最近なかなか良いお肉で作ったので、投降。
夜。アレッタが帰ったことによって異世界食堂の本日の営業は終わりを告げる。
以前は店の名通り猫の手も借りたい状態であったが、今は彼女の働きもあってマスターとタカキの2人で十分後片付けが出来るほどの余裕が生まれていた。
「じゃあ、先に上がるな」
「うん。俺はちょっとやることあるんで」
「おう、ゆっくり休めよ」
そう言ってマスターがエレベータで住居へと戻っていく。後に残されたのはタカキのみとなったが、彼は未だに厨房で何か作業をしていた。
それもそのはず。一昨日に給料日を迎えたばかりのタカキのテンションは今、一言で言うならばノっている状態である。そんな彼は現在、両手でゴマを擦るような動きをしながらいそいそと冷蔵庫の奥に隠していた物を次々と取り出しては悦に浸っていた。
「さてさて、パーっとやりましょうかね」
タカキが取り出したのは見事にサシが入ったお高い牛肉を始め、各種の野菜。どれも本日の買い出しついでに寄った銀行で降ろした金で買い漁った品ばかりだ。
本日はこれで1人すき焼きを豪勢に作り、存分に食べて優勝していく。そんなわけでタカキは最初に綺麗に拭いたテーブルの上にカセットコンロを設置し、その上にスタッフルームの私物置き場から持ってきた黒い鉄鍋を設置する。
これはタカキのとって曾祖父──ねこやの先代店主が購入した物らしい。らしいというのはこれをタカキが発見した場所が物置で、年代物だが使い古したような形跡が無かったので処理に困ったことがあったからだ。
既に鬼籍に入っていた曾祖父に確認を取れるはずもなく……。仕方が無いので曾祖母である暦が台帳片手に記憶を遡ってみると、どうやら店のために買ったは良いがねこやの雰囲気に合わないため、個人用にしようとして忘れた代物らしい。『あの人はほんと……』といった彼女の顔は未だにタカキのトラウマであった。
もしかしたらロースカツが酔っ払いながら饒舌に話していた向こうの魔王よりも怖いかもしれない。理由は分からないがそう思いつつ、タカキはカセットコンロに火を付けた。
鉄鍋に限らず、こういった調理器具は十分に加熱していないと食材がそこにくっついてしまうので入念に。さりとて高温で一気にというのも逆効果なので中火でじっくりと全体に熱を行き渡らせる。
そんな合間に最適なのが卵だ。器に割り入れてかき混ぜるという工程を挟んで気を紛らわせることもあるが、これから豪勢な物を食べるという緊張感を幾分か緩和してくれるのに嬉しい存在である。
そうしていると鉄鍋から薄い煙が立ち始める。十分に温まった合図にタカキは牛脂を入れた。
薄すぎず、かといって脂まみれになると味が一辺倒になるのでご法度。これは1人用の小さな鍋なので、回収にして2周半といったところだろうか。ちょうど良い塩梅を見極めながら箸を動かして牛脂を鍋全体へと行き渡らせていく。
──今だ。
溶けた牛脂から良い香りが立ち上った絶妙なタイミング。ここに薄切りの牛肉を置く。
大判なので1枚しか入らなかったが、すき焼き用の薄切りなので火の通りの早い。早くしないと肉に火が通り過ぎてしまうというプレッシャーを抑え込みつつ、タカキは肉を手早く裏返してから砂糖と醤油と酒で味付けを施していく。
こうして出来上がった至上の1品。炒めた薄切り牛肉のみを甘辛くしたそれを鉄鍋から取り出し、黄身と白身がまだらに混ざった卵液につけて──食べる。
(ありがとう。肉屋のおっちゃん)
あの時、いくらか予算オーバーして諦めていたタカキに『贔屓にしてくれてるから特別サービス』と割り引いてくれた肉屋の店主に心からの感謝を念じつつ、彼は本格的にすき焼きの準備へと取り掛かった。
