Infinitum Exosphere - 無限の成層圏を超えて -   作:一般通行ポーランド空軍士官

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Sekcja 18. 幕間 - 或いは鷲馬と有翼騎兵の関係は如何なるものなりや? -

 

 

2042年4月8日

 

日本国沿岸 人工島 IS学園 VIP宿泊棟

 

 

大佐を抱き抱えて宿泊棟の部屋まで移動し、耐GスーツとISスーツを寝巻きに着替えさせてからゆっくりとベッドに寝かせる。部屋へ移動し始めてからベッドに寝かせるまでの間中、大佐は大人しく抱き抱えられたままで、疲労から眠くなったのか寝息を立てていました。

正直な所、これまではこの高身長と体格の良さに思うところはありました。ただ大佐は「むしろそれが良い」と仰ってくださったので、今では誇りにも思っていますが。

寝顔を眺めていたかったですが、着替えた2つのISパイロット用スーツを洗濯機に入れて洗う為に洗濯室へと向かい、洗濯機にスーツと洗剤を投入してスイッチを入れる。

洗濯室での用事を終え、夕食を摂るべくキッチンの方に向かおうと思っていたら、他の"インテルマリウム"のメンバーに確保されてリビングに連行されることになりました。

そうしてリビングに連行され、円卓の一席に座るよう命令されたので大人しく従って席に着く。異様な雰囲気が漂っていて、あまり居心地は良いものではないですね。

 

「それでは、これより第1回"インテルマリウム"緊急円卓会議を開催します。

司会はチェコ代表候補生の"シャールカ・リブシェ・スヴォボダ"、議長はポーランド代表候補生の"シルヴィア・ヴェロニカ・スカルスカ"、書記はエストニア代表候補生の"ビルギット・サンドラ・ティーフ=ライドネル"が担当します」

 

チェコ代表候補生の"シャールカ・リブシェ・スヴォボダ"が司会と進行を執り行いながら円卓会議が始まりました。

恐らくと言うよりは確実にこの会議の議題はさっきの第9アリーナ管制室で私が大佐に告白した件でしょうね。

 

「それでは今回の緊急円卓会議の議題ですが、"第9アリーナコヴァルスカ教諭告白事件"および"コヴァルスカ教諭シャレ=グルスキ大佐横抱き事件"になります。

それではまず第1の議題"第9アリーナコヴァルスカ教諭告白事件"ですが、どのような経緯でシャレ=グルスキ大佐に告白するに至ったかを話してください」

「………………拒否権や黙秘権はありますか……………?」

「ありません、貴女ができるのはただ出された質問に答えることだけです」

 

一応拒否権や黙秘権があるかを聞いてみますが、やはりというか分かってはいましたがありませんでした。仕方がないので大人しく答えていきましょう。

 

「わかりました………………発端は2035年初頭に始まった東欧を巻き込んだ大戦から2年が経過した頃くらいになりますね」

「そこからなの?」

「はい、その時はまぁ私も跳ねっ返りだったと言うか……………簡単に言えば有翼騎兵(フサリア)としての訓練も終わって第1マウォポルスカ有翼騎兵旅団隷下の第13有翼騎兵連隊"カジミェシュ3世ヴィエルキ"のとある小隊に配属され、戦場に立てると言うことで浮かれていたんです。

それで私の所属していた小隊に大佐も空軍から小隊長として配属されたんですよ、その頃はあの人はまだ少尉でしたけれど。

それで何故空軍の戦闘飛行隊から陸軍の有翼騎兵小隊に異動することになったのかを大佐に聞いてみたらまあ…………その、ですね……………」

「何があったの〜?早く教えて〜」

「そのぉ……………上官を殴り倒して鼻を折ったからですね、はい………一応その上官は汚職に手を染めてて一部横領とかしてたんですが、その情報と証拠を確保した大佐が軍事法廷に引き摺り出すためにも殴り倒したんです。

その結果件の上官は逮捕されて絞首刑になったんですけど、その上官が女権団と繋がりを持ってて……………ほとぼりを冷ます、と言う意味でも空軍や後方に置いておくよりはよっぽど安全な前線に異動させられた、と言う感じですね」

