竜頭の錬金術師   作:ONE DICE TWENTY

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第七話 錬丹術の基礎「遠隔錬成(ぶっつけ本番)」&おかえり

 錬金術師は自らの研究内容を他者に明かさないように、それを暗号で書く、という習慣がある。

 これは単純に悪用を防ぐためであったり、利益を損なわないようにするためであったりするけれど、やはり一番は「ちゃんと理解していない人間がそれを使って大変なことになりかねないから」という意味合いが強い。

 研究者は基本的に独善的というか他者を見下し気味というか、自分こそが一番錬金術を理解している! って思っている人たちの集まりなので、研究内容を単純に盗み見られる分には「ハッ、使いこなせるわけあるまい!」となる。が、同時に「オイ待て待て使いこなせなかったら大変なことになるのわかってないだろ!?」ともなるわけだ。

 まぁ普通に盗まれるのが嫌だって人も多くいるけど。

 

 とかく、研究内容の暗号化は必須。エドが旅行記、マルコーさんがレシピ集、マスタング大佐が女性名であったように、僕も暗号化して自身のマークや錬成方法を記して行こうと考えた。

 が、まだ隠すような錬金術をしているわけでもなし、錬金術を習うだけでもヘロヘロなのに、独自暗号を作り出せとか絶対無理。日本語で書くのも手ではあったけど、シン国では普通に漢字使ってるし、さらに東にはショーギを遊戯とする島国があるらしいのでこれも無し。

 ただ僕の頭って奴はあんまり回転速度が速くない上に記憶力もそこそこでしかない。

 だから研究日誌、あるいはメモ帳というのは欲しい。

 

 そこで考えたのが、前世にもあった数字を使った暗号文こと──ポケベル暗号である。

 "数字で語呂合わせをする"、"日本語を知っている"、"語呂合わせが直感的に理解できる"の三つが揃わなければ読み解けないこの暗号は、さらに紙面全体を数字で埋め尽くすことでぱっと見の難解さを向上。

 こんな幼子の研究日誌誰が見るんだ、という問いは勿論想定済み。普通は誰も見ない。誰も気にしない。

 

 今、僕の腕の中に、小動物にしてはあまりにも重すぎるそれが入ってきていて、「へぇ、何書いてんの?」とか言って当たり前のように覗いてきたリスがいなければ、僕はその問いに対して「確かに……」と返していたことだろう。

 

 リス。

 ……なんかもう、毎日のように来るようになっちゃったんだよね。

 イシュヴァール戦役始めるまで暇なんだろうな、多分……。あとホントはもっと死ぬほど重いと思うんだけど、もしかして僕のために減量してくれてるのかな。それともある程度は操作できるんだろうか。体内の疎密操って……みたいな。じゃなきゃもっともっと陥没してるよね地面とか枝とか。

 

「数字の羅列? 何これ」

「数字、読めるんだリスさん」

「あのさ、前も言ったけど、アンタら人間は動物を馬鹿にしすぎ。数字も読めるし文字も読めるよ。人間の言語を発声するに至る声帯が無いだけだって。あ、俺はトクベツね」

「うん……」

 

 まぁそういう話は前世にもあった。犬も猫も全部理解してて、理解した上で無視しているし、理解した上でわかってやらないって態度を取ってる、みたいなの。

 賢い知性体はどうしたって自分以外が賢くないと思っちゃうものだからなぁ。だって言葉通じないんだもん、って。

 

「あぁ、これ錬金術師の研究日誌って奴? ハ、見習いがいっちょ前に研究日誌を暗号化してるわけだ!」

 

 グサ、グサグサ。

 ……そうです。僕の研究内容なんか暗号化する意味なんてほとんどない。自分だけの錬金術がほとんど確立していない状態でこれを書く意味なんかない。その上でリスには、新しい暗号をわざわざ作り出した、という風に映っているんだろう。

 アレだよね。調子に乗って大人ぶってる、みたいな。

 あ、でもいいんじゃないソレ。そういう感じに侮ってくれたら、コイツは……コイツは愚かにも人体錬成に手を出すだろうから狙い目だな、とか思うのかなぁ。あー。あー。

 

