ラブライブ!ファンタジスタ!   作:紅蓮一角超獣

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流石に選手紹介だけってのもアレなんでぱっぱと試合の方も投稿しますよっと


Aqours対虹ヶ咲 その1

「先手必勝です! いきますよランジュさん!」

 

「ええ勿論よ! ランジュ達の力、見せてあげるわ!」

 

キックオフは虹ヶ咲スタート。その直後から個性の強いメンバー内でも屈指の猪突猛進コンビが敵陣内部へと切り込んでゆく。

 

『おおこれは凄いぞ虹ヶ咲のFWコンビ! たった二人にも関わらず見事なパスワークでAqoursチームのディフェンスを突破! あっという間にゴール前だぁ!』

 

元より高いポテンシャルを持つランジュが守備を掻き乱し、同じく強い存在感を放つせつ菜とのコンビネーションが早くも魅せた。

引き付けられるようにして他のメンバーもラインを上げ、完全にチーム全体でゴールを狙う体制が整う。

 

「っと、ここは譲るわ。決めなさいせつ菜!」

 

「はい! 任されました!」

 

黒澤姉妹にシュートコースを阻まれたランジュからフリーのせつ菜へとボールが移り、途端にその色を変えた瞳は当然ゴールへと向けられる。

 

「はあぁっ!」

 

絶好のポジション、そして体勢から放たれたシュートは吸い込まれるようにしてゴールへと走る。

 

「嫌なとこ狙ってくる……ねっ!」

 

『おおっとこれは松浦ナイスセーブ! 外角高めを狙った厳しいコースのシュートをパンチングで上手く弾いた!』

 

見事に反応してみせた果南によって一端の危機は過ぎ去ったように見えた。だがポテポテと転がるボールへ向かうのは彼女のチームメイトではなく―――、

 

「くーっくっく、狙い通りですねぇ!」

 

『あーっとだがしかしこれは弾いた先が悪かったか! 零れ球を拾ったのは中須! またしても虹ヶ咲シュートチャンスだぁ!』

 

「はーい皆さん! 超絶可愛いかすみんのプレーでメロメロになっちゃってくださ~い!」

 

隠す気もない自己顕示欲を乗せて蹴飛ばされたボールは威力こそ低いものの、またしても厳しいコースを狙ったそのシュートを果南はこれまた弾くしかない。

そしてボールが転がった先にいるのは……またしても虹ヶ咲のプレイヤーだ。

 

『これは試合開始直後からとんでもない展開になりました! 虹ヶ咲が怒涛のシュートラッシュ! Aqoursチームは松浦がただ一人防戦する一方だぁ!』

 

「ふふ、そうだろうさ。なんたってそうなるようにフォーメーションを組んでるんだからね。まあまさか、ここまで早く決まるとは思わなかったけど」

 

「これってミアちゃんが考えた作戦なの?」

 

「まあね、要はBaseballの応用だよ。ストライクゾーンにファウルにしかならないコースがあるのと同じで、サッカーのゴールにも防げても弾くことしか出来ないコースがある。だからゴールを囲うようにフォーメーションを組んだ」

 

「仮に止められても直ぐにそのボールを拾って、またシュートを打てるようにってこと?」

 

「That`s right. 上出来だよベイビーちゃん。あのキーパーの身体能力は人間離れしてるけど、それでも限界はある。繰り返していればいずれ点は入るさ」

 

ベンチのミアによって示される通り、厳しいコースを狙ったシュートを弾く度にそのボールが再びシュートされるループのような光景が続いた。

そうして幾度となくその動作が繰り返された後、その一瞬を好機と捉えたせつ菜が吠える。

 

「今度こそ……先制点は貰います!」

 

これまでのシュートとは明らかに異質な姿勢に入るせつ菜に見る者全てがその瞬間を待った。

 

必殺技。超次元サッカーにおいてそう称される、文字通りの超絶技に。

 

˝刹那ブースト˝ッ!!!