「前線の方が安全って…………むしろ前線より後方の方が死ぬリスクも少なくて安全では?」

「少なくとも上層部は女権団が手を出しやすい後方に置くよりも、出しにくい前線に置く方が遥かにマシだと考えたんでしょう。実際後方は民間人と関わる機会もありますからね、そこに女権団からの刺客が混ぜられて襲われる可能性もありましたし」

「そっかぁ……………女権団ってやっぱり碌なことしてないね、そう考えるとポーランドは今じゃかなり男女平等が徹底されてる国じゃない?民主主義が機能しているかは別として」

「秘密警察があり、思想の自由が制限されているし死刑は復活して盛んに執行されている。そしてそんな決定を国民が自由意志で選んだ統制的な国家ですが、一応は民主主義は機能していますよ」

「民主主義は機能してるんだ………………」

「はい、戦時中の戦時内閣は終戦で解体され、新たな戦後内閣が組閣されました。もちろん独裁はしていませんし、今の大統領や首相はちゃんと選挙で選ばれた人ですよ」

「話が脱線してきたので本題に戻しましょう。シャレ=グルスキ大佐が異動した後に何があったんですか?」

 

大人しく答えていくが、途中からうまく話を逸らせないかわずかな抵抗を試みていく。しかしその試みは現在円卓会議の議長を担っているシルヴィアの言葉で失敗してしまいましたが。

仕方がないので昔の恥ずかしい思い出を渋々語ることになった。恨みますよ大佐……………!*1

 

「それでまぁ、その………最初の頃は空軍パイロットの指揮下に置かれるのが気に食わなくてですね………訓練用の模造サーベルを用いての決闘を挑みました…………」

「えぇ………幾ら何でもやんちゃすぎない?」

「あの頃はまだ世の中に疎かったものでして…………結局決闘は私の驕りもあって大佐に敗北しましたが、その後に出撃命令が出たんですよ。

命令の内容は『敵ロシア軍2個歩兵連隊が第87自動車化銃兵(歩兵)連隊の構築陣地へ攻勢をかけているので直ちに援護せよ』と言うものでして、機械化軍馬に騎乗して第87銃兵連隊の援護に向かうことになったんですが………」

「ちょっと聞いて良いですか?機械化軍馬ってなんです?」

「その名の通り、機械化された軍馬ですよ。正確には馬の形をしたロボットですが」

「そうですか……………それで、なんで21世紀に騎兵が復活したんですか?」

「実は騎兵って結構機動力が高い兵科なんですよ。例えばウクライナやロシアの雪解けによる深い泥濘やベラルーシの湖沼地帯にバルカンの険しい山岳地なんかでも戦車や車輌部隊より悪路に対する耐性が高い為ですね」

「あー…………確かにその話は聞いたことあるなぁ………泥濘が酷い状況の中、戦車とか装甲車が泥濘に足を取られている横でポーランド騎兵が悠々と通り抜けていったって話とかがあったね」

「はい、実際その援護に向かった時もかなり泥濘が深かったので、すぐに派遣できる増援が移動に時間と手間のかかる自動車化部隊や戦車隊以外だと騎兵しかいなかったと言うのもありますね」

「そしたらポーランドが軍馬を機械化して騎兵を復活させたのもあながち間違いじゃなかったってわけ。実際あーしんとこ(ウクライナ)やハンガリーはポーランドから機械化軍馬を輸入とかライセンス生産で数揃えて騎兵部隊編成してるからね」

「それからリトアニアも同じように騎兵部隊を編成しているんですよね、現状の運用法は手探りみたいですけど」

「また話が脱線していますよ?本題に戻しましょう。それからシャールカさん、質問はメモを取ってから後で訊ねるように」

「はい、すみませんでした…………」

 

機械化軍馬の存在によってまたも話が脱線していく。今回は私無罪ですよね!?どうかそうであって欲しいですが。そもそも今回の脱線は司会のシャールカさんが原因ですし!

