めちゃ長なりましたわ
作者が方言使う人間なので標準語喋らせてる筈なのに気づいたら方言混ざることが一番の悩みです
現世の拓けた森の中。そこに一つの門が浮かんだ。
開いた門の中から出てきたのは何れも若い数人の死神たち。
一番最初に出てきた死神が後ろを振り返り、穿界門が閉じたことを確認すると全員の顔を見渡した。
「よし、全員そろっているな!既に把握しているとは思うが、今回我々の任務は現世での見回り調査だ!」
引率者らしき男が一帯へと響く大声で語り始める。
「霊術院と違い普通の虚も出るだろうが、ここは他の隊の担当地区と比べて虚の発生率は低い。そう気を張らず、しかし油断はしないように!」
男は言葉を締めくくると新入隊員の中から指名した二名へ付いてくるよう指示し、他の隊員には待機を告げ見回りへと赴いた。
「いやー、まさか入隊早々現世へ行くことになるとはな!」
一人の死神が同意を求めるように周りへ口を開く。
声に反応して自然と視線は一人の死神の元へ集まった。
「虚も出ないらしいし、ちょっと珍しい経験させてもらって運がいい……的な感じだな」
「おい、気を抜くな。席官殿が仰っていたのは発生率が低いという事だけだ。完全に出ないとは言っておられない」
諫める口調で一人の男が口を挟む。
口を挟まれた死神が唇を尖らし不満を零した。
「へいへい。すみませんでした。つっても虚とかのさ、何か異常があったらすぐに応援とか来るんだろ?どっちにしたって安心じゃね」
「それが油断だと言っているのだ。……まぁ、だが今回は席官殿もいらっしゃるから問題はないと思うが」
「だろ?だけどあの人十五席なんだっけ。なんか中途半端じゃね?」
「なんだと貴様!上官殿を侮辱するのか! !」
「いや暑苦しいんだけど。めんどくせぇなお前」
呆れた顔でため息を吐いて一歩距離をとる。
そこで、少し離れた場所に立つ一人の死神が目に入った。
「なぁ、平子はどう思うよ?」
「はぁ?」
辺りの森を見ていた真子はいきなり話の矛先を向けられ億劫そうに返事を返す。
「どう、ってなんやねん」
「いや話聞いてねぇの?今回の任務だよ。虚も出なさそうだし現世任務にしては運がいいなぁって」
「あぁそういう……別にそんなテンション上げる事でもないやろ。普通や普通。まぁ変にガチガチになるよりは、お前みたいに楽観してる方がええかもしれんけどな」
「てんしょ……なんて?それどういう意味だ?」
漫才を思わせる真子たちの会話に静観していた死神たちは思わず失笑を漏らす。
そんなつもりはなかった筈だが、自然と空気が緩み皆の緊張が緩み始めた。
「……あれが死神、ですか」
「あぁ、そうだ」
パキン、と。どこかで聞こえた気がした。
瞬間、幾つもの霊圧が湧き上がった。だが隊員たちは霊圧を知覚するより早くその異常を視認した。
突然自分たちの前を何かが高速で通り過ぎる。一拍遅れて轟音が鳴り響き、辺りに強風が巻き起こた。誰も反応できず立ち尽くす死神たち。
その内の一人がいち早く正気に戻り、通り抜けた方へ視線を向けた。
「は、班長……!?」
見回りに出たはずの席官が、ひしゃげた木を背に崩れ落ちている。
身体には本人のものであろう夥しい量の血液が付着し、一目で致命傷だと判別できた。
それをその場にいる死神全員が理解すると今度は連続して二度、何かが高速で通り過ぎる。
先ほど席官について行った新入隊員の二人ともが同じように、いや、より酷い欠損状態で木に叩きつけられ倒れ伏していた。
誰かが上擦った短い悲鳴を上げる。
だが、そこで異変は収まらない。
彼らの前に現れたのは軽く十を超える虚の群れ。中には巨大な虚である巨大虚が数体紛れているのが確認できる。
先程感じた霊圧の正体は虚だったのだ。自分たちの上官は、これらにやられたのか。
見たことがないほどの大量の虚を見た死神たちは刀を抜くことも忘れ、後退する者、腰を抜かし地面へ倒れる者と分かれた。
