魔王が可愛いので人類を裏切ることにした   作:神谷九十九

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背信

 

 着いてこい、と言われたのでホイホイ着いていったら、なんだか妙に赤が多い部屋に通された。部屋の中央に向かい合うように椅子が置かれ、それ以外には何も無い。魔王軍に入る為の面接室かな?

 

「座れ」

「はい」

 

 そういえば洗脳されてる設定だったので、今更ながら目を虚ろにして無気力になっておく。なんかいかにも洗脳されてますって感じがする。

 

「勇者の加護について全てを話せ」

「はい」

 

 いきなり加護の話か。というか加護の存在って認知されてたんだ。流石レヴィアタン様だな!

 で、加護についての全てね。どっから話せばいいんだろう。前提知識が面倒なんだよなぁ。血とか魔力とか魂とか世界の仕組みとか輪廻転生の理とか。まぁレヴィアタン様なら知ってるか!

 

「簡単に言えば、全人類によって無自覚に行使される最上位の呪いです。勇者は死に際に新たな加護、もとい呪いを生み出し次代に継承します。加護に関する詳細は口外が禁止されており、勇者以外には知ることが出来ません。記憶を覗く、心を読むなどにより情報を盗もうとした場合は、情報量の多さによって脳が爆発するか発狂して死にます。勇者が耐えられるのは真人類であることと、転生前に歴代勇者から魂を保護された上で植え付けられるからですね」

「……は?」

「歴代の勇者毎に加護があるので全てを話すとなると長くなってしまいます。圧縮言語で話すと2時間で終わりますが、発狂しないように魂を保護する必要があります。レヴィアタン様の魂に触れてもよろしいでしょうか?」

「…………ほぇ??」

 

 か わ い い 。

 何故か呆然としてしまっているが、今の話をレヴィアタン様が理解出来なかったはずがない。ということは過集中による一時的乖離状態かな?俺もよくやるし。お揃いだね…///

 自分の思考が気持ち悪すぎて乖離状態になりそうになったが、脳内でレヴィアたんに変換して事なきを得た。興奮してきた。事なきを得てない。

 

「えぇ………っと、私の前に貴様が戦った魔王、呪殺のベルフェゴールの攻撃が一切通じなかったことから、勇者には加護による異常状態の耐性があると考えたのだが、何故洗脳が効いているのだ?」

 

 やっべ。バレてる。いや、ここは流石レヴィアタン様と言うべき……でもどうしよう。実は洗脳されてないですとか言ったら魔王軍に入れない。心苦しいが嘘を吐こう。

 

「確かに『あらゆる異常状態を無効化する』という加護は存在します。しかしその効果範囲である異常状態に洗脳は含まれません。含まれるのは毒や盲目など身体機能に関するもの。恐慌や催淫といった心の異常は別物です。勇者の精神力を持ってすれば必要なかったのでしょう。あるいはこの加護を生み出した勇者の時代では、魔法や異常状態に関する理解が十分では無かったとも考えられます」

 

 そんな訳はない。まず効果範囲に洗脳は含まれる……というより効果範囲は勇者の認識次第で、生み出した勇者がどうとかは関係ない。で、魔法に関する理解も別の加護で副次的にできてる。何より俺に精神力なんてない。けど、これら全て俺が言わない限り確かめる方法が無い。魂保護の必要性から伝える手段が圧縮言語のみで内容を俺が決めれるから、レヴィアタン様に真実を話せと命令されない限り俺の勝利は揺るがない。第三部完。

 今回の命令は質問に答えろであって、嘘を吐くなと言われていない。我ながら頭が冴えている。これはレヴィアタン様の叡智の一端を垣間見たことで、俺自身の脳が活性化されているに違いない。心做しか語彙力も上がっている気がする。流石はレヴィアタン様だ。レヴィアたんしか勝たん。カタンって楽しいよね。やったことないけど。

 

「……まぁ、実際に洗脳出来ているのだから信じる他ないか」

 

 よっしゃ通った!嘘を吐いてごめんなさい。でも魔王軍に入る為なんです。許して下さい。面接って都合のいい嘘を吐く場所だよね?

 

「仲間のことはどう思っているんだ?」

「仲間………?あぁ、あの人達ですか。特に何も」

「本当に何も無いのか?私に恨みがあるとか、怒りで洗脳が解けそうとかないか?」

「レヴィアタン様を恨むことも、怒りを向けることもあるはずがありません。レヴィアタン様に向けるのは敬愛、信仰、忠義!レヴィアタン様の為に剣を振るったことは名誉であり、歓喜に打ち震えるのみです」

 

 ここは面接。都合のいい嘘を吐く場所。本音十割で胡麻をすっておこう。レヴィアタン様最高!

