凡人擬きは少女を曇らせたい   作:コンソメ

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第1話

「人間は、身に余る力を他者から与えられたときに本質を見せると思うんじゃよね。死に際に本性が出るっていうじゃろ?そんな感じで」

 

とある街のとある廃協会。惨劇の後を教える血の海と死体の瓦礫。その中に座り込む少年に向けて、一柱の神が笑った。

 

「凡人に力を与えた時、そいつがどうやって道を開くのかを見届けるのが今のマイブームなんじゃよ」

 

体の感覚が薄れていく中、目の前の神の戯言だけが生きていると実感させてくれる。割れたステンドグラスが月光を乱反射する。

 

「昔は英雄を探してたんじゃよ?でもな、英雄って生き物はつまらなくてな。だから、少し不正をしてでも凡人を使ったシミュレートゲームをしたいんじゃ」

 

血の海の中でその身を赤く染め、呆然とする少年をその事態の元凶である神が哂っている。

 

「じゃから、選ばせてやろう。ここで死ぬか、神の玩具として力を手に入れるか」

 

悪神よりも悪辣な笑みを浮かべ、善神のごとく手を差し伸べるこの神の手を少年は取った。この日、メーティスという神に眷属ができた。

 

 

 

 

 

 

 

何かを演じることが得意だった。神曰く、人って生き物は特別って言葉に弱いらしい。少年はいつも何者かになりたがっている。少女たちは認めてほしがっている。両者ともに心の穴を塞いでほしいのだ。

 

俺は誰かを演じることで、自分以外の特別な誰かになることでこの穴を埋めていた。神様風にわかりやすく言うのであれば、ロールプレイを行っていた。俺の主神である童女姿の神はそれを面白がり、様々な所に俺を連れて行った。

 

「アリウス。儂の言うとおりに演じろ。そうすれば5年以内にお前を自由にしてやる」

 

そう言われ俺は黙って従っていた。メーティスは俺に預言者の真似事をさせた。ただ、どんなに演技がうまくてもただの子供の戯言。なるべく抽象的な言葉を意味深に並べているだけのクソガキだったわけだが、ここに神の叡智を使った偽造工作が入ると大変なことになる。

 

魔物の襲来を仄めかした村はその日に滅びた。

交通事故に気を付けろといった老人は、その日荷馬車にはねられた。

『信頼こそが権力者を殺す毒になる』と主神が昔言っていた言葉を適当に掛けた王族が側近に毒殺されかけた。

潔癖な処女神に『あんたは恋を知ってはいけない。その恋はあんたの死と同義だから』と言ったり、オラリオに流れ着いてからも数々の予言をした。すべてが口から出まかせだったり、意味のない言葉だったがほとんどの予言が的中した。

 

気が付いた時には遅かった。何故か俺は未来を見ることができる眼も持つ少年として、『預言者』の二つ名を与えられていた。

 

神に与えられた魔法のおかげで確かに未来は見える。7秒先が限度ではあるが。

しかし、噂されるような未来視ではない。それに『預言者』の二つ名は様々な問題を発生させる。

 

その最たるものが………

 

「いたぞォ、『預言者』だ!!!!」

 

土砂降りの雨のオラリオを走って進む。後ろからは、命を狙ってくるチンピラの怒号が聞こえてくる。息は切れ、鼓動はうるさいほど高鳴り視界は揺れている。

 

『預言者』と呼ばれるようになってから、俺を狙う人間が多くなった。闇派閥やチンピラ、変態神のファミリアまで何でもござれだ。最近は未来が見えているのに何故救ってくれないんだって叫んで石を投げてくる一般人までいる始末だ。

 

マジでメーティスを殺したいが、恩恵を失えばマジで殺されるため腹を抱えて笑っている主神を守るしかない。

 

