金髪関西弁の女死神ですけども   作:楓香

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成り代わり。しかも女体化という特殊すぎる設定なので批判とかあるだろうなと思ってたのに意外と受け入れられていることに驚いてます。


2話:院生になりましたけども

 

「なんや、アタシの隣はお前か?」

「アタシは平子、平子真子(マコ)や。よろしゅうな」

 

 

 

猿柿ひよ里にとって平子真子の印象は胡散臭いガキ、だった。

まっすぐに伸ばした肩より長い金色のおかっぱ髪。いつも眠そうな半開きで淡褐色の三白眼。それと飄々とした態度に自分と同じ特徴的な口調。平子真子を構成するのは大きく分けてこの4点だろうとひよ里は思っている。

平子真子とは真央霊術院に同期で入学し隣席になった縁で話すことがあり、いい奴だろうとは関わるうちに理解はできるが、纏う空気がいかにせよ胡散臭い。そしてひよ里はその胡散臭い真子の態度が気に食わなかった。

 

「なんやねん胡散臭いって。本人目の前にしてそれ言うか?」

「やかましいねん!実際マコが怪しンやからしゃーないやろ!」

 

目の前に突き出された指先を軽く手で叩き落として、胡散臭いと言われた少女、平子真子が片目を細め不満げにひよ里を見る。

普段は自分の方が頭1つは高い背も、真子が座っているせいでひよ里の顔を見るには見上げないといけない。普段はなんとも思わないが突然に罵倒され、喧嘩を売られた真子にとって相手を見上げるというのは少しばかり腹が立つ。

二人の近くにいたクラスメイトたちは苦笑をもらす。全員そろって否定もしないのは、少なからず皆思っている事だからだろう。

しかし、実際に真子がクラスメイトを傷つけたり姦計をめぐらせた事は一度もない。寧ろなんだかんだと言って鬼道の練習に付き合ってくれたり、剣術の助言をしてくれたりと世話になった者がクラスには多い。だが口の悪さのせいか、浮かべる表情のせいか、受ける印象は皆同じだった。

 

「んー、でもひよ里ちゃんが怪しいって言うのも分かるかな」

「え、マジで言うてんの?アタシそんなにか?」

「真子さん、ちょっと笑ってみてよ」

「……まぁ、ええけど…………どや?」

「うーん胡散臭い」

「怪しさ百点満点」

「そこまでボロクソ言うか!?」

「マコは元から胡散臭い顔しとるやろ」

「なんやとひよ里ボケコラァ!!」

 

ため息をついて、気だるげな表情でクラスメイトを見る。

 

「てか、なんでアタシそんな煙たがられなアカンねん。悪いことなんもしてへんやろ」

「いや、平子さんがいい人なのはわかってるんだけど、何か雰囲気というか……ちょっと近づきにくい感じがしてね?」

「高嶺の花ってやつか」

「それはないわね」

 

キメ顔で話した真子をクラスメイトは一蹴する。胡散臭いだのなんだの悪態はつくが、クラスの大体の人間は真子を嫌ってはいなかった。

中でも一番打ち解けていると言えるのは、やはり隣席の猿柿ひよ里だろう。

背も近く、似た口調で話す真子との会話は、ひよ里や周りにとって打てば響くような気持ちよさがあった。

同じ教卓で学んで半年となるが、すでに二人の会話はクラスの名物となりつつある。

そんな仲の彼女から突然、胡散臭いと言われれば真子も反論の1つもしたくなるというものだ。

それを告げた少女は先ほどと変わらない表情で真子の方を見ていた。

 

ホンマ、なんやねんコイツ……

 

平子真子と話しているとふとした時に線を感じるのだ。ここから先へは立ち入るな、とでも言わんばかりの境界線を。

生きているのならだれにでもそれくらいはあるだろう。ひよ里にだって触れてほしくない部分だって持っている。

理解はしている。なのに、どうしてか真子が距離を置こうとすると酷く癇に障る。

自分の事なのに何故こんなにも歯がゆく思うのか分からない。これが、ひよ里にはどうしようもなく気持ち悪かった。

 

「アンタ実際のところ、何考えてんねん」

「この世界の未来」

「……は?」

 

一拍の間。

 

「しょーもなッ!」

 

勢いよく頭を叩く音が教室に響く。何事かと離れていた生徒も自然と音のする方へ視線を向けた。

その視線の先には痛みからか涙目になりつつ、頭を押さえてひよ里を睨む真子の姿があった。

 

「なにすんねんひよ里ィ!!」

「人が折角真面目に聞いたってんのに、何ふざけたことぬかしてんねん!!」

「ふざけてへんわ!大真面目や!!」

「やったら余計にタチ悪いわ!」

 

互いに煽り煽られ、時々手が出ながらも可愛らしい女の子二人の取っ組み合いに近くに居た生徒や、騒ぎが聞こえてきた離れた生徒の誰も慌てた様子はない。

またやってるよあの二人。仲がいいんだね。次の講義までには終わるといいなぁ。

周囲からの生暖かい視線にも気づかない真子とひよ里。授業のために扉を開けた担任に、ひよ里の突進を受けて吹っ飛んだ真子が当たるまで二人の取っ組み合いは続くのだった。

 

あぁ、今日も平和だなぁ。

 

――――――――――――――――――――

 

「ったー……なんやねんひよ里のやつ。急に胡散臭いだの言いよって……」

 

誰もが寝静まった半夜、アタシは一人で修練場に居た。

片手で支給された斬魄刀の元となる刀、浅打を持ってクルクルと回転させながらつぶやく。

 

「まだぶつかったとこ痛いんやけど、なんやねんアイツ。ちょっと本気やったやろあれ」

 

こうやって一人でぶつぶつ言ってると頭のおかしい人に見えるかもしれないが、声に出しているのは一応意味があってのことだ。

 

「なぁ、どう思うよ。アタシの斬魄刀や」

 

回転させていた手を止めて顔の高さまで持ち上げる。うんともすんとも言わないがこうして話しかける事にこそ意味があるはず。

全ての死神はこの浅打と寝食を共にし、練磨を重ねることで魂の精髄を刀に写し取ることによって"己の斬魄刀"が創り上げられる。なら話かけたりする方がええやろ。意志がまだない言うてもきっと意味あるって。ほら、あれや。母ちゃんが子宮の中に居る赤ちゃんへ話しかけるみたいな。そん時の記憶あるいう人も居るし、ええねんこれで。

 

「まぁええわ。今夜も訓練付き合ってや。よろしゅうな」

 

そして今夜もアタシは朝朗(あさぼらけ)まで刀を振り続けた。

 

 

……流石に明日は普通に寝よ。

 

 

 




因みにひよ里より平子の方が年齢は上の設定です
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