【剣聖の追想譚】   作:ゼクス神楽

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EP(エピソード).3 【孤王(レックス)

十八階層の攻防を経て、ロキ・ファミリア一同は、赤髪の調教師(テイマー)の手掛かりを探し、三十七階層の白宮殿(ホワイトパレス)...つまり深層域まで足を運んでいたが何も手掛かりを得られないままだった。

 

探索の際は何時も明るいとまでは言わないが多少おしゃべりをしながら探索するものだ。だが、ファミリア内の空気はいつもの和気あいあいとしたものではなく、どことなく暗いもので、その暗さを醸し抱いているのは、どこから見ても【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと分かるほどに暗雲のオーラとも言うべき空気が立ち込めており、いつもその天真爛漫な性格で、アイズに接しているティオナや、彼女を慕い力になりたいと思っているレフィーヤすらも何があったのか聞けなままだった。

 

「アイズ...どうしちゃったのかなぁ

 

「私に聞かないでよッ」

 

アマゾネスの姉妹は過去最悪に暗いアイズを心配し、レフィーヤは自分が話しかけても全く反応しないアイズに撃沈し、その光景を見て、フィンとリヴェリアはほとほと呆れ、困り果てている。

 

俯いた姿勢で目を閉じ、しゃがんでいるアイズは、過去の記憶を思い出していた。優しく自分の頭を撫でながら優しく微笑んでいる母にその横からその光景を幸せそうに眺めている兄。そしてその光景に満面の笑みを浮かべている幼き日の自分。まだ、復讐(ひがん)なんてものを抱えていない純粋笑顔を浮かべている。そんな自分。

 

「いくぞ、アリア」

 

とても優しい声で父は母のことを呼ぶ。母は立ち上がり、幼き自分と兄を置いて父の所へ駆け寄り二人は歩き出す。そんな両親を呼ぶが彼方へと消えてゆく。横で見ていた兄は何も言わなかった。ただただ悲しげな、そして悔しげな表情で二人を見送るだけだった。そしてその兄すらも自分を置いてどこか遠くへ消えてゆく。そんな遥か昔の記憶。

 

「おはよっ!アイズ」

 

「そろそろ出発よ?大丈夫?」

 

目を覚ました時に目の前にいたのは、同じファミリアのアマゾネスの姉妹、ティオナとティオネだった。どうやら出発の時間が来た様だ。元気の無いアイズを心配して声をかけるティオナにアイズは感謝を伝える。

 

しばらく歩き続けると、一同は広いルームに出た。すると、アイズが何かに気付いたかのように警戒し、愛剣【デスペレート】に手をかける。どうやらフィン達もルームの異変に気がついた様だ。地面から母たる迷宮(ダンジョン)が産み落とすのは、【スパルトイ】。骨の天然武器(ネイチャーウェポン)を持って出現する骸骨系モンスターであり、希少種を除く戦士系モンスターの中で、随一の白兵戦能力を誇るモンスター。

 

「フィン、私が行く」

 

「アイズ!?」

 

そんなモンスターにアイズは単独で挑む。剣姫の名を冠するに相応しいその圧倒的な剣技でみるみるうちに動く骨(スパルトイ)を灰にしていく。だが、皆はそのアイズの必死さに少しの恐怖を感じている様だった。

 

(強かった…もっと力があったらッ)

 

アイズが思い出すのは己が母の名を知る赤髪の怪人。自身への弱さを呪うかの様に、アイズは出てきたスパルトイ全てを切り伏せた。フィンはリヴェリアに何かしら無いかと問うが事情を知らない王族妖精(ハイエルフ)は困った様に自信が何も知らないことを伝える。

 

餌付けなどの他愛無い冗談(?)をリヴェリアが披露していたりする中、アイズは一人、ダンジョンに残りたいと言った。迷惑を掛けないなどと言うアイズに皆は危険だと言う。当然普通のことを考えたら、仲間を深層域に放置するなど正気の沙汰では無い。だが状況を見かねたリヴェリアが自身も残りらことを条件にフィンにアイズの願いを叶える事を頼んだ。リヴェリアがいるならばとフィンはこれを許してアイズとリヴェリアを残して一同は三十七階層を後にした。

 

 

