『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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33:舞い込んできた話

「あれだけ大口を叩いておいて負けるだなんて情けないですね。何はともあれ私の勝利です」

 

「あ、あれは卑怯よ!」

 

「何が卑怯なんです? 時魔法で私の体を固めたの、お忘れですか? あの方がよほど卑怯だと思いますけど」

 

 ニニにたっぷり叱られた後、私は王女様に勝利宣言をしていました。

 悔しげに歯噛みする王女様ですが、余裕ぶっこいていた彼女の方が悪いのです。舐めプしている方が負けるのはお決まりですからね。

 

「王女様、私が勝ったら何か一つ、お願い聞いてもらえるんでしたよね?」

 

 王女様は渋々と言った様子で頷きます。よほど私に負けたのが嫌だったのでしょう。

 でも約束は約束です。私はしばし考えた後、こう答えました。

 

「……じゃあ、私が元の世界に帰ることができるよう、協力してください」

 

「協力? 悪いけど、いくらわたくしでもあなたを送り返すなんてことは不可能よ? それに聖女に帰られては困ってしまうし」

 

「ええ。ですから、ただ手伝ってくれるだけでいいんです。私がきちんとこの世界で聖女として活躍し、そして無事に帰れるよう、その方法を一緒に探してほしいんです」

 

「――。そんなことでいいの?」

 

 不思議そうな顔をする王女様。きっともっと大きな願い事を言われると思っていたんでしょうね。

 でも私は早く家に帰ることができれば何でもいいのです。それに、

 

「王女様と仲良くなりたいと、私、思ってましたから」

 

 これでもこの異世界で最初にまともに言葉を交わし、時に喧嘩し、一緒にお風呂を作った仲ですからね。

 そう答えた途端、王女様に「馬鹿ね!」と思い切り頬を殴られました。意味不明です。

 

「わ、わかったわ! 貴女の願い、聞き入れてやろうじゃないの! その代わりわたくしのことはレーナ様と、そう呼びなさい! いいわね『裸の聖女』!」

 

 なぜ拳を振るわれたのに名前呼びを許されたのかはわかりませんが、とにかく王女様、もといレーナ様が協力してくれるなら良かったと私は思い、微笑んだのでした。

 しかしまさかこの時の会話のおかげで後に彼女を危険な旅に巻き込んでしまうことになるなど、私は思ってもみなかったのです。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 レーナ様とのことがあった翌日のこと。

 朝風呂から上がって少しダラダラしていると、私の部屋をノックする音が聞こえました。

 

「はーい?」

 

 一瞬レーナ様かと思いましたが、扉を開けてみるとそこに立っていたのは長身の女性、ニニでした。

 

「聖女様、おはようございます。今朝は大切なお話がございましてやって参りました」

 

 そう言って頭を下げる彼女は、いつも以上にかしこまっている様子です。

 私は「大切な話?」と思わず首を傾げました。

 

「聖女様はこのスピダパム王国南部に、王立学園というのが存在しているのをご存知でいらっしゃいますか?」

 

「お、王立学園、ですか?」

 

 もちろん知りませんが、王立学園といえば二次元のなんちゃって貴族たちが通う、通称貴族学園のことでしょうか。

 まさかこの世界にそんなものがあるとは思ってもみず、正直かなり驚きました。この世界の文明レベル的にみて教育は発達していないかと思っていたからです。

 

「王立学園とは、王族や貴族などのやんごとない身分の子息子女が通う国の教育機関でございます。聖女様のご年齢は確か十五歳とお聞きしておりますので、最終学年への編入などはどうかと、学園長のジュラー侯爵様から打診がございました」

 

 私が、この世界の学園とやらに通う。

 何の前触れもなく舞い込んで来た想定外の話に頭がついて行きません。

 

「な、なんでですか。そりゃあ確かにまだ高校生ですし勉強しなきゃいけないのはわかりますけど、この世界の危機を救うのが私の役目なんですよね? 早く厄災を祓わなければいけないんじゃないんですか?」

 

「いいえ。厄災が訪れるまでには少々の時間的余裕がございますし、聖女様には色々と知っておいていただかなくてはならない知識などがございます。ある程度のことはわたしがお教えできますが、それはほんの初歩的なこと。それに、聖女様の後ろ盾となるべく人材を探すためにも、学園というのはうってつけの場所なのでございます。もちろん聖女様が異世界の方である以上、多少の偏見などはあるかも知れませんが……」

 

 つまりは、しばらくこの世界で暮らすのだからそれなりの知識を身につけておけという話なのでしょう。

 せっかく王城での暮らしに慣れて来たと思った途端これです。私は思わず頭を抱え、呻く他ありませんでした。

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