「レムノス。おいレムノス?」

「え、あ。あ。はい。なに?」

「お前の錬金術、他のを見せろよ。この前の土掘る奴じゃなくて」

 

 あれは掘ったんじゃなくて隆起させたんだけど……という言い訳はしない。掘っただけ。うん、ソウダネ……。そうとしか見えなくても不思議はないよネ……。

 

「もっと派手なのないワケ?」

「だから、派手なのはお父さんがいないとできないんだって」

「いいじゃんか、一回くらい。怒られたって謝れば許してもらえるんだろ? それに、ここには俺がいる。今更リスじゃ無理、とかいうなよ?」

 

 うわぁ、誘惑の類だ。

 悪魔の誘いって奴だ。甘い言葉に惑わされて富を掴んで、破滅する奴の構図だ。

 

 これ……断るべきだろうか。

 断るのは知性的過ぎ? でも了承するのはなぁ。

 リバウンドの恐ろしさは僕だってわかってる。エド達のは人体錬成のリバウンドだから最も大きいものであると仮定したとしても、リスクはリスク。どれほど小さな事象を為そうとしたリバウンドとて、何かしらの傷は負うのだろう。

 

「レムノス?」

「うーん。怒られるからやんないんじゃなくて、怖いからやんないだよ、リスさん」

「怖い?」

「うん。錬金術は怖いものだからね。やろうと思えばなんでもできちゃう」

「そりゃ例えば──人間をつくる、とかか?」

 

 わお、いきなり核心を。

 

「人間を作るのはダメだよ。法律で禁止されてる」

「でも罰則はない」

「……良く知ってるね」

 

 そう。

 実は人体錬成、禁止はされていても罰則は存在しない。禁固刑もない。罰金すらない。

 逆に金を作ることを禁止する法律には物凄い罰則が存在する。ウェストゲート事件以降は錬金術師、並びに国家錬金術師は金を作るべからず、っていうのは強化されて周知された。

 

「でも、ダメだよ。実験で作っていい人間なんかいないから」

「実験じゃなけりゃいいってのか?」

「ううん、そうじゃないよ……そうじゃなくて」

「研究者なら禁止されているものにこそチョーセンするべきだと思うけどね。アンタら人間はそこが理解できない。目の前に目に見えた謎があって、それを明かそうとしないくせに、自分たちは影を照らし世界を明るみのもとに暴き出す者だって喚く。やるべきことは他にあるだろ、錬金術師」

「……よくわかんないかな」

「あ、そう」

 

 お。

 これは、興味を尽かしてくれたかな?

 

 まぁ言いたいことは正直わかるよ。ブラックボックスというか、わざわざ「禁止していますよ」ってものがあって、それを無視して世界の真実を突き詰める、探求するっていうのは……多分、偏執的且つ妄執的な研究者からしたらあまりにももどかしい話なんだろう。

 人体錬成。

 もう少しいうのなら、魂を錬成する、という行為は。

 

「じゃあさぁ、レムノス」

「う、うん?」

「コレ、何かわかるか?」

 

 言いながら──リスが尻尾から取り出したのは。

 赤く、妖しく光る小さな石がついた指輪──。

 

「綺麗な、指輪?」

「これはな、錬金術の効果を底上げしてくれる指輪なんだ」

「底上げ……」

「そう。アンタ、自分の思考速度に悩んでただろ? 今も理解の及ばないことを理解の及ばないままにしてた。俺が見てきたエリートの錬金術師って奴はそういうことしないんだよ。"よくわかんないこと"をそのままにしておかない。──これを指に嵌めりゃ、いろんなことが試せるぜ。アンタみたいに思考速度の遅い奴でも、望み通りの研究結果が得られる夢のような指輪さ」

 

 それをリスは、器用にも僕の指に嵌めてくる。

 ……これ、嵌めたら取れない、みたいな呪いかかってないよね?

