相棒の奇行に振り回されて呆れながらも私はアルの後を追う。そしてやはりと言うか、あいつが行く場所はダンジョンだった。
「あいつは私を振り回すのが好きだな…全く」
溜め息を吐きつつおそらくそこそこ下の階層に行ったアルの後を追うべく、気配を消してバベルから下の階層を目指す。奇跡的に一階層から七階層までは接敵がなかったが、八階層からはそこそこ接敵する様になった。
「【
使わなくても片付くが、今は速度重視で行くため魔法を使う。【ゼファリアル】。私が持つ魔法の一つで風属性の
「出力を上げるか…」
出力を20%程上げ、一気に上層から中層へと駆け抜ける。
襲いかかってくるヘルハウンドの群れを所有する
十三階層
十四階層
十五階層
十六階層
そして、十七階層
「ッいた」
十七階層の嘆きの大壁があるルームの少し前のところに、アルは居た。
「【
アルが唱えた超短文詠唱。僅か三文字であるその魔法から放たれたのは、『紅蓮の大輪』。放つ相手は、LV.2にカテゴライズされているモンスター『ミノタウロス』。全身に発達した筋肉は、数々の冒険者を粉砕し、その代表は並の攻撃や魔法では傷付けることすら出来ない凶悪なモンスター。
だがアルが剣から放った紅蓮の炎はミノタウロスの体表をいとも容易く焼き滅ぼし灰に変えた。燃やしたミノタウロスではまだ足りないと言うばかりに、その炎は轟々と燃え続けており、風を解いた今ではあまりの熱気に汗が出てきそうな程である。
「ん?あ!アクトーこっちだ」
こちらに気づいたアルは、燃やしたミノタウロスの魔石を拾いこちらに手を振っている。
(人の苦労も知らないでこいつは)
そんなことを言っても仕方ないので、私はアルの合流出来ただけでも良いかと思考を変える。
「何故ダンジョンに来たんだ?」
アルがいきなりダンジョンに来た理由を問う。だがきっとこいつの事だ、碌な理由は無いのだろう。このアル・クラネルという男は出会った時から何も変わらない。むしろ変わらなすぎる。何も考えずに行動をすれば後のことを本当に何も考えていない。だが頭はかなり回るため私はこいつと駆け引き…チェスや将棋で勝つ事は難しい。勝てなくは無いがかなり頭を使うことになる為正直遠慮したい。だがこんないざという時頼りになるこいつの事を少なからず気に入っているし、振り回されるのも悪くわ無いと持っている自分がいる。
「ここに来た理由?なんとなくだ!」
「やっぱそんな理由かお前は」
そう。アル・クラネルとはこう言うやつなのである。
「で?この後どうするんだ?」
私は、何も考えていないアルにこの後どうするのかを聞く。地上に戻り冒険者登録をするのか、このまま進むのか。
「そうだn──ッ!!」
『ヴ、ゥオオオオオオオオオオオオ───ッ!!』
嘆きの大壁の奥…つまり十八階層からのモンスターの雄叫び。私とアルは次行く場所が決まったと言わんばかりに走り出す。
十七階層を抜け、十八回層に出てきた時に見た光景は蛇の様な花の様なモンスターがリヴィラの町で暴れている所だった。そこからの行動は両者迅速だった。アルはローブの前を少し外し、近距離の戦闘体勢に移行し緑のモンスターへ向かう。私は風を纏い直し迷宮の上の方へと駆け出していく。
「【──解き放つ一条の光、聖木の弓幹 汝、弓の名手なり狙撃せよ、妖精の射手 穿て、必中の矢】」
赤みを帯びたオレンジ色の魔法陣を展開しながらエルフの少女は魔法の詠唱を紡ぐ。手に持つ己の装備を
「【アルクス・レイ】」
解き放たれた光の破壊光線。恐らくLV.4の魔導士の威力ならば超えるであろう。だが、赤髪の女は、その魔力光線をいとも容易く、それも片手で受け止める。
「そんな素手でッ!」
「ッふ!!」
受け止めた破壊光線を女はエルフの少女に反射しする。自らが放つ魔法の
「レフィーヤ!」
そう叫ぶ妹だが急に接近してきた赤髪の女の応戦でエルフの少女に気をかける余裕がなくなった様だった。振られてくる剣を横に縦にいなし女の剣を弾き飛ばす。だが攻撃は止む事なく妹と赤髪の女は剣を交え続けておりまさに、防戦一方と呼ぶべき状況だった。吹き飛ばされたエルフの少女…レフィーヤは自らが尊敬する女剣士であり、迷宮都市内でも上位の腕を持つ
