Infinitum Exosphere - 無限の成層圏を超えて -   作:一般通行ポーランド空軍士官

24 / 27
Sekcja 21. Węgry i Rumunia, S Benešovou deklarací. - ハンガリーとルーマニア、ベネシュ布告を添えて -

 

 

2042年4月19日

 

日本国沿岸 人工島 IS学園

 

 

俺とクリシャ、それから何故かいるアリソンとキャンディスにクロエの5人でIS学園の正面玄関でハンガリーとルーマニアの両国から派遣された代表候補生を待つ。しかしハンガリーとルーマニアというこの2つの国は昔からトランシルヴァニアを巡って争っており、仲が非常に悪い。

一応先の大戦では共通の敵がいたからまだ纏まっていたが、今の状況においてはどうか衝突が起こらないことを祈りたいものだ……………

 

「どうかお願いだから今日来るハンガリー人とルーマニア人の両方が問題を起こさないでくれると良いなぁ……………」

「なんでですか?良くわからないんですけど」

「簡単に言えばあそこは100年単位で俺らがニェムツィ*1とモスカーリ*2とやり合っているように、延々とトランシルヴァニアを巡って殴り合っているのさ」

「成程…………とりあえず仲がめちゃくちゃ悪いってことでしょう?ウチら(ギリシャ人)がトルコ人と仲が悪いような感じってことですね?」

「そう、そんなところだよ。スコットランド人やアイルランド人がイングランド人と仲が悪いようにな」

「…………これ"インテルマリウム"の内部情勢って大丈夫なんですかね?なんか結構揉めてそう…………」

「一応"ベネシュ布告"*3の布告の対象からハンガリー人"だけ"を取り除いてもらったのさ。そして"ベネシュ布告"自体はドイツ人相手にいまだに効力を発揮しているよ」

「…………なぜハンガリー人だけ取り除いてもらったんです?その"ベネシュ布告"の効力停止では何か問題があるんですか?」

「正直に言えばポーランドにとってドイツはそこまで重要じゃないからだな。それだったらハンガリーやチェコにスロバキアと仲良くしたほうが利益があるし」

「えぇ…………ってことはポーランドにとってドイツは仮想敵なんですか?」

「ドイツはポーランドにしてみれば仮想敵どころか2つの歴史的な仇敵の片割れだ。西方のドイツともう1つ、東方のロシアの2つだな。そしてこいつらを信用などするつもりはないし、できるような存在じゃない。それはこれまであいつらが何をして来たのか、歴史を紐解けばわかるぞ」

「実際ドイツ人やロシア人の言葉や書類はさして価値がないと想定したほうが良いでしょう」

「そ、そっかぁ……………」

 

問題がないことを祈りながら出たぼやきにキャンディスが理由を聞いてきたので噛み砕いて答えていく。俺の答えにギリシャ人のクロエが自分達ギリシャ人とトルコ人との関係性を例に出す。完全にそれで合ってるが、一応補助としてスコットランド人やアイルランド人とイングランド人との関係性も具体例の1つに出しておく。

苦笑しているキャンディスが"インテルマリウム"の内情を不安視している。俺も実際不安ではあるが、一応は手を打ってあるので大丈夫だと思いたい。

その打った手の1つであるかつてのチェコスロバキアが発令した"ベネシュ布告"からのハンガリー人を対象から外す、と言うものであった。なおドイツ人が対象に残っているのは政治的な事情と民族感情からだろう、俺もドイツ人は対象に残したままで良いと思うし。

布告がドイツ人のみを相手にいまだ効力を発揮し続けているのはドイツがポーランドにとってハンガリーよりも重要でない存在であり、そして警戒するべき対象であるからでもあるからな。

アリソンがドイツはポーランドの仮想敵なのか聞いてきたのでその厄介な隣人どもとの歴史から来ていると答える。クリシャもドイツ人とロシア人を信用しないよう補足していく。若干引いているが、これは大体ドイツ人とロシア人が悪い。

 

