元ホースマンは零細馬主の秘書になるようです   作:綴人不知

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 この物語はフィクションです。
 実在の人物、団体、制度、その他一切とは関係ありません。

 本当に関係ありません。

今更ながらウイニングポストの初期設定風紹介
・難易度
EXPERT
・ゲーム開始年代
1976年
・ゲームモード
モードA
史実通りに生まれ、史実通りの結果になりやすい。
・スタートタイプ
零細馬主
初期資産が少なく、牧場を持たない。
・スペシャル種牡馬
なし
・スペシャル繁殖牝馬
???

・導入新人騎手(未定)


昭和48年5月27日 出会い 3

 最終レースが終わり、渡海は換金してくると言い残してゴンドラ席からそそくさと立ち去っていった。

 合流は競馬場の西側、競馬場の前の通りを指定され、二人は訳が分からないまま渡海を待っていた。

「伊賀野君、渡海君のあの才能を、君は知っていたのかい?」

「あの才能とはどっちの才能でしょうか」

 橫山の問いにとぼけたような回答をする伊賀野であったが、渡海の才能と言われても、心当たりが二つあった。

「馬券も相馬眼もだね」

「両方知りませんでしたよ」

「だろうねぇ……」

 あっけらかんと答える伊賀野に、橫山は苦笑する。

「あんな芸当が出来るのに、渡海は何故牧場を離れたんでしょうね」

 優れた相馬眼を持ち、血統や競走馬に関する知識もある。かと思えば車を購入できるほどの金額を人気薄の馬券に賭ける胆力。

 それで得た資金を元に、彼ならば牧場の一つでも買い上げることが出来るのではないだろうか。

「あれで『競馬は趣味くらいでいい。勝とうと思って勝てるものではない』なんてよく言えたもんですよ」

「一般的な競馬ファンからしてみれば、たまったもんじゃないだろうね」

 いや、馬主からしても滅茶苦茶な仕業であった。例えば橫山の昭和40年度の収入は4800万近くであるが、その半分近くをたった2分半で儲けた訳である。それも橫山は毎年この額を稼ぐ訳ではない。

 橫山もまた父の年収の半分を一日で儲けたものだが、高額所得者名簿に載る橫山の収入の半分に迫るのは異常であった。

 日曜以外は缶詰して、原稿料で預託料を稼いでいる身としてはあまり面白くはない。橫山にとっての競馬とは日々の締切に追われる仕事の中の安らぎではあるのだが。

 もっとも、仕事中に打ち合わせと称して編集部の人間と麻雀を打ち合わせることもある訳だが……。

 それはそれとして引っかかるのは渡海の自分の購入した馬券への執着のなさである。40万は新車のカローラが購入できる。彼にとっても決して安い額ではないはずである。

 渡海にとってはその程度はいつも馬券で稼いでいるということだろうか?

 だとすれば今日の第1レースで、窓口で思い出すように馬券を購入していた様に説明がつかない。恐らく彼の言うように、競馬場に来た時は未成年だったから馬券が購入出来なかったというのは事実だろう。

 では、その頃の払戻金はどこに消えていたのだろうか。

「先生、どうされました?」

「いや、彼について考察していたんだが、面白い逸材を連れてきてくれたね。ああいうのは漫画の中だけだと思っていたよ」

 現実は小説よりも奇なり、とは言うが渡海のような存在はそういったものなのだろう。

「渡海について、どう思われましたか?」

「そうだな。まだ分からないところは多い。とんでもない才人なのは確かだよ」

 パーフェクト予想こそ成し遂げてはしていないが、そんな偉業を果たしたのはあの大河慶次朗位なものである。

「10月のセリでも参加して、大西先生と一緒に渡海を誘ってみてはいかがです?」

 日高軽種馬農協主催のセリで10月頃に開かれ、日高地域で生産された当歳馬が上場する。

「セリはあまり気乗りせんのだが……」

 橫山は多くの締め切りを抱える身であるため、そう簡単に北海道に行けるものではない。第一競馬関係者が来ることもあってセリは平日に行われる。

 そもそも渡海の相馬眼が幼駒に対しても同じように発揮されるのか、それが明らかではない。

 そこで懇意にしている大西調教師と渡海に、幼駒を見て貰うのはどうかということであった。

「先生、考えてもみて下さい」

「え?」

「このまま調教師任せにしたり、抽選馬を買ってもいいんですか? ここらで一度オープンに出走出来るような馬を見つけたいところじゃありませんか?」

 伊賀野の言う通りであった。ホースマンとしてはそうするべきなのだろう。しかし、橫山にとって馬主は本業ではない。

 だからこそ日高のセリに参加する予定を立てるのは難しい。常に締め切りを守ってきた鉄人といえども、平日の数日間を空けるのは容易ならざることであった。

 だが、元はと言えば伊賀野に渡海を引き合わせるよう頼んだのは、現状を打開したいと考えていたのではなかったか。

「そうだな。だが、北海道のセリに行く前に、試しに富里のセリ市に誘ってみてもいいかもしれないな」

 富里とは千葉県の地名で、分かりやすく言えば成田空港の近くにある村のことである。かつて千葉県は馬産地の一つであり、御料牧場を始めとして、数多くの牧場が存在していた。

