『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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23:光の騎士からの試練②

「来ないで来ないで来ないで!!!」

 

 めちゃくちゃに叫びながら、全身からぽわんとした柔らかい白光を放ちました。

 これはニニから教えてもらった破邪の魔法。「聖女特有の魔法で、これを浴びた魔物は全て死滅するのでございます」だそうです。

 

 そしてニニの言葉の通り、白光に包まれた瞬間、紫のウサギの影が一斉に消えました。あれほど元気いっぱいに私を狙っていた魔物たちは一瞬にして光の粒子となって消えていきます。

 

 けれど知性のないウサギたちはいくら仲間が死んだところで攻撃を止めようとしません。

 次々と飛びかかってくるウサギの群れに、私は脇目も振らず破邪の魔法を放ち続けました。

 

 ――でもこれってかなりまずい状況なんですよね。

 

 ニニ曰く、試練は三つ。だというのに私は、魔法を節約せず行使し続けているのです。

 魔法を使うには魔力が必要で、魔力切れを起こしたらそこで終わりです。きっと魔法なしでは後二つの試練は乗り越えられないでしょう。だというのにあまりにもウサギたちが激しすぎて魔法の手を緩めることができません。

 

 私の魔力量は多いそうなのですが、体力がついていかずに倒れてしまう可能性もあるらしく。

 つまりこの戦い、早く済ませるに越したことはないのでした。

 

 いくら魔法があれば大丈夫だと知っていても、目をギラギラさせた魔物たちを前にして私の足は思わずすくんでしまいます。

 しかし、待っているだけではいけません。私は聖魔法の力を一段階上げて、勇気を出して叫びました。

 

「ブレイキング・イーヴィル!」

 

 ……破邪という意味らしいです。技名を叫ぶのはお決まり展開ですが、実際やってみるとなんというか、恥ずかしくて顔から火が出そう。これを余裕でやれる人がもしいるとすれば尊敬してしまいますね。

 詠唱した瞬間、一気に先ほどの比にならない眩い光が溢れ出し、私は思わず目を閉じました。

 

「はぁっ……はぁ、はぁっ……!」

 

 そして光が収まり、目を開けると――。

 そこには先ほどまであれほどたくさんいたはずの魔物の姿は、どこにも見当たりませんでした。いつも通りの庭園が広がっているだけです。

 つまり、

 

「ただ今の試練、聖女様の突破により、終了でございます」

 

 ニニの宣言が高らかに響き渡りました。

 ああ、一応、これで第一関門クリアですね……。けれど安心してはいられません。なんたって、試練は残り二つなのですから。

 まだ三分の一かぁ。立っているのもやっとなんですけどね。

 

 そんなことを内心でぼやいているうちに、早速、次の試練の幕開けがなされようとしています。

 

「――では早速、続いての試練の内容をご説明いたします。来たる厄災に備え、聖女様のお力を試すものでございます。

 奇跡を起こし、傷を癒すこと。これが聖女様のお役目でございます。そこで、」

 

 ニニは他の騎士たちに指示を下し、どこからか無数の担架を持って来させました。

 担架には布がかぶせられていましたが、おそらく怪我人が寝かせられているのだろうと思いました。

 

「この方々を残らず治療することを第二の試練といたします。制限時間は正午になるまででございます。では……始め!」

 

 布がパッと取り払われた瞬間、私は思わず「うぇ」と声を漏らしてしまっていました。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 リアルで血を見るとこんなに気分が悪くなるものなのですね。

 あまりにも自分の肝っ玉を甘く見ていた私は、その怪我人たちを前に嘔吐しそうになっています。

 

 私が治療することを課せられた怪我人たちは、おそらく五十人ほどでしょうか。

 腹を切られたり、腕がなかったり、頬が割れていて傷口からひどく膿んで腫れ上がっていたり……。場合によっては腰から下がないなんていう人もいて、この上なく凄惨な状況でした。

 

 これは全て魔物の被害者。近年になってスピだパム王国の各地に現れるようになったという大型の魔物は、こうして多くの人に被害を与えたといいます。

 とりあえず死なない程度にニニが治療したらしいですが、それでもこの状況。傷が塞がらずに血が流れ続けているのです。

 

 ――これを治すのが、私の役目。

 

 またも突きつけられる無茶ぶりに目を回しそうになりながら、私は、恐る恐る怪我人へと近づいて行ったのでした。

 

 

 

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