『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜   作:柴野いずみ

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40:悪い男に攫われたようです

 デパートの中を歩くのは大変で、気づけば自分が今どこにいるのかわからなくなっていて私は混乱していました。

 そんな中でも必死に出口を探して歩き続け、やっと回転扉が見えた時にホッと安堵したのも束の間。なんと、扉を出てみればそこは元来た入り口と全く違う場所だったのです。

 

「店内に地図もない上入り口が二つあるとか……地獄ですか」

 

 しかしそれは地獄の始まりに過ぎませんでした。

 引き返そうかと悩み、人が多いので外回りで歩こうとしたのが後から考えると馬鹿でした。太ももも二の腕も丸出しの、非常に際どい格好をしている今の私が一人で外を出歩いたらどうなるか。それをすぐに思い知らされることになります。

 

 ……元の出入り口を見つける前に、いかにもチンピラという風貌の男たちに見つかってしまったのです。

 

「なあ、そこの姉ちゃん。俺たちと遊ばねえか?」

 

 目の前に現れた黒服の男五人組を見て、私は頭が真っ白になってしまいました。

 すぐに逃げれば良かったのでしょう。でも実際こんな場面に陥って、普通の女の子であれば逃げられないと思います絶対。しかも相手は異世界人で私の身長より一メートル近く高いのですから足がすくむのも当然です。

 そうして私はあっという間に囲まれてしまいました。

 

 この時魔法を使えば跳ね除けられたのですが、咄嗟にそんなことが思い浮かぶはずもなく、私はタジタジとなって男たちに尋ねました。

 

「あの……わ、私を、どうするつもりです?」

 

 わかりきった質問。ですがこれしか浮かばなかったのですから仕方ありません。

 

「決まってんだろ。さあ、俺たちについてこいよ」

 

 そう言いながらおそらくリーダー格であろう中年男性――毛髪が抜け切っているので仮にハゲ男と呼びます――が、何やら物騒な銀色のものを私へ突きつけて来ました。

 異世界でもナイフってあるんですねという現実逃避な考えをしつつ、私は誰か助けに来てくれないだろうかと思ってあたりに視線を巡らせました。

 

 でもデパートの外は、デパート内の人の多さが信じられないくらいにひっそりしていて見たところ誰もいません。私が乗って来た馬車もどこにも見当たらず、御者さんに助けを求めるのは無理だろうということがわかってしまいました、その前に私が殺さるに決まっています。

 

 ――これってかなりマズくないですか?

 

 心の中の呟きに反し、私は引き攣った笑いを浮かべながら頷くしかありませんでした。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 そんなわけで私は、異世界チンピラに捕まってしまったわけですが。

 どうやらひどいことをされるのは後回しのようで、手足を縛られ目隠しと猿轡的なものまでかまされて荷馬車に放り込まれました。

 

 とりあえず一安心……。ですが、とても胸を撫で下ろせる状況ではありません。

 今の私の状況を一言で言ってしまえば、羽目を外して単独行動した隙に誘拐されている馬鹿な女、以上です。我ながら情けないを通り越して救いようがありません。少しデパートでお買い物……のつもりがこんなチンピラに絡まれたどころか攫われるというのは、あまりにもひどい話です。

 物語であれば世間知らずの箱入りお嬢様的ポジション。ですがこれは現実です。最悪死にます。死ぬよりひどい目に遭う可能性だってあります。それだけは嫌でした。

 

 今も私の周りには三人ほどの男がいて、ずっと見張られている状態です。私を見ては好色丸出しの会話をしています。どうやって彼らを撒いて逃げ出すか、それが問題です――。

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