金髪関西弁の女死神ですけども   作:楓香

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平子の卍解お披露目までに間に合いませんでした!!!!悔しい!!!
それはそれとして平子かっこよかったですね。
やっぱ逆撫ってカッコイイし凄いオシャレな能力だと思いました。
獄頣鳴鳴篇で温度を逆にした能力お披露目ありますよね?師匠??



16話:深夜の料理ですけど

 

 

市丸ギンは、ふと夜中に目を覚ました。

なにか物音がしたわけでも気配を感じたわけでもない。

ただなんとなしに目が覚めてしまっただけだ。

視線を横へ向け外の様子を確認するも障子の向こうは真っ暗で陽が入ってくる気配はない。

まだ眠っても平気だろうと目を閉じるが、どれだけ待っても眠気は訪れてくれない。

 

「……水」

 

熱の篭った布団をめくり、冷えた外へ体を滑らせる。

室内の温度に一度大きく体が震えて、近くに置いてあった薄い羽織を身につけ戸を開けた。

途端、夜の冷気が着ていた着物をすり抜け市丸の体温を奪う。

一瞬布団の中に戻ろうかと考えたが、戻ってもどうせ眠れやしないのだからと無機質な板張りの廊下へ足を踏み入れた。

辺りは真夜中とあって酷く暗くて静かで、冷たい廊下を歩く自分の足音しか聞こえない。

早く炊事場で水を飲んで部屋に戻ろう。市丸は白い息を吐いて足を進める。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

炊事場の前にまで来ると、そこは市丸の予想に反して部屋は明かりが点き廊下まで照らしていた。

中に誰か居るのかと霊圧を探れば、知った霊圧を感じ戸を開けて中へ入る。

 

「……あ?ギンやん。なんでこんな時間にこんな所来てんねん」

 

思った通り、中には自身の隊長である平子真子がいた。

彼女は調理場に向かって立っており、普段は降ろされている髪を高い位置に元結で1つに束ねている。

服装も自分と同じく、襦袢の上に軽く一枚羽織っただけの軽装をして、見慣れない姿をしていた。

見慣れない、というより、このような姿をした自隊の隊長は初めて見る。

真子が市丸を振り返った反動で、緩く羽織と髪が宙を泳ぐ。

 

「隊長さんこそ、なんでそないな格好でここ居るんです?」

「質問を質問で返すなや。アタシは酒のつまみ作りに来ただけ」

「つまみ?」

 

ほれ、と言葉とともに片手がこちらへ伸ばされる。

伸ばされた手に握られていたのはフライパン。

近づいて見てみるとその中には出来立てなのだろうか、僅かに湯気が立つ少々歪な卵焼きがのってあった。

 

「卵焼き?卵焼きってつまみになるん?」

「なるで。あとちゃんと言うならこれは卵焼きやなくてだし巻き」

「ふぅん……」

「どぉでもよさそうに返事しおって……」

 

そのまま真子は近くにある机へまで歩き、予め出されていた小皿へだし巻きをのせる。

市丸が一連の動作を黙って目で追っていると、乗せられた小皿の近くにもう1つだし巻きが盛られた皿を見つけた。

 

「平子隊長」

「なんよ」

「それ。もう1個あるみたいやけど、それも隊長さんが食べるん?」

「……お前今日は質問してばっかやな」

 

真子の視線が指さされたもう1つのだし巻きへと移る。

あぁ、と1つ声を出した真子は少し俯いて黙り込んだ。

 

「…………いや、まぁ……アタシが食べることになる、けど……」

 

妙に歯切れが悪いな、と思った。

いつもはよく切れる刀のような返事をするのに、何故こんな簡単な疑問に詰まるのか。

 

「……あ~、ギン。お前食うか?」

 

え、という言葉が漏れる。

 

「隊長さん食べへんの?」

「いや、アタシ2個もこんな時間に食べれへんし。折角食べるんなら温かい方がええやろ?」

「やったら作らんかったらよかったのに」

「……やかましわ」

 

指し示した方の皿が市丸の近くへ寄せられる。

いつの間に持っていたのか、箸が小さな音を立てて皿に添えるように置かれた。

 

