【カオ転三次】人外系俺達(と、その周辺)の日常   作:大喰い

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前回から続いて中編ですが、感想は欲しいので初投稿です。




・俺の知り合いの黒札が濃すぎる件/桃源窟事件

 最初に感じたのは疑問だった。

 なぜ何も見えない?

 体の感覚はどこにある。

 時間の経過も朧気なら、天地の別もままならない。

 

 何もできない閉塞感と、それを拒否する己は何かを思い出し。

 自身の魂の形と、すぐそばにある小さな灯に気が付いた。

 


 

 派出所作成のための霊的地均しは、大きな問題もなく進んだ。

 俺や梅義姉(ねえ)さん他3名は『ローラー班』として、派出所とその結界を置く予定地での作業が割り振られた。

 怪しいポイントは事前にある程度絞り込めるらしく(水名方さん曰く「原理的には基本的な風水や占術」らしい)、まずはそれらのスポットを確認、何か霊障が起きていれば原因を取り除いて、地脈の流れを調整する呪具を設置。

 事前にリストアップした場所が一通り終わったら、次は結界の設置予定範囲で異変が起きてないか、またはこれから起きないかを一定期間確認して、何かあればそこにも調整呪具を設置する。

 そして今はその確認期間の終盤で、あと数日したら結界を敷設、最終的に派出所の建設予定地まで地脈を引き込んで、人工的な霊地にする、という段階まで来ていて。

 

 そんな中、ローラー班が朝から全員、水名方さんに呼び出された。

 

「忙シイ中悪イガ、追加ノ仕事ダ」

 

 集まった面々にかぎ爪のような手でプリントを渡す水名方さんの声は、金属質な響きは残っているけどだいぶ聞き取りやすくなっている。

 

「先日、長靴にきガだーくさまなーヲ捕縛シタノハ連絡シタ通リダ。ソノ後ノ尋問デ、陽動ノ為ニ

 悪魔ノ呼ビ出シ方ヲ教エ込ンダ素人ガイタコトガ分カリ追跡シタガ、MAGガ枯渇シタ死体トシ

 テ発見サレタ」

 

 『長靴ニキ』とは現地で合流したローラー班の人のひとりで、俺より1、2歳ぐらい年下の男子学生だけど、彼も特別な構成員……いわゆる【ブラックカード】らしい。

 ブラックカード同士だと名前じゃなくて綽名みたいなもので呼び合う場合もあるという話だったので、長靴というのもそんな呼び名なんだと思う。でもネットスラングみたいな『ニキ』は何なんだろう?

 

「召喚サレタ種族不明ノ悪魔ガ未ダ発見サレテイナイ。MAG不足デ消滅シテイルナラ問題ナイ

 ガ、別ノ贄ヲ見ツケタカ、異界ヲ作リ潜ンデイル、又ハソノ両方デアル可能性ハ高イ。故ニ、

 君達ニハコレマデノ作業ニ加エテ悪魔探索ヲシテモラウ事ニナル」

「えっと、ジンさん質問」

 

 話しかけ難そうな他の人に代わって、長靴さんが挙手する。

 

「ドウシタ?」

「異変が無いか探して歩くってことだから、することは変わらない?」

「マア、ソウナルナ。多少気ヲ付ケロトイウ話ダ。手ニ余ル規模デアレバ私ガ対応シヨウ」

「俺からも質問だが、追加分の報酬は出るんだよな?」

「アア。働キニ応ジテ連合カラ追加報酬ガ出サレル。恐ラク多少ハ経費モ出ルハズダ」

「倒さないと報酬無しとか、撤退したからペナルティとかは無いわよね?」

「確実性優先デ構ワナイ。タダ、一般人ヘノ被害ヲ抑エタ方ガ査定ガ良クナルダロウ」

 

 それを機に、筑波さん*1とギーゼラさん*2が質問を始めて、他にも2、3確認したあと。

 ローラー班全員が分かれて、それぞれの区域内を確認して、何かあれば班員と水名方さんに連絡する、という形で探索開始となった。

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 平日の、人気の少ない繫華街を歩く。

 居酒屋やバーが並ぶ路地は少し狭く、人目につきにくい場所が多くなる。加えて、色々な情念が籠りやすい場所でもあるので、MAGを求めるなら候補になる場所だ。

 

「……んー、ダメだ」

 

 ただ、午前中はさすがに人の姿もまばらで、店も営業前で確認できない。細かい路地裏も見て回ったものの、特に異変も『勘』に引っかかるものも無く。

 正午過ぎには成果なしのまま、大通りに出てきていた。

 

「やっぱり夕方から夜じゃないと無理か……ん?」

 

 信号待ちしながら、とりあえず任務中に見つけた食堂に行くかな、と考えたところで。

 左下、視界の端から向けられる視線に気づく。

 

「……………………」

 

 擬音にするなら『ぼー』と『じー』の間ぐらいだろうか?

