竜頭の錬金術師 作:ONE DICE TWENTY
1910年。
この二年間、実家に帰ってちょっとした細工をしたり、お父さんとお母さんといろんな話をしたり、お父様といろんな話をしたり、ホムンクルスと情報交換をしたりと色々あった……にはあったんだけど、国を揺るがす大事件とか、僕自身が襲われたり、逆に僕が殺しに行ったりは発生しなかった。
第五研究所としては様々なキメラ……主にサジュの研究成果を上にあげることで地位を高め、中央犯罪博物館も人気を博して問題らしい問題がない。
イシュヴァールやアエルゴ、クレタ、ドラクマも激動の一年二年で光陰矢の如しだったけど、何もない日々もあっという間に過ぎていくものなんだなぁ、なんて縁側でお茶を飲むおじいちゃんのような感想が口を衝く。
「そんなこと言えるのはレムノスくんだけよねぇ」
「ああ、所長がどれだけの修羅場を潜って来たかは知らねえが、そこそこ色々あっただろ」
イリスとオズワルド。二人の言うことは、まぁもっともではあったりする。
そこそこのこと。──たとえば、キング・ブラッドレイ大総統の視察とか。どうせ何も言われないって僕はわかっていたけれど、みんなは外道で非道な研究している自覚があるから大騒ぎになった。色々隠して、いろいろ整えて。
結局来たのは地上だけ──犯罪博物館を見に来ただけってオチだったり。
「いやそんな平和なのじゃなくて、ありましたよね、サジュの作ったキメラの異臭騒ぎ!」
「ああ、恥ずかしいな。アレは……今でも本当に申し訳ないです……」
異臭騒ぎ、と言えばそこまででもないように聞こえるけど、サジュの作ったキメラがお腹を壊して有毒ガスが研究所内に充満する、という事件があった。サジュの監視役の錬金術師が一人昏倒した他、数多の死刑囚が体調不良に陥るなどの被害が出て、確かに大変だった。
ちなみに天使はまだできていないし、あの浮いた現象もまだ再現できていない。再現できていないのか、違法な何かを用いていたから監視付きだと再現できないのかまではわからないけど。
「あったと言えば、言えば私ですよ私! 成果を上げました上げましたどうぞ褒めてくださいええ、ええ!」
「今何ペア目だっけ?」
「……じゅ、十ペア目……目?」
そう。
ジョルジオとモーガはもういない。死んでいる。
錬金術を覚える過程でリバウンドを受けて死んだ。簡単な死だった。どうやら思念エネルギーを込めすぎる、あるいはバランスが悪いことが原因らしく、それを調整するには二人の思念を同量にしなければならず……みたいな。
結構試行錯誤が続いている。
ただ、成果というだけはあって、この十ペア目はようやく成功した。
錬金術を扱う二人。同量の思念エネルギーを錬成陣に込めることのできる二人。
──つまり、兄弟。
なんならなんとスライサー兄弟である。魂定着の陣の犠牲にはならなくて良かった、と。
本来スライサー兄弟に死刑判決が下るのは1912年だったはずだけど、必要だから、という理由で早められた。そういうことしちゃえるのが独裁政権の良い所。
スライサー兄弟は錬金術に適性があり、呼吸も合わせることができて、意思疎通もできる。
あまりにもピッタリな存在だったってわけだ。
そんなわけで──僕らは二年間、苦楽を共にし、誰が誰を裏切ることもなく、誰が誰と内通することもなく順風満帆にすべてが上手く行った、というのが結論。
だったら、僕もようやく人を信じることができたかもしれない。
「アンファミーユ。カリステム。ちょっとこっちへ来てほしい」
「へ……? 私、ですか?」
「ええ、ええ、そのあの、ええ、顔が怖いのですが、ですが」
子供の表情はわかり難いけど、僕ももう15歳だ。
そろそろ顔で何を物語っているのかわかる頃合いであると言える。
