図書室のカウンターの中、隣りに座っている男の娘がなんかすごい可愛い件について。 作:中指を立てるな喜多郁代
志多丈中学の図書館は、随分と寂しくなった。まるで火が消えてしまったみたいだ。
声のデカい委員長や、ウェイ系なうるさい副委員長etc……の3年生たちが卒業して行き、今期の図書委員会は、前期と打って変わって物静かな人ばかりが集まった。
今、俺の横で淡々と返却された本共の確認作業をする男、
カウンターで区切られた狭い空間の中、俺達の頭上で、カチ、カチ、と一定のリズムを刻む丸時計の秒針だけが、耳に入っては、抜けて行く。
とっっっっっても、暇だ。
図書委員ならば、このような只々時間が過ぎ去っていくのを耳で感じるだけの時間など、有り触れたことだろう。しかし、今まで一緒に仕事をしていた彼等がなまじ盛り上げ上手だったせいか、やはりまだこの静かさにはなれない。
俺は痺れを切らしたように、雛森に言う。
「雛森、暇だ」
「そうか藍沢、なら仕事をしろ」
「……」
手が空いているなら仕事をしろとな。あぁ、それはそれは、まぁご尤も。ご尤もな発言だが、それにしたって、もう少し俺の言葉の意図を汲み取ってほしかった。
「俺は仕事をしたくない」
「働けカス」
「え、火力つよ。もしかして生理?」
「僕は男だ。生理なんてこない」
「あぁ、そうだった。雛森は男だった」
女の子みたいな見た目しやがって。華奢な体格に白い肌、肩まで伸びた艶のある黒髪と、整っているけどどこかあどけない容姿。どこを見ても女の子。もはや自称男の女の子だろお前。
「というか、その、生理?って訊くやつ、本当に失礼だからやめろ」
「大丈夫、雛森にしかやらないよ」
自ら地雷を踏みに行くような真似なんて、誰しもしたくないだろう。それは僕だって同じだ。だから、雛森にしかやらないしやりたくない。
「ならいい」
雛森は、返却された本の最後の一冊から、貸出用カードをそれ専用のポケットから引き抜き、代わりに借用者の学年クラス番号の一覧が書かれたカードをポケットに差し込んだ。そして、パタン、と本を閉じ、ふぅ、と一息ついてから、くるり、とこちらに向き直って言った。
「……指スマなら、やってもいい」
両の握り拳をくっつけて、それを俺の前に出してくる雛森に、数秒間呆気に取られて、それから、なんとも言えない喜びに近いであろう感情がじわじわと押し寄せてきた。
でも、素直に嬉しいと言うのは、なんだか気恥ずかしくて、だから茶化すように、僕は言った。
「なんだ、雛森も結局暇だったんじゃないか。暇森じゃん、暇森」
「喧しい。僕は僕の仕事を終わらせて、やることがなくなったから仕方なく君に付き合ってあげているだけだ」
今どきベタすぎるツンデレの定型文を、本当に、しょうがないなぁ、みたいな顔で言ってのける雛森。そんな彼に対して俺は、可愛いやつだな、と思った。
「やっぱりお前女の子だろ」
「お、と、こ、だ!」
───これは多分、俺こと
なんだこれみじか。
思いつきで書いてるんで次回更新はマジ不明。推敲もしてない。