 

『来たぁーッ! 最初に必殺技を放ったのは優木だぁ!』

 

『一瞬で四度ボールを蹴る猛烈なシュート! これは決まってしまうのか!?』

 

高らかな声と共に放たれたシュートに観客からの歓声が沸く。

四段階に猛烈な加速を受けたボールは目にも止まらぬ速度で果南の守るゴールへと突き進む。

 

完璧なタイミング、完璧なフォーム。誰もが先制点を確信した―――その瞬間だった。

 

「ほっ!」

 

「え……?」

 

次に訪れたのは先制点に沸く歓声ではなく、何が起こったのかわからないと言った困惑を秘めた声。

 

それもそのはず。完璧にゴールへと突き刺さっていると思われていたはずのボールは、今この瞬間果南の手の中に収まっているのだから。

 

『な、何と松浦、優木渾身の必殺シュートを片手で受け止めてしまったァァ!』

 

「さーてと……時間は十分稼いだよね、ダイヤ」

 

「ッ……! まさか……!」

 

フィールド上のプレイヤーと違い、唯一この盤面を俯瞰で見ることのできるミアが何かに気付いたように目を見開く。

だがそれも時既に遅し。途端に吹き荒れた大海の脅威はフィールドに大しけを呼んだ。

 

「刹那ブースト、だっけ? 悪くはなかったけど、加速って名乗るならこれくらいはやらないとね」

 

まるで大波と踊るサーフィンのように。

雄々しく、それでいて妖艶に宙を舞った果南が爆発的な威力を以ってボールを蹴りつける。

 

˝ツナミブースト˝ッ!

 

『うえぇぇ!? 自陣のゴール前からシュート!?』

 

『いいや違う! これは前線へのパス! 何と松浦、シュート技を利用しての超ロングパスだッ――――――!』

 

「マズイッ……! 皆下が―――」

 

慌てて声を張るも最早手遅れなことは火を見るより明らかだった。

彼女が忠告を上げようとした瞬間にはもう果南の放ったボールはセンターラインを越え、滅茶苦茶にラインを上げていたダイヤの足元へと吸い込まれていたのだから。

 

「お見事ですわ果南さん。さあ、今度は私達の番ですわ!」

 

『今度はAqoursチームのカウンターだ! だがこれはどういうことか……既にディフェンス陣含め殆どの選手が虹ヶ咲陣地へと踏み込んでいるぞ? まさかゴールの防衛を松浦一人に任せて全員ラインを上げていたとでもいうのか!』

 

『全員頭円堂かよ』

 

そんな教祖もびっくりであろう全員攻撃は凄まじい速度と練度のパスワークで前線を上げ、一人、また一人と虹ヶ咲のDF陣が突破されてゆく。

 

「ああクソッ! そういうことか……」

 

「どういうこと?」

 

「こっちの作戦を利用された。ゴールを囲う関係上、プレイヤーの意識はどうしてもゴールやボールに向くからね。GKがあれだけファインセーブを繰り返せば猶更だ。……そうして実況や観客の意識すらもがゴールに向いた瞬間を狙って全員でラインを上げたんだ。GKがシュートを止めた瞬間即座にカウンターを返すために」

 

「じゃあ果南さんがずっとボールを弾いてたのも……」

 

「ああ……きっとわざとだろうね。何度もシュートを打たせて自分とゴールに会場全体の意識を向けさせて、他のプレイヤーがラインを上げてることが悟られないための」

 

「そんな滅茶苦茶な……」

 

「出来るって言う絶対の自信があったんだろ。でなきゃ、フィールドのプレイヤーもあんな真似しないさ」

 

脂汗を滲ませながらも冷静に状況を分析するミアの視界にペナルティエリア内へと至ったAqoursチームFW陣の姿が映る。陣形を取るためにDFもラインを上げていた手前、この唐突過ぎる速攻にディフェンスも間に合っていないのだ。

 

「流石先代ってところか……これは一本取られたね」

 

「まずは先制点……get itデース」

 

「ヨーソロー!」

 

最後の砦であったエマも曜と鞠莉のワンツーを前にあっさりと抜かれ去り、がら空きのゴールにボールが転がり込む。直後に鳴り響いた笛の音は得点を示す音色だった。

 

