大変お待たせしました。
お久しぶりです。
気づけば前回の投稿からかなりの時間が経過してしまいました。
まだ見てくださる方がいらっしゃるなら、とてもうれしい限りです。
話は変わりますがブリミュ最高でしたね。
平子役の方が本当に平子でした。
生平子です。
「ありがとうございましたー!」
店員の大きな声を背に、暖簾をくぐって一人の女性と一人の少年が店から出てくる。
一人は宮藤まつ梨。彼女は両手で大きな風呂敷を抱え、満足げに笑みを浮かべながら横にいる少年へと話しかけていた。
まつ梨の視線の先に居る少年は満面の笑みを浮かべ、彼女の顔を見上げる。
「君のおかげでいい買い物ができたわ!本当にありがとう!」
「お役に立てたのならなによりです!」
晴れやかに笑い会う姿は仲睦まじい姉弟のようにも見えた。
「よっ、と……」
その二人より遅れて暖簾をくぐって現れたのは、片手に荷物を抱えているまつ梨の兄である宮藤藤丸。
肩を落として後ろを歩く藤丸は、前を歩く二人に比べると顔に疲れが見える。
「まつ梨の買い物って、意外と長いんだよね……」
ぽつりと呟いた兄の独り言に気づいたのかまつ梨が振り返り、なにか言った、と笑顔で問いかけてきた。
なんでもない、と慌てて首を勢いよく振りながら話題を変えようと引きつった笑みで口を開く。
「そ、れにしても、沢山買ったね……」
「長持ちするらしいから毎日少しずつ食べるのよ。それに同期の人たちとか他にも渡す人の分とかあるんだから」
「あぁお土産か」
まつ梨が抱える大きな荷物は一人で食べ切るにはひと月では足りないほどだが、多人数に配るにはちょうどいい量だった。
腕の中に抱えた荷物は山のように高く積まれ、口元まですっぽりと隠してしまっている。
藤丸は、それほどの荷物を包める大きな風呂敷をあらかじめ準備していた手際の良さに関心しつつ、視線を荷物からまつ梨の顔へ移す。
「でもこれだけの量、ちゃんと配る相手居るの?」
「なんだか失礼ね、ちゃんと居るわよ。同期の皆とか、真子さん関係で世話になった人とかいるし」
「あー、三番隊や七番隊……あと、二番隊のあの人とか?」
「そうそう。あと、十二番隊の人たちとかね」
藤丸は指を折りながら、まつ梨と自分の交友関係を挙げていく。
数えきれずに一度折り返し、空を見上げながら他に誰が居ただろう、と考えた。
改めて考えてみても、隊長や副隊長といった錚々たる顔ぶれだ。
そんな雲の上のような人たちに土産を買っている自分。
思わず苦笑いが漏れて、頬を掻いた。
「それと」
そんな藤丸の思考を遮るようにまつ梨が口を開く。
彼女は徐に抱えていた風呂敷を器用に片手で結び目を解き、中から1つの箱を取り出して少年へと差し出した。
反射的に箱を受け取った少年は見下ろし、それがビスケット缶であることに気づいた。
何故突然ビスケット缶を渡されたのか分からず、少年は缶を抱え直してまつ梨を見上げる。
「あ、あの……これは?」
「君のお父上とお母上に。湯呑、割っちゃって本当にごめんね」
その言葉を聞いて少年は大きな目を更に大きくし、慌てたように首を振る。
「そんな、受け取れませんっ!私はそのような事をしていただく為に」
「あー、いいのいいの。私が渡したいだけなんだから」
「ですが……!」
尚も受け取らない少年を見て、まつ梨は少し考えた後明るい声で話す。
「じゃあ、友達への贈り物って事で!」
その言葉に少年は目を大きく見開く。
「友達……ですか?」
「うん。折角知り合えたし、お近づきの印!」
「あぁ、それいいね。僕たち二人からの気持ちだよ」
藤丸が一歩前に出て、まつ梨の横に並んだ。
少年は二人を呆然とした顔で交互に見つめ、何かを言おうとして口を開くも言葉にならず閉じ、やがて視線を地面に落とした。
その様子に兄妹は顔を見合わせる。
互いに問いかける事もなく、ただ少年の答えを静かに待った。
少しばかり冷えた風が、藤丸の袖を揺らす。
やがて彼はゆっくりとまつ梨が差し出すビスケット缶へ手を伸ばす。
「ぇっ……!」
僅かに震える空気と、刺すような冷気が肌を撫でた。
まつ梨と藤丸はそれを同時に感じ取り、勢いよく振り返る。
遠くに揺らぐ霊圧が、彼らの意識を引いた。
それはここからさほど離れていない地点から感じる、複数の虚の霊圧だった。
「あの……?」
突然あらぬ方向を見た二人に、少年の困惑の声がかかる。
互いに目線を合わせ、少年を退避させようと兄妹は無言で頷く。
