Infinitum Exosphere - 無限の成層圏を超えて -   作:一般通行ポーランド空軍士官

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Sekcja 4. 新たな翼 - これで乗機は6代目 -

 

 

2042年2月12日

 

ポーランド共和国 ウッチ県 ウッチ市 PZL RP ウッチ機体工場

 

 

はてさて、昨日はデンブリンの空軍士官学校からウッチまで飛ぶぞと言われ、軍の輸送機─それも現用の爆撃機に小改造を施した高速戦術輸送機─によってウッチ近郊の空軍基地まで空を飛び、そこからここウッチのポーランド共和国 国立航空機製作所(PZL RP)の工場まで公用車で運ばれてきたわけだが。

今俺は目の前にある深紅と純白の塗料によって見事な塗装を施され、有翼騎兵(フサリア)の鎧と兜、そして羽根飾りの意匠を参考にしたであろう機体に目を奪われていた。

 

「ほーう…………素晴らしく美しいな。これは少し見ればわかるぞ、有翼騎兵(フサリア)だ、そうだろう?」

「ええ、その通りです。この機体は第3世代IS、"フサリア"の量産型になります。また、この機体のコンセプトとして基本的には有翼騎兵(フサリア)同様に高機動力、重防御、高火力の3点を重視して設計されております」

「非常に素晴らしい!そしてとてつもなく美しいな……………」

「またこちらは第3世代機であり、第3世代兵装としてポーランド及びチェコによって共同で開発された"カルコノシュ"を装備しています」

「"カルコノシュ"とは一体どういった兵装なんだ?」

「"カルコノシュ"はナノマシンを用いた物であり、ナノマシン及び専用の薬剤をポーランド製第3世代IS“フサリア“の主翼に内蔵された発射機から混ぜ合わせた状態で放出することによって使用可能となります。

こちらの主な能力としては自機及び僚機として登録したIS以外のハイパーセンサーやレーダー等の索敵能力を攪乱し、更には人工的な雷を伴う嵐を引き起こすことが可能となっております。また、"カルコノシュ"によって生成された雷は敵機に命中しますと一時的に操作を封じることも可能です。

但しこちらの"カルコノシュ"は使用可能回数が限られますのであまり使いすぎないようにしてください」

「なるほど、つまり強力だが数が少ない。だから無駄打ちは避けろってことだな?」

「はい、その通りです。また他の武装についてはこちらの書類に一覧が記載されています」

「うへぇ…………空軍士官学校時代に渡された教本より重いし分厚い…………」

「流石にラファール・リヴァイヴよりは少ないだけまだありがたいでしょう?あれはもっと装備バリエーションが多いですよ?」

 

機体と第3世代機であることを示す第3世代兵装の解説を聞きながら全体像を見渡す。やはり美しいものだ、今は誰も装備しているわけではないからその背中にある翼は広げられていないが。

そしてこの眼前のIS"フサリア"の武装一覧が記載された分厚い書類を受け取る。武装一覧の書類だけで昔士官学校時代に使ってた教本以上なのはどうかと思うが!あれでももうちょっと軽いし薄かったぞ!…………一冊分はだがな……………

 

「それでは少佐、こちらの"フサリア"に手を触れて装着してください」

「了解。それじゃあよろしく頼むぜ、相棒。とは言ってもこれで俺の相棒は6代目なんだが」

 

PZLの技術者に促されて眼前の"フサリア"に手を翳し、"フサリア"を装着する。今回は3日前に動かしてしまった時のような通常の軍服ではなく、ポーランド製ISスーツの上に戦闘機パイロット用の耐Gスーツを着用した状態で臨んでいる。

装着してすぐにこの機体の操縦者として登録されたことを表す【Miło pana poznać(初めまして), ukończyłem rejestrację pilota(操縦者登録を完了しました).】の文字列と共にインターフェースが投影される。

 

「操縦者登録完了、次はどうしたらいいんだ?」

「次はその機体の名前を決めてください。それからその機体はシャレ=グルスキ少佐の専用機として引き渡すように通達されました」

「へえ?随分と贅沢じゃあないか、最新鋭の第3世代機をホイホイとぽっと出の男に渡すなんてさ」

「それは試作機ではなく量産機ですので………まあ、問題はないと判断されたんじゃないですか?それに、結果が出なければ別の機体になるでしょうし」

「それが1番妥当だろうな、だとしたらただこれまでのように結果を出してやるだけだが!」

「それで、この機体の名前はどうするんです?それとその機体の最適化と1次移行を行ってください」

「名前かぁ…………歴代の乗機につけてたのはBiały Wilk(白き狼)だったが、こいつは戦闘機じゃなくてISだからな………それに、"フサリア"ならもっと良い名前があるはずだ…………」

