盲目の少女   作:torinikuyakiyaki

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秘密の部屋 編
Ⅱー1


家に帰り、お母様の前では今までの私とあまり変わらないふりをした。お母様は私と久しぶりに過ごせることを喜んでいた。クリスマス休暇に一度帰ってきたが、あのときはお母様の仕事も忙しくてあまり一緒にいられなかった。

 

お母様がどんな仕事をしているのか、前に一度聞いたことがあった。あのときは、ブラック分家の財産の管理をしていると言っていた。ブラック家は純血名家であり、代々莫大な財産を受け継いでいる。お母様は分家の財産の管理だけをしていたから私が幼いときはそこまで忙しそうではなかった。

 

でも、最近になって魔法省が本家の財産に手を出そうとし始めた。現在の本家の血筋は二人いて、一人はアズカバンという魔法使いの刑務所に、正当な後継者であるもう一人は行方不明になっている。

 

グリンゴッツ銀行に預けられている財産は、例えどんなことがあっても没収できないが、不動産などの銀行に入らないもので、相続人がいないものは魔法省のものになる。

 

ブラック家の遺産は不動産関係だけでもかなりの数がある。だからこそ、魔法省は好機とばかりに難癖をつけているのだろう。お母様はブラック本家の財産を守るために、魔法省とずっと交渉している。そのせいでお母様はとても忙しい。

せめて、アズカバンにいるブラック本家の血筋である、シリウス・ブラックが釈放されれば状況は変わるかもしれない。正当な後継者が戻ってくれば、魔法省も完全に手出しができなくなり、お母様は楽になるはず。

 

しかし、アズカバンにいるシリウス・ブラックは私の父の忠実な僕で、マグルを13人殺害したイカれた男らしい。そんなやつが釈放されることなんて、天地がひっくり返ってもありえない。どうしようもないことというのは、まさにこの事なのだろう。

 

自分にはどうにもできないことは後で考えれば良い。今自分にできるのは、魔法の練習と知識を深め、研究すること。私は屋敷しもべのグレイに声をかけた。

「グレイ、ちょっとお願いがあるんだけどいい?」

「なんでしょうかお嬢様。」

「私、これからいろいろな事をグレイにお願いすると思うんだけど、それをお母様には絶対に言わないで欲しい。できる?」

「内容にもよります。私にとってお二人ともご主人様ですから。」

グレイの言うことももっともだ。

「じゃあお母様に問い詰められない限り言わないでって命令なら聞ける?」

「そのような命令であれば大丈夫です。何をするんでしょうか?」

 

私は、グレイに髪の毛を短く切ってもらった。髪の長さを男性と間違うくらいに短くしたあと、お母様にダイアゴン横丁に行く許可をもらった。お母様は髪を短くした私を見て一瞬驚いていたが、「勉強の邪魔になるから髪の毛を切った。髪が短い方が便利でしょう?」

と言うと納得してくれた。

 

そしてグレイと一緒にまずはフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に向かった。書店にはたくさんの本があり、グレイに持ってもらいながら買い物を始めた。「実践的防衛術と闇の魔術に対するその使用法」と、魔法薬学に関する新しい本を本棚から抜いてグレイに持たせたとき、表紙が読めなくなるほど古ぼけた本が本棚の奥に詰まっているのに気づいた。

 

他の本を崩さないように引っ張りだすと、それは以前読んでいた上級魔法薬学の本だった。ただ、発行された時代が違い、前に読んでいた本よりもかなり前に書かれた本で、中の字も手書きで書かれていた。そして、面白いことに前に読んだ内容とまったく違うことが書かれていた。興味が湧いた私はその本もグレイに渡した。

ここで欲しいと思った本はこれくらいだろうということで、会計をして店を出た。グレイが、

「次はどこへ行くのですか?」

と聞いてきた。私は少し微笑みながら、

「いたずら専門店に行ったあと、お母様と来れば行けないであろう場所。ノクターン横丁に行く。このためにグレイに来てもらったんだ。私の護衛を頼んだよ。」

と言った。一人であの危険な場所をうろつくのはさすがに少し怖いが、グレイと来ているお陰で、いざとなれば屋敷に一瞬で逃げることが出来る。

グレイが若干怯えた様子だったのを無視して、私はいたずら専門店へと向かった。いたずら専門店ではいくつかの商品を購入した。

 

