勇者に焦がれて 作:勇者万歳!
讃州中学勇者部!
勇者部の朝は早い、こともある。
何せ老若男女数多の依頼を引き受けるのだ、時には早朝からかかる依頼もある。
その為、たまに遅刻スレスレを駆け込まなければいけないこともある。
「とぉりゃぁぁぁああ!!」
だが、そういう朝から時間がかかる依頼はとある二人に頼む時が多い。
片方は勇者部唯一の男子部員、白の長髪が目立つ童顔少年、結城シン。
脚の速さとスタミナなら勇者部でもトップレベルである、というかトップじゃないと男子としてのメンツが…とは本人談。
そしてもう一人は運動神経が良い
「とーごー、旋回右!!」
「あいさー!」
車いすに乗っているからといって機動力が無い、というわけじゃない。
世の中には車いすで行うスポーツも多数存在する。
更に言えば、彼女の車いすは特製中の特製。手元のグリップを駆使することで、彼女は左右への方向転換、そしてグリップに備わっているブレーキを適度に行うことで、ドリフトすら可能とする……!!!
ジャリジャリジャリ!!!
地面を擦り、ドラフト痕を残すほどの加速。
此処まで来るとシンも走っているというより、ボードにでも乗っているかの様だという。
だがこの
車いすの背後にはシンが乗せる足場もちゃんと追加されており、下り坂や一定以上の加速を行った際は彼が休むことも可能。
2人のコンビネーションは絶妙で、彼だけがブレーキの反作用で吹っ飛ぶなんてことは今の所
「その正門――」
「まったぁぁぁぁあああ!!!」
閉まり始める讃州中学の正門へ突撃を行う二人。
加速をし続け、見事正門を潜り抜けた。
見事なグリップ捌きと走り続けた二人に惜しみない拍手が……。
「危ないでしょ!」
「あいてっ」「あいたっ」
送られるはずもなく、朝から先生のお叱りを受けるのだった。
尚、懲りずにまた行われ続け、風物詩のようなモノとして語り継がれたりしなかったり。
*
そして放課後、今朝の騒動も含め部長である犬吠崎 風へと報告を行った。
無事依頼をこなし、
「成程成程、二人とも朝からお疲れさまね。ご苦労様……ってアホかーー!!」
「あいたっ」「あいてっ」
先生にも小突かれた二人は、改めて部長のツッコミを受けた。
労われるものばかりと思ってた2人は揃ってブーイングを行った。
「依頼は完遂した上に、無事故で走破したのに……何故ダメなんですか部長!?」
「そうですよ風先輩。ちゃんと曲がり角や歩行者には注意してましたよ?」
「しっかり
アウトだなんて失礼な。ちゃんと
堂々とする二人に頭を抱えていると、勇者部の勇者精神と良心を持った部員二人が注意を付け加えた。
「お、お二人とも、流石に閉まりかけの正門に滑り込むのはちょっと……」
「そうだよ!ちょっと間違えてたらクラッシュしてたよ!?」
「樹……たしかに、もうちょっと余裕を持った方がよかった、かもしれない」
「友奈ちゃん……そうね、あと5分詰められれば……それか性能でも上げようかしら」
「加速担当、頑張ります」
爆走
そんな様子をツッコみきれなかった結城友奈と犬吠埼樹は苦笑いを浮かべた。
「あ、あはは……そういう問題じゃ」
「ないよ~~!」
「「そう??」」
揃って仲良く首を傾げる二人。
両者ともに能力は高いが、たまに暴走する勇者部の問題児としてそれなりに有名だったりする。
「あ、そうだ。今日は友奈ちゃんと一緒にショッピングに行くから早く仕上げないと」
反省もそこそこに、手早くテキパキと作業を始めた二人。
切り替えが早いといえば聞こえはいいが、伝わって欲しいことが伝わっているかは微妙なわけで。
「あーもう、この白黒コンビはぁぁ!!」
今日も今日とて部長の悩みの種は尽きないのだった。
「あ、自分も樹と約束があるから、今日は早めに切り上げますね」
「あーはいはい、そう……って樹と?!なんで!どこに!?どうするの!?!?」
「お姉ちゃん、落ち着いて……授業で使う画材を、運んでもらうだけだからぁ」
勘違いスレスレの発言に食いつく姉である風をなだめる樹。
なんだそういうことか、と落ち着いた風を見て、シンは「シスコンだなぁ」と呟くが、その納得のされ方には異議があると風は指をさした。
「いやいや、シンだってシスコンでしょぉーよ!?」
「何をいうかと思えば……
「アンタも大概よ!この似たモノ姉弟!!」
「何ですか急に褒めるなんて……まったく、照れるなぁ」
「そういう所よ……というか、照れてるんなら頬の一つでも染めなさいな!」
「ポーカーフェイスは得意なんです」
やんややんや、ワイワイガヤガヤと、今日も今日とて勇者部は仲良く賑やかな一日を過ごしていった。
この章、もしかして一番初めに移動した方が良い……?と感じたので移動しました。