「名前はいつでもどうぞ、それから最適化まではおおよそ45分ほどかかります。ですので完了するまでは歩くや腕を動かすなどの範囲内で軽く動かしてみてください」

「あぁ、わかった…………さーて、こいつの名前はどれが似合うかな?」

 

とりあえず1次移行と最適化を待つ間に慣らし運転をしながらこいつの名前を考えよう。しかしまあ45分も待つ必要があるとは、パンを焼く余裕すらあるかもな。一応解除はできないしこの中からは出れないんだが。

兎にも角にもまずは最適化と1次移行を待とう、もちろん名前を考えながらな!

 

「さーてと、名前をどうしようか…………Czysta biel i Karmazynowy Orzeł(純白と真紅の鷲)でもいいんだがな…………」

「じゃあそれにしますね。それから間も無く1次移行を開始しますので一旦そこで停止してください」

「いやそれはただ口から出てしまったやつでまだ決まったわけじゃ「1次移行開始します!」待ってくれぇ!?俺の話を聞いて欲しいんだが?」

 

つい口にしてしまった奴がこいつの名前になるとか聞いてねえぞ!?しかもなんか1次移行だので話ぶった斬りやがったし!

 

「それで…………一体なんですか?あとISの展開はもう解除しても大丈夫ですよ」

「いや、こいつの名前なんだが…………」

「もう登録しちゃいましたよ?一応今から登録を変えることも可能ですけど…………」

「なら早く変えてくれ、名前は……………」

 

よし、こいつの名前はどうするかだが…………うちの家紋はヒポグリフを模っていたな、そこからもらうことにしよう。うちがシュラフタ(ポーランド貴族)の家系で助かったよ、最悪の場合このまま決まらないなんてこともあり得たからな!

 

「…………よし、これだ。うちの紋章にちなんだBiało-Czerwone Hipogryf(赤と白のヒポグリフ)にしよう!」

「了解、それで良いですね?」

「もちろん!これにしてくれ、いやしろ!」

「はいはい、注文が多くてやんなるねぇ…………」

「あんたが碌でもないことをしでかすからだろう?それで、終わったか?」

「終わりましたよ、これで名実共にその"フサリア"もとい"Biało-Czerwone Hipogryf(赤と白のヒポグリフ)"機は少佐の専用機となりました」

「いいね、それじゃあ後はこいつを動かしてみるだけだが…………無理だよな?」

「ええ、不可能です。ここはISやIEを動かせるほど敷地もないですからね」

 

Dobry(良し)! これで俺は専用機を手にしたわけだ。そして後はこいつを動かす時を待つだけだが、ここはただの工場でしかないから試験するには別のところへ移動せねばならない。少なくともこいつの試験はまた別のところに移動するような事例が出るまではお預けってわけか、それまでは暫くコイツは待機形態─耐Gスーツの胸ポケットに装着された純白と深紅の一対の羽根飾り─のままってだけだろうな。

 

「シャレ=グルスキ少佐へのIS引き渡しは完了しましたか?完了していましたら空路でモドリン要塞へ移動するようにとの通達です!」

「ああ、引き渡しは完了しているんだが…………今すぐか?」

「はい!今すぐに、滞りなくとのことです!それでは飛行場までの車を用意しましたので着いてきてください!」

「ああ、わかった。にしても次はモドリン要塞か…………なぜあそこに行く必要があるんだ…………?コイツの試験なら別のところがあるはずなんだがな…………」

 

いきなり入ってきた伝令らしき兵士が俺に上からの通達を伝え、着いてくるよう促してくる。着替え終わったらではあるが次はモドリン要塞へ行くことになるか……………昨日今日といい俺ってこの2日でそれなりの距離移動しているな?

何はともあれ、おそらくまた何か辞令か、あるいは検査だろうな。モドリン要塞にある軍の施設は大体研究系のがほとんどだからそんなところだろう、多分な!

 

斯くして彼は再び短い空の旅へ旅立つこととなった。今度は一対の純白と深紅の一対の羽根飾りを軍服の襟に装着していることくらいだろうか、何かはある。しかしそれが吉報か凶報かは彼にはわからない。少なくとも一つ言えるならば時計の針は少しずつ進み続けていることくらいだろう。

 

 


 

時計の針は時を刻み続ける。これまでも、これからも、永久に

 

鷲馬は新たな純白と深紅の翼を手に入れ、蒼空へ飛び上がる時を待つ

 


 

── Sekcja 4. Koniec. ──

 

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