 

「それでも人間は作らないよ」

「……なんでだ?」

「僕の研究にそういうの含まれてないし。何より、材料がわからないからね」

「だから、そういうのすっ飛ばせるのがコレなんだって!」

「これは効果の底上げなんでしょ? 錬金術は理解、分解、再構築の段階を取る技術。これが効果の底上げをするものだっていうなら、再構築の増幅をするものだろう。でも僕には理解の部分が足りていない。だからやんない。理解しないまま錬金術を使えばリバウンドっていう怖いものが来るんだ」

 

 それは、錬金術の使えないリスなりの勘違いなのかもしれない。

 この赤い石でできるのは再構築時の凄まじいまでの効果増幅。あと少ない思念での錬成と、錬成速度の向上。

 

 物を理解すること、に関してはこの石は何の影響も及ぼさない。

 

「これは返しておくよ、リスさん」

「……冷静だね、いつにまして」

 

 ひゅ、と背筋が冷える。

 やばい。饒舌過ぎた? この赤い石を知っているから──その末路も原理も知っているからこその及び腰が、何か気付かせた?

 

「レムノス。お前さぁ」

「──ただいま戻りました。レミー、動物と遊んでいるのですか? 嫌がっているのであれば、無理に抱き留めるのは感心しませんよ」

「──」

 

 ぴょん、と跳ねて、茂みの方へ逃げていくリス。ああ、指輪返しそびれた。

 

「あ。……ごめんね、レミー。私が驚かせてしまったようです。本当は遊んでいただけだったりした……のでしょうか?」

「ううん、大丈夫。おかえり、お母さん」

「はい、ただいま。──お父さんは?」

「ジョギング中」

「よろしい」

 

 こういうの、間一髪っていうのかな。

 本当にありがとう、という言葉を送りたい。明らかに多分、さっきのままだったら何か……どうにかなっていた気がする。

 

 指輪は……捨てないでおこう。いや、いざとなったら使う、とかじゃなくて、これをもしお母さんやお父さんが見つけてしまった時、それを使ってしまった時が怖い。リオールのコーネロ司祭の二の舞になる可能性は大いにあるんだ。まだレト教出てきてないから二の舞ではないのかもしれないけれど。

 そしてその末路は、語るまでもない。

 

「お母さん」

「どうしましたか?」

「抱き着いていい?」

「……勿論です。ごめんね、長く家を空けて……寂しい思いをさせました」

 

 ぎゅ、と抱き着けば、そのまま持ち上げられる。 

 あ、ちからつよい。抱きしめられて……わあ、本当に安心する。

 

「何か、ありましたか?」

「……錬金術、習い始めたんだ」

「習い始めた? お父さんが教えているのですか?」

「うん。僕の独自の部分は独自の方法でやってるけど、基本的なことはお父さんに教わってるよ」

「……ふぅむ。では明日から、お母さんが教えます」

「え、なんで」

「レミーをお父さんに取られるのが嫌だから」

 

 そんなことを言いながら、キスを落とされる。

 恥ずかしさとかは生まれないけど……その。

 

 やっぱり僕、どうあっても、絶対に、この人を無為に殺させる、なんてことはできないな、って思った。

 

 

 

 

 その夜。

 

「銀時計を落として査定やり直し……レミーから聞いてはいたが、本当にお前は、いつになったら……」

「あなたこそ、なんですかそのお腹。毎朝ジョギングをしていたにしては、太くなっていますね。どうしてですか?」

「わかるの?」

「はい。体重は私がウェストシティに行く前から2㎏程増えた……違いますか?」

「う……ぐ」

 

 すごい。

 見ただけで体重がわかるとか、どういう特殊技能?

 

「お父さん限定ですよ、レミー。私はこの人がちゃんと痩せていたころから見ていましたので。私の代わりに育休に入って段々と太っていく様も、自分のお腹を気にし始めたことも、けれどお酒がやめられなくてまた太っていく所も、すべて」

「……お父さん」

「そんな憐みの目で見るなレミー。父さんだってな、勿論頑張ろうとはしているんだ。だが……」

「だが、なんですか?」

「その……レミーが言葉を覚えた記念とか、錬金術に興味を持った記念とか、独自の錬成スタイルを確立した記念とか……祝い事が続いて」

 

