キャラの違和感はもう仕様です
………あー、久しぶりに思い出しちまった。確かあの時からだっけな。今までより一層他人との関わり合いに敏感になったのは。疑心暗鬼になって触れず触らず、そのくせ他人の繋がりには目を光らせ、それが偽物だとわかった時に…恐怖を抱くようになったのは。
人とうまく関わるには自分を騙し、相手を騙し、相手も騙されることを承諾し、自分も相手に騙されることを承認する。まるで裏切りを容認しているようなシステムだと再確認した。
…俺には無理だ。自分が心から楽しかったと思ったものを否定されるのは、俺には耐えられない。それをされたのが騙しあってすらいない家族だったから尚更だ。
別に小町は悪くない。悪いのは俺だ。あんな手紙に期待を持って、今までの時間に希望を持ったから、勝手に後悔して絶望している。
……だから、俺はぼっちでいい。ぼっちがいい。ぼっちでいれば他人に期待をしないし、期待もされない。自分は騙せないから裏切られる事もない。
だから、俺はこれからもぼっちで居続ける。俺が俺であるために。
…なんか今のかっこいいな。別にぼっちで困る事もないしな。精々移動教室の時置いてかれた時くらいだ。
「八幡。さっきからなにをブツブツ独り言を言っている。こちらの話は終わった。ハルユキ君に戦い方を教えてくれないか?」
そういやそれが目的で対戦挑まれたんだっけ?しかし対戦を挑まれる事自体が久しぶりすぎて対戦の仕方なんて殆ど覚えてないんだがなぁ。
「あー、取り敢えず自分の名前のとこ押してみろ」
「あ、はい。……えーと、通常技がパンチとキック。必殺技は頭突きしかないんですけど…」
「……諦めよう」
「やっぱり僕には無理ですよね…、あはは」
「馬鹿者、そう簡単に諦めるな。必殺技は大した事なくとも、それを補う強さが必ず何処かにある。というかウルフはそれを知っているだろう」
「…まぁ確かに、『同レベル同ポテンシャル』なんて言われてるからシルバー・クロウにもなんかあるんだろうが……銀の特徴ってなんかあったっけ?」
「切断、熱、貫通、毒攻撃に強く、打撃、腐食に弱い。常識だぞ」
出た黒ユキペディア。いやブラック・ユキペディアの方がデュエルアバターっぽいか?通常技が検索で必殺技が知識披露とか。ないかな、ないね。
「……実は有田が空手の達人だったなんてことは」
「…それだったら荒谷達にいじめられてませんよ」
ですよねー。実際期待はしてない。俺は他人に期待はしないからな。当然された事もない。だが頼まれた事は最後までやる。これぼっちの信条ね、自分には嘘をつかない。ってことで、
「……んじゃま、いっちょ教えてやるよ。比企谷流戦闘術を」
☆☆☆
時は放課後加速世界。またもまたもや世紀末ステージで今朝の再戦をするために《シルバー・クロウ》と《アッシュ・ローラー》は対戦を始めた。現在クロウは歩道橋の上に身を潜めている。
俺が教えたのはなんて事はない、俺の三種の神器『逃げる、隠れる、不意をつく』の一つ、『不意をつく』だ。アッシュのバイクはとにかくうるさい。よって場所も距離も大体分かるから不意をつきやすい。でも歩道橋って微妙に高いよね。クロウと付くくらいだから高い所は得意なのか?