焼き豆腐、白滝、シイタケ、ネギ、そして牛肉をそれぞれ見た目よく鍋に入れてから先ほどの醤油や砂糖の分量から逆算してちょうど良い塩梅になるように作った薄い割下を投入し、上に春菊を被せるように入れてから蓋をする。
そう──。これらこそがタカキのベストパートナーたちであった。
人間、誰しも趣向というものがある。すき焼きだけで言えば麩やエリンギを入れる人も居るし、それらによって血で血を洗う聖戦が勃発したことも1度や2度ではない。その度にタカキは穏健派を装い、相手に合わせた具材のチョイスをしたことも何度もある。
だが、タカキも持っているのだ。自分の気に入ったベストパートナーたちが。
今日──この瞬間に至っては思想を強制してくる不届きものは誰も居ないため、彼は大変ご機嫌にすき焼きを堪能することが出来た。
熱々の肉に生卵をどっぷりつけて食べるのはもちろん、白滝も醤油が染みて生卵とばっちり合う。焼き豆腐の少し硬めな食感と味は主役といっても差支えが無いし、ネギのくたっとした食感もシイタケの噛むごとに割下がジュワッと溢れ出てくる感触も嬉しい存在だ。
それに、何と言っても春菊の程よい苦み。あれが牛肉と合わさると何とも言えない美味さを発揮する。
「あ”ー、食った食った」
美味しかったからか、いつもより速く完食したタカキは鍋の横を見やる。そこには鍋に入りきらなかった牛肉をはじめとした材料があったが、1人前としては些か量が少ない。さらには彼の腹も限界なので、明日の昼飯にでもしようかと材料を冷蔵庫に納めて後片付けをしようとしてた──その時だった。
チリンチリン
ねこや──否、厳密には異世界食堂の扉が開かれる音が聞こえた。今の時間帯に加え、『こちら』では鳴ることのない音にタカキは営業時間外だと告げるために食堂の方を見やる。
そこにはまるで江戸時代からタイムスリップしてきたような装いの旅人が足をもつれさせて転んでいた。まるで何かから逃げている最中のように思えたが、位置の関係でタカキにはその旅人が何に追われているのかよく見えない。とりあえずは営業時間外ということを伝えようと厨房を出ながら気怠げに口を開いた。
「お客さん、今日の営業は「ひぃっ! ひいい!」」
だが、その言葉は男の叫び声でかき消される。こちらのことに一切気付いていないような怯えようにタカキはその男の視線の先を見た。──見てしまった。
扉の少し向こうから女がゆっくりと近づいて来る。目が覚めるような美人や深窓の令嬢という言葉が服を着ているようなプロポーションの彼女だが……、目と足が無かった。
ああぁァアァぁ
本来ならば歩くことすら儘ならないだろう状態であるにも関わらず、眼孔の奥が朱く光らせた彼女は呪詛を煮詰めたような声を上げ、滑るように扉に近づいて来る。
そんな明らかにこちらを認識しているかのような動きにはじめは初めて見る幽霊にビビっていたタカキであったが、店の危機を感じるや否や曾祖母である暦の言い付けに従って防衛策を講じた。
まずは武器である。幽霊なので物理攻撃は効かないだろうが、魔除けとして暦がどこからかもらってきたと言って渡して来たお札と1掴みほどの塩を厨房から引っ張り出して来た彼は、おもむろに幽霊に向けて塩を持った方の腕を振り被る。
「鬼は……外ぉ!」
夫婦でローストチキンと焼酎を食べにくる常連が激怒しそうな言葉を乗せて投擲された塩がこちらに手を伸ばしてきた女にぶつかるが、これといって効果はなかった。そのまま腕を近づけて来る彼女に『料理用じゃだめか!』と見当違いのことを言いつつ、タカキは塩が入った容器を投げてからねこやの扉にお札を貼る。
その間にも女がこちらに近づいてきており、底冷えしそうな寒さと生者を心底憎んでいるような呪詛の声がタカキに纏わりついてきた。
「うちは呪いの押し売りお断りですよ!」
