Infinitum Exosphere - 無限の成層圏を超えて -   作:一般通行ポーランド空軍士官

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Sekcja 2.如何にして彼がISを動かすことになったのか - 或いは時計の針が進み始めた時 -

 

 

2042年2月7日

 

ポーランド共和国 マゾフシェ県 ワルシャワ市 ポーランド共和国軍参謀本部

 

 

何故俺は戦友共とワルシャワの参謀本部の一室で紅茶や茶菓子の一つもなく待たされているのだろうな?

おっと申し遅れました、私ポーランド空軍のエースパイロットで空軍将校を務めている"スタニスワフ・エウゲニウシュ・シャレ=グルスキ"少佐と申します。

そして右の天井をぼけーっと見つめている禿頭のは"ボレスワフ・ズムバッハ"中尉、左の暗い金髪で背が俺らより若干低いのが"ユゼフ・ホルバチェフスキ"大尉だ。両方とも俺の戦友で同じようにエースパイロットでもある。ついでに付け加えると一緒に呼ばれた理由がわからなかったりもする。そもそも呼ばれる原因について今回"は"本当に何もやってないので心当たりがなさすぎるのだ。

少し隣に目をやるとボレスワフが何か言い始めようとしているので現実逃避はここまでにしよう、有能な士官である条件はちゃんと人の話を聞くことだからな!

 

「なあスタン(スタニスワフ)、一体なんで俺らはワルシャワにいるんだろうな?」

「一体全体なんでだろうな、俺一人ならまだしもボレック(ボレスワフ)ユゼック(ユゼフ)まで何か呼ばれるようなことをしたのか?」

「いやぁ…………俺はスタン程やらかしてるわけじゃないから心当たりがないんだよなぁ…………」

「もしかしたらスタン以外は昇級とかそんなとこじゃないかな?そしてスタンはまた陸軍行きになるとかね!」

「ははは!案外そうかもしれんだろうな!それじゃあスタン、俺らとまた暫しの別れってことだな!頑張れよ!」

「お前らなぁ……………まあ、昇給の線もあるだろうな。それとここ最近は陸軍行きになるようなことはしてねぇぞ?」

「え、本当か?信用できねぇなぁ………そもそもお前何個か前科あるし」

「はは…………ははは………いや今回の件に関しては本当に心当たりがないんだよ、信じてくれ。なんなら陸軍行き以外に50ズウォティ賭けたっていいぜ!」

「それなら僕はスタンがまた陸軍に行くに50ズウォティ賭けるよ!」

「俺もスタンが陸軍行きに50ズウォティだ!」

「………やらかしてきた本人が言うのもなんだがここまで信頼されてねえのは何と言うべきなんだろうな?」

 

とりあえずこいつらと情報交換して分かったことは結局のところなぜ呼ばれたのかがわからないということだけか、最早どうにもならないからこれをネタに賭けを始める。

ただまぁ、まさかこいつら俺の陸軍行きに50ズウォティも賭けて来るとは思わなんだ。しかしこれでこいつらの予想が外れたら笑いのネタになるしちょっとした臨時収入にもなるから良しとしようかね。

 

「………お前ら、一体何をしているんだ?スタニスワフ、いくら最多撃墜者でもこれは見逃されるものではないだろう」

「えぇ…………?なんでテーブルに紙幣並べてんのサ?ここで金賭けてカードゲームでもしてたのカ?」

「幾ら何でも少額とはいえど参謀本部でギャンブルをするのはどうかと思いますわよ?シャレ=グルスキ少佐、シュラフタ(ポーランド貴族)の家系ならばふさわしい振る舞いというものがあるでしょう?」

「…………ポニャトフスキ、お前はさっさとルブリンに帰れ。

それからマリア、これにはモルスキェ・オコより深くタトラ山脈より高い事情があるんだ、見逃してくれないか?」

 

おっと、いきなり扉が開いたからなんだと思ったが入ってきたのは俺と同じシュラフタ(ポーランド貴族)の家系の生まれで、俺より撃墜数が少ない"ヴワディスワフ・シルヴェステル・ポニャトフスキ"大佐サマの野郎が文句をつけてきたし、チェコ系ポーランド人エースパイロットの"アロイス・フランチシェク"大尉は疑惑の眼差しを俺に向けてくる。