 背丈が俺の胸のあたりまでしかない、淡い髪色の女の子が、ぼんやりとこちらを見上げていた。

 

「……………………」

「……………………」

 

 沈黙。

 翠色の瞳と目が合ったが、何故か一言も話さない。

 

「……えーっと、どうしたの?」

「……?」

 

 しゃがんで目線を合わせて聞いてみると、返事代わりに小首を傾げられた。

 いやこっちも「?」なんだけど。

 ランドセルを背負ってるから小学生なんだろうけど、なんで平日の昼過ぎでこんなところにとか、こっちを見つめてるのは何なのかとか、色々分からない。

 

「迷子とか?」

「ちがうよー……?」

 

 違うのか。

 

「あー、じゃあ何か俺に用事?」

「……?」

 

 いや「?」じゃなくて。

 なんか来たばかりの頃の梅義姉さん(シキガミ)の方がまだ反応があった気がするぞ。

 困って立ち上がり、周りを見渡す。と、ちょっと先に、小学生の集団と、先生と思しき大人が進んでいるのが見えた。

 ランドセルの子供達が10人以上はまとまっているのを見るに、集団下校だろうか。

 

「あの子たちと一緒に帰るところ?」

「……そうだよー…………あぶないって……しゅうだんげこー……」

 

 どうやら長靴さんの捕まえたダークサマナーの件は、学校とかにも注意情報として伝えられたみたいだ。

 いや、その集団から取り残されそうだけどこの子。

 

「……えっと、それならみんなと一緒に行かないと危ないんじゃない? 置いて行かれちゃいそうだよ?」

「……うん……じゃあねー……」

 

 焦った様子もなく歩き出す女の子。

 信号が変わったのでこちらも横断歩道へ。

 渡り終えてから振り返ると、集団の最後尾に追いついたようで、ひとまず胸をなでおろして。

 繁華街側に向かう子供達を見届ける前に、食堂の方へ向かった。

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 日替わり定食を食べ終えて、昼間にもう一度回っても空振りしそうだよな、とか思いながら店から出てきて。

 

「あ」

「む」

 

 ちょうど、住宅街の方を担当していた、梅義姉(ねえ)さんと遭遇した。

 

「ここは私の担当エリアですが。広司様は繁華街では?」

「いや、昼飯食べ終わったところ」

 

 いつもながらそんな不機嫌そうに見なくても、と思うけど……駄目なんだろうなぁ。

 お互い収穫無し、という確認の後、確か梅義姉(ねえ)さんの担当範囲に学校があったことを思い出す。

 

「そういえば、学校が半日で集団下校してたから、そこ調べるなら手伝えるけど」

「小学校ならすでに走査済みです。むしろ何故広司様がそのことを?」

 

 梅義姉(ねえ)さんの目つきに性犯罪者を見るような嫌悪感が混じる。

 

「いやいやいや!? 変な意味じゃなくって!! 昼飯前にちょうど集団下校と行き会っただけだって!!」

「――本当に?」

「いや何でそこ疑うの?! 普段から変なことしてないでしょ!」

普段何も無いから疑わしいのですが……偶然そちらに向かう集団下校と遭遇するよりは、普段から興味を持って調べていた確率の方が高いと思いまして」

「ほんとだって!! こっちに向かう途中で、繁華街の方に行くのを見かけて―――」

 

 そこまで言ってから気づく。

 確か繁華街の辺りは、梅義姉(ねえ)さんの担当区にあるのとは別に小学校があって、あの子たちの来た方向とは違う方向だったはず。

 じゃあ何で、人気のない繁華街の方に?

 

「―――まずいっ」

「……っ 待ちなさい!」

 

 静止の声を無視して駆ける。

 予感が外れることを祈りながら、子供達の向かった、悪魔が潜みやすい場所へ。

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 途中で追いつかれた梅義姉(ねえ)さんと一緒に、繁華街の少ない通行人や、ランチ営業していた店の人に聞き込み、目撃の途切れたあたりを調べる。

 裏通りの方に入ると、朝のうちは無かった歪み、異界の入口が出来ていた。

 道の端には、以前設置した地脈調整の杭が割れて落ちている。低級の悪魔では動かせないはずのそれが壊れているということは、例の悪魔は誰かと契約したか、洗脳して、人間の手で外させたということだ。

 

「一度地脈が淀んだ場所とはいえ、1時間足らずで異界を形成するとは」

「水名方さんに連絡するから、梅義姉(ねえ)さんは入口の対策を!」

 