タカキがそう叫びながら相手に扉を叩きつけるように閉めると、完全に閉じ切る前に扉の外から明らかにダメージを負ったような絶叫が聞こえてきた。何がどう作用したのかはこちらの世界出身の彼には分からなかったが、チラリと時計を見ると深夜をすっかり回っている。
こうなればあちらの存在はこっちに手出しは出来ないだろうと、タカキはほっと一息ついたついでに旅人に声をかけた。
「お連れさん、もしかしてご友人だったり?」
「そ、そんなわけないじゃないかっ! ……本当に助かった!」
万に一つの可能性を危惧したが、どうやら杞憂だったらしい。礼を言われたついでに事情を聞きつつ、タカキは目の前の旅人をどうしようかと考え出した。
異世界食堂の扉は必ず開いた場所から出るようになっている。この場合、旅人が出るのは元居た場所──幽霊が未だにうろついているであろう場所になってしまう。扉について色々知っていそうなロースカツやその弟子のプリンならば何か解決できるかもしれないが、もう異世界食堂の営業は終わってるので呼び出す手立てがない。
「ところで、ここはどこなんだ」
「あー、ここはそちらの世界とは別の世界。常連の人は異世界食堂って言ってますがね。それよりも、今後のことなんですが……」
一応、ここが異世界であることを説明する傍らで結局は元の場所に帰ってしまうことを伝える。──が、どうやら朝になるとあの幽霊は姿を消すらしい。
タカキの世界でよくある『見える人が言うにはその場にずっと居る』ということもないらしくて彼も首を傾げるが、異世界のことはタカキには分からなかったのでスルーした。
そうこうして、結局のところは1晩ここで寝泊まりしてもらってから出ていくという話に決まった瞬間にその旅人──コヘイジの腹が鳴った。聞けば追いかけ回された時は何も食べる余裕すらなく、食べる物も向こうで捨ててきたらしい。
「なら、何か作りますよ」
「すまない。とりあえず、これで良いだろうか?」
そう言ってコヘイジは常日頃から肌身離さず持っていた蓄えから銀貨2枚を差し出す。だが、この店の店主はタカキではないため、彼は『店主が起きてきたら話してください』と今頃はいびきをかきながら就寝してるだろう店主に全てを丸投げしながら厨房へ向かった。
***
何か作ると言ったけど、今ある材料的にメニューは1つしか出来ないんだけどね。問題は腹に溜まる主食があるかだけど、今日はパンの方がよく出たからたしかまだまだあるはず……。うん、十分にあるどころか明日の朝飯に回してもちょっと余るぞ。浅漬けも余裕があるから明日は冷や飯生活かな、こりゃ。
そうと決まれば早速調理だ。鉄鍋は既に洗剤が入った流しにINしてるし、そもそも自分が食べた食器で客に出すもの作るとかあり得ないのでフライパンをコンロにセットする。
今回のメニューであるすき焼き丼は、丼であるゆえに先ほどのすき焼きよりも濃い目に作らないとご飯との相性が微妙となる。そのため、先程よりも多めの牛脂を溶かして肉以外の味が染みた方が美味い物から入れていく。煮えすぎた固い肉は少量なら味が染みて美味いけど、流石にそればかりだと悲しさが先に来ちゃうからね。
後は割下を入れたらもう待ちの作業だ。すき焼き丼はぶっちゃけ割下の分量さえ間違えなければ楽で良いや。
しかし、すき焼き丼のみとなると些か寂しい。俺としてはせめて漬物とみそ汁を付けるべきだと思うわけよ。
まぁ、漬物は冷蔵庫に在庫があるけど、清掃を終えた今は当然ながら味噌汁は既にないので1人分を準備することになる。
余ったらどうしよ……。いや、その場合は明日の朝飯にでもしてもらうか。
まずは味噌汁に使う出汁だが、今回だけは顆粒出汁を使う。お客に出す物だからちゃんと作りたいけど、今から出汁をとってもロスになる量が増えるだけだから手抜きできるところは手抜きしないとね。
