竜頭の錬金術師   作:ONE DICE TWENTY

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ハガレン二次流行れ流行れ流行れ流行れ


第一章 錬金術の理論「基礎と応用と小技と戦闘」
第一話 錬金術の基礎「円」


 自分の国の名前、というのは気にしなければ中々気が付かないもので。

 街の名前──アルドクラウドというなんかかっちょ良さげな街に生まれたものだから、僕はアルドクラウドのレミー(愛称)という名乗りを今後使っていこうと決心したのが四日前。

 隣町はアゼンリーとヘレンスウェル。そしてウェストシティ。前者二つはそこそこかっちょいいけど、ウェストシティってどうなの、もしかして西にあるからウェストシティなのって聞いたらそうだよって帰ってきてオイオイネーミングセンスネーミングセンスって思ったのが三日前。でも東京だって東の京だしな、とも思った。

 それでお父さんの部屋にあったなんぞかものっそい分厚い本を読もうとして転んだのが二日前。まぁこの辺りで記憶を思い出すんだ。あ僕転生者じゃーんって。

 

 転生者といえばチートである。転生チート。

 

 無かったねー!

 カミサマとか出会ってないもんねー!!!

 

 それで、仕方がないので文字読めるチートで行こうとしてその分厚い本読んだら読めねーでやんの。いや、他の……日用品とかの文字はガッツリ英語なんだけど、その本に書いてあったのはこう……削った石で傷をつけた、みたいな文字で、まーったく読めなかった。

 お父さんにコレどうやって読むの、って聞いたら勝手に持ち出すなって怒られた。当然だった。

 

 そして今日、お父さんが読んでいた新聞を見て、ん? ってなった。

 そこに書いてあった国名──僕は勝手にアメーリカだと思っていたそれの綴りが違ったからだ。

 

「あめ……す、と、りす……?」

「お、良く読めたな。偉いぞ、レミー。……昨日のことといい、この子は知識欲が高いのかもしれんな!」

「あめ、すと、りす……」

「区切るんじゃなくて、繋げて読むんだ。アメストリス。──この国の名前だよ」

 

 あ、終わったな。

 そう思ったよね。

 

 アメストリス。

 ここ──鋼の錬金術師の世界かーい!!

 

 

 *

 

 

 鋼の錬金術師。

 月刊少年ガンガンで連載されていたちょいダークファンタジーな錬金術を名乗る魔法で戦うバトル漫画。手を合わせて手を当ててズズズってなってドンだ。これで説明できる。

 殺伐とした世界を、あることから体を失った兄弟が旅をして様々な人と出会って、最終的に体を取り戻すぜ! みたいなストーリーで、これがまた面白いのなんの。ダークファンタジー気味だから善人も悪人もガンガン死ぬし、血もびゅーびゅー飛び出るし、欠損とか大怪我も当たり前だし。

 なんか何百年と前から悪事を画策している黒幕もいれば、ホムンクルスとかいうその黒幕の手下もいて、それらとは全く関係なくスカーっていうテロリストもいて。

 

 っべーよこれまじっべーよ。

 無理ゲーだよこの世界で生き残るの! 

 

 と、同時に思った。

 ……国家錬金術師にならなければ関係ないのでは? あと人体錬成しなければ。

 しかもウェストシティじゃん! 作中にほとんど出てこなかったウェストシティじゃん!

 

 じゃあ普通に生きたらええやん!

 

「とはならない!」

「お、おお。レミー、どうしたいきなり大声を出して」

「あ、ごめん父さん。ちょっとよくわかんないとこがあって」

「そうだったか? ……すまんな、父さんは誰かに教える、ということをしたことが無くて……母さんが帰ってきたら、母さんに教わるといい」

「お母さんは教えるのが上手なの?」

「ああ、なんたって国家錬金術師だからな!」

 

 ん-!!

 次から次へとォ!!

 

 ……うん?

 女性の、国家錬金術師。いや……別に、居はする……んじゃないかな。錬金術は学問だし、女性軍人も少ないながらいる。あ、国家錬金術師になると強制軍属になるから、って意味ね。

 でも作中には出てこなかったなぁ。出てこなかったってことは戦闘向けじゃないのかな。基本バトル漫画だから戦えない錬金術師はあんまり出てこなかったんじゃないかって思ってる。勘の良いガキ嫌いおじさん以外ね!

