングも作ってくれていて、マグルの支援学校から帰ってきたときのあの甘い匂いもすごくワクワクするものだった。

 今年は、私がお母様にクリスマスをプレゼントするのだ。お母様はクリスマスのギリギリまで仕事が忙しく、今日は帰ってくるのが遅くなるらしい。作ったケーキをお皿に乗せ、ダイニングテーブルにセットする。グレイが作ってくれた料理を運び、お母様の帰宅を待った。待つこと1時間くらい経っただろうか。玄関の扉が開く音がした。私が玄関へと向かうとお母様が帰ってきたようで、

「ただいまデルフィーニ。遅くなってごめんね。この甘い匂いはケーキかしら?」

「お母様おかえりなさい。今年は私がケーキを作りました。早く食べましょう!」

お母さんの手を引きながら、ダイニングへと小走りで向かった。お母様は、私とグレイが用意したクリスマスの料理とケーキを見て、本当にうれしそうだった。そして一緒にクリスマスのディナーを食べた。お母様は私の作ったケーキを食べて、

「本当に美味しいわデルフィーニ。本当にありがとう。」

と喜んでくれた。私にとって今までで一番幸せなクリスマスだった。

 

 次の日の朝、目が覚めると友人たちからのクリスマスプレゼントが届いていた。ドラコは私に『クィディッチ選手百選』をくれた。どうしても私をクィディッチ好きにしたいらしい。ミリセントはハンドクリームを、パンジーは化粧水をくれた。どちらも魔法界の有名な店の物で、とてもいい匂いがした。ダフネからは…ハンカチと手紙だった。ハンカチはとても良い品で、さらに何かが刺繍がされていた。グレイに聞くと蛇の刺繡らしかった。手紙には『もう決断したの?』とだけ書かれていた。手紙をお母様に見られるのは困る。私は、手紙を暖炉に入れてすぐに燃やした。

そして、ハーマイオニーからのクリスマスプレゼントは手袋だった。手にはめてみると、温かく、それでいて薄めに出来ていたので杖を握れるようになっていた。私が、普段から白杖を使っていることを考えたうえで、これを選んでくれたのはうれしかった。もらったプレゼントは学校に持っていけるものがほとんどだったので、学校に持っていくトランクに全部詰め込んだ。

 

 

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