リコリス・リコイル feat.アダルトヒーロー   作:鮭児

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年末年始をちさたきで迎えられる幸せはきっと今代しかない宝


ーThe fate of many people who pull the triggerー

 日本、世界一治安が良いとされる国。それは偏に警察然り、自衛隊然り、国の機関が日頃からしっかりと表舞台を取り締まってくれるからこその賜物。そう、表向きは。

 

「配置完了。こっちは何時でも行ける」

 

 狙撃銃を構え、スコープで目標を覗きながら無線に話しかける。

 

『もうすぐ千束が配置に付く。それまでは待機してくれ』

 

「あー、それは全然いいんだけど、そろそろ人質がヤバいっぽいんすけど」

 

 スコープの先には藍色の制服を着た少女、その後頭部には拳銃が突き付けられている。ここからじゃ何言ってるのかさっぱりだが、銃の持ち主はしきりに何かを怒鳴り散らしていて、唇の動きから間違いなくそろそろカウントダウンが始まった頃だ。

 

「千束さんよ、随分ゆっくりじゃないの、まさか食べ過ぎで太った?」

 

『ーーんなわけあるかぁ!?6階までダッシュ中じゃあ!!』

 

 スコープから目を離してビルを見れば、赤い制服を纏った、白髪の少女が走っているのが見える。間に合ってくれよ、と内心で祈っていると、インカムにノイズが走る。

 

 通信の返答は無い。まさかこのタイミングで通信障害かよ。DAのコンピューターは優秀じゃなかったのか?これからはラジアータ(笑)って呼んでやろうか。

 

「こうなりゃこっちでやるしかないか。千束合わせろよ……!」

 

 狙撃銃の引き金を引く。空になった薬莢が弧を描いて吐き出される。銃口から静かに飛び出した銃弾は、真っ直ぐ向かいのビルへ飛び、窓ガラスに命中する。

 

 赤い波紋が広がり、連られて窓が音を立てて砕け散る。僅かな一瞬、スコープ越しに男と目が合った。隙ができた。

 

「よし、千束!突入!今ーー!」

 

ーーその時だった。

 

 回復した無線からけたたましい発砲が、耳をつんざき、男の身体を吹き飛ばした。

 

「うっせぇ!?」

 

 思わずインカムを投げた。見ればビルは大惨事。硝煙と粉塵で中は全くと言っていいほど分からない。ただその状態を作り出した原因だけはしっかりと見えた。

 

 まさか予告もなし、躊躇いもなく機銃掃射をやる奴がいるか!?

 

「ってヤベ、アイツまさかあの中にーー!」

 

 急いでインカムを拾い上げる。

 

「千束!無事か!?」

 

『おぉ〜!うっひょひょぉ〜!あ、何〜?』

 

 無言で無線を切った。あの野郎、珍しく心配してやったのに、状況楽しんでやがった。

 

「任務は失敗。武器商人は……ミンチよりひでぇや」

 

『そうか。千束を回収次第帰還してくれ』

 

 俺は了解とだけ伝え、現場を見る。命令無視の独断専行、オマケに目標殺害。仕事人、組織人としては完全にアウト、組織が組織なら銃殺刑並の失態だ。だが、こちらの損害はゼロ。俺たち的には望ましい結果ではある。

 

 スコープ越しに機関銃を掃射した張本人を見る。黒髪が美しい、手に持ってる物がアレな事を除けば、まさに清楚な少女だ。誰かさんみたいな中身の色気皆無な遅刻魔とは桁違いだな。

 

「帰るぞ千束」

 

『はーい』

 

 と、その前にーー、

 

 心配させた仕返しだ。悪戯代わりに千束に向けて1発狙撃しておいた。どうせ当たらないし、当てる気もないがまぁ、ちょっとスッキリした。

 

『おい、ごらぁ!後で覚えーー、あ、通信切んな!』

 

 

 

「おら、往生せいやぁ!!」

 

 合流するなり、至近距離で撃たれました、まる。新しく卸したばかりのコスチュームに弾痕付けるな。いやまぁ、自業自得なんだけど。

 

「帰ったら司令にドヤされるなぁ……」

 

 あー、ヤダヤダと、助手席の窓を開けーー、

 

「やだー!!」

 

「おい、誤解生むようなことすんな」

 

 人目もはばからず大声で叫び散らすな。何人か振り返ってんじゃねえか。あと、嫌がるJKを隣に乗せる成人男性とか絵面が事案なんだよ。

 

「ところでアレ、どう思う?」

 

「アレって……?」

 

「まぁ色々あるけど機銃掃射の……」

 

「あれは凄かったよー?赤さんは?」

 

「まぁ、綺麗な子だったな。あと赤さん止めい」

 

「ほー?この私を差し置いてか?」

 

 そう言うと、昔のビールモデルのようなポーズをとる。黙ってたら素材はいいのになぁ……他がなぁ……

 

「はぁ……」

 

「おいこら、そのため息はなんじゃあ?」

 

「ウン、カワイイ、カワイイ」

 

「心を込めろ」

 

 肩を強く揺らされる。事故る、事故るから止めい。

 

「なんかまた会いそうな気がするんだよな。やり方が大胆だけど、仲間を救うために行動出来る子みたいだし……誰かさんみたいに」

 

「えぇ、それって私ぃ?」

 

「いや、笑い方」

 

 照れてるのかふにゃっふにゃの今にも溶けそうなだらしない顔で笑う千束を横目で見る。彼女との付き合いは長い。この屈託の無いーー、いや、だらしない笑顔は東京一のリコリス、ではなく錦木千束と言う1人の少女の純粋に喜んでる時の顔だ。そんな無防備な顔を、かつて銃を向け合って命のやり取りをした俺に見せている。我ながら信じられないことだと苦笑する。

 

「なんかお前の笑顔見てるとやっぱ落ち着くな」

 

「ちょいちょいちょい!?いきなり何をーー、」

 

「色んな事が馬鹿馬鹿しく感じられるから」

 

「おいごらぁ、誰が能天気じゃ!そのケンカ買っちゃるわコンニャロー!」

 

「だから運転中!」

 

 前言撤回、やっぱりこのクソガキいつか分からせるーー!、こっちが反撃できないのをいい事に首を絞めて揺らしてくる千束に俺はそう固く決意した。

 

 そして翌日ーー、

 

「今日から新しく1名、こちらにリコリスが配属される」

 

 ほら、こういう勘は何故か当たるんだ。

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