盲目の少女   作:torinikuyakiyaki

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Ⅰ-5

ハーマイオニーにすべてを話そうと思っていたのに、期末試験の期間に入り話す機会がなかった。私は、学年主席を目指して勉強に勉強を重ねた。今回は恩知らずどもに勉強を教えるという時間がなかったため、自分の勉強にこれまで以上に力を注ぐことが出来た。試験も先生が求めた以上の成果を出すために、筆記であれば私の研究を加えて提出し、実技であれば求められたこと以上の威力の魔法と知識の集大成を見せつけた。

 期末試験が終わり寮に戻ろうとすると、慌てた様子のポッター、ウィーズリー、ハーマイオニーがマクゴナガル先生に何かを話しているのを聞いた。ポッターたちは賢者の石を狙う人がいるとマクゴナガル先生に報告していたが、マクゴナガル先生は、教師陣による守りをかけているので大丈夫だといっていた。しかし、最も気になったのは、今日校長先生がこの学校にいないという事だった。ダンブルドア校長は、彼の持つ多くの肩書以上に強力な魔法使いであり、多くの闇の魔法使いが恐れる存在でもある。もちろん、私の父である闇の帝王ですら恐れている。その彼が今日学校にいないとなれば、私であっても計画を実行させる好機と考えるであろうというのは明白だ。それなのに、マクゴナガル先生はポッターたちの話をあまり真剣に聞いてはいなかった。

 ポッターたちは、マクゴナガル先生に話しても意味がないと思ったのか、それともグリフィンドール的な勇敢さによるものなのか、廊下を歩きながら今夜立ち入り禁止の場所に行き賢者の石を守るという話をしていた。でも、普通に考えて大人の魔法使いに実戦経験もない1年生が勝てるのだろうか。良くて病院送り、悪くて命はないだろう。そんな計画にハーマイオニーも参加するつもりなのか?正直ポッターやウィーズリーがどうなろうと私には関係ない。でも、友人であるハーマイオニーがそんな危険な計画に参加するのを知ってしまった以上、彼女を守るためにも行くべきだと思った。それに、私もその計画に加わることが出来、上手くいけば賢者の石を見学できるかもしれない。私は夜に備えるために寮に急いで戻った。

 その夜、私はベッドを抜け出し立ち入り禁止の場所に向かった。管理人のフィルチと彼の猫が巡回していたが、音を頼りにする私の前で、視覚を奪う暗闇は味方だった。私が立ち入り禁止の部屋に着いたときには誰も来ていなかった。壁に寄りかかって待っていると、遠くから誰かが歩いてくる音がした。彼らは私に気づいて、

「ハーマイオニー!君が彼女に教えたのかい!」

「わ、私は何も言ってないわ!」

ハーマイオニーは驚きながら、ウィーズリーの問いかけに応えた。

「彼女の言う通り。私は、君らの計画について直接は聞いていない。ただ、君らの内緒話が内緒ではなかったというだけだ。私も賢者の石を守りたい。君らの計画に参加したいのだが、参加してもよろしいかね?」

私は彼らに尋ねた。彼らのうちウィーズリーは、

「絶対に反対だ!スリザリンの奴は信用できないよ!」

と言い、ポッターは

「僕はどうすればいいのかわからない。君が優秀なのは知っているけど、お互いによく知りもしないのに、このバレたらまずい計画に参加させていいのかどうか。」

ハーマイオニーは、

「彼女に参加してもらえれば心強いわ。彼女はあのトロールにも勝ったし、フリットウィック先生からもいろいろと学んでいるはず。私たちより魔法使いの戦いを知っているわ。」

と賛成してくれた。でも、このままでは2対1でこちらが不利だ。多少脅しても許されるだろう。

「もし、私をこのまま寮に戻らせるようであれば、私はすぐに先生に君たちが何をしているのかお知らせに行こう。夜間の外出に加えて、校長の警告を破るのはまずいだろう?私も50点引かれるだろうが、すでにその倍は稼いでいるから私を責めるものはいない。」