 なんというか仲間ってこう……協力とかあるじゃん?加護で歴代勇者の記憶見たところ、もっと友情努力敗北みたいな……皆で一緒に死にます!って感じだけど、あの3人とはそんなこと無かったしなぁ。仲間って言われてもピンとこない。

 あの人達1回も戦闘してないし、初対面の挨拶以外に旅の途中で会話した記憶も無い。王様に連れてけって言われた時に貰った資料以上の情報無いし、言うなれば蚊と同等。

 あ、マリンとだけ喋ったかも。向こうが一方的に喋ってただけで会話じゃないけど。子供がどうとか言ってた気がするけど、興味無さすぎて無視してたから忘れちゃった。

 

「では……今後一切、私に危害を加えることは許さない。これからは魔王軍として私に仕え、人類に反旗を翻す。また、自身が勇者であることを誰にも明かしてはならない。貴様の忠義とやらに嘘が無いのなら、平伏せよ!」

「はっ!我が身の全てはレヴィアタン様の為に!」

 

 面接合格キター!これで勝つる。レヴィアタン様の為に、張り切って人類滅ぼしちゃうぞ。あの王様……いや髭面のおっさん……いやいや邪智暴虐の魔王に天誅を!

 

 

 

──────

 

 

 

 少々取り乱してしまったが、なんとか表に出さずに平静を取り戻し、勇者を連れてとある部屋に向かう。色々と確認する必要があるからな。情報は大事だ。一応、洗脳が解けても被害を最小限に済ませる為でもある。

 そして辿り着いたのは拷問部屋。拷問器具よりも魔法の方が楽だし効果的なので椅子くらいしかない。そこら中に飛び散ってる血はまぁ……いつか掃除するから。いつかね。多分。きっと。50年くらい経ってるけど。決して面倒とかではない。

 

「座れ」

「はい」

 

 とりあえず椅子に座らせて、改めて勇者を観察してみる。ふむ、よく見ると意外としっかりとした体型で、清潔感もありつつ顔も整って……ひぃ!?目が、目が怖い!!やっぱり洗脳が解けかけてる?内なる悪感情とか?私殺されちゃうの!?

 ………いや、動かないな。大丈夫そうかな?ふぅ……落ち着け。平静を保つんだ。私は魔王、謀殺のレヴィアタン。最強の勇者を支配下に置いた者。大丈夫、大丈夫だ………良し。

 まずは洗脳状態の確認だな。何故か勇者が油断してて運良く洗脳にかかったとかなら解ける可能性があるし、異常状態耐性が私の勘違いなら、ベルフェゴールが敗北した理由を知る必要がある。とにかく加護の詳細だ。大丈夫、冷静に考えられてるぞ、私。

 

「勇者の加護について全てを話せ」

「はい。簡単に言えば、全人類によって無自覚に行使される最上位の呪いです。勇者は死に際に新たな加護、もとい呪いを生み出し次代に継承します。加護に関する詳細は口外が禁止されており、勇者以外には知ることが出来ません。記憶を覗く、心を読むなどにより情報を盗もうとした場合は、情報量の多さによって脳が爆発するか発狂して死にます。勇者が耐えられるのは真人類であることと、転生前に歴代勇者から魂を保護された上で植え付けられるからですね」

「……は?」

「歴代の勇者毎に加護があるので全てを話すとなると長くなってしまいます。圧縮言語で話すと2時間で終わりますが、発狂しないように魂を保護する必要があります。レヴィアタン様の魂に触れてもよろしいでしょうか?」

「…………ほぇ??」

 

 な、な、何を言っているんだ?発狂?真人類?魂の保護?圧縮言語とか聞いたことないし、魂に触れるってなんか怖いんだけど。というか加護が呪い?しかも全人類が無自覚に行使って訳が分からない。落ち着いて、1個ずつ理解しよう。ふぅ……

 まず、呪い。あらゆる現象や理、耐性を無視して強制的に効果を発揮する魔法の上位概念。ベルフェゴールの得意分野で、呪いの中では中位にあたる異常状態を好んで使っていた。加護が最上位の呪いだからベルフェゴールの呪いを無効化出来たというのは納得出来なくもない。洗脳は後で考える。

 魔法と比べて消費魔力量、詠唱時間が倍以上になることと、保有魔力の上限値を削って行使することが特徴。ベルフェゴールは上限値の減少を無効化しているが。それが全人類によって行使されているなら、年齢と共に上限値が減少するのは加護による影響ということになる。上限値を増やすには減少速度を超えて増加させる必要がある、ということか?魔王勢力側が魔法技術で人間を上回るのはこの上限値減少が無いからだと?これまでの学説がひっくり返るぞ。

 で、脳の爆発に発狂だったか。確かにこれだけの情報で混乱するのだから、全てを理解するには脳が耐えられないのだろう。信じ難いが、まぁ言いたいことは分からんでもない。

 真人類だの圧縮言語だの魂だのは無理だ。知らないものは考えても分からん。後で古書でも漁るか。多分どこにも記載は無いだろうが。一応。

 つまり、私がこの状況で勇者から聞き出すべき情報は加護であるが、発狂しないよう情報を絞る必要がある。そして加護について知ろうとしたのは、洗脳状態を確認する為だ。つまり──