そして一番近い場所にいた虚が、腰を抜かし動けないでいる死神へと飛び掛かる。
「破道の三十一 『赤火砲』!」
突然、襲われかけた死神の前で虚の顔が爆ぜて倒れた。聞こえてきたのはさっきまで聞いていた女の声だ。
「ひ、ひらこ……ッ」
虚と死神たちの間に、金の髪を揺らして真子が現れる。
真子は片手を前に虚へと構えながら小声で何かを呟いている。
その間に先ほどの真子の攻撃で倒れた虚が立ち上がった。
虚は目の前に立つ真子を見ると、空へ咆哮をあげ再び地面を蹴って飛び掛かる。
「破道の三十二 『黄火閃』ッッ! !」
「破道の三十三 『蒼火墜』ッ!」
連続で鬼道を同じ個所に浴びせられた虚は動きを完全に停止させ、爆発の煙に包まれたまま倒れ消滅していく。
短時間で仲間を倒されたことへ怯えたのか警戒したのか、周りにいた虚は僅かに距離をとった。
「ぁ、……わ、わりぃ、たすか」
「アホか! !なに腰抜かしとんじゃワレッ! !」
助けられた死神が真子へ礼を言おうとするが、真子の怒鳴り声によって遮られる。
真子は目の前の虚に意識を向けたまま背後にいる同期へと怒鳴り始めた。
「お前らなにしてんねん!戦うか逃げるかどっちかにしろや!なにビビってんねん死にたいんか!?」
「バ、バカを言うな!我ら護廷十三隊の死神だぞ、たかが虚如きに逃亡などッ」
「やったら刀抜け言うてんの!敵に会って咄嗟に武器持てないやつが一丁前な口利くな!」
いいからはよ逃げや、と真子が息巻くと辛うじて混乱状態から脱した死神たちが、まだ動けない者を助けながらこの場から退き始める。
逃がすまいと虚が腕を振り上げながら死神たちへ迫った。
真子は『這縄』でその虚の腕を捉える。だが虚は腕を引き這縄を掴む真子を引き寄せた。
一瞬驚いた顔をした真子だが、空中で体制を立て直し引き寄せられる勢いのまま刀で胴体を貫いた。
地面に下りて上がり始めた息を整える。
チラリと後ろを振り向けば大体の死神は逃げられたようだ。
だが一人だけ、遠目でもわかるほど震えながら刀を抜いて立っている者が居た。
さきほど真子が助けた死神だ。
「アホかッ! !お前も早よ行け言うてんねん!ここで全滅する気かッ!?」
「ッ、だけどよ……! !」
「そない震えながら刀持つ奴居るか!?お前邪魔やから早よ応援呼び行け言うてんのッ! !」
死神は歯を食いしばり、悪い、と一言残すと瞬歩を使いこの場から脱した。
ようやく全員が逃げたことを確認した真子は地面を強く蹴り、虚たちから後退する形で大きく距離をとる。
ふう、と息をつくと構えていた刀を目の前に水平に掲げ、呼びかけた。
先ほどからこちらをせせら笑う、己の斬魄刀へと。
「さっきから喧しいねんて。なんやの、そないにアタシが焦ってるん見るの楽しいか?」
ええ。とても愉快ですわ。やっぱり貴女はオモシロいですわね。
「お前こないだはアタシのことオモロない言うてたやろがい」
忘れましたわ、そんな事。
「都合のいいやっちゃ」
警戒してか、虚は攻撃をせず真子との距離を保つ。
奇妙なほどにどちらもが動かない時間がしばし流れた。
「……で?そんな都合のいいアタシの斬魄刀サンや。そろそろお前の名前教えてくれへん?」
あら?随分あっさりと聞きますのね。
「なんやの。どんな聞き方すると思ったんや。ええから教えてや。そうじゃないとこの状況ちょいとキツイねんて」
ふふふ。確かにそうですわね。多勢に無勢。
「めんどくさい言い回しすなや」
ですが、嫌ですわ。教えたくありません。
「……ハァ!?なんでここで断るねん!?普通ここでカッコよく始解する場面やろ!?」
知りませんわよそんなこと。とにかく今は教えたくありませんの。
「いやホンマ待って!?じゃあこっちから言うぞお前の名前!アタシお前の名前知ってるんやからな!?」
……その名前が間違っていたらどういたしますの?