 子供達は気になるが、まずは周りの被害が無いようにしないといけない。

 焦りながら携帯を取り出し、連絡の番号を呼び出そうとした、その時。

 異界の入口から、薄桃色の霞が流れ出し。近くにいた梅義姉(ねえ)さんが膝から崩れ落ちた。

 

「梅義姉(ねえ)さん!?」

 

 急いで駆け寄り、倒れた梅義姉(ねえ)さんを抱き起す。

 

「おい、大丈夫か?!」

「ぁ……こうじ、さま?」

 

 こちらを見た梅義姉(ねえ)さんはどこか虚ろで、力が入らないのかぐったりとしている。

 頬が赤らみ、目が潤んでいて、胸元にしだれかかってきて……って。

 

「ちょ、ちょっと梅義姉(ねえ)さん?!」

「ああ……貴方なら……」

 

 なんか明らかにおかしいというか理性が削れる挙動というかギャップがありすぎ?!

【アムリタ】

 と、突然『何か』が抜ける感覚と共に、梅義姉(ねえ)さんに回復系の魔法が掛けられる。

 

『動揺しすぎだ小僧』

「へ?」

 

 そして梅義姉(ねえ)さんを支えている()()()()()()()()()

 

『起きろ、()()。もう問題ないはずだ』

「……! 申し訳ございません!」

 

 主人の声に、先ほどまでの様子が嘘のように立ち直り、素早く離れて傅く梅義姉(ねえ)さん――裏梅。

 そしていつの間にか体が動かない……いや、主導権が移り変わる。

 

『様子がおかしければ状態異常を疑え。基本のはずだが、これは補習が要るな』

 

 覚悟しておけよ小僧、とつぶやきながら。

 自分の肉体が立ち上がるのを、分厚い毛布越しのような感覚で感じ取る。

 

「小僧に効かなかったところを見るに、【毒】か。回復が間に合うと耐性までで止めていたが、まさかこうなるとはな」

「お、お見苦しい姿を……」

「構わん。耐性は俺の落ち度だ、後で補強しよう。それより水名方(ギタクシアス)に伝えろ。『面白いものを見つけた、先にこちらで調べる』とな」

「御意に」

 

 そこまで指示を出した後、軽く首を鳴らして。 

 

「ではな、行ってくる」

「ご武運を、宿()()()

 

 アイツ―――両面宿儺(リョウメンスクナ)が、霞を吐き出す異界へと足を踏み入れた。

 

 

*1
もう一人の現地合流組で、ガタイのいい男性

*2
行きで同乗した魔女のお姉さん




・竜胆 広司(リンドウ コウジ)
 ガイア連合所属のデビルシフターで、近接ビルドのゴリラ転生デビルファイター。
 何故か別人格が存在し、そちらの方が黒札勢と仲がいい。

・宿儺(すくな)
 竜胆の同居人。家主と違い術関係に強い。普段表に出ないにもかかわらず、何故か竜胆よりもレベルが高い。
 伝承から推定すると『【鬼神】リョウメンスクナ』となる可能性が高いはずなのだが、変身後のアナライズでは【魔神】と表示されている。

・裏梅
 宿儺の式神。外見は呪術廻戦の同名キャラクター。
 原作ではまだ性別不明だが、この式神は女性型として作られている。
 原作再現も兼ねてブフ系と【調理】スキルを習得済み。

・水名方 刃/ジン=ギタクシアス
 ガイア連合黒札、生体改造メインの研究・準医療班。本名不詳。【龍神】イツァム・ナーのデビルシフター。
 マヤ神話の最高神のうち、人間に知恵を授けた神としての側面を引き出しているのだが、そのままだとイグアナ体形で不便だったため、自己改造。今やすっかりファイレクシア人である。
 なお、偽名はタイムスリップ医療漫画から捩ってつけた。

・筑波さん
 ガイア連合所属の現地人異能者。見た目は九十九乱蔵(闇狩り師、特に徳間文庫の新装版)で、肉弾系仙術使い。
 気遣いの人。

・ギーゼラさん
 ガイア連合所属の現地人異能者。行きのトラックに同乗してた魔女装備のコーカソイド系女性。
 連合幹部と直接会える緩めの依頼だったのだが、出てきた黒札が色物だったのでコネ作りはあきらめた。

・少女
 不思議JS。

・長靴ニキ
 診療後も特に対処法がなくやり過ごしていた時に、調査依頼で入った異界でうっかりネコマタのマリンカリンが直撃。エ〇漫画みたいなリバ展開の後にコンゴトモヨロシクすることに。後からショタオジ監修の契約を結び直したがしっかり怒られた。
 まだガイア連合にCOMPの無かった頃の話である。
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