ノクターン横丁は、じめじめとした空気が漂っていた。怪しい人物と何度もすれ違いながらも、歩きを止めずに進んだ。ここでの目的は闇の魔術自体の情報。闇の魔術の本を手に入れられれば、今回は上々。しばらく歩くと、目的の店であるボージン・アンド・バークスの前に着いた。でも、さすがに子供の私が入ったら、買い物をする間もなくあしらわれるだけだろう。だから、この魔法薬を準備していた。ポケットから取り出した小瓶の中身は声を変えるいたずらグッズの薬で、女性の声なら男性に、男性の声なら女性の声にする物だった。あとは、フードを被り、準備してきた仮面をつければ、誰だかわからないだろう。

 

薬をのみ、フードと仮面をつけて店の中に入った。闇の魔術に関するものを売っているだけあり、店内は外と同じくじめじめとしていた。店主が不機嫌そうに、

「いらっしゃい。お探しのものは?」

と訪ねてきた。少しためらい、薬の効果を信じて口を開いた。

「闇の魔術について書かれた本があればそれが欲しい。あとは…面白い品物があれば値段を問わずに買うぞ。」

店主は店の奥の方に歩いていき、戻ってくるといくつかの本をカウンターに積み上げ、もう一度店の奥に向かった。戻ってきた店主が持っていたのは木箱だった。杖が入っていそうなサイズの木箱をカウンターに置くと、

「こっちの本は店にある闇の魔術に関する本全てだ。そしてこの木箱は、最近この店に売られたものだ。そして、面白いことにオリバンダーが売り払ったものなんだよ。」

私は何も言わず、グレイを促して大金をカウンターに置いて、本と木箱を受け取った。オリバンダーが自分の店に置いておけないものとは何だろう。ボージン・アンド・バークスを出て、ノクターン横丁を抜けて、ダイアゴン横丁に戻ると木箱を開けて確認した。

 

木箱の中身は、私が想像した通りに杖だった。よく分からない品物を持つのは危ないと思い、オリバンダーに確認するために、彼の店に向かった。店にきた私に気づいたオリバンダーが、

「今回は何を買いにきたんですか?杖はもうお持ちですよね?」

と訪ねてきた。

「オリバンダーさんが最近売ったものについて知りたくて。この杖に見覚えがあるでしょう?この杖は何なのでしょうか?」

彼は箱に入った杖を見て小さく悲鳴をあげた。

「なぜそれを…。いや、そんなことよりそんなものをあなたが持つべきではない。はやくあの店に戻してきなさい!!」

「なんでこんな古ぼけた杖一本に怯えるんですか?あなたは杖職人で杖の主人を見つけることに情熱を注ぐ人のはず。なのに杖に主人を見つけないであんな店に捨てるように売り払うなんて。」

「その杖に主人なんていてはならないのだ!!!その杖は持つ者に底知れない憎しみを抱かせる。憎しみによって動く者は必ず破滅する。だからその杖をこの店に置いておけないのだ。」

「なにおかしなことを。ずっとこの店にあったのでしょう?今さらそんな迷信を信じてるのですか?」

 

私の言葉に小さな声で違うとオリバンダーは答え、そしてなぜそんな迷信を今さら信じ始めたのかを話し始めた。

「これまでその杖を店に置いておいても何もなかった。その杖は、かつて闇の魔法使いによって家族を奪われた杖職人が、13人の闇の魔法使いを拷問し、その骨を芯に作った杖で、その杖に選ばれる人はなく、かの闇の帝王ですら選ばれなかった。」