「……は?」
真子の呼んだ名前が間違っていたら、
「……は?えちょ、そんなんアリか!?」
アリ、ですわ。それでよければ、ほら。真子が思う私の名を呼んでくださいましな。
「そんなん言われて呼ぶわけないやろアホか!?」
「あぁあ!もう! !なっんも上手いこと行かへん! !」
背後から伸びてきた鉤爪を、真子は右足を軸にして回転し紙一重で避ける。
その勢いのまま舞のように刀を水平にして、伸びてきた腕を二度三度と斬りつけた。
痛みに怯んだ虚の顔へ飛んだ真子が、脳天へと刀を突き刺す。
「ホンマに、ふざけんなや……あとこれッ何匹居ると、思ってんの……!?」
地面に下りた真子が肩で息を整えながら周りを見ると、残り数匹となった虚が唸りながらこちらを見ていた。
数は減ったとはいえ、真子の体力の消耗が著しい。
虚は完全に真子を敵として認識しており、逃げるのすら容易ではないだろう。
応援は呼ばれた筈だがいつ頃に到着するのかわからない。
このままではジリ貧だ。さてどう切り抜けるか。
真子が次の手を考えるため思考した時、背後から霊圧が上がるのを感じた。
咄嗟に振り返れば閉じていく黒腔と、その前に立つ新たな虚の姿。
不意に現れた虚へと反射的に攻撃の構えをとるが、先ほどまで警戒していた虚たちが好機だと踏み一斉に真子へ攻撃を迫る。
迎撃しようにも片方を倒している内に確実に致命傷を負うのは明白だ。前と後ろを挟まれてしまい逃げ場がない。
「――これは、ヤバいなァ」
アァ 本当に カワイイ子ですわ 真子
私がいないと なァんにもできない ずっと ずぅっと守ってあげますわ
衝撃により轟音が響く。その衝撃でわずかに地面が揺れた。
その中心部にいた真子はなすすべなく虚の攻撃が直撃した。
――いや、したと虚は思った。なにせ、虚たちの視界ではそれが正しかったのだから。
虚たちの一斉攻撃により舞い上がった土埃が晴れていく。
そこには、なにもなかった。
そして虚たちは自らの視界を
自らの後ろに攻撃していたモノ、何もない上空を攻撃していたモノと様々居るが、全て一様に狙っていた場所とは見当はずれな場所へ攻撃していた。
「アホ言わんといて。アタシは子供ちゃうねん。そんな過保護な事せんでええわ」
声がする方を虚が見る。
先ほどまで地に居たはずの死神が宙へ逆さまに立っていた。
死神が片手に持つのは何の変哲もない斬魄刀――ではなかった。
柄の先に円状の持ち手がつき、刀身にいくつか小さな穴が開いた奇妙な形をした斬魄刀へと変化していた。
「焦らしたりして、ホンマ性格悪いわぁ……結局こうなるなら、はよ教えてもよかったやろ」
なぁ、『逆撫』
持ち手部分に手をかけた真子が振り子のように、逆撫と呼んだ自身の斬魄刀を回す。
そして――――
「はぁー!疲れた!」
キン、と高い音を響かせ刀がしまわれる。
真子は周囲を見渡し大袈裟にため息を吐き、呟いた。
「いやマジで疲れたわ。この虚の数、どないなってんねんよ」
真子が敵対していた虚は全てが事切れ、所々が既に霊子へと還っていた。
一様に刀傷や火傷らしき跡がつき、一方的にやられたものだと推測できる。
対する真子は特に目立った傷などはない。強いて言えば金の髪や服が土埃などで汚れてしまっているくらいだ。
軽く汚れを叩き落としながら真子は今回の異常について考える。
今回の、異常とも言える虚の大量出現。
この間読んだ書物にも年々虚の数は減少していると記載されていたし、実際この地の霊的密度は高いとは言えない。
なのに何故、的確に自分たち死神が居る場所に虚が現れたのか。
「……アカン。今ある情報だけじゃなんも分からん」
ひとまず帰ろ。と一歩足を踏み出し、真子は静かになった空間でその霊圧に気づいた。
とても先ほどの戦闘中には気づきそうもないほど微小な霊圧だ。いや、残滓といった方が正しいかもしれない。
真子はそちらへ近づき地面にしゃがみ込む。そしてそこに落ちていた霊圧の残滓を摘み上げる。
それは欠片だった。小さく砕かれ、原型が分からないほどの白い欠片。
だが、真子はその欠片を知っていた。元の形と使用方法、何のために使われるのかも知っている。
そして、この撒き餌を使う一族も。
『ここ、うちの隊が担当してる地区での虚の出現数の記述なんですけど、なんでこない数減ってるんですか?』
『しかもこっちの記述では浄化じゃなくて消滅で要監査って、これ、明らかに死神の仕業ちゃいますよね?』
「滅却師……」