「こっちへ来てほしい」
ごくり、と二人が唾を飲む。
何か──心当たりがあるのか。
「三度目を言わせる気かな」
「い……いえ、行きます。な、なんでしょうか」
「……」
二人を──僕の傍において。
「え」
「──ッ!?」
真っ先に行動したのはサジュだ。
両手を合わせ、鎖に対して錬成エネルギーを迸らせる。が、残念。いつも使っている単なる鉄じゃあないからね、分解はできないよ。
その背後でイリスが赤い錬成反応と共に鎖から抜け出す──も、途中で足が止まる。気付いたらしい。
既にこの第五研究所地下は全て僕の支配下にあることに。
オズワルドは機を窺ったまま動かない。
「しょ、所長……?」
「二年間、じっくり調べさせてもらった。結果──アンファミーユ・マンテイクとカリステム以外は裏切り者であると僕は判断した。何か反論はあるかな」
「あります! 兄はずっと私といました! 裏切るような行為を取ることができません!」
アンファミーユの悲痛な声。
だというのに、オズワルドはだんまりだ。むしろ唇を噛んで、ギロチンを待つかのように動かない。
「気付かないのは当然だよ、アンファミーユ。何せ彼は、
「私……で?」
「そう。君達二人は様々な錬成兵器のパーツ開発を任せていたね。キメラ・バッテリーやキメラ・トランジスタに始まり、本当に様々なものを。その中の一つに、CPS……親機であるキメラを持っていれば、子機であるキメラがどこにいるか探知できるようになるものがあったと思う。覚えているかな」
「勿論です。小型化もして、対象の食事に混ぜても気付かれない程のサイズと精度を両立させた、今までで一番の成果だと思います」
「そうかい。──ところで君達兄妹は、兄妹の一線を踏み越えて体の関係を持っているよね」
言えば、アンファミーユはバッと自らの身体を掻き抱いてバックステップをした。
もはや研究所の誰もが知っていることだ。知られていないと思っているのはアンファミーユだけだっただろう。
「そ、そそ、それが何をッ!」
「オズワルド。君、アンファミーユの体内に一体幾つのキメラを仕込んだのかな。CPS以外にも──それを改良した爆発物や毒物の類を。親機からの思念エネルギーを受けて息絶え、中の物を吐き出すその代物を」
「……56」
だんまりだったオズワルドの吐いたその言葉に、アンファミーユは今度こそ恐ろしい物を見る顔をして、けれどその場に座り込む。
首や腹を押さえて──「あ、あ」と声にならない声を出して。
「アンファミーユ。兄との交わりだけでなく、兄の手料理を食べることも多々あったね。そして君は体調を崩すことも多くあった。申し訳なさそうにしてくれていたけれど、あれは完全に毒物の症状だった。アンファミーユ。君だけなんだよ。オズワルドの作ったものを信用して口にするような子は。オズワルドに体のどこを触れられても怪しまない子は」
親機を持ってさえいれば、対象を意のままに操ることのできるキメラ。
たとえば市販薬品のようなカプセルで売りだしたら。たとえばセントラルのレストランにこっそり混入させたら。
それだけで──集団食中毒も真っ青なバイオテロを起こせる。
その臨床試験をオズワルドはアンファミーユで行っていた。
死刑囚ではダメだった。
健康じゃないから。
「弁明はあるかな」
「無いスわ。一切。──が、早まんなよ所長。アンファミーユは貴重な人材だろ? 俺を殺してみろよ。死にますぜ、そいつも」
「妹を人質に取るのか。良い性格してるね」
「実験動物に親愛を抱く方がどうかしてるだろ」
もう、アンファミーユは蒼白顔だ。
絶望の淵にあるのだろう。何度かえずいているし、今朝も食べたオズワルドの差し入れを吐きだそうとしているのかもしれない。