 それが成田空港建設のため、御料牧場が栃木県高根沢町に移り、周辺にあった民間牧場も日高に牧場を移すことになった。

 現在では千葉の馬産は下火となったが、未だ競走馬が生産されていたのである。

 締め切りに追われる橫山であっても、千葉ならばその気になれば日帰りが可能である。

 もっとも、明け2歳のセリであることから、上場頭数は少ないのだが……。

「そうなると、あとは渡海が首を縦に振るかどうかですね。ところで、渡海はどこ行ったんでしょうか」

「払戻金を受け取りに行ったとは言っていたが……」

「それで、こんな所で時間かけて待たせますかね?」

 話している二人の前にタクシーが停車し、扉が開く。

 中には渡海が座しており、膝の上には鈍く輝くジェラルミンケースが置かれていた。

「すいません、お待たせしました。乗ってください」

「いや、渡海、君なんで競馬場の外にいるんだ。というかなんでタクシーに乗っているんだ」

 二人は頭に疑問符を浮かべつつもタクシーに乗り込み、伊賀野は矢継ぎ早に渡海に疑問をぶつける。

「あまりにも高額な払戻は別室に案内されて、出口まで警備されるんですよ」

「そんなものまで渡されて?」

 そんなものとは、渡海の膝の上に置かれているジェラルミンケースのことである。

「基本的に払戻金は現金ですからね」

「一体いくらからこういう扱いをされるんだい?」

「1000万を超えたら、という話を聞いたことはありますけどね。100万程度ならまだそれなりに払戻が発生しますから、警備員付けてタクシー呼ばれるような事はないみたいですけど……。あ、先生、行き先お願いします」

「ああ、じゃあ、豊島区の……」

 橫山が運転手に住所を告げると、タクシーは動き出した。

「高額支払いになると別室に通されるというのは、噂ではなかったのか……」

 とは橫山である。競馬ファンたちの間でまことしやかに語られてきた都市伝説のようなものであり、真偽不明の情報だったのである。

「先生ご存知なんですか?」

「いや、飽くまで噂話だったんだけどね。曰く、別室に通されて現金を渡された後には、隣の部屋に税務署員が待機しているとも聞いたことがある」

「そういう話もありますけど、税務署の方はいませんよ」

 渡海は噂を即座に否定する。

「それはまた一体何でだい」

「税務署員も公務員ですからね」

 当然と言えば当然の話ではあるが、なんとも夢のない話である。

「ああ、そうだ。先生。先生のお宅にこれを預けてもよろしいですか?」

「預けるって、そのケースをかい?」

 2493万5千円収まっているアタッシュケースを、である。

「いや、流石にこれが非常識だとは分かりますよ。ですが、持ち歩いていている方が危ないというだけの話ですから」

 もっともな話である。酔っ払いがいかにもな荷物を持ち運んでいたならば、カモがネギを背負って歩いているようなものである。

 そもそもが非常識な事態であるが、その中では常識的な判断でもある。橫山はそれを了承した。

「信用してもらっているのだろうが、何束か抜かれていたらどうするんだね」

「先生ほど稼いでいらっしゃる方が、そんなことをするとは思えませんが……、まぁその時はその時です。愛馬の預託料の足しにでもしてやって下さい」

 渡海は冗談めかしてそのように言ってのけた。

 橫山は渡海の答えに唖然とする。ほんの冗談のような問いではあったが、その答えは飽くまで「愛馬のために使ってくれ」ということであった。

「それだけあれば自分でサラブレッドを何頭か買えるんじゃないのか?」

 伊賀野の問に渡海は答える。

「……いや、それはいいかな」

 そう言ってしばらくした後、ポツリと付け加えた。

「そもそも前提になる馬主資格は取れないし、預託料の問題もあるしな」

 渡海は極めて現実的な問題を口にした。

 

