婚約破棄された公爵令嬢は田舎の醜男貴族に嫁ぎますが幸せになるようです 作:品☆美
「ちちうえ!」
「ちちうえ~」
メイドに案内された部屋に入るとライオネルとアリエルが駆け寄って来る。
俺に懐いてるライオネルはともかく、いつも素っ気ないアリエルが俺に抱きつくなんて珍しいな。
でも知らない家に来てアンジェが苦しんでる所を見て、付き合いがほぼ無い祖父ちゃんと伯父さんがずっと一緒ならそうなるか。
部屋に置いてあるテーブルの上をよく見ると菓子の包み紙が散乱してた。
確か王都で有名な店で売ってる菓子だったか?
バルトファルト領で一番偉い俺達でもあんまり食べられない高級品だ。
そんな物を遠慮せずに食うのは気が強いアリエルの方だろう。
ライオネルの方がいつも妹に負けて俺やアンジェに泣きつく。
見るからに高価なテーブルと対になってる椅子には公爵とギルバートさんが優雅に座っていた。
とりあえず一番近いソファーに座ると双子も同じように乗っかってくる。
だけど俺達を見る公爵の方が表情が心持ち硬い、俺の居ない間に双子が何か無礼な態度を取ったかな?
「……アンジェの様子はどうだった?」
「落ち着いたみたいです、そろそろ産まれそうなんで後は医者に任せました」
「それは良かったな、父上はアンジェの出産に備え腕が良いと評判の産医をわざわざ呼び寄せくれたんだ」
「お心遣いに感謝します」
「……うむ」
「……何かご不満な点がおありで?」
「アンジェの事だ、バルトファルト領ではいつもあの様なのか?」
「えぇと、つまり」
「先程のように怒鳴り散らしているのかという事さ」
「あぁ、そういう事ですか」
公爵にとっちゃ愛娘のアンジェが俺を罵る姿に随分と驚いたらしい。
それを言うと昔の王族や高位貴族は産まれる子供を取り違えられたり誘拐されないように出産を一般公開してた時代があったらしい。
出産の時に夫や父親は別の場所で待機するようになってから廃れた風習だ。
でも前の出産の時は俺がアンジェの横で付最後までき添った。
初産で双子という特殊な状況だったからそうせざるを得なかったし。
「こいつらが産まれた時は半日ぐらい陣痛に苦しんでいましたから。夫婦喧嘩で言われた事が無いぐらい口汚く罵られました」
「具体的には?」
「ちょっと御二方には言えない内容です。もし教えたら一生アンジェに恨まれるでしょうね」
「そこまでか」
「痣になるぐらい手を握られましたし、危うく噛みつかれそうになりました。前と比べたら今日はかなり落ち着いています」
「想像できんな。私の記憶ではあの子が人前で醜態を曝したのは殿下との婚約破棄の一件しか思い浮かばん」
「父上、それだけアンジェは彼に心を許している証明でしょう」
いや、アンジェに信頼されてるのか俺?