「そうかい、じゃあ次に行こう。イリス」
「……」
「君はそもそも隠す気がなかったね。子供だから、という理由で僕を排斥し、実験のほとんどを隠れて行っていた。成果物を取られようものなら泣き叫び、無理だとわかれば秘密裡に作り出し。夫と子供のトラウマなんて嘘っぱちだ。なんせ君、結婚なんか一度もしていないだろう」
「……そんなことはないわー。レムノスくんにはわからないと思うけどー、私はちゃんと」
「正直脱帽しているよ。君は恐らく僕の賢石錬成の仕組みをどこかで知っていたんだ。そして思念エネルギーについても研究をしていた。この研究所に来る以前からね。だから、なんだろう? "身を挺してでも子供を守る軍人"のイメージをつけたのは」
あるいは中央軍の錬金術師だったか。
とかく彼女は初めから賢者の石の生成方法を知っていた。
そして思念エネルギーについてもある程度の考察を持っていた。だから自ら思念エネルギー研究課に志願したんだろうし。
「子供の方が大きな感情を持っている。君のその手にある賢者の石は、保護した子供で作ったものだね?」
これは第五研究所としては最近分かった事実──あるいはイリスがひた隠しにしてきた事実だけど、思念エネルギーの総量とでも呼ぶべきものは年齢に反比例する。
つまり赤子が最も高い思念エネルギーを持っていて、老人は乏しい思念エネルギーしか持っていないのだ。だから賢者の石も、老人で作るより赤子で作った方がより高密度で高純度で、且つ大きな石を得ることができる。
「若い独身男性の錬金術師を多くつれてきたのもそういう理由だろう? だから、自ら子を孕み、それを産み落とし──使うためだ」
「……だとして、それが何の裏切りになるのかしらー? オズワルドもだけど、裏切っても内通してもいないでしょ?」
「そうかな。ねぇ、サジュ。──僕を材料にしたくて、二人に依頼をしていた君はどう思う?」
サジュは──幽鬼のような表情で、にやりと笑った。
サジュ。
イシュヴァール戦役に参加していた軍医で、生体錬成に長けた存在。
彼は天使を作ろうとしていた。
けれどそもそも天使とはなんだろう。彼は何故、明確な天使像を持ってその目的に邁進できていたのか。
それはだから、見たことがあったからだ。
「初めて少将を見た時、あなたはまだ大佐だった。けれど、あなたは子供ではなかった。噂にあった悪魔、悪夢、忌み子──そのどれもに当てはまらない、その年齢であまりに理知的で、あまりに理性的で、あまりに冷静で」
僕は貴方に恋をしました。
そう、続ける。
「ああ、恋愛感情のような下賤なものと一緒にしないでくださいよ? 僕は貴方に天使を見出したんです。貴方のことはロックベルという医者夫妻に聞きました。冷徹で冷酷で、けれど兵のためを想って行動する子供。その人物像とは裏腹に、残留連鎖生体錬成弾や錬成地雷と言った非人道的兵器の開発。僕はね、思ったんです。──貴方は天使で、人間ではないんじゃないか、って」
「飛躍した思考だね」
「明らかに見下した思考でした。人間を人間だと思っていない。駆除するべき害虫であるとしか思っていない所業。神を守るために遣わされた尖兵。そういう風にしか見えなかった。貴方は明らかに僕たち人間と価値観が違う。世界観が違う。故に僕はまず、貴方を作ろうとしました」
明らかに狂った発想だ。
飛躍も飛躍だし、意味が分からないところがいくつもあるし。
けれど、サジュは当然の話をするかのように言う。
「結果がコレです」
言って見せるは、左目。
──それは、義眼。
「人体錬成を行い、失敗し、僕は左目を持っていかれました。代わりに真理を見たことで手を合わせるだけで錬成が行える、なんて特技を得ましたが、正直使いどころのないもの。真理を名乗るクセに天使の作り方は教えてくれませんでしたし」