「大人しくしていろ」
レフィーヤがアイズを妹を援護しようと杖を取ると赤髪の女は標的をレフィーヤに変更して襲いかかる。
「ッひぁ!」
「【
妹は魔法で風を纏い女より早くレフィーヤの元に駆けつけ、レフィーヤに振り下ろされていた剣を弾く。女は、その風を見て少し動揺を見せた。その時、妹の魔法に呼応するかの様にレフィーヤの鞄の中身が赤く光ったのが少し離れた私にも見えた。
「その風…そうか、お前が【アリア】か」
弾き飛ばされた女は、体勢を立て直すとアイズの風を見て確信したかの様に言った。妹はその女が言った言葉に驚愕する。レフィーヤは妹が何故こんなにも動揺して震えているのかが分からず困惑している。
(今…なんて…)
「面白い…土産が出来た」
女は、妹にそう言い笑みを浮かべる。その時、レフィーヤの鞄の中から宝玉が飛び出してきた。レフィーヤは一人でに出てきた宝玉に困惑している。宝玉の中にいた生物が羽化し、花の様なモンスターに飛びついた。女は、舌を鳴らしイラついている。
「ア、ァァァァアアアアアアアアア───ッ!!」
次の瞬間、モンスターが肥大化し女方のモンスターへと変化した。
「ッ走って!」
妹は襲いかかってくるモンスターからレフィーヤとルルネの手を引いてて逃げる。逃げた先にはロキ・ファミリアの面々が揃っており、皆どこからきたのかなどと言う疑問は浮かべているが、始末をつける方が先決なため今は置いておくことにした様だ。
妹は風を纏い直し攻撃を交わす。フィンとリヴェリアがモンスターを観察しティオナがモンスターの触手?を
問題は妹の方である。技と駆け引きはほぼ互角。力では劣っていて、魔法を使ってようやく互角…いや少し馬力不足といった所だろう。レフィーヤ達の方は、リヴェリアの魔法を囮にした魔法攻撃が決まった様だ。本来ならこれでモンスターはダメージを負い逃亡する筈なのだが……。
「ッな!」
「ちょっと!効いてないじゃない!」
炎によるダメージは所々少し焦げている程度で傷と言うには少しお粗末が過ぎる。さてどうするかなどと考えていると、聞き慣れたやかましい詠唱と共に轟音を放った雷撃がモンスターに落ちてきた。
「【
ロキ・ファミリアの面々が驚く中、直撃を喰らったモンスターは逃げ出していく。
そんな中、妹の方は決着がついた様だ。赤髪の女に蹴り飛ばされ、ダンジョンの地形に体を埋める。幸い、剣で防御をしたが、それでもそこそこの怪我を負っただろう。手放した剣は赤髪の女に手の届かぬ場所へと蹴飛ばされ妹に反撃の手段はない。尻目に、フィンとリヴェリアが見えたが原作より少し遠い。このままではアイズが連れ去られるため、仕方が無いから私はこっちの相手をするとしよう。
「終わりだ」
女が拳を握りしめてアイズに振り下ろす。ガキィンという音と共に俺は剣を一つ抜き振り下ろされる拳を遮るようにアイズと赤髪の女との間に突き出す。
「ッなに!?」
女は自身の拳が止められるなど思っていなかったのだろう。驚愕した目でローブをつけて顔が見えない私の方に驚愕と鋭い殺気を飛ばしてくる。私から言ってしまえば、昔守ってやれなかった妹が絶対絶命なのだから助けるに決まっているだろう。
「うちの姫君への手出しは遠慮して貰おうか」
「───ッえ」
その時、アイズは確かに聞いた。幼き時に何度も聞いた優しく強い声を。そして驚愕し、確信してその言葉を告げた。
「兄……さ、ん…?」
「アイズさぁーん」
驚愕する妹を尻目に妹にいつまでも牙を剥く拳を剣で吹き飛ばす。横からレフィーヤの声とフィン達の姿が見えたので安心した。
「エルフちゃん、アイズを治療して貰えるかな?」
「え!あ、はい!」
レフィーヤはいきなり知らない人から話しかけられて驚愕しつつも、アイズの治療をするために詠唱を開始する。
私は、吹き飛ばした赤髪の女…レヴィスと剣を交えながら質問をする。
「君がモンスターを統率していた
「おしゃべりとは余裕だな」
女に剣を軽めに振るいながら攻撃を回避する。そこでレヴィスは違和感を覚え始めた。
(…押されている?)