 私の言葉に、『さすがスリザリンだよ。ずるい。』とポッターとウィーズリーは言い、二人は私の同行を渋々承諾した。

 扉のすぐ向こうには、三頭犬がいるらしく、開ける前に杖を構えるように言われた。だが、人の気配に反応する音がしない。それに、何かの音楽が流れてきている。不審に思いつつ、ポッターが扉を開けると、三頭犬の寝息とハープの音色が聞こえてきた。三頭犬は音楽を聞けば眠るらしい。というか、すでに攻略されているのはまずくないか?ポッターたち曰く、三頭犬は元々森の番人であるハグリットの飼育している生物らしく、このために校長に貸していたらしい。しかし、ハグリットは他人にうっかりと弱点を教えていたらしく、ポッターたちもその弱点を聞き出していた。つまり、彼の口はとても軽いのに大事な役目を任されているという事だ。ポッターたちが三頭犬の脚をどかし、地下への隠し扉を開けた。中から生き物の気配はしない。私はさっさと飛び降りた。ハープに魔法をかけた人物が、先に賢者の石を手に入れてしまったら、賢者の石を調べることが出来なくなるかもしれない。

 

 飛び降りると、柔らかい何かの上に着地した。私が飛び降りてすぐにハーマイオニーたちも飛び降りたみたいで彼らが着地する衝撃が伝わった。

「これは、悪魔の罠だわ!」

ハーマイオニーが慌てた様子で叫んだ。悪魔の罠という事は、早く脱出しないと命はない。あぁ、でもこの植物は授業中に先生に少し分けてもらおうとしたらやんわりと断られた魅力的な植物。私は脱出する方法と、この植物を入手したい欲に迷った。ツタが体に巻き付いてくる。パニックになったウィーズリーが大暴れする揺れと叫びが聞こえ、すぐに現実に戻った。まずは脱出しないといけないという事に気づいた。

「この植物は火に弱いわ!でも薪がないと火がつけられない。」

パニックになったハーマイオニーが、自分が何者か忘れたようなことを言っていて思わず、

「「君は魔法使いだよ!!」」

とウィーズリーとハモリながら思わずツッコミを入れてしまった。そして、火をつけて燃やしてしまうと、この植物を手に入れられなくなると気づいてしまった。ハーマイオニーが火をつける前にと思い、急いでツタを触り手でちぎれる部分を探した。そして、柔らかい芽の部分をちぎりポケットに入れていた試験管に入れて栓をした。これで、育てられるのかわからないが、多少の実験には使えるはず。試験管をポケットにしまい、ハーマイオニーに合わせて、

「「インセンディオ!」」

と悪魔の罠に火をつけて燃やした。悪魔の罠は火が付くと私たちを締め上げていた蔓を緩めていき、次の空間へと行くことが可能になった。

 次の部屋はとても広い部屋の中を、羽の生えた鍵が飛んでいる場所だった。ポッターが、箒に乗って扉の鍵を捕まえようとしていたが、あまりに遅すぎる。このままでは先に進んだものに賢者の石を取られてしまう。私は、三人に気づかれないように杖を振り、広い部屋を飛び回る鍵の鳥たちに重力を増やす呪文を唱えた。しかし、焦りが影響したのか、呪文が少し強くかかってしまい、鍵の鳥たちはすべて地面に叩きつけられた。私が呪文を使って鍵の鳥を捕まえようとしたのが三人にバレてしまった。ポッターが箒から降りて私に近づき、

「捕まえる方法があるのなら最初から使ってほしかった。わざわざ僕が箒に乗る必要がなかったじゃないか!」

と憤慨した。私は感謝こそすれ、そんなことをいわれる筋合いはないと思い、

「お前が余りにも遅すぎるからだろ!?私はお前が一番のシーカーだと聞いていたのに、捕まえるのにどれだけ時間を掛けるつもりなんだ?」

「お前自分勝手なんだな。自分が目立たないようにやってるつもりでも、実際は他人に自分の力をひけらかしたくてたまらないんだろ?だからスリザリンでも嫌われるんだよ!」

ポッターの言葉に、私は怒り、たまらず詰め寄ろうとした。しかし、ふとスリザリンの仲良く出来なかった、あの勉強を教えていたのに悪口を言ったり、嫌がらせをしてきた人たちの事が頭に浮かんだ。

 

