世界人口の約8割が何らかの特殊能力を持つ昨今……超人犯罪は後を絶たず、国際社会は能力制御を義務教育に組み込み、超人社会を作り上げる事で、一応の平和を享受していた。
その中で「無個性」とされた人達は迫害を受ける事が少なからずあった……
本作の主人公である少女も……「無個性」として生きる1人である。
しかし少女は、この超人社会の中ですら“異質”と判断される不思議な力を持っていた……
「早くしろォ?!」
都内某所。銀行強盗の3人組が大手銀行の支店を襲い、黒髪の女性店員を人質にしてもう一人の男性店員に現金を詰めさせている。通報は既にされているのだが、外でもう一人の強盗犯が警察相手に大立ち回りをしており、内部への救援すら儘ならない状態だった……
そして最悪な事に、この地域を管轄にしているヒーローも「轢き逃げ現行犯」を追跡中で手が離せず、到着は遅れていた……
「ヘヘッ、テメェ等妙な真似したらコイツでバッサリ行くからな?」
纏めて集められた利用客……運悪く居合わせた彼等にも何が何だか訳が分からず、強盗犯は約2000万弱の大金が入った大型のジュラルミンケースを入手したのである。
「……さて、オレ等が出ていくまで……そうだな、オイ。そこのお前、一緒に来い」
犯人等に声を掛けられ、固まって震える利用客の中から一人……黒髪ロングの少女がゆっくりと立ち上がる。少女は利用客の一人で、用事は済ませていたが強盗が乱入してきた為に外へ出損ねていたのだった。
少女は足元に置いていたスーツケースを近くの人……使い走りにされていない銀行員に一言掛けて預かって貰い、声を掛けた犯人の近くに素直に歩いていく。
「……何だよ、随分素直じゃねーか」
「……流血沙汰はゴメン被りたいから」
「ハッ、大した小娘だ……ヨシ、引き上げるぞ」
犯人に従い、黙って付いていく少女……手には一見するとオモチャにも見える、大きめの指輪を付けていた。
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(……コレで他の人達はもう大丈夫、かな……)
《……お前も随分と“父親”に似てきたな?》
(“アンタ”が父さんを語らないで……!)
《……フン。だったら早く一人前になって、このオレを従えてみせろ》
(……無論。その為に、わざわざ東京まで来たんだから)
《その割には、“余計なお節介”ばかりで「本来の目的」が遅々として進んでおらんのだが?》
(……じゃあ手伝って。このまま1人でやるのは面倒だから)
《……ヤレヤレ、とんだ我が儘娘に育ったものだ……》
この奇妙な声は彼女の首に掛けられた、銀色のリングから発せられている……しかし、声は彼女にしか聞こえず、リングも服で隠れており、彼女は謎の声と思考だけで会話しているので誰にも気付かれなかった。
《……まずは“電撃”で、そこの奴の首に手刀だ》
謎の声の指示に従い、目の前に浮いたリングを取って右手のリングと交換……上着を少しだけ捲ってベルトのバックルを表に出し、リングを填めた掌を開いたままそっと当てる。
【Electro, Now】
突然聞こえた変な言葉に気付き、外へ出ようとしていた犯人が振り向こうとするがもう遅かった。
「……ッ?! ~~~~~~?!」(感電中)
音もなく背後に詰め寄り、少女は犯人を飛び越えるついでに首へ軽く「トンッ」と手刀で触れる……その間だけではあったが、護身用スタンガンの2倍近い電撃を喰らい犯人の1人はその場に倒れ伏した。
「……ッ!! テメ……かは……ッ?!」
少女は足を止めずに2人目に襲い掛かり、体格差を利用して腕を避け、懐に潜ったと同時に無防備な腹部へ速度と勢いの乗った正拳突き。しかも追い討ちの電撃が加わり、堪らず悶絶……その際に持っていたジュラルミンケースを落とした事で、ようやく3人目も異変に気付いた。
「……あぁ? 何だよ……大人しくしてたのはフリか? だったら容赦しねーぞ?」
「……ご自由に」
【Connect, now】
少女は右手を再び、中空に魔法陣の様なものを形成……そこへ無造作に手を突っ込み、中から“金管楽器”とされる「フルート」の様な物を取り出した。
「あん? 何だよ、一曲サービスってヤツか?」
「……そうね、それがお望みなら……お代は要らないわ」
少女がおもむろに“フルートのようなもの”を吹き始める……それはたった一音。しかし、その音色は男の耳に届くと同時に意識を根刮ぎ刈り取る“昏倒”の音色だった。
「……まぁ、聴いたらお代を貰える状態じゃなくなるもの」
ため息一つ……外の喧騒は未だに続いている。銀行強盗は4人組だった、外で警察とやりあっている最後の一人を何とかしなければ、この騒動は収まらない。
「……はぁ~っ、何で都会ってこんなに動き難いのかな……」
《フフフ……そう感じるなら、まだお前は未熟という事よ》
「……どういう意味?」
