盲目の少女 作:torinikuyakiyaki
リアルの方が忙しくなってまいりまして、なかなか思うように更新できていませんが、確実に更新していきますのでどうかよろしくお願いします。
部屋を出た後医務室に行ったが、魔法を使いすぎたせいで鼻血が出たという診断で寮にすぐに戻された。
寮に戻る途中、ダンブルドア校長の言葉を思い出していた。
亡き母親の愛がポッターを守った。
魔法に関する本の記載で、魔法は熟練度や年齢にも作用されるが、最も大きく影響するのは術者の感情であると書かれていたのを見たことがある。より大きな感情は、例え同じ魔法であってもそれを凌駕する魔法を生み出す。それが愛だとダンブルドア校長は言っていたのかもしれない。
確かに愛はすべてを投げ捨てても構わないという強さを生み出す。お母様が私を守るために自らの左腕を、自らの矜持を捨てたのは私への愛ゆえにだったのだと思う。
でも、私にはまだ愛がよくわからない。お母様を守りたい、支えたいという気持ちはあるが、それは愛なのだろうか。もし、それが愛だとしてもそんなに大きな力を生み出せるとは思えない。
そんなことをグルグルと考えながら歩いていると、寮の入り口に着いた。時間はまだ早朝。生徒はみんな寝ているはず。起こさないようにベッドに戻ろう。小声で合言葉を言って、談話室に入る。誰の気配もしない事に安心して、寝室へと向かう。ベッドに潜り込もうとしたとき、
「うぅん…一体今までどこに行ってたの…?」
と、ダフネが眠そうな声で尋ねてきた。私は起こしてしまったのを申し訳ないと思い、
「眠れなくて談話室に行ってた。起こしてごめんね。」
「嘘はダメ……起きたら何していたのか聞くからね……」
ダフネは寝ぼけながらまたベッドに潜り込んでいった。今夜あった事は今は話さなくてもいいだろう。ただ、朝になったら私の傲慢だった所をダフネたちに謝罪しよう。そう考えながら目を閉じた。
目覚めてすぐに謝罪した。(立ち入り禁止の廊下に行ったことは言わずに、図書館に行っていたということにしておいた)しかし、彼女たちは、
「そんなところも含めてデルフィーニじゃない?少し傲慢だと思われるかもだけど、それは努力の表れだと思うし。私たちは別に気にならないよ。むしろ今まで通り友達でいられたらそれでいい。」
と気にしていなかった。改めて良い友達を持ったと思い、同時にこれからはやはり態度を改めていこうと思った。
そして学年末の寮杯の結果発表の日が来た。寮杯はスリザリンが圧勝していた事もあり、寮内はお祭りムードだった。大広間に全生徒が集まり、夕食の前にダンブルドア校長の話が始まった。
しかし、私はあの時校長に言われた「愛」について図書館で調べた事をずっと考え込んでいて話をほとんど聞いていなかった。魔法に感情を強く乗せることが、強力な魔法を使う事に繋がるのではないか?
「……それではここで寮対抗杯の表彰を行う。4位、グリフィンドール、342点。3位ハッフルパフ、352点。2位、レイブンクロー、426点。1位、スリザリン、442点。」
スリザリンの席からは歓喜の声が上がる。私は、考え事でぼんやりとしていて、パンジーやミリセントに揺すられてハッと顔を上げて拍手した。
「しかし、最近あった出来事も勘定に入れなくてはの。」
ダンブルドアはそう続け、
「まずはロナルド・ウィーズリー。近年稀に見る素晴らしいチェスの腕を見せてくれた。50点。」
もしかして、あの立ち入り禁止の場所で起きたことについて加算しているのではないだろうか?あの場所での私たちの行為は、罰則を受けて当たり前で決して称賛されるべき物ではなかった。ダンブルドア校長は一体何を考えているんだ?
「次にハーマイオニー・グレンジャー。冷静な判断で見事仲間を救った。50点。」
なんか気分が悪くなってきた。グリフィンドールを勝たせるための加点とか、そういうのはどうでもいい。
嫌な考えが頭を巡る。
あの瞬間、あの場所に私たちは自分の意志で向かったのではなく、ダンブルドア校長によって仕向けられたのでは?
そうだとしたら、ウィーズリーとハーマイオニーは私たちに巻き込まれただけで、私とポッターはヴォルデモートと向き合うために行かされたのでは?
ポッターは自分の両親の仇への憎しみを育てるため。
私は…私自身がどちらの人間なのか、闇なのか光なのかをダンブルドア校長が確認するため?