ついでに俺と黒雪は建物の上に座っている。クロウから見ると月がバックになってカッコいいかも。あ、俺見えないや
そんな事を考えているとクロウがアッシュに超必殺・飛び蹴りを食らわせた。見た感じクリティカルヒット。アッシュをバイクの上から吹き飛ばした。
まず作戦その1は成功。そのままクロウはバイクの方に向かって行く。そして跨り、ここからは見えないがカチカチ動かすと、ブルンブルン!とバイクから排気ガスと共に爆音が響き出した
「え、えと……いやっほぉぉぉぉぉい!!」
「俺様のバイクゥゥゥゥ!!」
アッシュに突っ込んで行くクロウ。
俺の作戦その2、『武器がないなら相手のを使えばいいじゃない』作戦。ブレイン・バーストでは所有権は得られないが相手のを強化外装を使う事ができる。だから相手が腰とかにつけている銃や剣を奪って敵を傷つける事も可能だ。ソースは俺。昔やってさらに対戦相手を減らした
「うりゃあぁぁ!」
「ノォォォォォォ!」
紙一重で躱したアッシュ。それに追撃をかけるためクロウがドリフトし……バイクから吹っ飛んだ。しっかりハンドルを握っていなかったのか俺は二回目のカラスの飛ぶ瞬間を目にする。周りのギャラリーからも爆笑が起きていた。
「勝手に事故ってくれるたぁ、俺様メガラッキー!行くぜカラス野郎、俺様が本当のバイク捌きってもんを身を持って経験させてやるぜぇ!!」
バイクをふかし今度はアッシュがクロウに向けて突っ込んで行く。こうなったら仕方がないので作戦その3に入ろう。
作戦その3とは……逃げるんだよぉ!!先人も『逃げるが勝ち』『三十六計逃げるに如かず』とありがたいお言葉を残している。しかも今は逃げられれば勝てる状態。つまり今逃げる事はマラソンランナーがゴールに走るのと同じくらい当然だ。
「ハルユキ君も随分と奮闘しているじゃないか。これは教える人の腕がよかったおかげかな?」
試合中に視線を此方に向ける事なく黒雪が話し始める。それだけ確認してから俺も視線を元に戻し応対する。
「そんなんじゃねーよ。不意打ちも逃走もお前は考えついてただろ」
「そうだな。だが相手の強化外装を使うなんて発想はなかなか思いつかなかったよ」
「その結果はアレだがな」
状況は丁度クロウが頭突きを失敗して轢かれたところだ。場所は建物の屋上。地上じゃ逃げきれないと踏んだのか屋上まで逃げたはいいものの相手が壁面走行なんぞしてきてからはずっと一方的だ。
あいつレベルアップしやがったな。まだクロウのHPは半分以上残ってるがライフ的には負けている状態にある。同レベル同ポテンシャルの法則に則れば完全初心者の有田には荷が重いだろう。
「そうかな?私には彼がこれから何かを見せてくれる気がするよ」
黒雪の言葉にクロウを注視するも、相変わらずバイクを避け続けている。ここから何かするのは…
「お?」
「そら見ろ」
クロウが最小の動きで避け、バイクの後ろに捕まった。しかしそれでバイクを止められる筈もなく尻尾のように振り回されている。
「…加速世界にガス切れってあったか?」
「ないんじゃないか?」
「ならあいつは何を狙ってんだ?」
「それを今から彼が見せてくれるさ」
振られていた両足を地面につけ、スピードの低下を狙ったのか足で滑っているようだがバイクは全く止まらない。それどころか摩擦ダメージでクロウのHPがガンガン減っていく。そして残り一割を切ろうとしたところで…バイクが急停止した。
「なん……だと……」
「よくやった、シルバー・クロウ」
視線の先では後輪が浮き上がりバイクの上と下で言い争っている二人のバーストリンカー。言い争っているだけだが妙に仲が良さげに見えるから不思議だ。そして最後にクロウの必殺技の頭突きがアッシュのHPを削り取った。
……そういや小町もよく観戦者や対戦相手と仲良くしてたっけ。俺は話しかけられる度に相手がビクッと身体を震わせてくるからずっと黙ってたがな。虚しいような懐かしいような。
「おい、終わったぞ」
「おう」
「さぁ、私達も戻ろう。今日の主役がお待ちかねだぞ?」
「そうだな。んじゃ黒雪、
俺そろそろ降りるわ」
ハルユキ出したいけどこの書き方だと空気になってしまう。
視点変更をそろそろ始めるか悩んでます。
あと急展開とかは仕様です。