 いつの時代も馬券師達の常は変わらないものである。この日、最も勝った渡海が飲み代を持つこととなった。

 橫山の家にアタッシュケースを預け、数万を取り出した後、伊賀野の勧めで彼の馴染みのバーに向かう。

 酒を純粋に楽しむなら、そして、競馬に関する話をする腹積もりなので、なるべく静かな場所がよい。ということである。

 室内は落ち着いた灯りで照らされており、やや暗く感じる。

 伊賀野は店主と一言二言交わして「奥借りますね」と伝えたようだった。

 三人は店の奥まったテーブルに座し、橫山と伊賀野が同じを注文する。

「それで、渡海は?」

「洋酒はよく分からなくてな……。オススメは何かあるか?」

「酒は強い方か? 」

「まぁ、それなりに」

「それなら同じウィスキーでもどうかね。伊賀野君がキープしてる秘蔵だったかい?」

 橫山の言葉に伊賀野は頷く。

「こういうところはよく知らんのだが、キープって高いんじゃないのか? いいのか?」

「まぁ、ダービーではお前さんの買い目を参考にして、美味しい思いをしたんでな」

「なんだ、結局取ってたのか」

「じゃあ、彼も同じヤツでお願いします」

 店員が注文を受けて去るのを見て、橫山が口を開いた。

「渡海君には、好きだった馬はいるのかい?」

「好きだった馬ですか……」

 橫山の問いに渡海は考え込む。自分は一体なんの馬が好きだったのだろうか。

「そう言われると困りますね。うちで生産された馬は皆好きでしたから。ですが、強いて言えば……」

 いずれ別れが来ると分かっていても好きな馬は数多くいた。そんな中で、特に気に入っていた馬がいた。誕生に立ち会った馬の一頭で、その中でもとりわけ印象に残っている。『この馬は上手く育てば走る』と感じた牝馬であった。

「現在うちにいる繁殖なんですが、マル……、いや、ミラージュドムールという牝馬がいましてね。父はハクリョウ。母はムールドマルセイユ。母系は遡ればミラに辿り着きます。180万下条件までは上がったんですけど、結局オープンには上がれませんでしたね」

 ムールドマルセイユは引退後わたるみ牧場に引き取られてきた。1961年にムールドマルセイユの36が誕生する。

 若い渡海は彼女の馬体を見て、ステイヤーの資質を見出していた。トキノチカラ、ヒンドスタンと掛け合わせられてきた血統書を見て納得したものだった。ムールドマルセイユはヒンドスタンよりはむしろ母に似ており、母の父トキノチカラを経由してトウルヌソルらしさを受け継いでいたように思う。

 2歳の秋、入厩しに牧場を離れる彼女を、この牧場に無事帰ってくるよう祈って見送った。既に牧場を離れようと決めていた時期ではあったが、彼女のことはどうしても気がかりであった。

 ミラージュドムールはトップスピードは程々であったが、牝馬にしてはハクリョウ産駒らしくスタミナがあり、先行する競馬が得意だった。というよりはそうせざるを得なかった。瞬発力に欠けていたのである。先行から粘り込む競馬をするので、決め手に欠けていたため中々一着に縁がなかった。

 とはいえ、この後生まれたムールドマルセイユの産駒が2勝以上上げているので、いずれこの血筋からいい馬が出せるのではないかとひそかに期待していた。

 事実、ムールドカールの母安俊の血筋から、一昨年の皐月賞とダービーを制したヒカルイマイや、昨年の皐月賞を制したランドプリンスが出ている。ランドプリンスの母ニユウパワーに至ってはムールドマルセイユの全妹であった。

「とまぁ、そういう馬がいたんですよ」

 渡海が話している間に既にウィスキーの注がれたグラスが到着していた。話し終えた渡海は、グラスに口を付けようとして、橫山から声が掛かる。

「ムールドマルセイユの当歳、見せて貰いに行ってもいいかね?」

 語尾は上がって質問しているようだったが、落ち着いた照明のため表情は完全に読み取れない、辛うじて見て取れた橫山の目は本気であった。

「見るだけならば出来ると思いますが……。本当に見るだけになると思いますよ?」

「……やはりそうなるかい?」

 当然それだけでは終わらないだろうことは目に見えている。あわよくば幼駒の購入、人脈を広げたい。といったところだろうか。

 サラブレッド取引の特殊なところは見ず知らずの人間とは取引が成立する事がないという点にある。先に繁殖牝馬の現役時代の馬主や調教師に話を通し、その仔をどうするか決めるのだ。そこで交渉がまとまらなければ、そこで初めて別の馬主に購買の機会が巡ってくるか、あるいはセリに出品されるのである。