 あの勉強を教えていた間、私は彼らにひどいことを言っていたのかもしれない。彼らが出来ない事を責め立てるような言葉を言っていた。私は努力することですべてを乗り越えてきたし、他人もそうあるべきだと押し付けたのかもしれない。努力出来ない他人が許せないと思ってしまっていたのかも。自分に努力しても変えられない部分があるように、他人にも努力で変えられない部分がある。ポッターですらひけらかしていると感じていたという事は、元々プライドの高いスリザリン生なら傲慢な奴位に思われていたに違いない。そんな私でも傍にいてくれたダフネやミリセント、パンジーたちには感謝と謝罪をしないといけない。この作戦が終わったらすぐにみんなに謝ろうと思った。

 

 でも、その前に目の前にいるポッターに謝ろう。他人にやらせておいて、それが気に食わないからと手を加えるのは良くない事だった。

「ひどいことを言ってしまった。すまないポッター。でも、私は別に自分の力をひけらかしたいわけじゃない。早く先に進みたくて焦っただけなんだ。でも、私のやったことは良くない事だった。謝罪する。」

ポッターは少し考えた後、鍵を拾って扉を開けた。特に何も言われなかったが、さっきのような敵意は感じなかったため、三人に続いて扉をくぐった。

 

 次の部屋は、チェスの課題の部屋だった。

「この中にチェスが得意な人はいるか?」

私の言葉に、ウィーズリーが、

「魔法使いのチェスならやったことがある。」

と言い、それぞれがチェスの駒に見立てられてゲームが行われるということで、ウィーズリーの指示に従う事にした。ポッターがルーク、ハーマイオニーがビショップ、ウィーズリーがナイト、私がクイーンの位置に着いた。

ウィーズリーがチェスを開始した。駒を取ったり取られたり、そしてウィーズリーは勝つために相手を誘い出す作戦をすると宣言した。自分がクイーンに取られることで勝利を得るつもりのようだ。騎士道精神あふれるグリフィンドールらしい。ウィーズリーのナイトが前に出て、相手のクイーンが襲い掛かろうとした。

 

 なんとなく、見殺しにするようで気分が悪い。

 

 私は杖を振り、ウィーズリーをチェス盤の外に引っ張り出した。ウィーズリーは怪我をすることなく、ゲームから退場。そして、ポッターがゲームの終了を宣言すると、相手のキングは王冠を投げ捨て、次の部屋への扉を開けた。ウィーズリーが、

「何で助けたんだ?」

と不思議そうにしていたので、

「なんとなく、見殺しにするのは嫌だったから。」

と言っておいた。それでも何か言いそうだったので、

「怪我されたら足手まといだ。」

というと、ウィーズリーは

「やっぱりスリザリンの嫌な奴。」

だと、騒いでいた。なんとなくで助けたから、理由を聞かれてもなんといえばいいのか分からない。本当になんで助けたんだろうか。

 

 次の部屋への扉をくぐった時から、あの時の匂いがした。鼻が曲がりそうなほどの悪臭と、重いものを引きずるような音。向こうにトロールがいる。ポッターやウィーズリーはもちろん、ハーマイオニーだって何かと戦ったことはない。トロールの前に出たら動けなくなるだろう。トロールの部屋の前で私は三人を止めた。

「この先にはトロールがいると思うけど、私以外誰も戦ったことがないと思うから私が良いというまでここで待ってて。」

 

 扉をくぐると、前に聞いた足音よりずっと大きい足音が聞こえた。前の時より大きいトロールがいた。そして、私に気づいたとたんに叫びながら襲い掛かってきた。前の時より大きく凶暴な個体のようだ。集中してこいつを倒さないと、賢者の石は奪われ、見ることも叶わない。棍棒の攻撃をよけ、呪文を唱える。

「エクスペリアームス!!」

当たった!大きなものが落ちる音がする。棍棒は大きく吹き飛ばされ、トロールも後ろによろめいた。しかし、私は油断をしていた。前に戦った時よりも魔法の種類も威力も成長していたことが油断に繋がった。相手も、前の時より大きくそして賢い個体だったというのに。

トロールは武器を失っても私を殺すという事に向けて、全力で体当たりしてきた。私はよけようとして転んでしまい、白杖がどっかに転がってしまった。次の攻撃はよけられない。いろんな呪文を唱えるが、一瞬ひるませることはできるもののやはり効果が薄い。立ち上がろうとするが、緊張状態の中で焦りが頂点になり立ち上がれない。目の前まで来たトロールが拳を叩きこもうとするのが分かる。感覚がスローモーションになる。