《その程度は自分で答えを見つける事だ、オレには関係ないのだから……》
「……意地悪」
ぼそりと呟きながら、銀行の外へと出ていく……外へと繋がる扉を開けた少女は、ゲームの衣装の様な金の縁取が施された白の魔術師ローブを魔法陣から取り出し、羽織りながら足を進めた。
『ハッハァ! 効かねぇんだよ、そんな豆鉄砲はなァ!!』
強盗犯の4人目は異形型の個性“スライム”だった……その為、警察や機動隊が幾ら銃を撃とうが物理攻撃は全くダメージにはならず、質量の大半が水分故に火炎放射器も無効、内部との導電性の差で電撃も効かない。
男はその能力で外を一手に引き受け、仲間の合図を待って撤退する予定だったが、その“合図”が未だに来ない……
(ま~だ時間掛けてんのか? さすがに飽きてきたぜ……)
その時、銀行の表扉……その自動ドアが開いた。
(……はぁ? なんだあのガキ……派手なローブ着やがって)
現れたのは、白いローブを羽織った黒髪の少女……事態を確認した警察等もその光景に呆気に取られてしまう。
「……強盗さんのお仲間は貴方?」
「……あぁ? お、おぅ……」
自動ドアから外へ出てきた少女は、おもむろに男へと声を掛ける。男もこの状況に呑まれたのか、律儀に返事をしてしまった……
「……随分と変わった見た目ね?」
「この体が、俺の“個性”だからな」
「……そう。【Freeze, now】なら、コレで良いわね」
「……なん……だ……と……!?」
少女が右手に持ったフルートを指揮棒の様に振るい、男を指す……直後、男の全身が絶対零度の極低温に包まれ、凍り付いてしまう。そのまま凍死するかと警察等は思ったが、男を覆った氷は数秒で砕け散り、軽い凍傷と気絶だけ喰らって倒れ伏したのである。
「状況終了。……はぁ……ほんっと、やりにくいわね……」
《まだ終わりではないぞ? 奴等の目を欺いて撤退だ》
「分かってるわよ」
そう良いながら少女は懐から一つのリングと白い鳥の玩具の様な物を取り出し、リングを鳥の腹部へ装着……
【Garuda, now】
《クェーッ!》
すると何と玩具っぽかった鳥が独りでに動き出し、まるで命を持った動物の様に鳴いたのだった。事態を伺っていた警察官達も、この光景には唖然としてしまう。
「……預けてある荷物の回収、お願いね」
《クエッ♪》
それを知ってか知らずか……少女は動き出した白い鳥に、銀行を出る前に店員へ預けていた荷物を取りに行くよう命じ、鳥も頷きながら鳴いて了承の意を示す。その後すぐに荷物の元へ飛び、預けてあった荷物……4輪付きのスーツケースから上に伸びる取っ手を脚で掴み、体格差を物ともせずふわりと宙に浮かせた。
「……マジかよ……」
白い鳥は、荷物を預けていた銀行員へ向かってお辞儀の様な仕草をすると、スーツケースを持って飛翔……あっという間に少女の下へ帰還する。
「……お帰り、ありがとね」
《クエッ》
スーツケースを主の足元に下ろし、挙げられた腕に留まる白い鳥……少女は鳥を労い、返事を聞いてから鳥の腹部へ付けていたリングを外すと、鳥は再び玩具に戻り、少女は大切にそれを服のポケットに納めた。
「……あ~、君……良ければ『ゴメンナサイ、今はメディア露出NGです』……えっ?」
【Teleport, now】
ようやく声を掛けられる、と思い警察官が声を掛けたが即座に謝られ、少女は右手のリングを使い、荷物も一緒に跡形もなく消えてしまう……
「……何なんだよアレ……まるで魔法じゃねぇか……」
取り残されてしまった警察官。この一件は謎の少女がまるで奇術師の如く事件を解決に導いた事で「世にも奇妙な強盗事件」として、警察やヒーロー達の中で扱われる事となる……
……そして、図らずともこの一件が「今の超人社会」人に大きな一石を投じる切っ掛けになるとは、誰も思っていなかったのである。
数週間後。東京、某所……
「筆記用具良し、受験票良し、媒体用リング良し、魔力は……うん、問題なし」
肩に掛けるタイプのバックを漁り、中身を再確認している少女……彼女はこれから、ヒーロー養成学園の最高峰と言われる『雄英高校』の入学試験を受けるのである。
「おぉ、もうそんな時間なのか……忘れ物は無いかい?」
「大丈夫です、おじさま」
「そうかい、後は試験で無理はしない事……君にもしもの事があると、瞬平くんや凛子ちゃん、私だって悲しいからね」
「分かってますよ、輪島のおじさま」
少女は自身を心配する初老の男性に振り向いて笑顔を返す。男性にはそれがかつて我が家に居候していた“とある人物”に似てきたなと感慨深くなって思わず涙を見せてしまった。
「……大丈夫?」
「……あぁ、いや、ゴメンね。やっぱり年かな? 涙脆くなってね……あんな気弱だった娘がこんなに立派になって」
「その話はもう止めてってば!」
自身の幼少の頃を話題に挙げられ、途端に恥ずかしさで紅顔する少女……直前の冷静さとは似ても似つかない、実に年相応な反応である。