「あの仮初の天使も真理の知識からかい?」
「いえ、アレはただの手品ですよ。イリスから借り受けた賢者の石を用い、あの見てくれだけの天使の足元の空気を固体にして台座にしました。等価交換どころか物理法則まで無視できるのが良い所ですよね、賢者の石は」
だからイリスが助け船を出したわけだ。
そして説明も出来なかった。賢者の石を使いました、なんて言えなかったから。
「面接のときに言いましたよね。死刑囚を使って天使をつくっても意味はない。人間如きを素材にしたって意味はない、って」
「言ってたね」
「でも僕は、所長を人間だと思っていません。だから材料にできると思った。イリスには賢者の石を、オズワルドには薬物をそれぞれ依頼し、所長という材料で天使をつくる──その計画を始めました。利害の一致という奴ですよ。僕ら三人はそれぞれに互いの悪行を知っていましたから」
サジュがもう一度手を合わせ、鎖に分解を行う……けれど、それも無効に終わる。
精々試すがいいさ。君が死ぬまでの間ね。
「──唯一の懸念点は、そこの男でした。こっちで経歴を調べても、会話で探りを入れても、何も出てこない。計画決行段階はカリステムのせいでかなり遅らせられましたよ。なんせカリステムの腕は恐らく僕たちの誰よりも上だ。正義感なんかで所長を守られたら目も当てられない」
「それは甘い計算だね。カリステム以外にもあるだろう、懸念点」
「少将自身、ですか? それは何も問題ないですよ。貴方を想定した対策はしてある。気付いていますか? 貴方の体内にも」
「キメラがいる、って? そりゃ気付いているさ。昨日オズワルドからの差し入れを食べたからね」
だからこそわからない。
何を余裕ぶっているのか。
「僕はずっと言っているよ。裏切り者、内通者は殺すと。──僕に仇為す計画は裏切りでしかない。故に君達三人を殺す」
「ま──待って!」
「待たない」
鎖で、絞め殺す。
ぐちゃ、と。
……ならなかった。
代わりに、ぼと、と何かが落ちる。
「竜頭の錬金術師、レムノス・クラクトハイト。──その弱点は錬成速度が圧倒的に遅いことだ。ならば錬成中の錬成陣に違う要素を描き足してしまえば、錬成エネルギー不足でリバウンドが起きる。あまりにも致命的な弱点」
落ちたのは、僕の腕。
……割込錬成か。
「言ったでしょう、計画の決行はかなり遅らせられた、って。──つまり、今は行けると踏んでいるんですよ。何故なら」
「──僕のサンチェゴに細工をしたのは君か、カリステム」
「はい、はいはいはい。ええ、とても簡単でしたでした。地中に生成される錬成陣を孕む機械時計。15秒をかけてゆっくりとゆっくりと錬成されるこれに、隣から細工をするする、簡単簡単あまりに簡単。何か疑問はありますか? 私が懐柔されたことですか? ですか?」
「所長なら僕たちを処断する時にカリステムとアンファミーユを隣に置くって思ってましたよ。貴方はそういう、芝居がかった演出を好む癖がある。そして、今、アンファミーユが貴方に詰め寄っていますから」
「ああ。じゃあな、アンファミーユ」
軽く。
彼女が驚きと悲嘆で彼の方へ振り返る前に、オズワルドから思念エネルギーが流れてきて──アンファミーユに。
到達しなかった。
「……あ?」
「そうだね。知識不足が何よりもの敗因だろう。僕が竜頭の錬金術師であり、君がイシュヴァール戦役の軍医であった。それが全てだ。クレタ、アエルゴ、ドラクマでの戦争に参加していれば少しは気づけたかもしれないのに、勿体のないことだ」
さっき落ちた腕を拾う。
拾ってくっつける。粘土細工みたいに。
「!?」