 

 その時、誰かが私の腕を強く引っ張った。

私がさっきまでいたと思われる場所に硬いものが叩きつけられる音が響く。

私は、音がする場所、トロールがいる場所に向けて、

「ルーモス・マキシマ!」

と、唱えた。強い光を直接見たトロールは、目がくらみ、苦しむ声を上げながら私たちから遠ざかる。

私を引っ張った人物は、

「一人で戦うなんてやっぱり無茶よ!」

と叫んだ。私を助けてくれたのはハーマイオニーだった。

「でも、私以外に誰が倒せるの?ハーマイオニー。」

「協力すれば…」

「じゃあハーマイオニー。あなたにお願いがあるの。私の目になって。トロールを倒す方法が一つだけあるけど、絶対に外せない魔法なの。」

ハーマイオニーの肩に手を置く。ハーマイオニーはトロールの方を向き、

「わかった。あなたの目になる。どうすればいいの?」

「トロールが私たちの真正面5メートル以内に入ったら教えてほしい。」

トロールは、目がくらんでいたのが治り始め、私たちの方に向かってゆっくりと歩き始めた。足音がどんどん近くなる。

「今よ!」

「ペルフェクトゥス・ソムヌス!!(完全な眠り)」

 

 杖から魔法が放たれ、トロールに当たる。トロールはよろめき、そして仰向けに倒れた。トロールが地面に倒れる音を聞いて、呪文が成功したと分かった。

ハーマイオニーが、

「今の呪文は何なの!?教科書にも載っていなかったわよ!」

と興味津々で聞いてきた。

「この呪文は私が作ったの。眠りの水薬はお金がかかるから、簡単に眠りにつける魔法があれば便利だと思って。でも、試したときにあまり遠くまで飛ばせなかったから戦闘で使えないと思ってた。まさかトロールに使う事になるとは思わなかった。」

 

 

 安心すると、あの時ハーマイオニーが来なかったらと思った。私の命はなかっただろう。私はハーマイオニーを思いっきり抱きしめながら、

「さっきは本当にありがとう。ハーマイオニーが来てくれなかったら、私は…。本当にありがとう。」

と何度も感謝した。あの時の恐怖を思い出したら少し涙が出てきたが、抱きしめていたおかげでハーマイオニーからは隠せていたはず。

「あの時デルフィーニは私を守ってくれたでしょ?友達だもの、私もあなたを守りたいし、助けたいの。だから一人で戦わないで。」

とハーマイオニーからは少し叱られてしまった。

 

 落ち着いた後、二人を呼びに行き、次の部屋に向かった。二人も助けに来ようとしたらしいが、初めてしっかり見るトロールが怖かったらしい。怖いのは当たり前だから責めるつもりはない。というよりも、その怖いという気持ちを忘れずに規則を破らないで、ハーマイオニーを危険に巻き込まないで欲しいと心の底では思っていた。

 

 次の部屋に入った瞬間、通ってきた場所に炎が立ち上った。次への扉にも炎が燃えており、ウィーズリーが閉じ込められたと騒いだがそれを無視して進むと、部屋の真ん中に小瓶がならんでいて、羊皮紙が一枚置かれていた。ハーマイオニーはそれを読むと、

「これはすごいわ!論理パズルね!私に任せて。」

何本か並んだビンの中から、後ろに戻る薬と前に進む薬があるという内容が羊皮紙に書かれており、ハーマイオニーはしばらく考えた後に、二つのビンを選んだ。

 

小さいビンが進む薬、丸いビンが後ろに戻る薬だということらしい。

ポッターが、

「この先には多分スネイプがいる。そして、おそらくヴォルデモートも…僕が止める。」

「ヴォルデモートがいるなんて聞いていない。相手はスネイプ先生だけじゃないの?」

私の言葉に、ポッターは「おそらく」と答えた。

私の背筋に冷や汗が流れた。会ってみたいという好奇心と同時に、生まれたばかりの私を役に立たないとして殺そうとした事への恐怖心。呼吸が自然に早くなり、鼓動が早鐘のようになる。三人は私の様子に、ただヴォルデモートが普通の人と同じように怖いだけだと思ったようだったのが幸いだった。それ以上の恐怖と好奇心が私の中にあることに気づかなかった。恐怖心と好奇心が私の中で天秤に掛けられ、そして好奇心が勝った。