『ゴォォォルッ! 先制点はAqours! 絶体絶命と思われた状況からの鮮やかなカウンターを決め、後発グループに先代としての意地を示しましたッ――――――!』

 

割れんばかりの大歓声が沸き上がり、電光掲示板に1-0の表記が成される。唐突過ぎる失点に虹ヶ咲の誰もが呆気に取られていた。

 

「ランジュ以上の化け物がいるなんて聞いてないぞ……ちょっと作戦を練り直す必要があるな。ベイビーちゃん、その間の指揮は頼んだよ」

 

「えぇ!? 私サッカーとか全然わかんないよ!?」

 

「見ていて気になったところとかを指摘するだけでもいい。ベイビーちゃんは何だかんだ感性はいいからね」

 

「そんな無茶な……ええと、み、ミンナガンバレー?」

 

ベンチから上がった侑の鼓舞に続きホイッスルが鳴る。再度虹ヶ咲ボールでゲームが再開された。

 

「……さて、どうしましょうかランジュさん」

 

「どうもこうもないわ。ランジュ達の全力をぶつけるだけよ!」

 

「ちょ……! 闇雲にぶつかって勝てる相手ではありませんよ!?」

 

センターサークル内でボールを受け取ったランジュが稲妻が如し速度でAqours陣地へと突き進んでゆく。相も変わらず驚異的な加速だったが、反面、どこか焦りを纏っているように見えた。

 

「仲間の声には、きちんと耳を傾けるべきだと思いますよ?」

 

そんな内情を悟られたのか。

FWでありながらランジュの前に立ちはだかった選手―――Saint Snowの鹿角聖良がスパイクを突き立てるようにしてピッチを踏みつける。

 

「˝アイスグランド˝」

 

いつの間にやら芝生は凍り付き、展開されていたスケートリンク。その冷気が聖良の意のままに操られ、地面から突き出す氷塊と共に猛進したそれらは瞬く間にランジュを氷山の牢獄へと閉じ込めてしまった。

 

「千歌さん!」

 

ボールを奪い取った聖良がパスを繋ぐ。受け取ったのは千歌だ。

すぐさま正面へと向き直り攻撃を仕掛けようとするが、先程と違いフォーメーションは初期盤面のまま。すぐさま迎え撃つMFとの一対一の形となった。

 

「おーっすちかっち。今日の対決、勝つのはどっ千歌な~? なんつって!」

 

「げげっ、愛ちゃん……! えっと……愛、あいぃ……!」

 

「隙ありぃッ!」

 

『おおっと、ダジャレ対決で敗れた高海がボールを奪われた! 高海千歌のダジャレ設定とか誰が覚えてんだ!?』

 

『ボールを取り返した宮下は流れるように桜内と津島も突破! 流石は部室棟のヒーロー! その輝きはこのピッチでも健在だ!』

 

「させませんわ!」

 

ランジュの影に隠れてこそいるが、愛の身体能力もまた本物。次々とディフェンス網を掻い潜ってゆく彼女に待ったを掛けたのは司令塔でもあるダイヤだった。

 

˝アイアンウォール˝ッ!

 

低く構えたダイヤの背後に出現したのは巨大な壁だった。その名の通り重厚な威圧感を構成するのは鋼鉄。ゆうに身長の三倍はあるであろう障壁を突破するのは困難に思われた。

 

が―――、

 

「快調に飛ばしたかったら生徒会長を突破しろってことね……望むところ!」

 

「はいぃっ……!?」

 

直後に金色の影が宙を舞う。

それが愛であると理解した瞬間には、彼女の姿はダイヤの生み出した壁の真上にあった。

 

˝アクロバットキープ˝!

 

『おーっと宮下、黒澤の繰り出した必殺技を飛び越えることで強引に突破!』

 

『ダジャレは微妙だが実力は本物! 何というキープ力だァ!』

 

「辛辣っ……! でも続けていっちゃうよ!」

 

ボールを保持したままダイヤをも突破した愛がゴールに迫る。歓声と、自軍ベンチから聞こえる爆笑に背中を押されるようにしてボールを蹴り飛ばした。

 

˝サンライズブリッツ˝ッ!