「断言してもいいですが、ムールドマルセイユの仔もミラージュドムールの仔も、現役時の馬主が買うかもしれませんし、近親の活躍で値が上がっていますよ。去年何を付けたのかも分かりませんし」

 橫山の目から険が取れ、再び穏やかな表情に戻るが、どこか諦めているようでもあった。

 彼がどれ程馬主として苦渋を舐めてきたのか、渡海は察せざるを得なかった。

 ふと渡海は思う。そういえばムールドマルセイユには一体何を付けたのであろうか。配合を担当する祖父なら、一体何を付けようとするだろうか。渡海は一つの可能性に思い至った。

「いや、待ってください。うちの牧場の運が良ければムールドマルセイユの仔は購入機会が巡ってくるかもしれませんよ」

「……どういうことだい?」

 橫山は前言を翻す渡海に理由を尋ねた。

「これは私の予想に過ぎないんですが……、ムールドマルセイユはランドプリンスの母の全姉です。もしかしたらうちの牧場は、ランドプリンスの父と同じ馬を付けて売ることも考えていたかもしれません」

「渡海、疑問なんだが、それは結局先に元の馬主に購入されるんじゃないのか?」

「普通はそうだ。でもそうならないかもしれない」

「そこのところ詳しく」

「先生、ランドプリンスの父親って誰か覚えてます?」

「……確かテスコボーイだったね? 何年か前に輸入された種牡馬だ」

「そう、初年度からクラシックホースを出したテスコボーイです。この種牡馬を所有しているのは日高軽種馬農業協同組合でしてね……」

 そこまで言うと橫山は口角を上げて「そういうことか」と頷き、伊賀野は「つまり?」と問うた。

「『もしもうちの牧場がテスコボーイの種付けが当選して』、かつ『もしもムールドマルセイユがテスコボーイの産駒を産んでいた』のなら、農協のセリへの上場義務が発生します」

「へぇ、種牡馬によってはそういう決まりがあるんだな。確かにそれなら手に入る機会はあるな」

 渡海にはある種の確信があった。テスコボーイの種付け希望を出して、抽選に当たっていればムールドマルセイユにはテスコボーイの種が付いているだろうと。母が全姉妹で父が同じ馬なら、馬主の購買意欲をそそることは間違いない。そして、販売用にそういった種の付け方をする。配合を考えるのは祖父や父だが、このような機を見逃すはずはない。渡海はムールドマルセイユにテスコボーイを付ける公算はかなり高いと見ていた。

「いや、でも待ちなさい。セリに上がるとして、それはかなり高くなるんじゃないか?」

「……まぁ、そうなりますね。前年のクラシック勝利馬とほぼ同じ血統。父は輸入種牡馬。高くならない理由もありません」

「馬主は金持ちの世界だと思っていたけど金持ちにも色々あるんだな……。大金もコネもない馬主はどうすればいいんだ?」

 知ってか知らずか、伊賀野の疑問は橫山の現状でもあった。

「……馬で何とかしようとするなら、価格以上に走る掘出物を探すしかないだろうな」

 掘出物、つまりは一流とはいえない血統、馬体に欠点があっても、それを上回る美点を持った馬である。

 血統の良い馬は期待される分、実際の能力に見合わない評価がされることがままある。なので、血統には目をつむり、馬体の良し悪し、それも他の参加者を出し抜いて才能を見抜かなければならない。セリにやってくるのは調教師は勿論、馬喰と呼ばれる仲買人もいる。特に後者は相馬眼一本で飯を食っている人種である。そんな猛者たちを相手に値段以上に走る馬を仕入れなければならない。

 馬喰として名を馳せる渡邉常六、目をつけた幼駒は値を吊り上げてくる長村畜産牧場の長村和男。他にも何人かいるが、すぐに思いつく限りでもこういった面々が相手になる。前者は純粋に仲買人であるが、後者は現在の日本ではほとんど馴染みがないが、ピンフッカーと呼ばれるタイプで、セリで買い上げた幼駒を育成して再びセリに上げるのである。

「簡単に言うなぁ……。それが出来れば誰も苦労はせんぞ?」

 全くだ。と渡海は思う。セリ市には実家にいた頃、祖父に連れられて何度か足を運んだ。

 渡海はセリで売る方なので、参加はせず下見を見学するのだが、自分が目をつけた馬を見ている途中に名のある馬喰からの視線を感じたり、自分が遠目に良いと思った馬に既に彼らが周囲にいたりするのである。自分が良いと思った馬は決まってそれらに競り合わされるのである。