 

 小さいビンも丸いビンも一人分しか中身がない。私はウィーズリーに、

「ウィーズリーに戻る薬を飲んで、先生を呼んで来てほしいと思うのだが、みんなはどう思う?」

と提案した。最初はウィーズリーも自分も前に進みたいと言っていたが、この中で誰が一番早く戻れるのかをという点についてを説得した結果、彼は戻ることに了承した。彼を帰らせたのは、ポッターというヴォルデモートにとっての仇を先に進めることで、私に気づかせにくくするためという理由と、ハーマイオニーを一人で戻らせる事に抵抗があったからだ。その結果、消去法でウィーズリーが戻るべきだと考えたのが本音だ。誰が戻っても実際は同じだけの時間しかかからないだろう。

ウィーズリーは丸いビンの薬をのみ、もと来た道を戻っていった。

 

 前に進む薬は一口分しかない。私は小瓶の中の薬に杖を向けて、物を増殖させる呪文を唱えた。小瓶に一口分しかなかった薬は、三人分となった。薬を飲み、先へ行く扉を開いた。

 

 扉の先には誰かが立っていた。でもスネイプ先生じゃない事は確かだった。彼の纏う匂いは様々な薬品が混ざった匂いで、たった一つの匂いという時はこれまでなかった。

自分たちの先に来ていた人物の匂いは、ニンニクのような匂いだった。この匂いをしていた人物はたった一人。闇の防衛術の担当教師クィリナス・クィレル先生。私とハーマイオニーは、元々スネイプ先生に奇襲を仕掛けるために、ポッターの透明マントを借りていた。驚きを隠しながら、足音を忍ばせて、先生の横の位置にある柱の陰に移動した。

 

 クィレル先生は賢者の石を手に入れて、肉体を失ったヴォルデモート、私の父を復活させようとしていた。賢者の石を手に入れるためにここまで来たが、最後の部屋に置かれていたのは人の望みを映す鏡だけで、まだ手に入っていないようだった。攻撃のために杖を構えて、息をひそめる。どんなに経験のある魔法使いだとしても、奇襲攻撃を受ければ確実にひるむはず。

クィレル先生は、ポッターがたった一人で来たと思い込んで、彼に話しかけている。

その時、クィレル先生以外の声が部屋に響いた。この声が、私の父の声なのか。ハーマイオニーが小声で、

「先生の頭の後ろに顔が…あれがヴォルデモートなの…?」

と恐怖していた。私の父は本当に肉体を失っていたようだ。ヴォルデモートはクィレルに命令し、ポッターを鏡の前に立たせた。ポッターは何かを見たようで、クィレルを振り払い、もと来た道を戻ろうと駆け出した。ヴォルデモートが、

「石をあいつが持っている!捕まえろ!」

とクィレルに命令する。クィレルは杖を振り、ポッターを自分の方に引き寄せようとする。ポッターは地面にしがみつき、逃げようと必死になっている。ここで加勢しないと、賢者の石は取られてしまう。私はマントから飛び出し、

「エクスペリアームス!」

と唱えた。しかし、魔法はクィレルにはじかれてしまった。

 

「まさか、スリザリン生がポッター君を助けに来ていたとは驚きだ。」

クィレルの意識が私に向き、彼は杖を振った。その瞬間私は後ろの壁に吹き飛ばされていた。痛みにあえぐ私を無視して、ポッターが逃げられないように引き寄せる呪文を唱えながら、ゆっくりと向かう。透明マントに隠れたままのハーマイオニーが、

「デルフィーニ大丈夫!?」

と、私のそばに来て身体を起こしてくれた。このままだと奴に勝てない。先生たちが着くまで時間を稼がないといけない。私はポケットに入れた悪魔の罠を思い出した。試験管ごとハーマイオニーに渡して、

「クィレルにぶつけて!」

 