 

愛の胸から発生した光がボールに宿り、繰り出されたオーバーヘッドキックに乗った必殺技が圧倒的な眩さを伴って奔る。

 

『宮下そのままシュートだ! 輝きと共に昇るボールはまるで太陽のよう!』

 

『正に対戦相手の看板、サンシャインのお株を奪う一撃だぁ! だが、これは……!』

 

語末を濁らせた実況の声になぞらうように、愛の放ったシュートはゴールの枠を僅かにズレる軌道を進んでゆく。

 

シュートミスか。多くの頭にその単語が過るが、同時に愛がこの距離でそんなミスを犯す筈がないとも理解する。

 

「頼んだよ……カリン!」

 

「ええ。任せといて!」

 

その答えは、愛のシュートと並走した果林が物語っていた。オフサイドラインギリギリを突いた攻撃がAqoursのゴールへ牙を剥く。

 

˝流星ブレード˝ッ!

 

『違う! これはシュートじゃない! 朝香へのパスだ!』

 

『宮下のパスを朝香がシュートチェイン! Diver Divaの見事な連携が強烈な一撃を生み出したぞ!』

 

生み出されたのは更なる加速だ。星の輝きを受けたボールが軌道上の空気を焼き焦がしながら進む。

 

シュートチェインという高難度の連携、そして太陽と流れ星、溌剌と妖艶が交わり顕現した二色のコントラストが観客はおろかフィールドにいる選手すらも魅了した。

 

今この瞬間はDiver Divaの二人が会場を支配している。湧き上がる歓声がそれを示していた。

 

「ほっ!」

 

最も、そんな歓声は直ぐに掻き消えることとなるのだが。

 

今にもゴールを貫かんとしていた渾身のシュートは、輝きは、果南によってボール諸共地面に叩き伏せられていたのだから。

 

『とっ…………止めたアァァァッ! 決まったかに思われたDiver Divaのシュートを松浦がまたしてもセーブ!』

 

『必殺技も無しに受け止めるという圧倒的強者感はまるで格の違いを見せ付けているかのよう……まさかの出来事に虹ヶ咲チームも言葉が出ない!』

 

暫くは何が起こったかわからないといった静寂がスタジアムを包んでいたが、実況の声に続き、堰を切ったように爆発的な歓声が沸き起こる。

 

直前までの空気が一変。果南の一挙動が全てを塗り替えてしまった。

 

「嘘でしょ……?」

 

「あれを止められると、ちょっとキツいかもね……はは」

 

流石の愛もこれには笑顔を失う。立ちはだかる見た目以上に巨大な壁が生み出す影が虹ヶ咲を包み込みつつあった。

 

「ドンマイだよ愛ちゃん! 果林さん! 切り替えていこっー!」

 

ただ一つベンチからの声援がその暗雲を払う。まだ諦めるには早すぎる。笑顔を振りまく侑からはそんな意思が感じられた。

 

「ルビィちゃん!」

 

虹ヶ咲の面々が俯きかけていた顔を上げた時、果南のスローによってゲームが再開する。ボールを持ったのは黒澤ルビィ。庇護欲を駆り立てるような小柄な少女だった。

 

「プレッシャーを掛けていきましょう! マークは徹底的に……かすみさん!」

 

「任せちゃってください!」

 

この状況でマズいのは後方でパスを回されること。前半の終了まではもうさほど時間がない。せめて一点は返したいこの状況で時間を稼がれるのは好ましくなかった。

 

故の徹底マーク。ルビィよりも後ろのラインにいるDW陣にはFWがマークに付き、当人にはMFがパスコースを切りつつ二人掛かりでボールを奪いに行く。

 

「やっほールビィちゃん。サッカーでも、スクールアイドルでもぉ、可愛さならかすみん負けないよ?」

 

「ごめんね? これも勝負だから……」

 

「ぴ、ぴぎっ……!」

 

かすみと歩夢のプレスにルビィが短い悲鳴を上げる。試合前のミアの指摘通り、気の弱い彼女はこの状況に少なからずの混乱を覚えている筈だ。その隙をつく。

 

「人の可愛い妹に何を……!」

 

