平子のテディベア可愛くないですか?
予約しちゃいましたけど、どこに置こうか今から悩む
今より八百年ほど前、死神と滅却師の間には戦争ともいえる争いが起こった。
死神の本拠地である瀞霊廷へ侵攻した滅却師を迎え撃つ形での争いだ。
双方に多大なる犠牲を払いながらも、当時の隊長格たちの獅子奮迅の働きにより敵の大将を払いのけ死神側の勝利で争いは幕を閉じる。
それから数百年の間、双方に小さな争いはあれど大規模な争いは起こらなかった。
――今のこの時までは。
警報の音が甲高く鳴り響く。
瀞霊廷全土に響くその音を聞いた死神たちは、速やかに隊舎へ帰隊していく。
一から十三までの隊舎の中でそれぞれの隊長は集まった隊員たちの前で、多少の差異はあれど同じ意味の言葉を口にする。
「警報が鳴った。即ち、これまで幾度となく行われた対話は決裂し、もはやこれ以上の歩み寄りは不可能と判断されたという事を意味する」
「これより、我々死神は滅却師掃討作戦を決行する」
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「一から五班は何かあった時の為に瀞霊廷で待機。六班から七班は隊長と同じとこ。他はアタシと同じ地点で待機や」
五番隊の隊舎。
そこには長い金の髪を一つに結い上げ、忙しなさそうに部下に指示を出す真子の姿があった。
その顔からは普段の飄々とした雰囲気は見られない、真剣な顔つきだ。
「平子副隊長」
そんな彼女に一人の男性死神が声をかける。
「あ?なに?」
「いや、さっきから副隊長の後ろで話したそうにしている子が居るから」
真子が後ろを振り返ると、そこには落ち着かない様子の女性死神が立っていた。
彼女は両手を合わせて手慰みとして緩く動かしていたが、真子が自らの方へ振り返ったのに気づくと緩く口を開く。
「ぁ、
吃りながら話す彼女の少し後ろでは数人の隊士が怯えた様子で真子を見ている。
そちらへ視線を移した真子は少し眉を寄せ暫し沈黙する。が、すぐに女性死神の方へと視線を戻した。
「……ええで。やけどすぐ戻ってきいや。もうすぐ出立やねんから遅れたらアカンで」
「あり、ありがとう……」
礼を告げた女性死神は足早に怯える隊士たちの下へ駆け寄っていった。
「はぁ、よくやるな新人への気遣いなんて。俺は自分の事で手一杯だよ」
「嘘つけ。そないに参った顔してへんやん」
「いやいやホントだって」
軽薄そうに笑いながら彼は女性死神が去っていった方を見ている。
その間にも行き交う死神たちの足音は止まない。
遠くでは誰かの大声も聞こえ、否が応でも今が緊急事態という事を意識させられる。
数十年前までは平和だったのに、と行き交う誰かが心の中で呟いた。
「てかお前はいつまでそこ居んねん。早よ集合場所行けって」
「いや俺は平子と一緒の斑だし……あヤベ。平子副隊長と一緒ですしィ」
「キッショイ声出すなや……それにとってつけた敬語はいらん。逆にウザい」
「ウザいは酷くね?いや、まぁだから一緒に行こうって思って。ほら、お疲れの副隊長に献身的に寄りそう俺って感じで、女性人気出そうじゃん?」
「……お前、そないな事言うて集合場所忘れたとかちゃうやろな」
「……」
「図星かい」
何も言わなくなった死神へ一言だけ吐いて、真子は副隊長の仕事を果たすため彼の望み通り集合場所へと歩き出した。
――――――――――――――――――――
「全員居るな?」
五番隊の訓練場で真子は大勢の隊士の前に一人で立ち、全員に聞こえるような声で話し始める。
「これからアタシたちは現世へ向かう。知ってると思うけど、担当地区に住んでる奴らを殲滅するのがアタシたちの任務や。なにより今回の対象は虚やのうて、人間。……それもただの人間ちゃう、滅却師やで。気ィ引き締めろ」
そこで一息区切り、再び息を吸い込んで声を出した。
「そんで、ここに居る奴は現世に到着次第アタシと同じ地点で待機って話やけど、すまんな。アレ嘘や」
