『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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21:私も無双したいです

 聖女修行は、順調に――毎日辛いのは変わりありませんが――続いていました。

 修行開始から十日以上が経過し、魔法の行使にもそれなりに慣れて来た今朝は、なかなかにいい感じで魔法が出せました。全身が白光に包まれ、それを放つと癒しの力になり、傷を少しだけ治すことができたのです。最初のあのダメダメっぷりから考えれば信じられないほどの進歩でした。

 

 それにしても自分が魔法などというわけのわからないものを当たり前のように使う日が来るなんて、夢にも思いませんでした。

 でも今の私ができるのは、少しの治療程度。今の段階ではきっとニニの治癒の力の方が高いに違いありません。

 

「せっかく魔法が使えるなら、無双とかしてみたいんですけどね……」

 

 昔読んだ異世界系の話では、修行などせずにバンバン魔法が使える主人公ばかりだったのですが、どうやらそんなのは私には縁遠い話のようなのですよ。

 現実を突きつけられたような気分ですが、それでも私だって活躍したい。本当に小さな治癒魔法を使えただけでも奇跡なのでしょうがそれでは満足できないのです。

 

 その日の修行の時、ニニにそのことを言ってみました。

 

「格段に強くなる方法とか、ないんですか? 今のじゃしょぼくてとても立派な聖女とは言えないと思うんです」

 

「格段に強くなる方法、でございますか……。段階を踏んでお教えするつもりだったのですが、よろしいのですね?」

 

 はい、と私が頷くと、ニニは微笑み、

 

「では敵を祓う術をお教えいたしましょう。この小型魔物を使って」

 

 手のひらの上に乗せた小型魔物――見るからに凶暴な紫色のウサギを私の目の前へ持って来ました。

 

「うわっ」

 

 何なんですかこのウサギ。いつの間に出して来たんですか。というよりこのウサギ、何に使うんです!?

 心の中で疑問を叫ぶ私にニニは説明してくれます。

 

「これは騎士団の練習によく使われる魔物の一種でございます。牙が鋭く食欲が激しいですが、騎士団によって調教され制御されているので、わたしたち人族を襲ったりはいたしませんのでどうぞご安心を。

 この魔物に魔法を放ち、邪の気を祓うことで完全消滅させること。それがこれからの聖女様の課題といたしましょう。それと同時に治癒の魔法も強力なものにしたいのでしたら、現在行使されている魔法の一つ上級のものをお教えいたします。かなり過酷にはなると思いますが、聖女様ならきっとできます」

 

 ……。

 この魔物と戦うんですね。うん。正直言って怖いです。今にも噛みつかれそうですもの……。

 無双したいなどと言い出した先ほどの自分を強く恨みました。さらに修行がハードになったじゃないですか。こんな毒々しいウサギを倒さなくてはいけない上、しかも治癒魔法の方の訓練も厳しくなるなんて。

 でもきっとこの修行に耐え抜いたらきっと立派な聖女になっているのでしょう。自分の失言を悔やみながらも私は、頑張れば早く帰れると自分に言い聞かせました。

 

 ――その日からたっぷりしごかれ、魂の抜けた抜け殻になったのは言うまでもありません。

 制御されていると言っていたはずのウサギはなぜか私を見るなり目の色を変えて噛みつかれましたし、魔物を祓う聖魔法を覚えるのもそれはそれは大変でした。ようやくウサギを倒した頃には全身ボロボロになってしまっていて、ニニの魔法がなければ死んでいたところだったそう。

 その一方で上位版治癒魔法である『ヒール』を教えてもらいましたが、その都度体力を使いすぎてその度倒れてしまう始末。我ながらなんとも情けない話です。

 

 やはり物語などと違って現実には無双の道はかなり遠いようです……。

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