 

「えぇ………っと、私の前に貴様が戦った魔王、呪殺のベルフェゴールの攻撃が一切通じなかったことから、勇者には加護による異常状態の耐性があると考えたのだが、何故洗脳が効いているのだ?」

 

 ──こうだ。加護が複数あるから情報量が多いのであって、一つに絞れば情報量はかなり縮小される。異常状態耐性の加護の有無と、洗脳が効いた理由。たった2つだ。絶対に発狂しない……はずだ。

 

「確かに『あらゆる異常状態を無効化する』という加護は存在します。しかしその効果範囲である異常状態に洗脳は含まれません。含まれるのは毒や盲目など身体機能に関するもの。恐慌や催淫といった心の異常は別物です。勇者の精神力を持ってすれば必要なかったのでしょう。あるいはこの加護を生み出した勇者の時代では、魔法や異常状態に関する理解が十分では無かったとも考えられます」

 

 異常状態の……無効化?耐性ではなく?そんなことが可能なのか?そういえば、さっき勇者が死に際に呪いを生み出すとか言ってたな。勇者程の命を代価とすれば有り得る……のか?まぁ、ベルフェゴールが何も出来なかったのだから、有り得るとしよう。

 それで、心の異常は別物だとか。理由は勇者本人の考察だから考えないとして、身体機能の異常と心の異常に分けるという考え方自体は、魔法論全集の八章三節に似たような記載があったはずだ。これも後で確認する必要があるな。

 

「……まぁ、実際に洗脳出来ているのだから信じる他ないか」

 

 納得はした。とりあえず当面は安心でき……いや、待てよ。こいつ、自分の考察の中で精神力を出したな。この精神力とは何だ?

 先程加護については口外しないと言っていた。ということは勇者の仲間も加護について知らないのだろう。しかし神の奇跡の光は確かに勇者には無かった。あの時は勇者の加護によるものだと思ったが、勇者の加護を知らないなら何故勇者にだけ神の奇跡を行使しなかったのか。

 これに加えて、勇者への呼びかけと取り出した翡翠の石……勇者の精神力とやらに期待したのではないか?洗脳魔法の抵抗に意思を保つ力が重要であることは理論的に証明されている。しかしこれは耐性を得た上での話だ。勇者の精神力がこれに該当し、かつ耐性無くして心の異常を跳ね除ける程強力であると考えるべきか?もしそうなら……現状からでも洗脳が解ける可能性が高い!?

 いや、待て、落ち着くんだ。勇者の加護は最大の秘密。それを話したのだから洗脳に問題は無いし、解ける気配も無い。そう、解けるなら既に解いているはず。

 他に可能性があるとすれば仲間のことだな。こう……なんとか刺激しないように仲間の印象とかを聞こう。実は恋仲の者がいて、殺した事実を告げられると暴れだすとかあるかもしれん。私恋人とかいたことないし良く知らないけど、多分そういう感じだよね?漫画の中だけとかじゃないよね?

 

「仲間のことはどう思っているんだ?」

「仲間………?あぁ、あの人達ですか。特に何も」

「本当に何も無いのか?私に恨みがあるとか、怒りで洗脳が解けそうとかないか?」

「レヴィアタン様を恨むことも、怒りを向けることもあるはずがありません。レヴィアタン様に向けるのは敬愛、信仰、忠義!レヴィアタン様の為に剣を振るったことは名誉であり、歓喜に打ち震えるのみです」

 

 えぇ……なにこれ。いやまぁずっと気になってはいたんだけどさ。なんで洗脳魔法かけただけなのに忠誠心が植え付けられてるの?勇者だから?なんか目がキラキラしてるし。さっきの怖い目どうしちゃったんだよ。

 もしかして勇者の精神力が変な風に作用したのかな?精神力が忠誠心由来で、洗脳されたことで主従関係が上書きされたとか。うん、後で論文にでも纏めておこう……ってあれ、後でやること多くない?まぁいいや、頑張れ明日の私。

 あ、素が出てる。いかんいかん。勇者の変わりようが可笑しくて気が抜けちゃった。それか、洗脳が大丈夫そうだって分かって安心したのかも。ふぅ……さて、魔王らしいことをして切り替えよう。

 

「では……今後一切、私に危害を加えることは許さない。これからは魔王軍として私に仕え、人類に反旗を翻す。また、自身が勇者であることを誰にも明かしてはならない。貴様の忠義とやらに嘘が無いのなら、平伏せよ!」

「はっ!我が身の全てはレヴィアタン様の為に!」

 

 さて、まずやるべきは勇者の正体を隠す為の仮面と新しい服の用意だな。なんか他にも色々やるつもりだった気もするが、服を考えるの楽しいからどうでもいいか!

 

 

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