途端に混乱する隊士たちのざわめき声が聞こえだす。
作戦開始前にいきなりの計画変更だ。隊士たちが混乱するのも無理はないだろう。
だが真子はそのざわめきも予想していたようで、そのまま言葉を続けた。
「はいはい静かにせんかい、まだアタシの話続いとるで。……いや嘘とはちょいとちゃうな。もっと詳しく言うならお前らは現世に出たら全員持ち場離れて隊長のとこに合流せい」
真っ直ぐに隊士たちを見る目には反論するのは許さない、という力強さがあった。
反論の声はなく、ただ真子の声のみが訓練場へ響き渡る。
「後で責任はアタシが全部とったるから、隊長になんて言われても戻ってきたらアカンで」
そして最後に真子は先ほどより声を鋭くさせ、静かに告げた。
「死にたくなかったらな」
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時は数日遡り、掃討作戦についての隊首会が開かれていた頃、真子は他の副隊長たちと一室に待機していた。
真子は一人、置かれている椅子に座り呆と格子窓から空を見上げる。
「おい真子」
そんな真子に声が掛けられる。
ゆるりと頭を動かした視線の先には、七番隊副隊長の愛川羅武と九番隊副隊長の六車拳西が立っていた。
「なん?どないした?」
「どうしたじゃねぇよ。なに呆けてんだお前」
「いやボーっとしてたってええやん。今は待機状態なんやし、ゆっくりさせてや」
顔を顰めて再び空へと顔を戻す。
特に窓の向こうに何があるわけでもない。だが真子は二人から逃げるように視線を逸らす。
「お前、知ってたんじゃねぇのか。今回の滅却師討伐の件」
だが、その言葉で視線を二人へ移した。
「なんで、そう思うん?」
「落ち込んでるじゃねぇか」
「……落ち込んでるだけでそう思うのはちょっと強引ちゃうの?」
「沈んでるのは否定しねぇんだな」
拳西の言葉に無言で二人を睨め付ける。
図らずも肯定してしまい大きくため息を吐いて、真子は仕方ないと自身が憂鬱な理由を語る。
「……アタシのせいなんかなぁって、ちょっと思ってしもうただけやで」
「それって今回の件についてか?」
「せやな」
「はぁ?なんでそうなるんだよ、お前なにかしたのか」
「……昔、現世で虚が大量に出た時あったやろ?」
「お前が席官になったあれか」
そうそうあれあれ、と真子は羅武の言葉を肯定してから続きを話す。
「あン時な、アタシ小さな欠片見つけて報告したんよ。最近になって結果が出たみたいでな。その欠片が虚を誘き寄せる、撒餌の役割を持つものやったんやと」
一区切りつけ、少し言いづらそうに眉を寄せてから残りを紡ぐ。
「……それに滅却師の霊圧が混ざってたんやって」
二人は目を見開き真子の顔を見やり思考を巡らせる。
虚が出現した現場にあった撒き餌が、滅却師の霊圧を含んでいた。
それはつまり、あの虚の出現が滅却師によるものだったと証明していた。
件の騒動で死神側には決して少なくない被害者がでており、滅却師が死神へと権謀をめぐらせたとなると元々あった双方の亀裂が更に深く刻まれるのは優に想像できる。
そして、今回滅却師が関わっていると判明した折に滅却師の掃討要請。
公にされている殲滅の理由は、現世と尸魂界との魂魄の調整の為と伝えられているが、ここまで時期が合うとなると――
「まぁ、ここまで言うてなんやけど別に落ち込んでる訳ちゃうんよ。ただ、ちょっと考えただけやし気にしんといてな」
片手を軽く上げて普段の調子で話す真子の声に二人は思考を中断された。
考え事をしていたため逸れた視線を戻すと、ケラケラと見慣れた顔で笑っている。
「どっちにしても、滅却師は倒さなアカンし。タイミングの問題やったんやろうな」
「タイミ……?なんだそりゃ」
「時期って事や」
羅武の疑問の声に答えて、瞳に小さな憂鬱な色を乗せて誰にも聞こえないように呟いた。
「知ってた事やけど、滅却師倒す当事者になるとか、気が重いわ」