「あー、誰か来ましたよ。あの2人がもしかしたら今日転入するハンガリー人とルーマニア人じゃないですか?」

「………多分そうだろうな、資料とも一致しているし」

「でもなんかでこぼこな感じがするね。なんだろう?」

「身長差じゃないですか?この資料を見るにあの2人は18cmの身長差があるようですし」

「あぁ〜そう言うことかぁ!そりゃ18cmもあればそうなるよねぇ」

「ご機嫌よう、シャレ=グルスキ大佐。本日付で合同戦闘団"インテルマリウム"に配属されることとなりました、ハンガリー代表候補生の"セーチェーニ・ロージャ・エルジェーベト"と申します。よろしくお願いいたしますね」

「"インテルマリウム"にようこそ、歓迎するよ。それで、こっちのちまっこいのがルーマニア人か?」

「そうだよ!イレアナの名前は"イレアナ・マリア・カンタクジノ"で、今日から"インテルマリウム"配属になったルーマニア代表候補生だよ!」

「それじゃあ2人とも今後は仲良くしてくれよ?」

「それは少し此方には厳しいかと…………足の裏に毛が生えているようなルーマニア人とは流石に……………」

「ちょーっとイレアナちゃん的にはアルデアル*4を付け狙っているようなハンガリー人と仲良くするのは……………ねぇ?」

「あら、そこはエルデーイ*5ではありませんでした?」

「シェドミョグルト*6のことでごちゃごちゃ言ってねえで黙って俺についてこい、編入手続きとお前らの部屋の案内をするからな!」

「…………あの人が一番問題を起こしそうな気がするんですけど?」

「…………ノーコメントで…………」

 

そんなこんなで駄弁っていた俺らだったが、クロエが正面玄関にやってくる2人の少女を見つけて指しながら聞いてきたので本国からデータで送られた資料を参照する。どうやらあの2人がハンガリーとルーマニアの代表候補生のようだ、そして身長差が18cmとそれなりにあって並ぶとでこぼこな印象を受ける。

さて、先にハンガリー代表候補生"セーチェーニ・ロージャ・エルジェーベト"が貴族然とした振る舞いでカーテシーをする。多分ハンガリー貴族なんだろうか、なんにしろ貴族仲間が増えて嬉しいよ。

そしてルーマニア代表候補生"イレアナ・マリア・カンタクジノ"も軽い自己紹介をする。こっちは自分の名前が一人称か、中々愉快そうなやつだな。

一応は安心出来るかと思ったがどうにも駄目みたいですね、最悪武力鎮圧も考えないといかんのか………………とりあえずトランシルヴァニアの呼称問題で揉めそうだったので急いでトランシルヴァニアをポーランド語名で呼び、俺の方に視線を向けさせてから本来の用事である編入手続きとVIP宿泊棟の案内をするために移動する。それからそこの騎兵大尉(クリシャ)スコットランド人(アリソン)、聞こえているからな!

 

 


 

斯くして時計に新たな機構は組み込まれることとなった

 

鷲馬、怪鳥と山猫と出会す

 


 

── Sekcja 21. Koniec. ──

 

 

*1
Niemcy:ポーランド語を含めたスラブ系言語でドイツを指す。また、ハンガリー語でもNiemcyに近いNémetország:ネーメトルサーグと呼称する。元となったスラヴ祖語で「němъ」あるいはその派生語の「němьcь」(発話障害者を意味する)から由来している

*2
Moskal:意訳:モスクワ人。ポーランドやウクライナ、ベラルーシやリトアニアで使われるロシア人を指す蔑称

*3
第2次世界大戦期にチェコスロバキア亡命政府が議会の採決なしに発令施行した一連の共和国大統領を指す。この布告によってドイツ系住民やハンガリー系住民、対独協力者の追放や財産の没収、市民権の停止等が行われた

*4
Ardeal:トランシルヴァニアのルーマニア語名

*5
Erdély:トランシルヴァニアのハンガリー語名

*6
Siedmiogród:トランシルヴァニアのポーランド語名

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。