「三番目はハリー・ポッター。その並外れた勇気を称えて60点。」
グリフィンドールから「スリザリンを超えた!?」という声が聞こえる。ポッターやウィーズリー、ハーマイオニーだって喜んでいるはず。
今わかることはダンブルドア校長の思惑だけではない。……ヴォルデモート卿、私の父は、彼は生きている。今は弱っているが、いずれ必ず戻ってくる。その時、私はどうなるのだろう。そして、お母様は…
「そして最後に、友だけではなく自らのライバルを助けようとするのは常人には出来ない事じゃ。デルフィーニ・ブラックに60点。」
私の名前が呼ばれ、スリザリンからもどよめきが広がった。この流れで私の名前が出てくるという事は、さっきの3人となんらかの関連があるという事。スリザリンの異端者がグリフィンドールに手を貸したことを非難したげな視線と、その行動によってせめてグリフィンドールに負けることは防げたという安堵の声が聞こえる。寮杯は結局グリフィンドールとスリザリンのダブル優勝という事になった。
そして学年末試験の結果が発表された。私はもちろん主席。次席はハーマイオニーだった。ハーマイオニーは悔しそうにしながら、次は負けないと意気込んでいた。ドラコは、ハーマイオニーに負けた事にすごくショックを受けていたようだった。こういう時は、そっとしておくべきだろう。
家に帰る前日。私はそれまで何度もお母様に出そうと思っていた手紙を燃やした。
内容は…お父様、ヴォルデモート卿についての事。彼が生きていて、いつ戻ってきてもおかしくないという内容。でも、この事をお母様が知れば、少なくとも私だけはアメリカに逃がそうとするだろう。
でも、私はここで…ホグワーツで友達と一緒に過ごしたかった。それだけのために、大切な情報を一つ握りつぶした。これが正しかったのか、間違っていたのか。この時の私は少なくとも正しいと思っている。
お母様にこのことを伝えずに、お母様も友達も守る為には私自身が誰よりも強くなればいい。誰にも負けない、誰よりも強い存在になればいい。目が見えるようになる方法もさがしつつ、戦いをもっと学ぶ必要がある。例え闇の魔術を使ってでも強くならなくては…
そして次の日。家に向かうホグワーツ特急に乗り込み、誰もいないコンパートメントに入り、魔法をかけた。私が入ってきてもいいと思う人以外は入れないようにする魔法。本来はマグルよけに使う魔法を少し改良した魔法だった。席に座り、彼女を待った。
彼女は私が思ったよりも早く来た。ハーマイオニーは私の正面に座った。私は彼女に私の事について誤魔化さずに話そうと心に決めていた。この結果で友人を一人失っても受け入れるつもり。
「前に普段の優しい私と、周りを攻撃して楽しむ私がいるって言ってたでしょ。それについて、私はハーマイオニーに言ってないことがあるの。」
私は杖を振り、コンパートメントに防音の魔法を掛けた。周りに人がいないことは知っていたけど、どんどん臆病になっていく自分が、慎重な行動を取らせた。
「私の父に関しての事。あなたには外国の人だって言ってたよね。でも本当は違うの。」
いうのが怖い。
ドラコですら知らないことで、今まで誰にも言ったことがない。
真実を告げられた時から今まで、ずっと私を苦しめている事を話すのは本当に勇気が必要だった。それに、真実がお母様も傷つけてしまうものだった事も私をどんどん弱気にした。
でも、ここで勇気を出さないと。この真実は一生私に付きまとう。自分から話すのと、黙っていて後でどこかからバレるのでは、相手に与えるショックの度合いが違う。
それにハーマイオニーなら、受け入れてくれるかもしれない。
私のどんな面を見ても彼女は私を避けなかった。
「私の父は、マグルやマグル生まれを排斥する過激な純血主義思想を掲げた犯罪者。闇の帝王、名前を言ってはいけないあの人とも呼ばれた。……ヴォルデモートが私の父親。」
沈黙が空間を覆った。自分の心臓の音がやけに大きく感じる。
沈黙の時間は数分か、もしくは数秒だったかも知れない。ハーマイオニーが沈黙を破った。
「それは本当なの?じゃああなたのお母様は…」
「私のお母様は、多分あなたの想像した通り。父は、目の見えない私を殺そうとした。お母様は、父を裏切り、すべてを捨てて私を守ってくれた。」
「話してくれてありがとう。私、このことを誰にも言わないわ。」
「そうして欲しい。この話は、今まで誰にも言えなかった。ハーマイオニーが前に言っていたことについて誤解を解かせてほしい。私は魔法を使って他人を傷つけることが好きなわけじゃない。ただ、さっきの話が私の判断を鈍らせていたのかもしれない。真実を誰にも言えない臆病者だという負い目と、スリザリンの寮に根付いている純血思想が、私の心を削っていたんだ。そして、目が赤くなる事について。これは多分父の遺伝かもしれない。」
話すと、心がとても軽くなった。
ハーマイオニーの声も明るくなった気がする。彼女は、
「あなたのお父様が誰であっても、あなたはあなただもんね。私はこれからもあなたの友人でいるわデルフィーニ。だから、何かあったらいつでも私を頼ってね。」
そう言って私の手を両手で包んだ。
私の真実を聞いても逃げなかった友人。そんな友人を心から尊敬するし、大事にしていきたいと心から思った。いつか、パンジーたちにも言えるようになりたいな。
二人で夏休みの間何をするのかなどを話しているうちに駅に着いた。ハーマイオニーは、学校の勉強を総復習して、次は絶対に私に勝つと再び宣言した。私も彼女に次も負けないように頑張らないと。
汽車から降りると、お母様が私を呼んだ。私は一瞬躊躇い、そしてお母様の方に駆け出した。1年ぶりの再会。お母様に初めてする隠し事が自分の足を重くしたが、隠し事に気づかれないように足を無理やり動かし、表情を作った。
「おかえりなさいデルフィーニ。学校はどうだった?」
「とても楽しかったです!そういえば、今年は私が学年主席になったんです!」
「私の娘は本当に努力家なのね。」
お母様は私の頭を撫でながら褒めてくれた。それから一緒に手を繋いで家に向かって歩き始めた。
私の心はもう決まっていた。お母様に隠し事をすると決めたときから。
お母様を何があっても守る。
何があっても、どんなことをしても、それが例え許されざる事だとしても。