 

「あ、そうか。国家錬金術師がわからないか。ん-、国家錬金術師っていうのは」

 

 と、お父さんが今僕の思考した事と全く同じことを説明してくれている中で、ちょっと考える。

 お父さんも錬金術師。お母さんも錬金術師。

 そして僕も今錬金術を習っている。

 

 ……い、いや。そんな親子いっぱいいる! いっぱいいるよ! だから目をつけられるとかないはず! そもそも僕がそんな優秀な錬金術師に成れるとは思えないし!

 

「レミー? わかったか?」

「うん!」

「そうか。やっぱりお前は賢いな。……それで、どこがわからなかったんだ?」

「あ、えっとね。錬成陣の構成物の、こういう独自のマーク、って奴なんだけど……」

「ああ、それは」

 

 あ、でも、国家錬金術師か。

 じゃあもしかして、ウチって結構裕福だったりする?

 

 

 *

 

 

 しなかった。

 お母さんの錬金術はめちゃくちゃお金を使うらしい。だから研究費全部持っていかれるんだって。お父さんは別にお母さんのお金目当てで結婚したわけじゃないし、一応軍人ではあるからそこそこのお給金はあるしで、特に贅沢をする気も無いしで。

 ……軍人か。

 え、待って今何年? イシュヴァール殲滅戦いつ?

 

 1899年。

 ……エドウィンリィより年上じゃーん!

 

 じゃなくて!

 確かイシュヴァールの内乱が起こるのが1901年。そっから1908年まで内乱は続いて、その1908年に殲滅戦がある。

 少なくとも最初の頃は東部の軍人が対処するからいいけど、殲滅戦は各地の軍人呼び込んで、さらに国家錬金術師も呼んでの殲滅戦をしたはず。

 

 ごくり。

 喉が鳴るのも仕方が無いと思う。アメストリスは侵略国家で、常時戦争している。僕のいるここ西部だってペンドルトンだっけな? って場所で隣国とドンパチやってるし、その他いろんなところで戦いの火の手が上がっている。

 いる、けど……今の今まで平和だったんだ。アルドクラウドって結構内側にあるから。

 ただそれが、もし戦争に……って考えると、冷や汗が出てくる。

 

「レミー、大丈夫か? 唇青いぞ」

「あ……うん。わかんない、ちょっと頭くらくらするかも……」

「なにっ!? ……いや、そうか。いきなりこんな高度な内容やったらそうなるのも当然か。よし、レミー。今日はここまでだ。なぁに、時間はたっぷりある。何年かかるかはまだわからないが、レミーも立派な錬金術師になれるさ! だから、今日は休め。な?」

「うん……そーする……」

 

 僕は転生者だけど。

 だけど、今の両親の事は大好きだ。優しいし。かっこいいし。

 それが──その命が失われる可能性があって。

 

 今僕の目の前に、それを救えるかもしれない手段があって。

 

 あ、いや、でも殲滅戦って一方的なんじゃないっけ? そんなに心配しなくても大丈夫……いやいやいやいや、杞憂ならそれでいいんだ。正直イシュヴァール人に対しても色々思う所はあるけれど、我が身と我が家族の身には代えられない。

 流石に今からどんなに頑張って勉強したってキング・ブラッドレイに「もうやめましょうよ! 命がもったいない!」って言えるほど偉くはなれないだろうし。言ったらその場で殺されそう。

 

 えーと、で、だからー、僕がすべきはー。

 

 ……ワッカンネ。とりあえず錬金術勉強しておけばなんとかなるでしょ!

 

 

 

 

 

 むずい!

 

 むずい。

 いや、錬金術って言ってしまえば化学反応なんだ。理解分解再構築。その物質が何かを理解して、一旦分解して、思うままの形に再構築する。

 うーん?????

 再構築うーん?????

 

 理解はわかるよ。分解もまだわかるよ。

 再構築うーん?????