それから軍の規定に沿ってドレス風に仕立てた軍服を着ているオストヤ氏族のシュラフタ(ポーランド貴族)の家系出身で宮殿持ちでもある女エースパイロット"マリア・エミリア・シチボル=リルスカ"中佐が鉄扇で口元を隠しながら貴族としての振る舞いとやらを窘めてくる。勘弁願いたいね、俺だって好きでこうなった訳じゃないのにさ。

っと、どうやらやっと本題に戻れるみたいだな、俺らよりもよっぽど階級が高いことを表す階級章を肩に縫い付けた軍服を着用している立派な口髭が特徴の"タデウシュ・コモロフスキ"大将と従兵が入室して、対面にある椅子に座り、従兵は側に立つ。

出していた紙幣をしまうのはポニャトフスキの野郎のせいで間に合わなかったのでそのままではあるんだが。

 

「諸君、よく集まってくれたね。急な召集に応じてもらって感謝するよ、それで本題に移るんだが………その机の上に出ている紙幣は一体どういうことかね?シャレ=グルスキ少佐、直ちに答えるように」

「あーそれはですね、コモロフスキ大将閣下…………えーっと、その…………賭けをしていました。小官とボレスワフ・ズムバッハ大尉とユゼフ・ホルバチェフスキ中尉の3人で辞令の内容を予想するというもので、それぞれ50ズウォティ賭けています」

「なるほど?それで、その内容はどのようなものかね?」

「内容はその…………小官がまた陸軍に異動するにズムバッハ大尉とホルバチェフスキ中尉が賭け、小官が陸軍への異動以外に賭けました」

「そうか、だとしたら今回の賭けはシャレ=グルスキ少佐の一人勝ちになるぞ。良かったな、150ズウォティのボーナスが別口で出たわけだ」

 

大将に目をつけられてしまったと思ったのも束の間、俺ら3人がやっていた賭けの内容を説明すると大将は満足そうに頷きつつ微笑んでから俺の肩を軽く叩き、賭けの勝敗が決まることとなった。

それに俺含めて大将と従兵の2人以外は理解が追いつかなくなる。そもそもいきなり賭けの勝者が決まってしまったものだから、そうなるのも当然といえば当然だろうな。

 

「あの、一体どういうことですの?コモロフスキ大将。それと何故私達が招集されたのかまだ説明されていないのですが」

「それはだな………ノヴァク、書類を配布しろ」

Tak jest(了解), こちらが皆様に目を通していただく書類です」

「ところで君達全員紅茶でよかったかね?ああ、ジャムや砂糖にミルクは君たちで自由に入れてくれ」

「いや流石に大将に紅茶淹れさせるわけにはいかんでしょうが!僕がやりますんで大将はどうか座っとってください」

「あらら、そこまで気を使わなくても良いのにな?」

「流石に階級が上の者に雑用をやらせるのは気分がよろしくないからでしょうよ」

 

何とか理解が追いついたマリアが召集した理由と俺が勝者となった理由を大将へ聞き出そうとする。それに大将は側の従兵へ命令を出すと従兵は机の上に持っていたアタッシュケースを置き、中から書類の入った封筒を人数分取り出して渡していく。

それを傍目に大将は紅茶を淹れようと立ち上がるが、ボレックが方言混じりに焦って立ち上がって静止するとそのまま給湯室へ移動して紅茶を人数分淹れ始める。

 

「大将、こちらの封筒は開封しても問題ないですか?」

「構わんよ、むしろそれが主目的だからな」

「それじゃあ開けちまうか、結局ここに集まった理由を知るためにも必要なもんだからな」

「そうだな、っと。ボレック、俺にも紅茶を一杯くれ」

「だったら俺の50ズウォティ返せ、でないと紅茶やらねえぞ」

「後で一杯奢ってやるから勘弁してくれよ……………」

「ならいい店紹介しろよ!」

「はいはい、わかってますよってに……………それで、本題に戻しますけどこの《IE》ってのは一体なんです?20年前にサービス終了したブラウザでも復活させるんです?」

「どう考えたって違うだろう、同封された仕様書や図面に写真を見る限りはな。詰まるところ《IS》に似た何かを試験しろってことじゃあないか?」

「その通りだ、ポニャトフスキ大佐。今回君たちに集まってもらったのは、デンブリンの空軍士官学校でこの《IE》を試験してほしいからだ。

諸君らはこの試験に志願するも自由、志願しないも自由だ。だが今回選抜されたのは諸君らの操縦の腕を買って選んだ、だからこそ私としては今回の試験で諸君らの腕を存分に振るってほしいがね」