カランカラン♪
「……よかった、まだ出てなかったわね!」
「セーフよ、セーフ!」
「り、凛さん?! 真由さんまで……」
「おぉ、いらっしゃい。凛子ちゃんに真由ちゃん」
突然、来客を知らせる鈴の音と共に乱入してきた2人……「大門凛子」はキッチリとしたスーツ姿の大人の女性で、胸ポケットには警視庁に特設されている国家安全局第0課、通称「ゼロ課」のシンボルがあしらわれている。
その隣で大きく“セーフ”のジェスチャーをした女性「稲森真由」も同じシンボルが刺繍された違うデザインのスーツを着込んでいた。
2人とも少女とは長い付き合いであり、年の離れた妹の様に可愛がってくれる……が、それだけではなく、元々彼女らは少女の父親に救われた者という共通点がある。
《……はて、時間は大丈夫かな?》
「ふぇッ?! ちょ!? 何でもっと早く言わないのよ?!」
突然、少女に語り掛ける“誰か”の声……勿論、この声は少女以外には聴こえない。しかし、声のお陰で時間が迫っている事に気付いた少女は慌てて生活スペースの端に走り出し靴を履く。
「あれ、何? もう時間無い?」(真由)
「送っていこうか~?」(凛子)
「……多分、“アイツ”の悪戯だな」(輪島)
急にドタバタし始めた少女を見て凛子と真由は首を傾げたが、輪島は何が起きたか何となく検討が付いたのだった。
「……では、
「いってらっしゃい」(輪島)
「道中気を付けなよ?」(真由)
「試験、頑張ってね!」(凛子)
ワタワタしつつも、律儀に3人へ挨拶を済ませて外へ出る優希……その肩や足には、玄関から小さな動物モチーフのオモチャみたいな奴が速度を合わせて飛んだり走ったりして付いてくる。
《ブルルッ!》
「乗せてくれるの? ありがとう……じゃあ、駅の近くまでね!」
【Big, now】
【Connect, now】
《ヒヒィン!!》
青い色の一角馬……ユニコーンがアピールし、意図を読んだ優希は素直に行為に甘える事に。
魔法でユニコーンを巨大化させ、魔法陣から専用の鞍を取り出す……鞍は自ら馬の背に飛んでベルトを回して装着され、優希が背に飛び乗った事を確認すると、ユニコーンは大きく嘶いて駅への道を疾走し始めた。
優希の走り去った建物……少々古びてはいるが、頑丈な造りをした一軒家。店舗兼住宅となっているこの建物の玄関にはアンティークの鈴が付けられ、門扉の右手側には『面影堂』の看板が付けられている。
その店主と知人……先ほど少女を見送った3人は、それぞれ感慨深く想いを語り合っていた。
「……あの娘がこの家に来て、もう5年か……」
「元気になってくれて良かったわ~」
「この超常社会、鬱ぎ込んだままじゃ余計苦しく感じるだけだもんね。……『無能力者』は、って」
「後は、晴人くんが帰ってきてくれたら……文句無いんだけどね……」
優希がこの『面影堂』に来て5年……見る影も無く様変わりした世界。しかし、彼等は変わらず『ある人物』の帰りを待っているのであった。
TIPS:
5年前から面影堂に住む居候で、今年の勇英高校受験に挑戦する15歳の少女。
当時はトラウマや極度の人見知りのせいで、連れて来た「
現在はトラウマさえ再発しなければ誰とでも打ち解けられる位には復帰している。
性格は慎重派だが少々おっちょこちょいで、何かしら“忘れもの”をするという悪癖があり、集中し過ぎると寝食や時間などを忘れてしまう。
晴人を「父親」と慕っており、魔力を持つ身故に“師匠”としても憧れている……が、数年前から晴人が帰って来ない為、内心は物凄く寂しいと感じている父親っ娘。
魔法使いの才能は師匠である晴人も舌を巻くほど緻密で繊細かつ素早く、初見からでも数回の行使でだいたい慣れる。また保有魔力量もそれなりに大きく、消費量の大きい『テレポート』や『エクスプロージョン』でも5~6回程度なら短時間の連続(複数)行使可能。
見た目は黒目・黒髪になった「SAOのアスナ」といった感じで、「コヨミ」に寄せた外見をしており、普段着として“白い”ローブを肩に掛けている。また右手に「コモンリング」を付けており、“記憶済み”や低ランクの魔法ならリングの付け替え無しで行使するが、左手に「リング」は付けておらず、魔法の行使にはベルトに付けた簡易魔法行使媒体「タッチハンドバックル」を使っている。
常用武器は“フルート”と“剣”が一体化した特殊武装『ハーメルケイン』と各種リングの魔法。
修行の一環で戦闘慣れしてるので体捌きも上手く、近距離/遠距離と苦手は無いが、リングの都合で右手では拳打不可能。
なお、彼女の魔力の源泉は“ファントム”ではない事が判明しているのだが、何故かその理由を本人は全く知らず、全てを知る「操真晴人」も頑なに話そうとしなかった……
続きが気になる方は感想など、よろしくお願い致します。
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