「おっと、行かせないわよ」

 

ダイヤを始めとし数名のメンバーが援軍に向かったりパスコースを生み出そうとするも、執拗なまでのマークにそれが叶わない。

 

ただ一つのルートは―――、

 

「り、理亞ちゃん!」

 

「ッ……! 待ってルビィ、こっちは……!」

 

「頂きです!」

 

あからさまにコースが開かれ、あからさまにフリーであった理亞に対して蹴り上げられたパス。それを遮ったのはしずくだった。

 

俯瞰的に見れば露骨だが、フィールド上のプレイヤーはそうもいかない。それも焦っているとなれば猶更だ。冷静な判断力を失えば必ずこの餌に食いつくという予想は的中する形となった。

 

「璃奈さんの計算通りだね!」

 

「うん。ミアちゃんのおかげでフォーメーションも組みやすかった……でも」

 

急ぎAqoursチームもディフェンスに移行するも、少々距離が離れすぎている。ボールを持つプレイヤーが何かをするには十分な時間があると言えた。

 

そのプレイヤーがしずくで無ければ、の話だが。

 

「うぎゃっ!?」

 

パスカットからの二歩目。ドリブルで切り込もうしたしずくの足は、何故かボールの上を滑る。伴って体制は崩れ、派手に転倒したしずくの悲鳴が情けなくも上がった。

 

「プレイヤーがしずくちゃんだってこと、忘れてた」

 

失策を告げる璃奈の声に続き、ポテポテと転がったボールが相手チームである梨子の足元に収まる。

 

「え、えーっと……?」

 

「梨子さん早く! カウンターですわ!」

 

「あ……は、はい!」

 

気の毒に思ったのか一瞬梨子がプレーを躊躇うものの、ダイヤの指揮により前へ向き直る。

 

「梨子ちゃん!」

 

「行かせないぜ~? 後輩のミスは先輩がカバーしないとね」

 

呼び掛けた曜へのパスコースを切るように彼方が迫る。彼女が突破されたら再びの失点は確実だというのに、そんな危機感など全くない柔和な雰囲気が梨子を気後れさせた。

 

「夢の世界へごあんな~い。˝グッドスメル˝~」

 

「ふぇっ!? あ……ふぁ……」

 

体を翻した彼方を中心として桃色の煙が発生し、当人と一緒に梨子を包み込む。やがて晴れた視界に映ったのはボールを奪われ、更にはピッチへ横になって寝息を立てる梨子の姿だった。

 

『おーっと何ということだ! DF近江の必殺技により桜内試合中にも関わらず爆睡! 安らかな寝顔だー!』

 

「なぁにをやっているのですかぁッ!」

 

ダイヤの怒号が飛ぶ間にも試合は進む。それまでDFのマークに付いていたFW陣が散開しパスコースを作る。梨子の入眠によって枚数で劣るAqoursには少し厳しいものがあった。

 

「果林ちゃ~ん! 今度はいいとこ見せてねぇ!」

 

彼方から果林、果林からせつ菜、せつ菜からランジュ。流れるようなパスワークで虹ヶ咲チームが再度ペナルティエリア内までボールを運び込んだ。

 

「正面突破は厳しいわ。シュートよりパスを回してキーパーを突破することを―――、」

 

「ラアァァッ!」

 

「ちょ……ランジュさん!?」

 

果林が言い終わるよりも早くランジュの蹴飛ばしたシュートがゴールへ向かった。当然、難なく果南によって受け止められる。

 

「ちょっとランジュ! なんで……!」

 

「パス回しでキーパーを突破してゴールなんて、そんなのつまらないじゃない」

 

チームメイトから向けられる反感をランジュは毅然として返した。

 

「いい? ここに集まった人達はスクールアイドルが好きで集まった観客なの、ファンなの。だったらアタシ達にはこの人達を魅了する必要がある。サッカーのプレーって言う、パフォーマンスでね。そこはスクールアイドルと同じよ。そんな地味なゴールをするのはパフォーマンスを放棄するのと変わらないわ」

 