公爵令嬢として王都に住んでた頃のアンジェを一切知らないからよく分かんないな。
普段のアンジェはしっかり良妻賢母をやってて付け入る隙なんて微塵も無いし。
本音を口にするのは俺と二人きりの時ぐらいだけど、結構キツい事を率直に言ってくるから会話すればするほど俺の心が凹む。
俺が別宅に籠って一人暮らしをしてた頃はバルトファルト子爵としてもうちょっと敬ってくれてる感じがしたんだけど。
社交界で公爵家から嫁いで来た嫁に頭が上がらない旦那という俺の評価はどこも間違ってない。
「父上はアンジェの態度と孫達に嫌われたのがだいぶ御辛かったようだ」
「あぁ」
「余計な事を言わずとも良いギルバート、然したる問題ではない」
「おや、泣いていた二人を必死に宥めようと菓子を与えていたのは父上でしょう?」
「私とて無暗に嫌われたい筈なかろうが」
まぁ、普段から一緒に辺境で過ごしてる父さんと離れた王都で暮らしてる公爵じゃ懐き具合が違うのは仕方ない。
あと父さんは農夫と見間違うぐらい所帯じみた中年だけど、公爵は矍鑠とした威圧感のあるお偉いさんだと一目で分かる。
子供がどっちに懐くかは一目瞭然だ、今だって双子は俺のズボンを掴んで離さない。
それでも公爵が孫に菓子をあげてる姿を想像するのは難しかった。
「アンジェと仲直りは済んだようだな」
「分かりませんね、俺が一方的に叱られただけですし」
「おいおい。まさかあれだけの騒ぎを起こしておいて離婚する気か?」
「公爵家に喧嘩を売りましたから。政略結婚なのに実家と揉めた旦那と夫婦を続けるのは難しいとアンジェが考えても仕方ありません」
「それはアンジェが妻では不満という訳かな?」
あ、ギルバートさんが少し怒ってる。
公爵の視線も鋭くて明らかに不機嫌だ。
「まさか、アンジェと肩を並べられる女は王国全土を捜し回っても何人も居ないでしょう。それこそ聖女様か王妃様ぐらいです」
「そうだろう」
「俺には勿体ないぐらいの嫁です。勿体なさ過ぎて俺が旦那で良いのか迷いますよ」
「だから別れても良いと?」
「アンジェと別れたくありません。でもアンジェが幸せになれるなら別れる覚悟はあります」
「あんな騒ぎを起こしたのにどんな心境の変化だ」
「俺にはアンジェを王妃にする事も王子の婚約者にする事も出来ませんから」
「…………何が言いたい」
「アンジェがバルトファルト家に嫁いだ本当の理由を知っただけですよ」
公爵とギルバートさんの表情が少し曇る。
俺がご先祖様について知ったのは数日前だ。
最初から公爵達の目論見を知ってたら、或いは真実に気付いてたらどんな行動をしてたかは分からない。
『もし』とか『あの時に違う選択をしていたら』って考え方は嫌いだ。
でも知ってたら何かが変わっていたのは確実だった。
「アンジェから聞いたのか?」
「いいえ、でもアンジェは謝っていました。俺を騙したみたいですまないって」
「では誰から?その情報を知る者は限られてる。それこそ王家に連なる者か、或いは君がバルトファルトの裔なのが理由かい」
「
「会ったのか!?」
そりゃ驚くよな。
俺みたいな子爵風情に国王が直々に秘密を漏らすなんて。
王家の暗部は流石に教えてくれなかったけど大まかな所は話してくれた。
あれが無かったらどうして公爵家がアンジェを嫁がせたか死ぬまで知らないままだ。
その点に関してはあのクソ王に感謝しよう。
「城下町の酒場で教えてくれました。俺のご先祖が初代国王や初代聖女の仲間で、この王国を興すのに随分と活躍したらしいですね」
「ただの仲間ではない。リーア・バルトファルトが王国の主と為る筈だった。しかし初代聖女を除いた他の者達の画策によってその座を追われ辺境の地で生を終え、その末裔は平民同然のまま生き永らえたのだ」
「そうらしいですね。まぁ、ご先祖様の事で今更言われても困るんですけど」
「王家に対する怨みは無いと?」
「怨むほどご先祖様や王家に思い入れが無いんですよ。言い伝えとか殆どありませんし、
「……私はバルトファルトの名を受け継いだ卿が戦功によって前例の無い出世を遂げた際に運命を感じた。国を顧みない国王とアンジェを婚約破棄した愚かなホルファート王家を弾劾する為に神が与えた絶好の機会だとな」
