『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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28:異世界は不便だらけ

 修行を終えてゆっくり過ごす日々。

 と言っても王女様やその弟の王子様にまで振り回されたりして大変なのですけど、それでも久々に心と体を休めるいい機会です。私はそれを満喫するつもりでした。

 

 しかしそんな余裕ができたからこそ、気になってしまうことというのもあって。

 

「私、この世界には色々と問題と思うんです」

 

 ある日、私の部屋へいつも通りに上がり込んで来ている王女様に、私は言いました。

 きょとんとする彼女らに向かって声を大にしたいことがあるのです。

 

「第一に、鍵がない! 王城なのに! 誰でも無断で部屋に入り放題じゃないですか!」

 

「カギ? 急に何のことよ?」

 

 首を傾げる王女様。しかし私は彼女を無視して続けます。

 

「第二に娯楽が何もない! 小説も漫画もテレビも映画も……。スマホすらもない……」

 

 これはかなり痛手。

 この世界の文明はまだそこまで進んでいないのか電子機器は一切なく、何も娯楽がありません。こんな生活をどうやって現代日本で暮らしていた女子高生に耐えろというのでしょう。不便。不便すぎる。

 

 でもこんなことは私にとって些細なことに過ぎません。

 私が最もこの世界に対して不満な事柄があるとすれば、それは――。

 

「……ここ、お風呂、ありませんよね!?」

 

 そう。そうなのです。

 この世界に来てからというもの、私は一度も入浴したことがありませんでした。日々の修練に疲れ果てていて今までずっと気にならなかったのですが、こうしてのんびり過ごすようになると真っ先に気になるのがお風呂です。

 メイドさんたちがしっかり身体中を拭いてくれるので衛生的には問題ありませんが、やはりお風呂でゆっくりしたいところ。しかしこの世界にはお風呂という風習自体がどこを探しても見当たらないのです。

 

「わざわざ大声で言わなくてもいいわ。それに、そんな下等なもの、いらないに決まってるじゃない」

 

「か、下等なものって! お風呂は心身共に温めてくれる癒しアイテムなんですよ!?」

 

「そんなわけないでしょうが。平民が使う薄汚れた水浴び場だって、しっかり勉強で習ったんだから。……ああ、そうね。確かあなた元々異世界の平民だったわ。だから泥水に入りたいのね。やめときなさい、そんなものに入ったら聖魔法が鈍るわ」

 

「いや別に私、泥水に入りたいわけじゃないんですけど……。私の世界とこの世界のお風呂の認識、なんだか違ってません?」

 

 それから詳しく話を聞いてみると、この世界のお風呂は基本川の水を溜めて入るらしいのですが、何しろ雑菌だらけですからあまり体に良くないのだとか。従って、入浴というのはあくまでも貧乏な平民の風習で、清潔な王族貴族は蒸しタオルで体を拭くのが常識なんだそうです。

 

 確かに文明レベルを考えて、それは普通のことなのかも知れません。元の世界でも国によっては衛生状況が良くないどころか水がないという話さえありましたし。

 納得はしました。でも、これ以上お風呂のない生活には耐えられないでしょう。そこで私はふといい案を思いつきました。

 

「実は私が暮らしていた世界では、汚い水を綺麗にする仕組みがあるんです。それや聖魔法をうまく利用して、この王城にお風呂を作ってみませんか?」

 

「なんでわざわざ」

 

「お風呂に入った方がきっと聖女の力が向上すると思うんです!」

 

 ――多分そんなわけはないのでしょうけど、その方がスッキリしますからね。

 

 聖女の力の話を出すと、王女様はしばらく考え込んだ後、「なら仕方ないわね」と頷いてくれました。

 第一と第二の問題はともかく、このお風呂問題はなんとか改善することができそうです。いくら家に帰るためとはいえしばらくこの異世界で暮らす以上、過ごしやすいように生活環境を整えておくのは大事なことですよね。同時にこの国のためにもなるのですから、これも聖女の仕事の一つ! 決してサボっているわけじゃありませんよ!

 

 ということで私と王女様は早速、お風呂作り計画を開始するべく相談を始めたのでした。

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