 ハーマイオニーは私の言葉通りにクィレルに試験管をぶつけた。試験管はクィレルに当たり、地面に落ちて割れた。私は悪魔の罠に、魔力を注いで急激に成長させたが、水も栄養もない場所では、悪魔の罠も絞め殺す植物までは成長させられなかった。出来ても、足元にまとわりついて、クィレルの動きを邪魔するだけ。魔力を無理やり注いでいるせいで、私の頭もくらくらしてきた。魔法は長くはもたない。クィレルもそれが分かっているらしい。悪魔の罠を魔法を使って振り払うのではなく、杖を持っていない方の手で千切って払うだけだった。それでも、ポッターの方に歩いていくのは難しいと思ったのだろう。ポッターを引き寄せる魔法をさらに強くかけた。ポッターは地面から剥がされ、クィレルに捕まった。

 

 もう終わった。悪魔の罠にかけていた魔法も、もう維持することが出来ず、悪魔の罠は床の上で枯れてしまった。しかし、その時ポッターをつかんでいたクィレルの手が灰になり始めた。クィレルは半狂乱になりながら、何か呪文を唱えようとした。しかしポッターがつかみかかり、ポッターに触れられた場所から煙を出してクィレルは灰になっていった。クィレルはなおも身体にくっつくポッターを自分から引きはがし地面に叩きつけた。そして、クィレルはしばらく暴れていたが、やがて完全に灰になって消えた。

 

 ハーマイオニーと共にポッターに近づく。ただ気絶しているだけで、おそらく大丈夫そうだ。彼の手から何か硬いものが落ちた。私は、それを拾ってすぐにこれこそが賢者の石だと分かった。ハーマイオニーに何か気づかれるのはまずい。石をポケットにしまい、

「ポッターをすぐに医務室に連れて行かないと。先生が来ていないか戻って見てきてくれない?」

と言った。彼女はすぐに駆け出していき、その場には気絶したポッターと灰になったクィレル、そして私だけになった。

 

 実験の為に、石を握りしめて魔力を込めてみた。石は私の魔力を何倍にもして私の手のひらへと戻してきた。この石の性質は何かを強化したり浄化する事だと分かった。それと同時に、この賢者の石では私の目に掛けられている呪いのようなものを解くことは出来ないと気づいてしまった。私にとって必要だったのは、なんらかの魔法や呪いを打ち破るもの。この石ではそれは出来ない。こんなに頑張ったのにと落胆してしまった。

 

 そして、クィレルの灰の所に行き、灰を掬ってみた。人体を灰にするような力、魔法のようなものがポッターに掛けられている。少なくともポッター自身の力ではない。もしかすると、ポッターが持つこの力も私の目にかけられているモノを破る鍵になるのかも知れない。そう考えていると、先生たちが何人かこの部屋に入ってきたのが分かった。マダム・ポンフリーや、マクゴナガル先生などの教師陣が入ってきて、ポッターを医務室へと運んでいった。マダム・ポンフリーは私の傍にも来て、鼻血が出ているので一応医務室に来るようにと言うと、部屋から出て行った。

 

 彼らに続いて、私も医務室に行こうと歩き出したとき、誰かが私の肩に手を置いて止めた。

「その手の中にあるものを渡してくれんかの?」

この声は、ダンブルドア校長だ。いつの間に私の後ろにいたのだろう。私は少し考えたあと、

「えぇもちろん返しますよ。私のものではないですし。でも一つだけ質問に答えてもらってもよろしいでしょうか校長先生。」

「生徒の疑問に答えるのが先生じゃよ。」

「それは良かった。」

私は校長先生に賢者の石を渡しながら、

「クィレル先生はなぜ灰になってしまったのでしょうか?Mrポッターが何か呪文を唱えたようには思えなかったのですが。」

私の質問にダンブルドア校長は、

「彼には、君の知っている通りに両親がいない。殺されてしまったからの。しかし、彼の母親は彼に大切なものを残してくれたのじゃ。それは君の母親が君に対して持っているのと同じものじゃよ。」

「………もっとはっきりとおっしゃってください。」

「愛じゃよ。この世でどんな魔法よりも強く、そして尊いものじゃ。君もいずれ分かるじゃろう。」

いまいち校長先生の答えはよくわからなかったが、これ以上聞いても意味がないと思い、私は足早に医務室へと向かった。

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