「俺は貴方の復讐の為に戦場を生き延びた訳じゃありませんよ。でも、アンジェと結婚して親になる切っ掛けをくれた事には感謝します。ありがとうございました」
いろんな思惑があったとしてもアンジェと結婚できた事は俺の人生で一番の幸せだ。
アンジェが公爵に何か命令されてたとしても、今も俺が生きてるのはアンジェが頑張ってくれたのは間違いない事実。
だからアンジェが本当は公爵家に戻りたいって望んでいるならそれを叶えてやるべきだろう。
本当は嫌だけど、アンジェと離婚するなら泣き喚いて駄々を捏ねるぐらい嫌だけど。
「あの愚王に会ってどう感じた?いっそ
「確かにムカつく野郎でしたね。本気でムカついたんで一発ぶん殴ってやりました」
「……待て、待て待て待て!今、何て言った?」
「本気でムカついたんで一発ぶん殴ってやりました、ですが」
「殴ったのか!?あの
「向こうが先に殴りかかって来たんで。あぁ、事前に誓約書を書かせたから罪に問われないと思いますよ」
「そんな問題かッ!?」
「ユリウス殿下も一緒だったので庇ってもらえるかと。いざって時は王妃様に頼んで陞爵と引き換えに赦免してもらうつもりです」
「…………アンジェがどうして私達に諫言したかよく分かる。確かに君を飼い馴らすのは難しそうだ」
「そうですか」
無礼講は向こうが言い出した事だ。
言い返せなくてキレたオッサンが殴りかかって来たから応戦しただけ。
俺は争いも諍いも嫌いだけど反撃しない訳じゃないぞ。
こっちが損をしない範囲で流してるだけだ、逆に俺の大事な物を傷付ける奴には手加減なんかしてやらない。
あのダメ国王を放置していたら王国の将来がヤバそうだったから殴った。
本気でムカついたのが半分、目を覚まさせるつもりが半分。
後は知ったこっちゃない、出来れば次の王様はもっとまともな王子になって欲しい。
「どんな風に殴った」
「酔って殴りかかって来たんで反撃したんです。倒れて鼻血出したから慌てて逃げ出しました」
「そうか、いや、よくやってくれたな!」
公爵は楽しそうに両手を叩きながら笑ってる。
あんな国王に長年仕えてたら鬱憤もそりゃ溜まるだろう。
この人は真面目だから貴族らしい嫌味は言えても俺みたいに直接的な行動はしないし出来ない。
そうして積もり積もった不満が爆発して危うく内乱になりかけた。
やっぱ無理して貴族をやるのはよろしくない、早く隠居して悠々自適な老後を送りたいな。
「一発だけか?」
「安心してください、一発だけです」
「いかんな、そのまま顔を踏みつけるぐらいやれば良かった」
「父上」
「いいから、これぐらい言わせろ。私がやりたかった事を婿殿はしてくれたのだぞ」
ご満悦ですね公爵、どうやら本格的に俺を娘婿に相応しいと認めてくれたようだ。
まぁ、義父の公爵がどれだけ認めてもアンジェ本人が俺をどう思ってるか分からないけど。
政略結婚ってのはつくづく面倒だ、だからって兄さんとドロテアさんみたいに恋愛で突っ走るのもヤバい。
やっぱ貴族の地位って物がつくづく俺と相性が悪いんだ。
なのにもうすぐ子爵から伯爵へ陞爵?
嫌だよバカ、勘弁してくれ。
「ならば今一度問おう、自身の由来と王家の愚劣さを知って尚も叛心を抱かないと?」
「…………申し訳ありません。やっぱり俺には無理です」
「……そうか」
「別に陛下個人や王家への忠誠じゃありません。ただ俺にとってはコイツらの方が自分の命より大事なんです」
俺の足元でじゃれあってるライオネルとアリエルの頭を撫でながら答える。
嫁を貰って子供が産まれて人並みの幸せってやつがようやく実感できた。
家族を護る為なら俺に出来る事は何だってやれるだろう。
だけど貴族になって領主になれば嫌でも責任って物が付いてくる。
自分の贅沢や楽しみの為に平民がどれだけ死んでも良いって腐敗貴族は少し前まで王国に掃いて捨てるほど居た。
そいつらが原因で国力が衰えてファンオース公国との戦争が加わり王国はボロボロ。
こんな状態で王位を奪っても立て直しの時間がさらに延びるだけだ。
何より平民同然に育った俺は貴族として異端だ。
戦場で簡単に殺し殺される一兵卒のガキが幸運で生き残って部隊の指揮官になり貴族になった奴は戦乱の時代を除いて王国の歴史に殆ど存在しない。
