『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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29:お風呂作り

「お風呂に必要なのはまず水ですよね。それから浴槽、タオル、石鹸……。石鹸は色々道具が必要でしょうから、悔しいですが今回は諦めましょうか。他には……」

 

「どうせならわたくしが入るのに相応しい華やかなものにしたいわ。『裸の聖女』、なんとか考えなさい」

 

「華やかなお風呂ですか? じゃあ、色付きの入浴剤とかバスオイルとか。これも作るのが大変そうですけど」

 

 私の快適な異世界生活のため、私と王女様はまずお風呂に必要なものを作ったり集めたりすることになりました。

 タオルはこの世界でも普通に使われているようなのですぐに手に入るでしょう。ですからまずは、

 

「浴槽から作りましょう。……でもどうやって作るんでしょうか」

 

 プラスチックなどの使い勝手がいい素材がないらしいので、木材で作るしかありません。小さな木材をつぎはぎしただけでは水が漏れてしまいそうですから、大きなものを削って浴槽にするのが一番でしょう。素材はクワの木が水に強いと聞いたことがあります。

 ……が、問題はクワやそれに似た植物がこの世界に存在するかどうか。少なくとも草花があるのは庭園で確認済みですが、ここへ来てからというもの大きな木を見たことがありません。もしもあったとして、それをうまく削ることができるかどうかも自信がありませんでした。

 

 でも、そんな心配は『お風呂に入ってリラックスしたい!』という私の欲望の前にはあっさり負けてしまいました。

 自分でできるかどうかわからない時。こんな時は人任せに限ります。

 

「よーし。とりあえずはニニのところに行きましょう! ニニならきっと色々知っているはずです!」

 

「えっ、ニニに!?」王女様は明らかに嫌そうな顔をしました。「わたくし、ちょっと……」

 

「別に今日は地獄の修行を受けに行くわけではないですから大丈夫ですよ。それに、何かをやる時は大人の知恵も大事でしょう?」

 

 ――まあ、ニニは二十歳と聞きましたしこの世界の成人が何歳なのかは不明ですけど、そんなことは些細な問題です。

 

「……仕方ないわね。貴女だけじゃ頼りないからわたくしが同行してやるわ」

 

「ありがとうございます」

 

 そんなわけで、ニニがいるであろう騎士団の駐留場へ二人で向かいました。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「お風呂、でございますか。身体を清潔に保っておくことは確かに大切なことでございますね。聖女様の世界ではそのような文化が」

 

「文化と言いますか。中世時代からあるそうですし、この世界の文化レベルを見るとないのが不思議なくらいですけど」

 

 汚らしいイメージがある中世時代ですが、家に浴槽はなかったものの、実は風呂屋という店に通って庶民でもお風呂に入っていたりしていたそうです。歴史に詳しかったクラスメートの受け売りですが。

 それはともかく、

 

「浴槽というのを作ろうと思っているんですが適当な木があるかどうかわからなくて。太くて水に強そうな植物、ありませんか?」

 

「木……でございますか。王都周辺にはございませんが、わたしの出身の町ではよく見かけておりました。懐かしいものでございますね。

 水に強い木と言えば、模擬戦の際に使われる木剣の素材が適当かと思われます。木剣の生産地をあたってその木材を取り寄せることも可能でございますよ」

 

「本当ですか! じゃあ、よろしくお願いします」

 

 意外なことにすぐにいい返事がもらえました。これは大きな収穫です。

 

「光の騎士、浴槽には華やかな装飾が欲しいから金銀の飾り付けを同時に用意なさい。わたくしも入るのだからそれに相応しいものにしないといけないわ」

 

「了解いたしました、レーナ殿下。王族貴族の方々にとっては汚い印象のあるお風呂に殿下が入られるのは意外でございますが。聖女様に説き伏せられたのでございますか?」

 

「と、説き伏せられたですって!? 不敬な物言いはやめなさい。首を刎ねるわよ!」

 

「首を刎ねるって暴君のセリフですからやめてくださいね王女様」

 

 そんな風に言い合いつつ、ニニにはそれ以外にも必要なもの……入浴剤やバスオイルなどの作り方についてもいい案を出してくれました。やはりニニは頼りになりますね。

 数日後には木材が届くだろうとのこと。私たちはその間、入浴剤などを作っておかないといけません。

 

「王女様、手伝ってください。私は紫粉を集めておきますから、王女様は香水と油を探しに行ってください」

 

「……貴女は人使いが荒いわね。もしも聖女じゃなければ不敬罪に問われるところよ」

 

 ぶつくさ文句を言いつつきちんと協力してくれる王女様。

 私はニニにお礼を言うと早速、入浴剤の原料――紫粉と呼ばれる着色料を入手するべく動き出したのです。

 

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