「ねぇ、君。ここは危ないから」
「お前ら何してんねん」
瞬間、重い空気を裂くような男女の悲鳴が響いた。
同時にまつ梨と藤丸の荷物が落ちる音も。
聞き覚えのある声に二人は勢いよく振り返る。
「ま、まままままこさん!?」
「いっ、いつから居たんですか!?」
平子真子が二人の後ろに立っていた。
少し体を仰け反らせ両耳を塞いでいる格好で、だが。
幾らか買い物をした後なのだろう、耳を塞いだ際に落とした荷物が彼女の足元に散らばっている。
「おう……ついさっきやな……そない叫ばれるとは思うてへんかったわ……」
やっかましいな、と呟きながら手を離し、彼女は体を戻して慌てる二人に向き合う。
「と、というより真子さん。どうして僕達の場所が?」
藤丸が問いかけると、まつ梨も頷く。
「あたし達、連絡とかもしてないですよ?」
「いや霊圧探れば分かるやろ」
「あ」
呆れたように二人を見下ろす真子の目が、やれやれと言わんばかりに細まる。
「てかお前ら、虚出てんの気づいてるんかァ?さっきからこないな所で立ち止まって」
「えっ」
「さっきからって……」
「買い物終わって外出たら丁度お前らも甘味処から出て来とるし、ちょいと様子見とったわ」
「そんなに前から居たなら声かけてくださいよ!?」
「というか全然『ついさっき』じゃないですよね!?」
「声かけたらおもんないやろ」
飄々と真子は笑い、その表情のままスイと視線をずらす。
「で、誰やこの坊」
顎をしゃくるようにして少年を指す。
突然現れ話の矛先が向けられ、少年は反射的に体を竦ませて真子を見上げた。
「ちょっと、色々ありまして……」
まつ梨が苦笑しながら答えるが、話が長くなりそうだと察したのか、興味無さげに真子が肩をすくめる。
「ほーん……まァええわ。ほなさっさと片付けてきィ」
「いや、今行こうとしてたところで……」
「その前にこの子を念のため安全な場所に連れて行こうかと」
「ほんなもんちょっと離れとるし平気やろ。そない心配やったらアタシが見といたるわ」
「え、真子さん行かないんですか?」
「んー……アタシ今ちょいとオフ中」
「休暇なのは僕たちもなんですけど……」
藤丸が頬を掻きながら答えると、真子は手をひらひらと振った。
「ええからさっさと行ってこいや。ほら、グズグズしとったら虚がどっか行ってまうで」
「わ、分かりましたよっ!」
二人は持っていた荷物を下ろし、慌てて懐から義魂丸を取り出して飲み込む。
次の瞬間、勢いよく二人の義骸が仰け反り藤丸とまつ梨の魂魄が飛び出す。
「行くぞ、まつ梨!」
「了解!」
一瞬だけ真子の方を振り返った後、二人は霊圧を辿りながら日が傾き始めた空へと駆け出した。
「僕たちはどうすればいいピャね」
「……とりあえず、落ちてる荷物持ちぃや」
「了解ですみょ!」
「語尾のクセ強いなァ……」
――――――――――――――――――――
少年は呆けたように、それでいて食い入るように空を見上げていた。
いや、正確には空ではなく、彼らを。
少年の目に映る彼ら。
黒い着物を纏い、空を駆ける二人を。
そんな存在を、少年は知っていた。
「……死神」
小さく呟く。
頭の中の声が思わず漏れてしまったような、感情が一切感じられない声だった。
彼の背後で声がする。
「これどこに運んだらいいんだみょ?」
「邪魔ならんように道の端とかにまとめとき」
「じゃあ早速運ぶピャ!えっほえっほ……」
「えっほえっほ……」
「なんなんその掛け声」
間近の声すら、今の彼には聞こえない。
今の少年の脳は、ただ一つの考えだけに費やされていた。
「倒さないと……」
その考えが漏れた瞬間、無意識のうちに手が動いていた。
少年の手元に霊子が集まり、形作られるのは青白く光る弓と矢。
──滅却師の武器、霊子兵装。
彼は機械的な動きで光の矢を番えて空へ向け、照準を合わせる。
矢面が、二人の背中を捉えた──
「止めとき、坊」
不意にかけられた声に、少年の思考は霧散した。
同時に光の矢も、少年の後ろから伸びた手に握りつぶされ霧散する。
咄嗟に後ろを振り向けば、先ほど二人に話しかけていた女性がすぐ後ろに立っていた。
真子と呼ばれていた女性は冷えた目で少年を見下ろしている。
「……ちょっと移動すんで」
そう言うと少年の肩を軽く叩き、人通りの少ない路地裏へと促す。
少年は不思議と、彼女に逆らう事ができなかった。
――――――――――――――――――――
連れてこられたのは昼間でも陽の差さない路地裏だった。