魔法やナイフが俺を襲ってくる。紙一重でかわしながら、人気のない場所に引き付ける。入り組んだ路地に誘い込んでチンピラたちを迎え撃つ。

10人を超えるチンピラどもは俺に飛び掛かる。多くはLv1だが数人Lv2が紛れ込んでいる。神の不正ありきとは言えLv3を生け捕りにできると思っているのだろうか。

 

「『ラプラス』」

 

攻撃を最低限の動きで躱し、死ぬ確率が限りなく低い未来を描き剣を振るった。鮮血が咲き雨音が一瞬消える。飛び掛かっていた男たちは一瞬、ひるみ距離をとった。

 

「いい加減諦めて欲しいんだけどな………闇派閥のやつら、俺の首にどんだけ懸賞金を掛けてるんだ?」

 

溜息を吐き剣を構える。もうすっかり慣れ切ってしまった人殺し(自分)の未来を眺めながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオの治安は絶望的に悪い。万引きや窃盗、ひったくりが当たり前に起こるくらいには。

 

今日も今日とて犯罪者が一人生まれ、即座に鎮圧された。

 

「クソ!」

 

憎悪で目を血走らせる男を前に、ガネーシャファミリアの少女は目を伏せた。

 

治安を悪化させたことで仕事を失いその人間達がさらに治安を悪化させ混沌を生み出している。それがこの街の現状だった。

 

「お前たちが悪いんだ!闇派閥をどうにかできないお前らの!!!!!」

 

ひったくり犯の言葉は否定も肯定もできない。

 

「そうさ!俺みたいな奴がいるのは全部お前らのせいだ俺は被害者だ!」

 

その男の結論にアーディは一歩前に出た。

 

「それがあなたの言い分?でも悪い事は悪い事だよね?あなたが奪われたぶんだけ何かを奪えば、誰かがあなたと同じ思いをしちゃうよ?それは悪いことだよ」

 

そのアーディの声色は、咎めてはいなかった。責めてもいなかった。ただただ普通に尋ね返していた。

 

「今のあなたが、あなたみたいな人を作り出しちゃうかもしれない。私たちが力を尽くす前に」

 

詰め寄られているわけでもないにも関わらず暴漢の男が言葉に詰まった。そして、彼女はにっこりと笑ってみせる。

 

「だからさ誓って?二度と悪事に手を染めないって………約束してくれたら今回は見逃してあげる」

 

呆けた表情を浮かべる男、笑ったままの彼女を見て溜息を吐いた。

 

「シャクティが見たら怒りそうだな」

 

「怒られるかもだけど、でも、私たちが取り押さえたから被害は出てない。おじさん以外は誰も不幸になってない」

 

「………」

 

「犯罪は犯罪だけど、この人たちにはこの人たちなりの事情があって、みんな生きるのに必死なんだ。お姉ちゃん達が鞭でこの人たちを捌くならさ、私くらいは飴になってあげたいな。そうじゃないとみんな疲れちゃうよ」

 

アーディがこちらに向けてにっこりと笑う。

 

「アリウスが一般人には手を出さないのと一緒だよ」

 

この笑顔だ。この笑顔に何度救われてきたのだろうか。春風のような穏やかさ、綿飴のような声色。

 

この地獄のようなオラリオの街で………ただ一つ少年が美しいと思う存在が彼女だった。だからこそ、だからこそ、その顔を歪ませたい。

 

俺が、他の誰でもなく自分自身が彼女のその心に刃を突き立てたい。自分の歪みを自覚しつつもその思いだけを止めることができなかった。

 

 

 

 

「ああ………どうしようもなく好きだなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Lv.3

 

力:H154

耐久:H153

器用:C699

敏捷:A890

魔力:S900

 

魔力:G

耐異常:G

 

《魔法》

【ラプラス】

・付与魔法。

・数秒先の未来を見る

・速攻魔法

愚者の炎(イグニス・デストロイト)

・自分ごと焼く業火を放出する

・詠唱式:業火を謳う、道化は笑い、愚者は嘆きと憎悪を寿ぐ

《スキル》

【未来憑依】

・任意発動

・■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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