結局再び本題へと戻ることとなりましたが……………これ私が小細工しなくても自然と話が逸れていくのでは?割と統制が取れているわけでもないですし…………

 

「それではコヴァルスカ教諭、第87銃兵連隊の援護に向かったところから続けてください」

「それで第87銃兵連隊の援護に向かったのですが、味方の援護と敵の意識の分散を図るために我々は敵歩兵の側面に回って突撃をかけることになりました。

もちろんその中には私や大佐の所属する小隊もいたわけですが、突撃の際に大佐が先頭に立ったんですよ」

「はぁ!?マジでやったんですか!?」

「それが嘘じゃなくて本当なんですよね、真っ先に先頭に立ってサーベル振り回しながら突撃していったんですよ………………」

「やっぱ気性難は昔から気性難だったのか……………」

「結果としては突撃は成功してロシア軍2個歩兵連隊はこの一撃で壊滅し、大佐は"指揮官先頭"を堂々やってのけて小隊はおろか連隊内からの尊敬を集めたわけですよ。

実際私もこの戦闘、"コーロステニ突出部防衛戦"以来大佐のことを尊敬していますし」

「あ、ウクライナ戦線にいたんですね?」

「そうですね、基本はウクライナから南ロシアといった感じです。ただ状況によっては部隊がベラルーシ方面だったりにも配置されることもありましたが」

「それで、結局何年ぐらい大佐は第13有翼騎兵連隊にいたんですか?」

「初陣の"コーロステニ突出部防衛戦"から丁度1年経ってから空軍に戻っていったんですけど………………その半年後にまた大佐が来ました……………」

「えっ…………?半年後に?」

「はい、半年後です。今度は連隊がポルタヴァで待機していたところに中尉になって帰ってきたんですよ。そしてまた"ポルタヴァ攻勢"で指揮官先頭をしながら戦果を挙げたわけですが……………流石に上層部もマズいと思ったのか結局この一回きりで即座に空軍に戻されて行きました」

 

……………やっぱり今振り返ってみても頭がおかしい奇妙な戦果を挙げていますね、あの人。やっぱりなんで戦果を挙げて無事に生き残れているのかが分からない。

それは他の円卓に並ぶメンバー達も理解が追いついていないようですね。有耶無耶にできると良いんですが…………やっぱり無理なようです。バルバラがずっと私を監視していますからね。

少し間が空いてどうにか理解し切ったメンバーが再び質問をしてくるので答える。

 

「ポルタヴァにいた期間はどれくらいです?」

「確か一週間ほどだったかと」

「この先の2つ以外にシャレ=グルスキ大佐と同じ部隊にいた他の期間を答えられますか?」

「それ以外ですと、犯罪組織等に物資の横流しをしていたグループの根城に催涙ガス手榴弾を数発投入してまた連隊にやってきたりもしましたね。関係している密輸組織の幹部が重症を負って、その責任を取ることになったと言う形らしいです。これで大佐は再び半年の陸軍送りになりました。

次に司令部に何故か入り込んだ女権団を全員叩きのめして1年陸軍送りになったりとかしてましたね」

「うーん、やっぱ気性難!」

「…………これらを深掘りすると長引きそうなのでここらで割愛しましょう。それでは、コヴァルスカ教諭がシャレ=グルスキ大佐に恋慕の情を抱くようになったきっかけはありますか?」

「それでしたら大戦終盤のことで、トヴェリの野戦司令部でその…………女性軍人に対してセクハラを繰り返していた将官がいましてね……………コネと政治力、贈賄で将官の地位を手に入れた無能な小物でしたが、なまじコネがある分手を出しにくかったんです」

「……………もしかしてそれを殴り倒したとか?勿論証拠とか固めておいてからで」

「はい。証拠を固めて殴り倒し、軍事裁判に持ち込みました。結局これで大佐は本来ならば暫く少佐のままになるはずでしたが、ISを動かしてしまい、急遽大佐に昇任したわけです」

「ところでコヴァルスカ教諭も被害に遭ったんですか?」

「はい、ですがそこを証拠を固め切った大佐が渾身の腰が入った右ストレートからの左フック、からの右アッパーの3連打撃でノックアウトさせたんですよね………………あの姿は本当に格好良かったです」

「そうですか。それで、結局のところシャレ=グルスキ大佐と共にいた時間は合計でどれくらいになりますか?」

「合計で確か2年半でしょうか、とはいってもずっと一緒に居たというわけではなく結構穴が空いているわけですが」

 

質問に少しずつ答えていく。やっぱりあの人はちょっと気性に難がありますけど、意味もなく暴れるわけじゃないんですよね。暴れるとしたらそれは必ず何かしら意味を持っていますし。

そのことがメンバーも少しずつわかってきたようですね。でもあの人のことを深く知っているのはここにいるメンバーですと私が1番ですが!

