やはり俺の加速世界は間違っている   作:亡き不死鳥

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超むずい
ヒッキーを主人公にしながら原作通りってめっちゃむずい。
オリ話もそのうち入れるつもりだけど工夫が必要そうですね


加速世界

月曜日。学生の誰もが嫌い怨まなかったことはない日だろう。たまに月曜日が休みになるとその怨みの対象は火曜日に行く。人間は優柔不断だ。

 

さて、学生である俺も当然行かなくてはならない学校がある。その名も『梅郷中学』。中学二年生の俺は小学校時代の思いで(トラウマ)を参考にして小学校の同級生が誰も行かない所を選び、クラスの連中と関わらない(関われないともいう)まま一年以上が過ぎた。

そして今現在、というかかなり前から俺の頭を困らせている奴がいる。

 

「聞いているのか八幡」

 

そう、俺の目の前にいるこいつ。

黒雪姫と呼ばれるこの学校の副会長。成績優秀容姿端麗、男女問わず人気者。ぼっちで人に気にもされない俺とはまさしく住む世界が違う存在が、わざわざ俺に話しかけてくるのだ。

 

「…なんのようっすか?」

 

「食事の誘いに来た」

 

……そしてこいつはいつもこういう誘いを俺の席に来て言ってくる。俺の席は窓際の真ん中。そこに学校の人気者が学校の日陰者に話しかけるなと口を酸っぱくして言いたい。つーかメールがあるだろうが。なんでわざわざ目の前に来て言うんだよ。

まさかこいつ俺の社会的+物理的な抹殺を狙ってんじゃないだろうな。実際さっきからクラスの周りの視線が集中し過ぎてヤバイ。

 

「…いや、俺より取り巻きの方々を誘った方が」

 

「大事な話がある。今日の昼、食堂に必ず来い。来なければ校内放送で呼び出すからな」

 

越権行為反対!こんな所で大事な話とか言うなよ。勘違いしちゃうだろ。

他の連中は大概勘違いされたようで、後ろから感じる視線が冷たい。視線が質量持ってたら氷漬けにされて蜂の巣になるレベル。

 

……まぁ、俺と黒雪の大事な話なんてブレイン・バーストの話しかないだろうから問題ないけどな。俺の勘違いの話ね?他の奴らは知らん。

 

 

 

そうこうしているうちに予鈴がなり、黒雪も自分の机に戻っていった。俺は未だ突き刺さるクラスメイトの視線を無視して机に突っ伏し、意識を手放した。

 

 

☆☆☆

 

 

 

『子を作ろうと思うんだ』

 

『……へぇ』

 

昼休みの食堂で黒雪に直結させられ、その後の第一声がそれであった。

誤解のないように言っておくが黒雪の言う『子を作る』というのは雄しべと雌しべの話ではなく、ブレイン・バーストの話な。

実は黒雪姫もバーストリンカーであり、しかも俺と同じレベル9。黒の王と呼ばれる程のプレイヤーなんだ。

 

『それ、俺に言う意味あんの?一応言っとくけど俺と黒雪ってある意味敵同士だぞ?』

 

『ふっ、無色の孤王に裏切り者の王。肩を並べるには相性がいいと思うけどな』

 

『生憎肩を並べるなんてあいつしかした事ないからわかんねーよ』

 

『それは残念だ。…話を戻すがその子は面白い子だぞ。ゲームセンターのスカッシュゲーム、それの高得点保持者だ』

 

『スカッシュゲーム?あぁ、そういえば俺も昔やってたな。なんせあそこは人が全然来なかったからな。なに?もしかしてそいつもぼっち?』

 

ぼっちが増えるよ!やったね、八幡!…いやぼっちが増えてもぼっち同士が関わる訳でもないからそこらへんの事情はどうでもよくはあるんですがね。

 

『まあな。…そうだな、言うなればいじめられっこと言う奴だ。もちろんその問題も解決するつもりだ』

 

『それに恩きせて子になれって?』

 

『無理強いはしないさ。ただ、ブレイン・バーストの相性の良さでは他に居ないと思わないか?』

 

……確かに。ブレイン・バーストの適合条件に『大脳応答に適性を持っている』という条件がある。

実際あのスカッシュゲームをやれば分かるが、アレは見かけに反してかなり反射神経を必要とする。ボンボン跳ねてたまに顎を狙ってきやがるんだ。……久しぶりにやってみようかな。

 

『じゃあ後はもう一つの条件、『生後間も無くからニューロリンカーを付けていること』はどうなってるんだ?』

 

『それを聞こうと思ってね。実はもう呼んである。…いや、丁度来たようだ』

 

『は?』

 

黒雪はニューロリンカーからケーブルを抜き、食堂の方でキョロキョロしてる丸っこい奴を呼びかけた。あれは一年らしい。

……なんだ典型的なぼっちか。イケメンぼっちだったら今すぐ投げ出して帰るところだった。しかし一年からイジメの標的にされるなんて運のない。

ま、俺程のぼっち道を極めればいじめっ子どころかクラスメイトにすら認識されなくなるがな。

 

「あの、なんで僕呼ばれたんですか?」

 

「まあ掛けたまえ。食べながら話そう。直結の仕方は知っているか?」

 

直結用のケーブルを渡されビクンと体を震わせ辺りをキョロキョロ見回す。

……分かるぞ少年。こんな公衆の面前で直結するなんて大概カップルがやることだ。それらから無縁な俺達に直結を申し込むなんて、まさか俺のこと好きなんじゃ!なんて勘違いしてもおかしくない。その上ぼっちは周りからの自分の評価を分かってる。だから相手に釣り合わない自分への周りの目が恐ろしいのだ。

 

ま、俺には関係ない。そして俺は未だに手を付けていなかったラーメンを啜るのだった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

それからしばらく経ち、一年の男が俯いたり真剣な表情になったりとぽっちゃり二十面相をしていると、食堂の入り口が騒がしくなってきた。金髪ピアスと頭悪そうな連中が食堂中を見回し目の前にいる一年の姿を見つめると真っ直ぐこっちに向かってくる。

 

「有田ぁ!てめぇ約束すっぽかすたぁいい度胸じゃねぇか!アァ!?」

 

「ヒィッ!」

 

どうやら今日もなにか命令されていたらしいな。それをすっぽかしてこっちにこれる度胸は認められるか。

……さて、どうする?