「因みに、幼駒の良し悪しは渡海君も分かるのかね?」

 二人の反応は至ってまともなものであった。そんな事ができる人間がどれほどいるものか。

 元々渡海には幼駒の良し悪しを見分けることが出来るか尋ねるつもりであったが、本人がこのように言うなら仕方がないというものである。

「随分見てませんから、昔ほど出来るかどうかまでは」

 まだ実家にいた頃、セリの会場で祖父に付いて回って馬の見方を教わったものである。

 そして、その注目した馬がどのような成績を収めたのかを確認するよう教え込まれた。

 今もなおその時の記憶と感覚は残っている。出来ない訳ではないが精度は落ちているだろうと思われた。

「もしよかったらだが、6月の千葉の2歳馬のセリに一緒に来てくれないだろうか」

「言い出したのは私ですから、構いませんが……、私は仲買人でもない素人ですよ?」

「少なくとも私よりは目利きが出来るだろう。うちの調教師の先生と一緒に見て回って欲しいと思っているんだ」

 渡海はわずかに悩む。そこまで肩入れしてもいいものなのだろうかと。

 だが、渡海は橫山に、馬主席に招待してもらった恩がある。良い馬を探す程度のことはしなければならないだろう。

「なるほど……。では微力ながらお手伝い致します。先生には今日招待して頂いた恩もありますし。頑張って探してみますよ」

 渡海はグラスに口をつける。恩を返す以上、こちらも本気で探さなければならない。

 最早馬に関わることはないと思っていた。それがこういう形で関わることになろうとは……。

 伊賀野を見るにその口元がニヤついている。思えばこの男の誘いを受けた時点でこうなるのは十分予想が出来たのではないだろうか。あるいは、馬券を外していればこうはならなかったかもしれない。

 だがそれも終わった話である。自分は馬産の世界から足抜けした訳だが、せめて恩に報いるためにもこれ位はしなければならないだろう。

 グラスを湛える琥珀色の液体が鼻孔をくすぐる。その匂いは複雑な香りをしていた。




 こういう小説を書いていると参照する資料が多いので、中々前に進みません。
 描くべきシーンはいくつか決まっていて、大体の情報は大まかに覚えているのですが、裏取りが中々大変です。記憶違いがあると怖いので。
 これまで読んできた本で、使えそうな情報は書き出しておけばと痛感しています。
 人間の方でも年齢や活躍時期があるので、その辺り資料作り等々……。

・高額配当は別室待機の都市伝説
 この小説は基本的に事実をベースとするが、これに関しては真偽不明である。
 JRAに尋ねても教えてくれるとは思えないだけに謎である。
 超高額配当を当てたらガードマン付けられたり、職員用通路から見つからないように帰してもらえるとか。嘘か真かよく分からない。一回に百万程度的中させた方が別室に案内された時、他の数千万の高額配当者が出口のタクシーまで護衛されていたとかなんとか。
 1000万的中させたら経験出来る訳だが……、ここの読者でそういう経験した方っていらっしゃいません? 勿論私も経験がない。
 別室で税務署員が待機しているという噂もあるが、渡海は常識的に考えて税務署は休みだからいなかったとしている。実際のところはよく分からない。税務署員が別室で待機しているというネタは競馬報知の漫画にあったそうな。
 そういう訳なのでこの辺は話半分でご理解頂きたい。なお、ジェラルミンケースが渡されているのは創作である。
 1000万一発で的中させたら真偽の程を教えてください。

・馬喰
 伯楽、博労とも。
 伯楽から転じて馬の良し悪しを鑑定する人。馬の病を治す人。また、馬を売買、周旋する人。
 ここでは「馬を売買、周旋する人」の意。
 自己の資金で馬を購入して転売したり、スポンサーの依頼で馬を調達する人々である。

・セリについて
 ウイニングポストの世界では昔から8月にセリが行われているが、正直これが謎だったりする。何故なんでしょうね?
 この世界では当時行われていたと思われるセリ市の日程となっている。
2023/04/19追記、普通に8月に日高でセリが行われていた事実が確認出来ました。

・ムールドマルセイユとミーラジュドムール
 記念すべき架空馬1号2号。
 ニユウパワーの全姉妹とその娘。ミラの血を受け継ぐサラ系である。
 ランドプリンスやヒカルイマイの他、八大競走を勝った馬に限ると、第1回ダービー馬ワカタカ、桜花賞馬シーエースなどがこの牝系から出ている。

 そういえば、最新作を購入したのですが、過去作のナンバリング無印の中ではかなり満足な出来な気がします。
 とりあえず、プレミアムボックス付属のCD目当てだったんですが、WP2から4曲入っていて満足しました。WP2は名作です。
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