「僕、食べるなんて言うてへんよ」

「あ?なんや食べへんの?」

「食べへんとも言うてへんよ」

「……お前も一々メンドくさいなぁ……」

 

市丸は置かれた箸を持ち、歪なだし巻きを一口大に割る。

僅かに湯気が立つ小さなだし巻きを箸で持ち上げ、口に入れた。

 

「どうや?なかなかイケるやろ?」

「……たいちょう」

「おう?」

「これ……なんや、へんな味するで」

 

ギンがだし巻きを噛んだ瞬間、なんとも言えない味が舌に乗る。

いや、味というよりは食感に違和感を覚えた。

味自体は決して不味くない。寧ろ塩気のある味付けは市丸の好みに近かった。

近いのだが、普通のだし巻きでは感じることがない、葉野菜のような歯ごたえに嫌でも意識が向いてしまう。

 

「あ?不味いんか?」

「ううん。美味しくないワケじゃないんやけど……これ、なんか入っとらん?」

「なんかぁ?…………あ、スマン。言うの忘れとったけどそれ、ネギ入れてたわ」

 

少し悩むように首を傾げていた真子が今思い出した、というように言葉を告げる。

 

「え?ネギ?」

「そうやでぇ。アレンジアレンジ」

「あれ、んじ?なんやの、それ」

「え?……あのぉ……あれや。これ入れたら美味いやろとか、こういう風にしたらエエんちゃう?みたいにした、料理の事」

 

てか、と真子は話を区切り、新しく用意した箸でネギ入りのだし巻きを一口大に切る。

 

「ネギ入りはお前に合わんかったみたいやな」

 

言葉にしてから一口で真子はだし巻きを口に入れる。

数回口を動かして、すぐに飲み込んでしまったようだ。

 

「合わんというか……想像した味とちゃうのきたら嫌ちゃいません?」

「あー……あれか。しょっぱい味や思ったら甘い味でガッカリしたとかそんなんか」

「そうそれ」

「わからんでもないけど、せやったらお前。ロシアンルーレット系絶対アカンやつやん。オモロないわぁ」

「また隊長さんの変な言葉や。前から思ってたけど、それ意味分からんから止めたほうがええですよ」

「ギン……お前、言葉は人の心を刺すナイフって知ってるか?」

 

ため息を吐いて真子は市丸に背を向ける。

流し台へ体を向け、蛇口をひねる。会話だけが響いていた部屋に水の流れる音が追加される。

真子は話す為の口を閉じ、置かれていた空になったフライパンを洗い始めた。

なんとなしにその後ろ姿を呆と市丸が見ていると、ふと思った事が口から漏れ出る。

 

「隊長さんって、料理するんやね」

 

小さな声だった。

頭に浮かんだ疑問がそのまま滑り落ちてしまったように、独り言として呟かれた言葉だが洗い物をしながらもその声は真子の耳に届いたのだろう。真子が怪訝な顔で振り返る。

 

「なんやねん急に……アタシは結構飯作るで。藤丸とかまつ梨のご飯もよぉけ作ってたしな」

 

出てきた名前に一瞬誰のことかと考えるが、そういえば隊長の子供がそんな名前だったな、と思い出す。

確か双子の男女で今年霊術院に入学すると何かの折に話していたはずだ。

どのような会話の流れでそのような話しになったのかは覚えていない。

だが、お前も言うてる間に背ェ伸びるんやろなぁ、と目を細めて言われた事は何故か覚えていた。

その目の奥に、悲憤が見えたからだろうか。

その悲憤は、一体誰に向けられたものだったのだろう。

 

「そう言うお前はどないやねん」

「……僕?」

 

急に話の焦点が自分へ替わり、僅かに首を傾げる。

 

「お前は料理したことないんか」

「あらへんで。そんな機会もなかったし」

「ほーん……なら今度何か簡単なモンでも作ってみ」

 

真子は顔を市丸から外し、再び流し台へと戻す。

水の流れる音と食器を洗う音が響く中、さきほど向けられていた目は先程まで頭に描いていた悲しみも怒りもなかった。

それに特に何を思うはずもないのだけれど、何故か認識した途端に肩から僅かに力が抜けた。知らずに強張らせていたらしい。

自身の後ろに立つ市丸の様子に気づく様子もなく、真子は言葉を続けた。

 

