実写版ONE PIECE ~ポリコレを添えて~ 作:チェシャ猫もどき
どうしてこんな作品を思い付いてしまったのか自分でもわかりませんが、笑ってもらえたら幸いです
世界映画の中心地、ハリウッド。
世界中から才能ある俳優に監督、物語に息を吹き込む脚本家たちに物語に彩りを添えるCGの技術者たち。
他にも数え切れないくらいの一流のスタッフ達が集まり今も昔も数多くの名作たちが生み出されている。
そして今日、そのハリウッドにある巨大なビルの一室で名作の誕生に私は立ち会うのだ!
ハリウッドを一望出来るビルの最上階。
机にソファーだけでなく、すべての物が最高級品で満たされたこの部屋。
しかし、ハリウッドの景色も素晴らしいはずの香りの紅茶を楽しむ余裕など今の私には一ミリも無い。
体の震えは止まらず緊張で手足の末端は血が通っていないのかとても冷たい。
それにも関わらず、心臓が破裂するくらい鳴り響いていて体の中心がとても熱い。
夢なのではないか?
もしかしたらテレビやYouTubeのドッキリの類いじゃないのか?
何度も疑い、何度も確認して、確認出来てもそれすら信じられずまた確認するの繰り返し。
緊張とプレッシャーで睡眠はロクに取れず、食事も味はほとんど感じないから栄養補給のためだけにするという具合だ。
そんな日が何日も続いたが、気分は最高だ!
だってそうだろう!
実写版ONE PIECEの監督に選ばれたのだから!!
ONE PIECE
累計発行部数は全世界で五億部を越え、アニメは全世界五十ヶ国を越える国と地域で放映されている日本の国民的、いや、世界的超人気漫画。
漫画と映画、ジャンルは違えど同じ創作物。
映画監督として創造のインスピレーションをもらったり、1人の人間としても迷った時やそうじゃない時も何度も救われてきた。
冒険に胸を踊らせ。
ギャグで笑い。
理不尽に怒り。
悲劇に涙して。
戦いに興奮し。
勝利に喜んだ。
もはや私の人生の一部と言っても過言じゃないほどに大切な物語。
友人やスタッフたちと実写化したら自分が監督をするなんて冗談混じりに話したこともあったが、まさかそれが本当になるなんて!!
もう何度目かもわからない不安と興奮を繰り返していると、部屋のドアが開き1人の男性が入って来る。
着ているスーツに腕に着けた腕時計、他にも体に身に付けている小物、そして右手に持ったアタッシュケース。
すべてが最高級品であるにも関わらずそれらを見事に着こなしている彼は、スマートな動作で私の対面に座る。
「単刀直入にいきます、これがONE PIECEの資料です」
アタッシュケースが開かれ、中から冊子が現れる。
「……これが」
ONE PIECEと書かれた冊子。
夢にまで見た実写版ONE PIECEの資料。
震える手をのばし、光輝いて見えるそれに触れる。
ずっと不可能だと、出来るわけがないと思っていた。
あのド迫力のバトルを映像化することなんて出来るわけがないと。
麦わらの一味を含む数多くの魅力溢れるキャラクターたちを演じることが出来る人間なんていないと。
制作にかかるであろう膨大な費用に、何より原作漫画という素晴らしいが故に越えることの出来ない高すぎるハードルに。
だが、違った。
CG技術は進歩し、映像化不可能とされていた多くの作品が実写化された。
何年にもわたって連載され、世界中に数多くのファンがいるからこそ、キャラクターを演じる俳優を世界中の人間から探すことが出来る。
映像化の可能性が生まれたことで費用も昔より集めやすくなったはずだ。
そして、ファンの期待を裏切らない素晴らしい作品を作り上げることは自分たちに託された。
震える手に力を込めて、傷付けないように細心の注意を払って資料を手に取る。
「……よし」
目を閉じて深く息を吸い、吐く。
心を落ち着け、そして覚悟を決める。
「…………は?」
歴史に残る作品、その第1ページをめくり目に飛び込んで来た情報に私の思考はフリーズした。
いやいや、そんなわけがない。
ONE PIECEの監督選ばれた興奮で頭のおかしくなってしまった私の見間違いだと。
目を閉じて、深く息を吹い心を落ち着けて、さっきとは違う意味で覚悟を決める。
「……よし」
今度は見間違えたりしないように、一文字一文字しっかりと読んでいく。
いや、むしろ祈っていた。
さっきのはどうか私の見間違いであってくれと。
そうして、祈りながら読んだ資料。
冷静になったはずの頭で何度も何度も、一文字一文字をしっかりと読み直し、私はあるひとつの仮説に到達した。
ああ、これドッキリだ。
ひどく納得した。
ONE PIECEが実写化。
それだけでも衝撃なのに、その監督に私が選ばれたなんて都合が良すぎる。
だが、それもすべてドッキリだったとしたら説明がつく。
ONE PIECEは実写化する。
なぜならドッキリだから。
その監督に私が選ばれた。
なぜならドッキリだから。
そして、こ資料にありえないことが書かれているのもすべてはドッキリだからだ!
部屋を見渡しカメラを探す。
技術が進みカメラもかなり小型化が進んでいるからか見つけることは出来ないが、まぁいい。
すぐにドッキリを告げる仕掛人が部屋に入ってくるはずだ。
そう思い覚悟を決めるが、部屋には誰も入って来ない。
心臓が嫌な音を立てて鼓動し、気持ち悪い油汗が全身から噴き出してくる。
聞きたくない。
しかし、聞かなければならない事実を目の前に座ってこちらを見ているこのONE PIECEの資料を持って来た男に私は訊ねる。
「すみません……これはドッキリですか?」
たのむ!
どうかドッキリであってくれと心の底から願いながら訊ねるが、男は来るとわかっていたのか微塵も動揺することなく
「いえ、ドッキリなんかじゃありませんよ」
そう言いやがった。
全身の力が抜ける。
緊張から解放されたような清々しい力の抜け方なんかじゃなく、力を吸い取られるような気持ちの悪い抜け方だ。
「……はぁ」
どうしてこんなことになってしまったんだ。
頭の中を占めるのはそんなことばかり。
実写版ONE PIECEの監督に選ばれたと聞いたときは最高に幸せだったのに。
「……よし」
だが、いつまでも項垂れている訳にはいかない。
これがドッキリじゃないというのなら、監督として最高の作品にするための努力をしなければならない!!
「いくつか……いや、メチャクチャ質問あるんですがいいですか」
「かまいません」
必要かどうかはわからないが許可を取ったし、さっそく質問していこう。
納得出来ないことはいくつもあるが、一番最初に確認しなければならないことだ。
「あの……どうしてルフィが女なんですか?」
正直、炎上しないかメチャクチャ心配です