でも、手抜きといっても味噌とだし汁だけで飲ませるのはそれはそれでどうかと思うため、なにかないかと冷蔵庫を漁ると豆腐が半丁出てきた。ちょうど良いからこれと乾燥わかめを使うか、当たり障りないし。
賽の目に切った豆腐と乾燥わかめを入れてわかめが元に戻るまで放置し、その間に丼に飯を盛る。たしかずっと逃げ回ってたって話だし、腹減りの成人男性的にはこれぐらいはペロリだろっということでカツ丼さんにいつも出しているぐらいの大盛りだ。
そうしてると焼き豆腐の白い部分や白滝が薄く醤油色に色づいてきたので、最後に大判の薄切り肉をちょっと小さくに切ってやって投入する。薄切り肉なので軽く火を通したところで火から降ろし、ホカホカの白米に具材を品よく盛り付ける。
相手が女の人なら彩りで飾り切りしたニンジンとかを添えるんだけど、男だから具材ごとに分けて盛り付けるぐらいで良いだろう。
いや、むしろこれが良い。ガッツリ食ってガッツリ寝て、後は元気に街についてくれればそれで十分だ。
最後に味噌汁の仕上げをする。これは飲食店で使う味噌汁では使えない小技だが、数人分だけの味噌汁を作る場合はドレッシングなどを作るために使う小さいホイッパーが役に立つ。これを味噌の容器に突き立てて回して引き抜けば……。ちょうど良いサイズの味噌が取れ、そのまま鍋に入れて掻き回せばあっという間に味噌汁が出来るって寸法よ。
まぁ、そういった便利グッズがド〇キとかにあるけどね。身近に使う物を効率よく使うのが一番節約になるんだよ。
──さて、浅漬けも脇に添えたし持って行きますか。
***
「お待たせしました。すき焼き丼です」
コヘイジは目の前に置かれたスキヤキドンなる料理に目を瞬かせる。肉厚なキノコに何かの野菜、茶色くて細い糸のような物を結んだ物に同じく茶色だが四角い物体。そして何より存在感を放つのは肉である。
「何もなかったんじゃなかったのか?」
「はい。お恥ずかしながら自分が夕食に使っていた物の余りしかなかったので、それで作りました。あ、もちろんお代はそんなにかからないように気を付けましたので」
「いや、助けてもらっているからそれは問題ないが……。良いのか?」
肌身離さず持っている財貨の中には金貨や銀貨もある。命を助けられた後なので、多少ぼったくられても仕方が無いことだとコヘイジは思っていた。
ただ、彼の思っていた『何もない時の料理』──萎れかけの野菜くずを煮込んだ味の薄いスープとは似ても似つかない料理に、彼は思わず『食べても良い物なのか』をタカキに問いかけてしまう。
「構いませんが、本当に大丈夫ですか? 取り替えましょうか?」
「いや、良い。美味っ」
立ち上ってくる芳香にコヘイジは己が空腹であったことを思い出す。再びお預けなんて堪ったものではないと提案を拒否すると共に茶色く染まった野菜を口に入れると、彼は少ししてから思わずといった様子で感想を口にした。
牛と思われる肉や不思議な物体よりはまともに食えそうな物という理由で食したが、噛むごとに甘辛い汁の味が口の中に広がる。ジャクリジャクリと小気味よい食感も心地よく、あっという間に飲み込んでしまった彼は2つ目を摘み上げようとする──が。
「なぁ、これって米か?」
茶色い汁がかかっている部分はあるが、真っ白いその穀物はコヘイジにとって見覚えはなかった。しかし、形だけは見慣れた『あれ』──米に酷似していた。
すると、先程スキヤキドンを持ってきた若い男がコヘイジの元へ来て、あっけらかんと米であることを伝える。まるでそれが当たり前のように答えるので、コヘイジはここが異世界だということを改めて認識しながら米を口にする。
(甘めぇ。それにこの甘辛いのを食べた後だと無性に飯が欲しくなるじゃねぇか!)