 

「…………だとしても、共に地と泥濘に塗れて戦場を駆け抜けた戦友であるからこそ、シャレ=グルスキ大佐はコヴァルスカ教諭の告白を受け入れたんじゃないかとも思いますケド」

「確かにそれなら納得も説明もできますね。ところで告白をしたのはどちらからです?」

「私から告白しました、後はちょっと深いキスを2回ですね……………非常に甘美でした」

「うわぁ…………!うわぁ……………!」

「すっご………………!」

「でもその告白を断られたらとかは考えなかったの?」

「大佐も私のことを結婚相手の候補に入れていたくらいには私を好いていましたし、それに私の体を『アリだ』とも仰ってくださったので………………それを鑑みれば結構な確率で私の告白を受けていたかと思いますね」

「へぇ……………具体的に体のどの部位が好きとかはわかります?」

「ちょうど良い感じに肉の付いた脚が好みだと言っていましたね、多分胸よりは脚とか臀部に惹かれるタイプじゃないかとは思いますよ」

「へ、へぇ……………よく知ってますね……………」

「本人が語ってましたので」

「そっかぁ……………なら少しは安心できるかな……………?」

「もしかして大佐を狙っているんですか?あの人はもう私のものです、そう簡単に渡しはしませんよ」

「そういう意味じゃないんですよ……………ですから勘弁していただけませんか?」

「まぁ、私のものに手を出さないのなら許しますが」

「良かったぁ………………」

 

さて、あの人が私の告白を受け入れてくれたのはやはりそれなりに長い期間肩を並べた戦友であり、そして大佐の方も私を少なからず好いていたからだとは思いますね。

それとは別でもしかしたら脚の肉付きや感触といったフェティシズム的な理由もあったのかもしれませんが。

それからあの人はもう私のものなので誰にも渡しませんが!とはいっても現状のメンバーにあの人へ好意を抱いている者はいないようなので当分は安心できるでしょうね。

 

「えーっと…………"第9アリーナコヴァルスカ教諭告白事件"についての議論は終了したとみなしてもよろしいですか?」

「ぜひそうして頂けると嬉しいですが」

「まぁ、良いんじゃない?」

「ボクとしてもこれは終わりで良いと思うよ、それでは次の議題は"コヴァルスカ教諭シャレ=グルスキ大佐横抱き事件"ですね。

これは今やIS学園内にて"コヴァルスカ教諭とシャレ=グルスキ大佐は交際関係にある"と言う噂の裏付けとなっていますが…………もはやコヴァルスカ教諭はシャレ=グルスキ大佐と交際関係にあるのは事実です。

そのため最後の議題"今回の円卓会議を閉会にするか否か"の投票を行いたいと思います。『円卓会議を閉会する』に賛成の方は挙手を、『円卓会議を継続する』に賛成の方はそのまま手を下ろしていてください」

 

そうして円卓会議は2つ目の議題で議論をすることなく、そのまま円卓会議を閉会とするか否かの投票が始まる。結局のところ時間的な理由もあって全員閉会に賛成して円卓会議は終わりを迎える。

円卓会議で昔のことまで話さねばならなかったのもあって非常に疲れたので、大佐と一緒に寝ましょう。少しでも気力を回復するためには恋人と同衾するのが有効だと誰かが言っていた気がするので私はただそれに従ったまでです。

着替えるのは億劫なので全て脱ぎ去って下着だけになり、我が最愛の人物である大佐に抱きついて瞼を閉じ、温もりを感じながら深い眠りに落ちる。

 

 


 

時計の針は少し巻戻る、何があったかを知るために

 

斯くして有翼騎兵は鷲馬との出会いを語る

 


 

── Sekcja 18. Koniec. ──

 

 

*1
完全に冤罪である

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