 ああ、確かに。

 お父さんは何かとお祝いごとをしたがるというか、僕が何か新しいことをやったり成功したりするたびに、お祝いだ、とかいって夕飯を豪華にしたり、昼食をお肉だらけにしたり。

 お母さんのいなかった二週間強の中で、五、六回はお祝い事あった気がする。そしてお酒もたくさん飲んでいた気がする。

 

「レミーのせい、と」

「いやそういう意味じゃなくて!」

 

 ……お母さんが帰ってきての、楽しい楽しい団欒の時間。

 いや、本当に。外にいる赤い目をしたカラスとか、気付かなければいいのにね。

 

「ああ、レミー。ごめんね、喧嘩を見せるつもりはなかったの。……ご飯を食べましょう。お話は、その後で」

「そ……そうだな。そうしよう! 今日は母さんが帰って来た記念だ、飲んで──」

 

 幸せであればあるほどに。

 その誘惑は……迫ってくるじゃないか。

 

 

 *

 

 

 振る。受け止められる。中間に手を当てて、受け止められた場所に力点を作る感じで棒を跳ね上げれば──それでも受け止められる。体格差だ。これは僕の選択ミス。

 襲い来る前蹴りをバックステップで避けつつ、地面に対して錬成を行う。「整形」。土を引き抜いて、強度も上げていないそれを投げて目潰しにする。ならない。たった一振りで払われたそれは、何にもならずに終わった。

 

 けど、十分だ。

 振りぬいた、という隙があれば十分。

 親指、人差し指、中指で三角形を作り、地面に突き込んだそれをグリっと捻る。捻って円を描く。指にそれぞれ描かれた錬成陣がそれぞれにマークを刻み、「成形」の錬成が始まる。

 

「遅いですよ」

「わかってる!」

 

 錬成速度は相変わらず遅い。17秒。少し縮んだくらいだ。

 だからその間、もう一つの錬金術を発動させる。左手の手袋に描かれた錬成陣は右手のものとは少し違う。

 右手が乾湿の錬成陣……第一物質と素質を織り交ぜて様々な組み合わせ効果を得るものだとすれば、左手の錬成陣は僕の足りない思考速度で「成型」をするための錬成陣──プライドとか全部捨ててサポートの文字列をこれでもかと織り込んである、テンプレート錬金術を発動させるための手袋だ。

 

「成程、相手を突き上げる。確かに驚く相手はいるでしょうが、相手に高地を与える、というのが自身を不利にさせる行いであることを理解してください」

「ああでも、それ脆いから」

「!」

 

 今使ったのはいつもお馴染み、ただ円柱を突き出すだけの錬金術。粘土の時から使い続けているアレね。エドとかみたいにトゲにする、ってなるとちょっと話が違ってくるんだけど、円柱のまま押し出すだけなら思考リソースなんてほとんど割かずに済む。慣れも多いから、違う錬成をしながらでも使える簡単な錬金術だ。

 そして、並列だからこそ強度を考えない──死ぬほど脆い円柱を作ることができる。

 

「ふぅむ、良い意表の突き方です。上に押し出されたら、普通はここから跳ぼうと考えますからね。その足場が崩れる、というのは中々。ですが」

 

 降り注ぐ土から、青い錬成反応が溢れ出る。

 嘘、空中で錬成? 自分が落ちてるんだ、着地っていうかなり複雑な思考リソースを持っていかれるはずなのに──。

 

「間に合わない!」

 

 錬成されつつあったものを自分で蹴り壊して強制キャンセルする。これでリバウンドが起きることはないので、そのまま横に転がってソレを避ける。

 ソレ。大量の土と──。

 

「大槌の錬金術師……」

「はい。それがお母さんの二つ名です」

 

 超、巨大な、土で作られたハンマー。

 お母さんの錬金術は、POWERだった。

 

 途中まで錬成し、自分で折って持ってきたそれを、乾湿で整形する。

 短くなるけど、まぁ仕方がない。

 各指に錬成陣を描いてあるから、手元でカチャコチャやって、それはようやく完成する。

 

「不思議な形状ですね。槍にしてはあまりに短い。けれど小剣や細剣の形ではなく、何より柄が……円形?」

「どうにも僕は鍵みたいな捻るものが想像しやすいみたいでさ。だから」

 