示されたのは彼女の信念。スクールアイドルとしての世界に触れあったからこその回答だった。自然とピッチにいる者のみならず、観戦席の他グループにまで背筋を伸ばすような空気が伝播する。

 

「それ、遠回しにさっきの私達のゴールを批判してる? ランジュちゃん」

 

「そんな訳ないじゃない。キーパーである貴方の強さやメンバー同士の理解度や絆の深さが無いと出来ないプレイ……何より抜群の意外性だったわ。流石のランジュも魅了されちゃった」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃん。だったら、もっと魅了してあげるよ!」

 

にかりと笑った果南がボールを放る。今度はDFに対するものではなく、ラインを上げるFWに向けたもの。

 

ボールを受けた曜がトラップの勢いのまま敵陣ゴールへ構える。進路を遮るようにディフェンスへ入った栞子と向かい合う構図となった。

 

「あれ、栞子ちゃんは攻撃参加してないんだ」

 

「皆さん攻撃となると熱くなりすぎる傾向があるので……。それ自体は悪いことではありませんが、保険は必要だと判断しました」

 

「oh~.so cool and cute! ウチのポンコツ司令塔とは大違いね!」

 

「一言多いですわよ鞠莉さん!」

 

「そうかっかしないでよダイヤ~。あんまりファンの前でプンスコしてると印象悪くなっちゃうよ?」

 

「怒らせておいてその物言いはなんですの!?」

 

「まーまー、点差ならちゃんと広げてくるからお説教はnothingでお願いしマース!」

 

憤慨するダイヤを軽くあしらいながら上がってきた鞠莉へと曜のパスが通る。だが栞子もそれは予測していたのか、常に二人と一定の距離を作ることでプレッシャーを掛け続けるポジショニングを保つ彼女を抜き去るにまでは至らない。

 

「やるね~栞子ちゃん。先輩に華を持たせてくれるつもりは……無さそうだね」

 

「当然です。確かにあなた方より私は経験で劣りますが、この対決も、スクールアイドルとしても負けるつもりはありませんので」

 

「言ってくれるわね~。でもね、栞子。このサッカー対決ではスクールアイドルとしての実力がそのままプレーに反映されるの」

 

「初耳なのですが!?」

 

「栞子は虹ヶ咲の追加メンバー……スクールアイドルとしての歴もせいぜいが二年と少しよ。そんなあなたに今年で八年目の私達が負ける訳ないでしょうが!」

 

『メタい! 発言がメタいぞ小原ァ!』

 

鞠莉が示した経験の差を栞子は知識とセオリーで補う。彼女が時間を稼ぐ間に少しずつ虹ヶ咲チームのDF陣が戻り、体制を整えつつあった。

 

「そう言えば私達、ちゃんとしたシュートはまだ一回も打ってないね」

 

「イエース。そろそろ私達も魅せないとね!」

 

「……随分と余裕ですね。残念ですがもう十分時間は稼ぎました。ボールは奪わせて―――、」

 

「栞子ちゃんはさ、真面目だよね。良くも悪くも」

 

「……それが?」

 

「ああいや、別に否定してる訳じゃないよ? 現に私達とか栞子ちゃんみたいなストッパーがいなくて大変なことになることも多いし」

 

敵陣が完全に元のポジションに戻る、その寸然。

深く踏み込んだ曜は不敵な笑みを浮かべ、背中を預けた親友の姿を夢想する。無茶苦茶にも思える彼女の示す輝き、Aqoursは皆、それに魅せられて集まったのだから。

 

「たまには常識外れでぶっ飛んだことをするのも、楽しいよ!」

 

「なっ……!?」

 

次の彼女のプレーは完全に栞子の虚を突いた。これまで地面と平行に転がっていたボールが突如上へと舞ったのだから。

 

そして曜の打ち上げたボールを鞠莉が追うように飛翔する。途端に渦巻くのは白を帯びた風だった。

 

『これはシュート体勢!? まさか小原、敵陣とは言えペナルティエリア外からシュートを打ち込もうというのかァァ!?』

 

「そのまさかデース!」

 

金色の嵐が吹き荒れ、やがては周囲一帯の天候にすらも影響を及ぼすようなエネルギーが昇る。

 

˝ホワイトゥ……ハリケーン˝ッッ!!!