 

渡された封筒を許可を得てから開封し、中の書類に軽く目を通す。ボレックから金を返せとせがまれたが別のもので誘導して誤魔化し、紅茶を受け取って啜る。

さてさて、《IE》は実際ブラウザでもアイルランド国鉄(Iarnród Éireann)でもなく、《無限の成層圏(Infinite Stratos)》を超えた《無限の外気圏(Infinitum Exosphere)》とな。

実際《IS》と違って性別に関係なく、適性は必要じゃないので存在せず、そしてこれまでの試験結果によればポーランド製のIS用機体に《IE》コアを搭載したところ、本家よりも若干速度面や操縦製が向上したとな。

これは非常に興味深いんだが、本当に俺らみたいなむさ苦しい奴でも使えるんだろうか?それが証明されるまでは決めかねるな。

 

「コモロフスキ大将、こちらの《IE》は本当に性別や適正に関係なく操縦できますの?」

「それは真実である、まずはこの証拠映像を見てもらおうじゃなあいか」

 

『現在は2042年1月の23日、これより《IE》の試験を開始する。テストパイロットはイグナツィ・バヤン空軍大尉、そしてこっちはアグレッサー兼映像記録撮影担当のブランカ・オルリンスカ空軍少佐だ』

『ハロー!私はブランカ・オルリンスカ空軍少佐。私たちが今装備しているのは国産第3世代ISの"フサリア"先行量産型のコアを《IE》コアに置き換えたものだよ〜!

そしてこれから再生される映像と音声は全て合成なしの本物だよ!多分幾らか編集は入るかもしれないけど、楽しんで見ていってね!』

 

室内の壁に設置されていた液晶に高画質の映像が映し出され、その内容が再生されていくが…………少なくともこれを合成したりCGで作成するならかなりの長期間が─それこそ年単位の時間が─必要になりうるレベルのものであったし、最後にポーランド軍によって検閲された時期から見てもそれは真実だと言えるものであった。

 

「へぇ、興味深い。これなら志願しても良いだろうな、給料も増えるし休暇も取りやすくなるからな」

「私IS適正はDと低くてあまり動かせなかったのですが、これならあの時よりも動かせるかもしれませんわ。ですので私志願いたします!」

「これは面白そうダナ、俺もテストパイロットに志願するヨ」

「いよーし乗った!スタンの野郎に持ってかれた50ズウォティを取り戻すためにも!そして故郷のあの娘に指輪を買うためにも!」

「あんまりそういうことは言わないほうがいいんじゃねえの?それはそれとして俺も志願するよ」

 

ふーむ、書類を見ても実際その通りだな。何か怪しいものってわけでもなし、金払いも良いし休暇だってこれまでより格段に取りやすいと来た。これなら《IE》の試験に志願してもいいかもな。

それじゃあこの書類にさっさとサインしてテストパイロット生活始めますかってね!

 

「さーて、俺も志願するとしますかね!それに、これはこれで戦闘機乗り回すより面白そうだからな!」

「…………まさか全員志願するとはな…………2~3人は志願しないかと思ったんだがね…………」

「こんな面白そうなおもちゃ乗り回す機会なんてそうそうないので、機会を逃さんとしただけですよ」

「…………おもちゃって…………これでも一機だけで結構な値段するんだが……………まぁいい、諸君らの志願を受け入れよう。私は少しデンブリン行きの輸送機と公用車を手配してくるから、そこで待っているように」

Tak jest(了解)!』

 

これで志願は完了っと、いや〜《IE》を動かす日が楽しみになってくるね!それじゃあ大将が戻るまで待つとしますか。

 

「とりあえずさっきの動画もう一回見直さない?結構興味深いしさ、ただ待つだけよりは有意義だと思うんだよ」

「それもそうだ、実際に動かす前に少しは知識をつけておく必要もあるからな」

 

彼らは輸送機を確保したコモロフスキ大将が戻るまで先ほど再生された動画を視聴し、彼らを急かすべく大将がホイッスルを吹くまで熱中し続けた影響で空港までの公用車を急かすのであった。

そして輸送機に乗り込み、デンブリンの空軍士官学校に到着するまでの短い空路をそれぞれのやり方で過ごしていく。

 


 

始まりの時は近づいて

 

鷲馬は起き上がる時を待ち続ける

 


 

── Sekcja 2. Koniec. ──

 

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