 キーブレード、も一瞬は考えたんだ。

 でもあれ実用性はないよなって一瞬で考えを棄てて。

 

 別に既存の武器である必要はない。想像しやすいものならなんでもいい。

 僕の思考速度の遅さは、つまり自分が良く知らないものを作ろうとしているからであって、自分が良く知っているものを作るのならばそれを改善できる。

 

 さっきは剣を作ろうとした。無理。剣に詳しくないから。槍とか薙刀も考えたけど無理。詳しくないし長いから。巨大質量は詳しくたって作れない。そこまで僕の想像リソースは多くない。

 

「錐、ですか」

「本当に作りたかったものじゃないけど、まぁ、これは馴染むかな」

「成程。──私とは相性が悪いですね」

 

 まぁ、そう。

 錐。ガッツリ工具だ。本当に得意なものはこれじゃないけど、今ある材料で作れるのはここまで。

 そしてこんなリーチの短いもの、でっかいハンマー相手にはファイヤーストーンにウォーターだ。

 

「どうしますか? ここで終わり、でもいいんですよ、レミー。勝負はついたようなものでしょう」

「もうちょっとだけやりたい。──まだ隠してることがある」

「ふぅむ。わかりました。では」

 

 ──直後、眼前にハンマーがあった。

 避けるのは無理。そんな面積じゃない。まぁ強度はかなり下げてくれているから大怪我はしないんだろうけど、吹っ飛ばされるのは確実。

 だから、何の抵抗もせずにハンマーの側面に身を預けて、さっきつくった錐をグサっと刺す。

 それを、五回。

 

 刺して、刺したあとそのまま飛ばされる。もう、何の抵抗も無しに。

 

「え、レミー? ──大丈夫ですか!?」

 

 お母さんは何か抵抗してくると思っていたんだろう。

 けど、僕が特に何をすることもなくぶっ飛ばされたものだから、心配して駆け寄ってこようとしている。

 その前に見せなければ。

 

 受け身は取った。そして、受け身を取る過程で手袋は地面についている。

 

 発動する。

 ──起こるのは、五つを起点にした、五芒星の錬金術。

 

「!」

 

 遠隔錬成。やるのはただの分解だけど、驚かせるには十分だったらしい。

 ハンマーがただの土くれに戻る。

 

「……今のは」

 

 参考にしたのは勿論メイ・チャンの遠隔錬成。アメストリスの錬金術師が錬丹術を使えないのは、エネルギー源が違って混乱するからだ。僕は別にアメストリス式に染まっているわけじゃないので、理念さえ理解したらいけないことはない。思考リソースより大地の流れ、とかいうものを強く利用してるみたいだし。

 この辺のおさらいはまた後でやるとして。

 

「レミー」

「うん」

「今のは、とてもすごかったです。褒めてあげます」

「うん」

「でも無謀です。相手の攻撃を受けていることに変わりはなく、受け身を取ったとしても衝撃は殺し切れていない。立てますか、レミー」

「ううん。今凄く頭くらくらしてる」

「……まったく。お父さんはセーブの仕方、というのを教えてくれなかったのですか?」

「ううん。教えてくれたし、強く言ってくれた。今のは僕の無茶」

 

 お母さんを驚かせてみたかった、っていう。ただそれだけの、子供なりのエゴというか。

 ──まぁ、こんなところでするべき無茶ではなかったのは認める。

 

「今日明日は錬金術禁止です。いいですね?」

「はぁい」

 

 じゃあ明日は丸一日座学の時間だなぁ。

 僕は。

 

 大の字で、ぐでんとしたまま、お母さんに抱き上げられて家に戻った。

 

 その視界で──動物にあるまじき程口角を歪めるリスの姿が。

 ……もう無理だろう。これからは見せつける方向で行って、ホムンクルス側から軍上層部へ働きかけてもらって、僕を国家錬金術師にスカウトしてもらうみたいな方向で。

 

 ところで僕、国家錬金術師に足り得る実力になってるよね? もしかして井の中の蛙オブ井の中の蛙とかないよね?

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