 

やがてスタジアム上空に開いた台風の目から吹き下ろされる竜巻のような突風。

鞠莉の蹴り出したシュートに乗って突き進むそれは残虐なまでの破壊力を以って虹ヶ咲のゴールへと襲い掛かる。

 

「……流石にマズい。彼方さん! しずくちゃん!」

 

「お、あれやっちゃう~?」

 

「止められるんですか!?」

 

「多分、無理。でも威力を削げれば十分」

 

璃奈の号令で集結した彼方としずくの二名。正三角形を作るようにフォーメーションを組んだ彼女達の中心から黒い渦が湧き上がる。

 

「「「˝フラクタルハウス˝!!!」」」

 

オーラが形成したのは夜の帳に塗り潰された影絵の館。即席の壁では当然鞠莉のシュートを止めるのは叶わず、崩壊と共に璃奈達も吹き飛ばされるが、威力を削ぐという目的は果たした。

 

「エマちゃんお願い!」

 

「彼方ちゃん達の頑張り、無駄にしないよ! 今度は任せて!」

 

それでもまだシュートの勢いは十二分にある。立ち向かうエマは大きく息を吸い、対抗する技を繰り出すべく飛び上がった。

 

˝フェンス・オブ・ガイア˝ッ!!

 

空中で数回の回転を重ねたエマの両腕が地面へ叩きつけられ、その衝撃で隆起した地面が岩山のような障壁を作りだす。

 

さながら彼女の故郷、スイスに跨るアルプス山脈を思わせるような造形美が衝突した台風を弾き返し、遂には消滅させた。

 

『これはナイスセーブ! チーム虹ヶ咲、四人掛かりで小原の強力無比なシュートを防ぎました!』

 

「so surprise! やるね~皆ぁ。でも……」

 

シュートとしての勢いを失い、力なく転がるボール。

 

「弾いちゃったのは、ちょっとマズいかもね~」

 

『あーっと! まだだ! まだ終わっていません!』

 

実況に遅れる形で気が付いた観客が歓喜と悲鳴の入り交じった声を上げる。

零れ球を拾ったのはまたも、Aqoursチームだった。静かに切り込んでいた鹿角理亞が再度虹ヶ咲のゴールへ狙いを定める。

 

˝パンサーブリザード˝!

 

台風の次に吹き荒れたのは吹雪。全てを凍てつかせる冷気を纏った黒豹が大雪原を駆け、猛々しい咆哮と共に牙を剥いた。

 

『マズいぞチーム虹ヶ咲! DFは三船を除きまだ動けず、GKのヴェルデも反応し切れていない……これは追加点か!?』

 

「させる訳……ないじゃない!」

 

ダメ押しの追撃に誰もが俯きかけた時、割って入った声がそれを阻んだ。ピンクゴールドの長髪を靡かせながらゴールを拒む少女に皆の視線が集中した。

 

「ランジュちゃん!?」

 

「ナイスセーブよエマ。しずく達も……ここはランジュに任せなさい!」

 

『FWだ! 何とFWがゴール前まで戻りシュートを防いでいる! 何という掟破り!』

 

『だがそれこそが彼女の言うパフォーマンス! お聞きくださいこの大歓声を! 宣言通り魅せてくるぞショウ・ランジュ!!』

 

「寒いのはさっきもう十分味わったわ……姉の方に比べればこの程度訳ないわよ!」

 

「っ……!」

 

北の大地で培われた極寒の刃が徐々に対抗する彼女の足を凍て付かせるが、ランジュの闘気がそれ以上の熱を生み出し吹雪を融解させてゆく。

 

直後に熱気は冷気を焼き付くし、昇華した爆炎が吹き上がった。

 

˝マキシマムファイヤ˝ァァァッッ!!