「誰か食わせたいやつの事考えながらやと一番エエかもな。それか誰か身近な仲いいやつとか」

「人?」

「せやで。なんでも最初のうちは失敗しやすいし、してまうからな。特に初めての事やったら、どないしたらええか要領もわからんから焦って失敗してまう事がある」

 

食器を洗う音を響かせながら、真子の話はまだ続く。

 

「そういう時に一回そん人の事考えるねん。頭に小休止与えたら少しは冷静になるし、旨いもん作ろうと丁寧になるっちゅーわけ。まぁ、焦ってる時にそんな余裕あるか言われたら知らんけどな」

 

蛇口の閉まる音が聞こえたかと思えば、真子が振り返って市丸の方へと近づき水が入った湯呑が目の前に差し出される。

思わず顔を見上げると、飯食ったから喉乾いたやろ、と返される。

そこで市丸は自分が水を飲みに来たことを思い出した。

渡された湯呑を礼を告げて受け取り、忘れていた乾きを癒すために一気に飲み干す。

 

「……じゃあ今度僕作ったら、隊長さんが味見してや」

「あ?そりゃそれぐらいやったらしたるけど……なんやけったいな物作るつもりやないやろな?」

「隊長さんが作るコレみたいなの?」

「おうエエ度胸やなちびっ子三席が」

 

わざわざ食べかけのだし巻きを指差す市丸に青筋を浮かべ拳を握りしめる真子だったが、すぐに彼女の腕から力を抜かれる。

 

「……まぁええわ。それ、食べへんのやったらアタシ朝食べるから置いといて」

 

髪を束ねていた元結を、慣れた手つきで彼女が解く。

途端、空気を纏いながらほろほろと長い髪が落ちていった。

 

「食べれへんのちゃうん?さっき言ってたやん」

「今は無理って事。多少冷たなって味落ちるけど、時間置けば腹空くし食べれるわ」

「やったら僕食べるで」

「なんなんお前、実は腹減ってんか?別にどっちでもエエけど、好きにし」

 

真子は手をつけていないだし巻きとどこから取り出したのか徳利と猪口を盆に載せ、市丸の横を通り過ぎる。

それを追うように市丸は真子の方を見れば、彼女は器用に片手で盆を持って空いた手で戸に手をかけていた。その状態のまま、首だけで真子が振り返る。

見慣れたあの胡散臭い顔で彼女は笑っていた。

 

「まぁ、味見はそのうちに、やな」

 

ほな、また朝に。

ゆっくりと戸が閉ざされる。

――真子が部屋から出る時、彼女が持つ盆に猪口が2つ載っているように見えたのは自分の気のせいだろうか。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

今日は新月。月は見えず、雲も何もない真っ暗闇。

星影だけが夜を照らす屋根の上で一人、真子は座って空を眺めていた。

両手それぞれに猪口と徳利を持ち、片手でなみなみと酒を注いでそのまま一気に飲み干す。

一息ついて目を閉じる彼女の横には、だし巻きと二膳の箸、それと乾いた猪口が載った盆が置いてあった。

 

「食えるやつも供える墓もないんやからしゃーないやろ。……仇に食わせるのはスマンやけど、許してや」

 

――年に一度、白い羽織を脱いだこの時間だけは、ただ友を惜しむ事を許してほしい。

 

盆に置かれたままの猪口にまたなみなみと酒を注ぐ。

真子はそれには手を伸ばさずに代わりに箸へと手を伸ばし、だし巻きを切り分けて口へ運んだ。

 

「うま」

 

こうして夜中に一人で、二人分の酒を横に星を眺めるのも三年目になれば慣れてきていた。

 

 





調べたらフライパンってこの時代なかったんですよね。
でも公式でジャズがない時にジャズ聞いてた男が居るからセーフとします。

どんな真子ちゃんが見たいですか?

  • お労しや……(別名:砂漠の月√)
  • 計画通り(別名:雨の記憶はいらない√)
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