そう、押されているのだ。少しずつ、本当に少しずつ。攻撃を交える度に、敵の攻撃を躱すごとに。一つ一つレヴィスの間合いが消えていく。相手の隙が無くなっていき、自身の隙が増えていく。
「──ッがぁ!」
そこを私は見逃さない。剣戟の際に僅かに生まれた左横腹の隙に剣を通し、ダメージを与える。ダメージを負った際に体勢を崩したため次は腕にもう一閃、また崩れた、今度は剣を持っていない左腕でレヴィスの左頬にストーレートパンチをかまして吹き飛ばす。
「確かに硬いな」
「第一級LV.6いや7はあるな、不が悪いか」
原作のフィンは指が折れていたためまだマシではあるが、かなりの衝撃が拳を駆け巡り痺れている。吹き飛ばされたレヴィスは流石に不が悪いと思った様で撤退を選んだ。
「逃すか」
私はレヴィスをあとを追いかけて十八階層の地形を踏み越えてくる。アイズも風を纏い直して追いかけてくる様だ。レヴィスが停止したたき加速した私を追い抜いたアイズが手を伸ばすが、一歩及ばずレヴィスは湖の中に消えていった。
「逃げられたか」
私がアイズの後に着いた後フィンとリヴェリアも追いついた様だ。アイズはレヴィスが飛び込んで出来た波紋を見つめている。恐らくレヴィスがアイズのことをアリアと呼んだ件だろう。全く面倒くさいことを残していくあの怪人は。
「どうやら逃げられた様だネ」
レフィーヤとアルがほぼ同時に追いついてきた様だ。私はここに長居する気は無いためこの場を離れることにした。
「いくぞ」
「ッ待って!」
俺は後ろからの声に振り向かずこう言った。
「また会いにいくよ」
そして、私とアルはその場を離れ十八回層を後にした。
「良いのか?」
途中、アルにそう聞かれたが私は「良いんだ」とそう返し返答を済ませる。それ以上アルに何かを言われることはなかった。
十八回層に残されたアイズとロキ・ファミリアはアイズの変化に動揺し気に掛けていたが、今の彼女にその言葉に反応する気力は無い。ただ彼女は最愛の家族が生きていた事とあの赤髪の女が何故アリア…自身の母親を知っていたかに着いてだけだった。
この両方の問題に応えられるものは、今は誰もいない。
《魔法》
【ゼファリアル】
・
・精霊魔法
詠唱式 【
・
・
情報
汎用性に優れた風属性の
【イグニス・ウルカヌス】
・
・精霊魔法
・炎属性
詠唱式 【
・
情報
始まりの英雄 アルゴノゥトが使っていた炎の魔剣と同じ効果を剣に宿す
【ヘヴンズロア】
・
・精霊魔法
・雷属性
詠唱式 【
・
情報
始まりの英雄 アルゴノゥトが所持していた、雷霆の剣と同じ効果を生み出す
ヴェルロッゾとアルフィテルの両方とも、アクト作の長剣。値段にすると、【ヴェルロッゾ】8億3000万ヴァリス、【アルフィテル】9億ヴァリス程らしい。
アクトが根城にするファミリアは?
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ヘスティア・ファミリア
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ロキ・ファミリア
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ヘファイストス・ファミリア
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フレイヤ・ファミリア
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ギルド