 

「ああ、君が荒谷君か?」

 

「…!はい、そうです」

 

おおう、すげぇ変わり身の早さ。美人は不良をも更生させるのか。流石生徒会副会長、ここから不良更生の素晴らしい一言が…

 

「君の事はハルユキ君から聞いているよ。暴力を振るうしか脳のない猿のような男だとね」

 

……おかしい。俺の感覚がおかしくなければこの言葉で更生するのはせいぜいドMくらいだ。まるで不良に暴力を振るえと言っているような………ああ、そう言う事か。

 

「有田ぁ!この野郎!!」

 

黒雪の言葉に切れ、有田?に殴りかかる不良。…理由は分かった。だが流石にそのまま殴られろって酷過ぎんだろ。まぁ説明するんだろうが……ここは俺も、

 

「「「バースト・リンク!」」」

 

バシィィィィィンという音と共に世界は青く染められ、周りの人間達が停止した。ここは初期加速空間(ブルーワールド)と呼ばれるソーシャルカメラが映し出すある意味別の世界みたいなもんだ。

その中に俺も含めて三人だけ青以外の色を持つ存在がいた。言うまでもなく黒雪と有田だ。ここではローカルネットワークの仮想世界でのアバターが採用されている。黒雪はほぼ現実の姿に、エロい黒衣装にド派手な蝶の羽根を付けている。どれだけ自分に自信があるんだよ、とツッコミたいがよくよく見ると『あれ?現実の方が可愛くね?』となってしまうからたちが悪い。ついに二次元を三次元が超えた瞬間かもしれない。

……それに引き換え、いや、それに加えてが正しいかもしれない。有田のアバターはちっさいピンクの豚。……なにそれ自虐?俺でもアバターくらいでは良い夢見たいと目が腐ってない適当な男アバターに執事服を着込ませてるのに。

 

「こ、ここはどこですか?黒雪姫先輩に……えっと、比企谷先輩?」

 

なぜ疑問系?それ以前になぜ俺の名前を知っている。大方黒雪が教えたんだろうがせめて本人に一言言うべきだろ。

…ここに有田が居るって事はブレイン・バーストリンクのインストールに成功したってことか。ブレイン・バーストの子作りは一人一回と決められているからな。失敗しなくてなによりだ。

 

「無事にできて良かったよ。おや、八幡も居たのか」

 

「まあな。これからお前がやる事の想像がついたんでな」

 

「ほう。それは?」

 

「有田殴らせてそこの不良を現行犯逮捕ってとこだろ。最近の不良はソーシャルカメラの死角を共有してるらしいしこんなチャンスはそう無いだろうからな」

 

余談だがソーシャルカメラの死角なら俺も幾つか知っている。ぼっちたる俺が教室で一人飯するわけにもいかないので、昼のベストプレイスを日々探しているうちに見つけたってわけだ。

 

俺の答えに黒雪は満足そうに頷き有田は震え上がっている。その有田を諭すようにこの世界の説明を続けていく。再び空気になった俺は服の乱れを直したり黒雪の慎ましい胸に目が行き黒雪に睨まれたりしていた。

 

…念の為言っておくがこの初期加速世界は完全に止まっているように見えるが実はそうではない。思考を千倍にしただけなので現実世界は刻一刻と進んでいる。なので先程より不良の拳が有田の顔に迫っている。その拳を自分の手で受け止め、「その程度か」と遊んでいると始めの時より近づいているのがよく分かった。

 

「ではハルユキ君。加速が終わったら全力で後ろに飛びたまえ。そうすればあまり怪我をせずに済む。ではもう出ようか。『バースト・アウト』と言えばここから出られる。いくぞ「「バースト・アウト!」」

 

………アレ?もしかしなくても俺置いてかれた?邪魔しないように隅っこで大人しくしてたから存在すら忘れられた?

 

「………バースト・アウト」

 

俺も胸に宿る虚無感をなるべく感じないようにしながら仮想世界から抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

世界が色を持ち急速に動き出す。つまり殴られかけてた有田が完全に殴られた。有田は吹っ飛びその後ろにいた黒雪にまで被害が起きる。その結果黒雪の頭からは二筋の血が流れ出た。

 

「黒ゆぶっ!」

 

「姫!大丈夫ですか!?」

 

「誰か救急車を!」

 

「先生と警察もだ!」

 

取り巻き連中に吹き飛ばされ輪の中から弾き出された俺はその後の光景をただ眺めていた。黒雪は頭を切っただけで大事には至らず、不良は逮捕され、有田は頬に湿布を貼られただけだった。……実際に殴られたのは有田なのにこの扱いの違いは流石と言ったところか。

 

 

 

 

だが一つだけ言いたい。……今日の昼、俺いる意味あった?

 

 

 

 




ヒッキー……もうちょっと作者の思い通りに動いてくれ
オバマが到来すれば働いてくれるかな?

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