噛めば噛むほど甘くなる柔らかい米に甘辛い汁の味がより引き立つ。気づけば野菜だけで丼の3分の1ほどを食べてしまうが、既に野菜の美味さに気付いてしまった彼の箸は止まることはなかった。
焦げ目のついた四角い物体は見た目とは裏腹に汁の甘辛い味に負けないほど豆の香りや味が強く、糸みたいな何かを結んだものはどこの溜め込んでいたのかプツプツと心地よい噛み心地と共に濃い汁が染み出してくる。
どちらも怖いぐらいに米が進むが、気付けば少量しかない米に対して一切手を付けていない肉という構図が出来上がってしまった。
「すまない。米だけもらえるか?」
「分かりました。あ、うちはお代わり無料なんで」
いつもは絶対にしないであろうお代わり。だが、コヘイジはすっかりこの味と米に魅了されていた。
そんな彼の考えをやり取りを通して察したのか、男は無料だということを伝えながらお代わりを提供する。まるで考えを見透かされているようで気恥ずかしかったが、コヘイジは『助かる』とだけ答えてからいよいよ牛の肉へと取り掛かった。
はじめこそ農村の細やかなご馳走という認識から味などを想像していたコヘイジであったが、口に入れた瞬間に本日何度目かも分からない衝撃を受ける。
(と、溶けやがった)
口に含んだはずが、気付けば彼の口の中から肉の存在が消え失せていた。そんな理解が及ばない現象に彼は自分自身で『何を馬鹿な』と虚しい相槌を打ちつつ、今度は集中して肉を口に放り込む。
(甘ぇ……これが牛の肉だってのか!?)
コヘイジが最初に感じたのはあの汁の甘じょっぱさだったが、少し咀嚼すると別の甘みに口の中が支配された。噛むごとに肉から染み出してくるこの甘味──否、菓子のような甘さとは異なるが甘味意外に例えることが出来ないこの美味さは彼が現在進行形で食べている物は本当に牛肉なのかと疑問に思うほどであった。
しかし、じっくり咀嚼していくと口の中がくどくなってくる。牛から出た脂や汁の甘さにすっかり口内が慣れてしまったのだ。
そこにコヘイジはすかさず飯を口に放り込む。長年染みついた慣習のように自然な動きで投入された純白の米は彼の口内から幾分かの油分を洗い流し、確かな満足感を与えてくれた。
気付けば肉も飯もすっかり無くなり、同時に腹がはち切れそうなぐらいの満足感が襲ってくる。童でもないのに夢中になってしまったと少々反省するコヘイジであったが、同時に眠気が襲ってくる。
無理もないだろう。アレに追いかけられた末にようやく安心して休息出来る場所に移動し、さらには腹一杯飯を食うことが出来た。そうなると、後は睡眠でいち早く体力を回復させるしかコヘイジに出来ることはない。
「すまん、店主。ちょっと寝させてくれ」
一声かけてから早速就寝しようと座り心地の良かった長い椅子に寝転がるコヘイジ。徐々に思考が鈍くなる合間に男の『俺、店主じゃないんだけどなぁ』という声が聞こえたが、彼にはそれを謝罪する気力はもうなかった。
***
「あれだけで銀貨1枚に銅貨数枚とは……。また行かないとな」
振り返って扉があった方向を見たコヘイジは独り言ちる。
あの後、1晩泊めてもらった上にサンマなる海の魚らしきものを用いた朝食を心行くまで堪能したコヘイジは、銀貨1枚と銀貨1枚の半分ぐらいの銅貨を対価に店を出た。昨日、道すがら放り投げていた荷物を回収しながら無事に街道に出たコヘイジは、昨日は早々に就寝していた本当の店主から持たされた彼の故郷よりも甘くて白い米で握られたおにぎりを頬張りながら値段のことを考えていた。
もう少しで死ぬところを助けてもらい、1晩泊めてもらった上に2食どころか握り飯の弁当までもらって銀貨1枚と銅貨。あの時は余りの信じられなさに流されて支払ってしまったが、今頃になって安すぎだと申し訳なく感じ始めていたのだ。
いくら異世界だろうとも店は店。利益が出なければ潰れてしまうのは明白である。
ただ、自らが商品と金を求めて旅暮らしのみであることは承知しているために気軽に行くことは出来ないことを歯噛みしながらも、コヘイジは神殿に街道に出た幽霊についての話をするために心なしか早足で歩いていく。
なお、日中の余りの盛況ぶりに自分の不安が全くの見当違いだったと彼が気づくのはこの時から数か月後の話であった。
今回は和食モーニング食べていったコヘイジさん。
え、あのレイス? ヨミばーちゃんのお札に当たったんだから…ねぇ。
次のメニューおよび投稿時期は不明です。(おそらく年末?)