冷気が漂い、傾き始めた陽が空気を一層冷たく感じさせる。
「で? あいつら狙ってどないすんねん」
女が交差するように着物の袖に腕を入れ、言葉少なに静かに問う。
問われた少年は首を僅かに傾げる。
「どう、とは?」
「なんで狙うねんって話や」
少年は一瞬呆けた顔をしたが、すぐに合点がいった様子でああ、と呟き口を開く。
「死神は悪い人なのでしょう? だから、そうする事は当然かと」
「誰が言うた?」
「父様が。死神は私達の敵で、悪い人達だと」
「ふーん。それで?」
「だから、倒さなければなりません」
何を当たり前のことを、と逆に少年は問いかける。
澄み切りすぎた目はいっそガラス玉のようで、兄妹と話している時には多少あった色が抜け落ちているのを見て、思わず舌打ちが漏れた。
急に苛立った様子を見せる女に対して、少年は表情を曇らせる。
「申し訳ありません。私の行動があなたを不快にさせたのならば謝罪いたします」
「ンなもんいらんわ。それに自分、何が原因かもわかってへんやろ」
「そ、れは……はい」
俯いて拳を握り黙り込んだ。
「別にそない考えんでもええよ」
「いえ、私の行動があなたを」
「堅っ苦しい坊やなぁ……」
うんざりしたように少年から目を逸らして、ため息交じりに呟く。
その様子を見て、何かに気づいたように素早く顔を上げ女の顔を見る。
「もしや、あなたも死神なのですか?」
「そうやけど?なに、今更気づいたんかいな」
何でもないように告げる
少年は半ば反射で再び指先に霊子を集め、武器を作ろうとする。
「縛道の一 塞」
しかし、死神が指先をこちらに向けて何かを呟く。
次の瞬間、少年の両腕が見えない力で縛られた。
「っえ!?」
集中が途切れたことで集めた霊子が霧散する。
反射的にもがくが、腕を拘束された状態ではバランスを崩すしかない。
少年はそのまま地面に倒れ伏した。
「こ、れは……っ!?」
「鬼道も知らんのか。これは相手の動きを封じる死神の技、しかも基礎中の基礎や」
拘束を解こうと身悶えるも解ける気配はしない。
倒れ伏したまま顔を上げて死神の顔を見る。
「マジでなんも知らん坊やんけ。なんでこないな……」
死神の手が少年の頭へと伸ばされる。
攻撃されると思い、反射的に強く目を瞑り痛みに耐えようとした。
「……ッ?」
しかし、いつまで経っても痛みは訪れない。
恐る恐る目を開けると、すぐ近くに死神の手のひらがあった。
声も出ずに肩を跳ねさせた少年の額を、小さな衝撃が襲う。
「ぁいた!?」
曲げた中指で勢いよく少年の額を小突いた死神は、屈んで少年を呆れた顔で見下ろす。
「なぁにビビってんねん。頭握り潰されるとでも思ったんか」
呆れた表情のまま死神は少年を見る。
その目に不思議と敵意はない。
だが同時に、優しさもない。
何故そのような目で見られるのか、まとまり切らない思考の中で少年はただ茫然と、死神を見上げる事しか出来なかった。
「ほんま餓鬼やなぁ」
ため息混じりに死神の呟きが落ちる。
「そない怖がってるくせに、戦おうなんてすんなやボケが」
「なっ!わ、私は怖がってなど……!」
「怖ぁて目瞑ってたやろが。しょーもない嘘吐くな」
「それは……っ」
少年は唇を噛み締めてうつむき、抵抗することも忘れて黙り込んだ。
それを見た死神は黙って立ち上がり少年から数歩離れる。
「で、どうすんねん」
静かに指を二本立て、横へ払うようにして腕を動かす。
すると少年を縛る力が消え、拘束が解かれる。
突然の解放に戸惑いながらも、少年は自由になった足でよろめきながら立ち上がった。
「ど、う……とは……」
「こっからどうすんねんって話。出した武器引っ込めて帰ってもええけど、お前はそれでええんか?」
「いい、って……」
目の前の死神が何を言っているのか、何を自分にさせたいのか分からない。
突然現れ説教まがいの事を説いてきた女性。
なぜ、自分はこのような事になっているのだろうか。
うろたえる少年に、死神は尚も言葉を続ける。
「死神は、敵なんやろ?」
その言葉が、少年の胸を鋭く貫いた。
吐き捨てるでも、笑うでもなく、ただ事実をなぞるように。
胸の奥で、忘れかけていた記憶がじわりとにじみ出す。
父の声が蘇る。
自分に技術を教え、死神とは何者であるかを説いた声が。
『我ら滅却師は死神によって滅ぼされた』
『生き残った者も僅か。このような監視や制約など受け――』
『忘れるな。死神は、敵だ』
『敵だ』