 

 そもそも錬成陣というのが鋼の錬金術師の作者である荒川弘先生のオリジナル用語。元の錬金術っていうのは化学実験のことで、卑金属を貴金属に変えるぜべいべーみたいな話だ。決して地面から槍をズズズって抜きだしたり指パッチンしたら炎が燃え上がったりするアレじゃない。

 ただ一応作中でも理論的なものは説明されていて、詠唱したら魔力でドーン! みたいな魔法じゃないのはわかっている。いやファンタジーにおける魔法も原理があるのかもしれないけど。

 

「まず、円を描きます」

 

 お父さんの持っていた本はかなりの上級者向けらしいので、初心者向けの教本──といってもそれなりに高価らしく、お父さんのおさがり──で何とか頑張ってみている。

 初めに全部教えてしまうとお父さんと同じ錬金術しか使えなくなるかもしれない、とのことで、最初だけは自分でやってみなさいって言われた。納得はある。職人とかの弟子も、その職人の培った技術だけ覚えて他の工房行くとお前何やってんだ? みたいに言われることあるからね。

 

「……まず、円を描きます」

 

 さて、円を描きます。

 ……ムズいんだって! できる? 普通できる? 正円を何のツールも無しに描くことできる!?

 Shift押しながらマウスドラッグじゃダメ!? おいシフトキー欲しいって! 勝手に正円なってくれないって!

 

 よし!

 

 諦めよう。僕は諦めが早いんだ。ただそれは全体を諦めるんじゃなくて、やり方を色々変えてみるって諦めだから大丈夫!

 

 文明の利器──コンパス!

 

 シュァラッ!

 ……あぁ、なんて美しい正円。見ていてあまりに気持ちがいい。

 

「こら、レミー。ダメだろう? 円は錬金術の基本。毎回毎回コンパスなんて出してたら遅くなるし、カッコ悪い。自分の手だけで描けるようになるまで練習! いいな?」

「た……確かに、壊れたラジオを直す時にコンパスを……でっかいコンパスを取り出すのは流石にかっこ悪い……!」

「えらく具体的な例だな……だが、そういうことだ!」

 

 コンパスで円を描いてからだと、テレレレレテレレレレテッテレーレー↑↑のあのBGMも流れてくれない!

 確かにかっこ悪い……そうか、カッコよさ。即ちスタイリッシュさ!

 片手で正円を描けたらかっこいい!! 確かにそうだ……。

 

 でもできないものはできないんだよね!!

 

「できるまで、練習だ!」

「そ、その練習は後でやるとして、今は再構築について」

「基本を疎かにしたらダメだ!」

 

 ……その通りでございます。

 基本を疎かにする奴は何やってもダメだ。疎かにしても大丈夫、とか言ってる奴は単なる大言壮語か、もしくは本当に疎かにしても大丈夫な天才、あと本人が疎かにしてると思っているだけで、常人が見たら物凄く努力してる無自覚天才。

 これのどれかである。

 そして僕は凡人! ならば基礎を疎かにしてはいけない! その通り過ぎる。

 

 ──よし、僕は──正円を描けるようになる!

 

 

 

 さて、正円をフリーハンドで描く、という技術は実はそこそこある。

 一つは手のどこかしらをコンパスの軸足に見立てて線を引くこと。手の可動域的な問題で描くものを回さないといけないのがネックだけど、結構綺麗に描ける。

 ただこれを使えるのはそのネックを許容できれば、の話。地面や壁に錬成陣を描くとき、どうしてそれを回せようか。ムーリー。無理だ。なのでこれはナシ!

 

 もう一つは直感で描くこと。今僕が苦戦してたやつね。これは最終手段。

 

 三つめはゆっくり描くこと。

 二つ目と何が違うかっていうと、ちゃんと角度をみている、中心点を考えながら引いている、一気に書かないとか……まぁ、そういうこと。

 正直三つ目が一番確実だ。

 だけど確実に遅くなる。そう、カッコ良くないのである。

 

 つまーり!

 

 結局シュァラッと綺麗な円を描けることがかっこよさへの第一歩!

 

 努力あるのみ!

 

 

 

 

「無理過ぎる」

 

 え? なに? 前世イラストレーターとか漫画家とか美大の人とかはどうやってたの? コンパス使ってたの? 使ってたか。そうでなくともあるよね正円描く道具くらい。

 

「……待てよ?」

 

 待てよ。

 そうだ、別にこんな大きい円じゃなくてもいいんじゃないか?

 

 たとえば……チョークを三本持って、一気にグリッと回すとか。

 

 ほら!

 まだ練習は必要だけど、かなりそれっぽい円になった。

 これでいいじゃん!

 別に何もそんなでっかいもの錬成するばっかりが錬金術じゃないって!

 

 よーし、クリア!

 

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