オリバンダーさんは心底恐怖しているらしく、体を震わせながら声を絞り出した。

「だが、去年の、ちょうどあなたがこの店に来たあと、あの杖が暴れるようになったのです。それは私の頭に語りかけるものであったり、周りの杖を壊すというものだった。杖は私に周りの人を、お客様を手にかけろと言うのです。それが恐ろしくて、闇の魔術に関する品物ならなんでも買い取るあの店に押し付けたのです。」

 

…オリバンダーさんは気が狂ったのかもしれない。私はこの杖に触れたが、何も起きなかった。語りかける声も、周りを壊すこともなかった。もう何も言わずにこの杖を引き取ろう。オリバンダーさんを問い詰めすぎるのも、老人をいたぶっているようで気分が悪い。

 

「そんなに言うのなら私がこの杖をもらいます。別にいらないならもらってもいいですよね?」

私がそう聞くと、オリバンダーは慌てて、

「そ、そんなことをしたらあなたがその杖に魅入られてしまう。悪いことは言わないからあの店に返してきなさい…」

「もう買ってしまったので。それに言い伝えも大したこと無さそうなので貰います。」

私は、オリバンダーが慌てるのを無視して、店を出た。何が曰く付きの杖だ。さっきから触ってもなにも起きないどころか普通の杖のような魔力を感じない。オリバンダーの気が触れた記念にこの杖を貰っておこう。

 

家に帰り、買ってきた杖を机の引き出しにしまった後、購入した本を片っ端から読み漁った。闇の魔術は基本的に、ものすごく手間がかかる上に術者にも影響があるものが多い。しかし、それゆえに闇の魔術は強力なのだ。例えば、許されざる呪文と呼ばれる三つの魔法。磔の呪いは外傷なく相手を痛め付けることが出来るため、マグルの拷問のように対象を死なせることはない。次に服従の呪文。これは対象を自分の意のままに操る呪文で、他者から見たら操られているのか自分の意思なのかがわからないという恐ろしい呪文である。そして…死の呪い。これは文字通り、抵抗する間もなく相手を殺す呪文で、これを防ぐ呪文は存在しない。私の父は、この三つの高度な呪文を使って魔法界を恐怖に陥れたといわれている。

 

いろいろと使えそうな闇の魔術を覚える一方で、練習となると難しかった。未成年には匂いの魔法がかけられているため、魔法を学校の外では使えない。でも匂い自体は、魔法使いの家庭においてのみ、制限を緩めてもらえるため大きな理由ではない。匂いの魔法は、未熟な魔法使いがマグルの前で魔法を使わないようにするためのものだから、魔法使いの家庭では関係ない。

つまり、私にとっての大きな理由はお母様とグレイに見つかりそうで練習したり試したり出来ないということ。魔法の理論を自分に叩き込み、知識を蓄えることは出来る。しかし、その知識や理論をいかせる場がなかった。なんとも上手く行かずにはかどらなかった。

 

モヤモヤとした日々の中で、安らぎとなったのは友人との手紙による交流だった。スリザリンの友人はもちろん、あまり会うことが出来なかったハーマイオニーとの文通は楽しかった。彼女のマグルの世界の話を聞くと、いつかそこで生活してみたいなとも思えていた。

 

…ただ、ある時から彼女の手紙の内容が一つに偏りだした。ギルデロイ・ロックハート。彼に関することばかり手紙で送るようになったのだ。ハーマイオニーはどうやら彼の虜になってしまったらしい。彼の偉業を称えるようなことばかり書かれた手紙を見ると、なんとなく、胸の奥がムカつくような感じがした。

ロックハートのどこがすごいんだ?彼はトロールをバカにしたような話を書いていたようだが、トロールに襲われて命の危機に貧していたハーマイオニーを救ったのは私だぞ?彼は著書のなかでは完璧超人なようだが、現実では私の方が確実に優れているはずだ。私は、どんな魔術だって使いこなす自信があるし、今の私はこれまでよりもっと多くの知識を身に付けている。なんでこんな奴の方ばかりをハーマイオニーは見ているんだろう…。

 

だんだんと…よく分からない感情が芽生えてくる…そんな感じがした。

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