アイズ達が向かったのは、先程とは別のルームだった。轟音を立てて、ダンジョンから遣わされるのは、【階層主】。ダンジョンに幾つか存在する階層の主たる巨大なモンスター。中層域に出現する主、ゴライアス。下層域に出現する主、アンフィス・バエナ。そして、深層域に出現する主、迷宮の孤王(モンスターレックス)】ウダイオス

 

深層域に出現する階層主。巨大な漆黒の骸骨の姿をしたモンスターは全長10M。推定能力は、"LV.6"。地中から杭を弾丸の様に放ち、骸骨兵士のモンスターを生み出し大量に使役する物量攻撃も可能としており、この骸骨兵士もLV.4に相当する能力を有している。第一級冒険者所属のファミリアであっても全滅する可能性がある深層の階層主、孤王の名に相応しい力を持つ。

 

 

そして、アイズが目指すのは、このモンスターの"単独討伐"他者の力を借りずにこの怪物を切り伏せる"偉業"。そう、これを成し得ればLV.5のアイズにとって『上位の経験値(エクセリア)』となるだろう。

 

目覚めよ(テンペスト)

 

アイズは魔法を発動し、目の前の強大な敵を撃つことに集中する。ウダイオスがアイズ目掛けてが拳を打つのと同時にアイズは疾走を始め、ウダイオスの拳を回避し跳躍、肩の関節にデスぺレートを突き刺し相手の右腕を粉砕する。怯んだウダイオスに追撃を試みるが下からの(パイル)を回避するために転身、ウダイオスの薙ぎ払いを防御し受け止める。

 

ここで、地面から杭では無い何かが出てきた。それは、【剣】だった。全長10Mのウダイオスが扱う超巨大な漆黒の大剣。それを掲げ骨の王は敵対する娘に剣を振るう。風を持ってしても有り余るダメージ。ルームは大きなヒビが入り、眠りから覚めた骨の王はその階層主としての力を遺憾なく発揮する。

 

下からの杭に体勢を崩され、漆黒の剣の攻撃をかろうじて防御する。そのままアイズは地に叩きつけられた。状況を鑑みたリヴェリアが助けに入ろうとするがアイズは拒否する。

 

「ッ手を...出さないで」

 

神々も認める偉業をなしえ、己の器を昇華させる。ランクアップに必要な絶対条件。己よりも格上との対戦を持って超克を果たす。迫り来る無数の杭を傷を負いながら剣でかき分け、迫り来る漆黒の剣に吹き飛ばされつつもアイズは力を求め己より強大な相手に立ち向かう。

 

「ッ風よ──ッッ」

 

今アイズが扱える限りの精神力を注ぎ込み、アイズは骨の王に立ち向かう。防御を捨てた特攻。ただ相手を殺すためだけに迫り来る攻撃を、王の剣を切り伏せ破壊し己の全てを剣にこめる。

 

「ッ絶対に取り返す──【リル・ラファーガ】ッッ!!!」

 

 

風を纏った全霊の一撃。その攻撃は骨の王の眉間を貫き...巨体の骨を、消し飛ばした。崩れ落ちる残骸に向かい巨大な魔石の前に立ち己が風を持って貫いた。

 

残った黒き骨は霧散し灰に変わる。まるで何もなかったかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、この場所英雄の都で新たなLV.6の階位を持つ冒険者が誕生した。

 

 

 

 

 

 

「おめでとう、アイズ」

 

 

そして、この知らせに剣姫と良く似た髪の金髪と金眼の右目と何よりも青く綺麗な碧眼を持つ少年が祝福をするかのように、この迷宮都市で微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

LV.6

 

期間 3年

 

EP(エピソード).3 【孤王】




アクト・ヴァレンシュタイン

容姿

アイズよりも少しだけ薄い金髪に髪色に似た金眼の右眼とフィンよりも青い碧眼の左眼を持つオッドアイの青年。身長は176cm。

17歳。

the アイズのお兄ちゃん。

あるスキル発動時は、碧眼が黒になる。

アル・クラネル

容姿

ベルと同じ純白の髪に、母や義母譲りの灰色の左眼と弟と同じ深紅(ルベライト)の右目を持つオッドアイの青年。童顔。身長は171cm。the ベルのお兄ちゃん。

16歳。

魔法発動時は左眼が雷霆の如き黄色に変化する。
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