「昔ね、イシュヴァール戦役の時の話なんだけど、僕ってば慢心しててさ、死んでいると思ってたイシュヴァール人の横で雑談なんかかまして、不意打ちで腕をぐっさりやられて、骨が歪んじゃったことがあるんだよ。その時は生体錬成や絶対安静でなんとかなったんだけど、歳を取るにつれてその歪みが大きくなってさ、手術が必要なくらいのひずみができてたわけ」
だから切り落としたよね。
と、軽い口調で言う。
邪魔だった。
要らないと思った。だから斬って、そこに機械鎧を入れた。普通の人体より遥かに便利な機械鎧を。ま、ダミーの皮膚は纏ってるから、見た目じゃわからないんだけど。
「サンチェゴへの割込錬成による思念エネルギー不足だっけ? 僕が考案したものなんだから僕が対策してないはずないだろ。僕はサンチェゴに、常に過剰量の思念エネルギーを送っているんだよ。君達と違って僕は錬成できる数に制限があるからね」
だから。
「その応用で、僕を中心とした一定範囲内の錬金術は全て霧散する。ノイズ、と呼んでいる技術だ。だから安心して良いよアンファミーユ。君の体内のキメラは発動しない。そしてもう一つ、狭窄錬成というものも行っている。だからアンファミーユとカリステムをこっちに来させたんだ。これは思念エネルギーを詰まらせる──届かなくさせる錬金術だよ」
まぁ錬丹術なんだけど。
僕の目の前には両側から強い「流れ」が来ているから、キメラ程度の思念エネルギーじゃこの流れに逆らうことはできない。
「カリステム。君が懐柔された理由もなんとなくはわかったよ。──君さ、誰でも良いんだろ?」
「あ、はい、はいはい。そうですそうです。別に上司が所長になろうと彼らになろうと私は変わりませんし、ませんし、やることも同じですしですし。だから彼らが所長に阻まれても同じ、同じです。ここで私が死んでも特に何も何も関係はなく」
「うん。でも君のその行為は裏切りだから、ここで死んでもらうよ」
「わかりました。スライサー兄弟のことはお任せ、お任せしました。研究資料は私の個人ロッカーに在り、在りますのではいはい、大丈夫です。少将なら読み解けるでしょうそれではでは」
ぐりん、と。
カリステムの首があり得ない方向に曲がる。
そのまま──絶命した。
……自決とは、恐れ入った。結局君が誰なのかわからなかったけど……ふむ、君の遺体はもう少し調べさせてもらうことにしよう。
「そうだ、イリス、サジュ。死ぬ前に一つ良い物を見せてあげよう。──君達の見たかったものだ」
背中に、白が生える。
白い、白い──結晶のような翼。二年の研究結果の一つ。
「……ああ」
「天使、と。そう呼んでくれて構わないよ」
潰す。
今度こそ、その胴体を鎖で握り潰し、頭蓋を突き刺す。
二年間。楽しい毎日をありがとう。さようなら。
さて、あとは。
*
「……所長。お願いが、あります」
「何かな、アンファミーユ」
翼の生えた所長。
アレがなんなのかはもうわからない。アレが誰なのかももうわからない。
もう、どうでもいい。
信じ縋って来たものが──私を、実験動物にしか見ていなかった、なんて。
もう。
「私と兄を、一緒に殺してください」
「君は僕を裏切っていないのに?」
「兄は家族なので、連帯責任です」
私の言葉を聞いてか、鎖が鎌首をもたげる。
じゃらじゃらと音を立てて、今しがたイリスとサジュを殺した鎖がこちらへ来る。
「そうだね。確かに、オズワルドだけを殺したら、アンファミーユ。君は復讐者となって僕を殺すかもしれない。復讐の芽は摘んでおくべきだ」
「はい。後悔は、ないです。──お願いします」
目を瞑る。
こんな。
こんなことで、私の生は閉じるのだ。
依存していた自覚はあった。けれど唯一の肉親なのだからと言い訳をしていた。
──だからこれは、無知に対する罰。
「さようなら」
ああ。