父から言われ続けてきた言葉が、少年の思考を塗りつぶした。
「……ふーん」
低く呟かれた死神の声。
再び作られた霊子の弓。
今度こそ形を成したそれは正確に狙いを定め、矢は放たれた。
——死神の右肩へ。
「ぁ……」
驚愕の声を上げたのは、少年だった。
「っぁ、な、ぜ……」
矢の速度は決して速くなかった。
避けようと思えば簡単に避けられただろう。
だが死神は避けようとしなかった。
ただ、まっすぐ受けた。
「人撃っといて自分で驚いてるやんけ」
平然とした声が暗い路地裏に響く。
肩に突き刺さった矢を見ることもなく、死神は片手でそれを掴み、力任せに砕いた。
貫かれ塞ぐものが無くなった肩から、血が服に滲んでいく。
「お前、生き物に向かって撃ったこと無いやろ」
死神の言葉に、少年は見開いた目で答えた。
少年の動きは、あまりにも正確すぎた。
感情の揺らぎも、迷いもない。
多少戦闘経験を積んだ者であれば、自身が攻撃した後に敵の動きを考えすぐにでも動けるようにする筈だ。
だが、少年にはその動きがなかった。
ただ矢を撃つこと自体を目的とした動き。
それは——戦闘経験のない者の動きだった。
「人攻撃するってな、それだけで責任生まれんねん。命奪う力を持ってるってそういうことや。せやのにお前は、それを“教えられたから”で済まそうとした。自分の頭置き去りにしてな」
少年は言葉を失ったまま、ただ黙っている。
「今日お前が見た死神は、お前にとっての敵やったんか?」
気遣ってくれたあの人たち。
友達だと言ってくれた、あの人たち。
「友達……」
悪い人たちではない、そう思う。
だが彼らは死神だ。
死神は敵だ。
父はそう言った。
——本当に?
頭の中で父の言葉と今日の出来事が交互に駆け巡る。
父の言葉と、今日交わした笑顔や言葉。
『なら僕も一緒にご両親のところに行く。それで一緒に謝ろう』
『死神と決して馴れあってはならぬ』
『じゃあ、友達への贈り物って事で!』
『やつらは我ら滅却師を滅ぼした、仇だ』
『僕たち二人からの気持ちだよ』
どちらが正しい?
どちらが間違っている?
混乱に支配された少年の目の前で、死神は肩をすくめた。
「敵か味方か。それくらいは自分で判断出来るようになっとけ」
「敵か、味方……」
「別に出来んくてもアタシには関係ないけどな。……アイツらが世話になったみたいやからって、色々いらん事言うてもうたわ」
乱雑に片手で後頭部を掻いて、吐き捨てるように女は言う。
顔を顰めて少年に背を向け、路地裏を出ようと歩き出した。
「……あ、ちなみにアタシを撃ったんは正解やで」
大通りに出る付近で立ち止まり、立ち尽くす少年へ振り返る。
胡散臭い笑顔で、死神は告げた。
「何せ、たくさんの滅却師を倒した
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「あ、真子さん!さっきの場所に居ないから探しましたよ!あの子も居なくなってるか、ら……!?」
「ちょっとこの怪我どうしたんですか!?なんで血が!」
「あー……気にすんな。かすり傷かすり傷」
「どこがかすり傷ですか!!何で怪我なんて、他にも虚が出たんですか!?」
「ただの虚ぐらいにアタシがやられるかい」
「それは分かってますけど!じゃあ何で……!」
「あーもう、わーった分かった!ちゃんと家帰って治療するから一回落ち着け!」
「だったら早く帰りますよ!」
「ったーッ!やからって怪我してる方の腕引っ張るか!?ちょ、いてっ」
「やっぱり痛いんじゃないですか!」
「傷口刺激されたらそりゃ痛むやろがッ!」
ここまで読んでくださりありがとうございます。
それと、設置していたアンケートに投票してくださった方も、本当にありがとうございます。
凄くたくさんの方に投票していただいたようで、私はとても驚いております。
予定では次回か次々回で過去篇が終了し、アンケート結果を反映する予定ですので、まだ暫くの間お待ちください。
次回はもう少し早めに更新したいと考えております。
ご覧いただき、ありがとうございました。
どんな真子ちゃんが見たいですか?
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お労しや……(別名:砂漠の月√)
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計画通り(別名:雨の記憶はいらない√)