 

『なんとそのままダイレクトシュートォォッ!! フィールドを縦断する紅蓮の炎が真っ直ぐゴールからゴールへと飛翔してゆくぞ!』

 

『そして更にぃぃぃぃッッ!!』

 

直進するランジュのシュートと重なる三つの影。それぞれが各々の炎を宿し、今一つにならんと燃え盛る。

 

「ランジュ一人にいいカッコさせないよ!」

 

「プレーで魅せる……ね。いいじゃない。負けてられないわ!」

 

「うおおおぉぉぉぉッ!! 皆で一緒に燃え上がりましょう!!!」

 

愛に果林。そしてせつ菜。三人の感情が更なる熱と勢いをシュートに齎す。

 

「「「˝グランドファイア˝ッッッ!!!」」」

 

『シュートチェインだァァァッ! 虹ヶ咲再びのシュートチェインは何と合体技! とんでもない難易度の技をここでやってのけたァァァッッ!!!』

 

「なんッ……!?」

 

「これはマズいのではないのですか!?」

 

四つの炎、四人の気持ちの融合した灼熱は業火と化してフィールドを抉る。

先の鞠莉のシュートを遥かに上回る威力、そしてこの勢いと流れ。これならば必ずゴールを割れると誰しもが確信した。

 

でもどんな作品にも存在するものなのだ。空気の読めない奴というものは。

 

「ちょっ……ずら丸!? そんなとこでアンタ何してんのよ!?」

 

「知ってる? 善子ちゃん。まる達これが初セリフなんだよ。多少の差こそあれど他の皆は複数回セリフや見せ場があったのに……哀れずらね」

 

「そんなことわかってるわい! それよりシュート来てるのよ!? アンタ止められるの!? 運動苦手な描写しかなかったアンタが!」

 

「はぁ……そんなのだから前半終了直前、文字数で言うと約14000字時点までセリフも見せ場も無しで進んじゃうんだよ。いずれ出番が来るー、みたいな甘い考えでいるとグループもキャラも飽和してる今のコンテンツの波に飲み込まれちゃうよ。もうまる達が活動を始めた頃とは違うずら」

 

軌道上に立つのはよしまるでお馴染みの幼馴染コンビ、国木田花丸と津島善子。

ようやくの出番となった両名は何やらメタい発言を交わしながら虹ヶ咲渾身の反撃を阻まんと立ちはだかる。

 

「だからまるは足搔くよ。例え畜生だとかクソガキだとか言われても泥臭く……この厳しい世界で生き残るために!」

 

「なんかずら丸だけ趣旨が変わって来てない!? ちょ、ちょっ……まっ―――!?」

 

善子の体勢が崩れる。転んだとかではない。花丸が彼女の足を掴んでブンブンと振り回し始めたからだ。

 

「クソコテもギャグ補正も上等ずら! うおぉぉぉッ!」

 

「あれはっ……!」

 

虹ヶ咲のベンチでミアが輝いた目で腰を上げる。そこにアメリカンなスピリッツを感じ取ったからだ。

 

そう、今花丸が行おうとしている動作は正しくミアの故郷、アメリカを発祥とするスポーツが起源となるもので―――、

 

˝ド根性バット˝ォォォォォッッ!!!!

 

カキーン、と。スタジアムにいた全員が球場に響く快音を幻聴する。

 

花丸にぶん回された善子の顔面は見事にボールとジャストミートし、自陣を脅かす虹ヶ咲のシュートを逆方向へと打ち返した。

 

そして、

 

『は……入ったッ———! ……じゃないゴォォォォォルッ! 虹ヶ咲の熱い流れを断ち切ったのは国木田の一振り!! 二度のダイレクトシュートを挟んだボールの威力は凄まじく、ヴェルデを軽く吹き飛ばしてゴールへと突き刺さったァ——————!!』

 

『きゅ、救護班! 早く津島選手に担架を! アイドルがしちゃいけない顔になってるから!! こらそこカメラ向けるな!』

 

顔を真っ赤に腫らした善子がフィールドに崩れると同時に甲高い笛の音が響く。

 

『そしてここで前半終了のホイッスル! 状況は2-0と、Aqoursチームが先代の威厳を示すように突き放す展開となりました!』

 

『今回はここで終了! 後半戦及び次回はいつ投稿されるかわからないけど首を長くして待っててくれよお前等! それじゃあな!』

 




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