普通の貴族なら軍で関わるのは自軍の指揮官や騎士だけだ、兵卒は生きてる道具として扱うのが当たり前。
でも俺にとっちゃ一緒にバルトファルト領を護ってくれる仲間だし、領地がこれから発展する為に無くてはならない領民だ。
ファンオース公国との戦争じゃうちの領兵にも戦没者が出てる。
聖女様が来てくれた合同慰霊祭で改めて遺族の数の多さと悲しみを知った。
何か一つでも違えば俺だって戦死してたし、アンジェ達が悲しみに暮れたはずだ。
それならまだマシな方で、もしもファンオース公国が勝利していたら俺の家族全員が奴隷の身分に落とされてたか最悪殺されていた可能性もある。
他人と喧嘩するのは嫌いだ、戦争はもっと嫌いだ。
だから平和的に解決できるなら出来る限りそうしたい。
でも家族と領地を護る為に自分の手を染める覚悟が必要な時もある。
領主としての損得で考えた結果がレッドグレイブ家の叛乱に反対しただけ、別にホルファート王家が悪政を敷くのを認めた訳じゃない。
「俺の望みは立身出世じゃありません。俺の子供達が同じぐらいの歳まで生きて、俺と同じように親になるまで平和に暮らせる事です」
「その平和を勝ち取る為にも力は必要だ」
「ホルファート王国はファンオース公国を取り込んで国土を拡げました。しかし旧公国民が完全に王国へ帰属するには数十年が必要です。俺達の子供世代、或いは孫世代になってやっと王国の民として使い物になる。公国ができた頃から積み重なった恨み辛みを軽く見ちゃいけませんよ」
「むぅ……」
ここら辺は実際に戦場で公国軍と命の奪い合いをした奴にしか分からない機微だ。
外道騎士と忌み嫌われてる俺に家族を殺されて復讐を考えてる元公国民は確実に居る。
そんな怒りや悲しみを薄めるのは時間の流れしかない、力で抑えつけても反発されるだけだ。
疲弊してるホルファート王国が持ち直すまで内乱や新しい争いは勘弁してくれ。
「どうやらヴォルデノワ神聖魔法帝国はロストアイテムを大量に保有している可能性が高いみたいです。迂闊に国を乱せば付け込まれるのはこっちの方になります」
「それは王家からの情報か?」
「王家以外の俺が独自に持ってる伝手からの情報です。危険な奴ですが信憑性はかなり高いかと。それに加えてアンジェ達を誘拐した淑女の森の残党はラーシェル神聖王国の関与が疑われます。現時点で二国を相手にするのは得策じゃありません」
「だから王家を見逃せと?」
「王妃様の実家であるレパルト連合王国との同盟があるから向こうも迂闊に動けません。アルゼル共和国が復興して魔石の産出量が戻るのは数十年後か、或いは数百年後。その時の戦争に勝てば良いんです。下準備が整ってなきゃ勝てる戦争も勝てません」
だけど他の国がホルファート王国の隙を窺ってるのは確かだ。
公爵やギルバートさんは俺と違って子供の頃から大貴族としての教育を受けて広い視野や知識を持っている。
だからこそ判断に迷う。
国を左右する権力を持ってる奴、広い視野を持ってる奴や大量の知識を保有してる奴。
そんな奴らは思考が深くなり過ぎて採るべき選択肢の中からどれが最善手か分からずに思考が停滞しちまう。
バカが考えた単純な作戦が名参謀の戦略を覆す事は戦場ではよくある、何しろ俺がその生き証人だ。
「君の考えは理解した。我々も当面の間は王国の復興に尽力する事を誓おう」
「ありがとうございます」
「しかし実に惜しいな。卿が高位貴族の家柄に生まれたのならユリウス殿下もあのように馬鹿げた婚約破棄を思い止まった筈だ。リーア・バルトファルトが王座に就いていたなら卿は王として君臨していたやもしれん。少なくとも
「いえ、陛下も陛下なりに王国を護ろうとしたらしいですよ」
どうして俺が公爵とあのオッサンの仲裁をしなきゃならんのか。
でも王国が平和になる為には王家と公爵家の仲直りがどうしても必要だ。
嫌だけど、すごく嫌だけど、すごくすごく嫌だけど。
やっぱ公爵が言ってたように顔を思いっきり踏んでやれば良かった。
「何度も前線出て指揮をしようとしたのに王妃様や側近に止められたみたいです。本当かどうか確かめられませんが少なくても自分だけ逃げ出す卑怯者じゃありません」
「それを美徳とするのは前線指揮官までが精々だ。国家の総司令たる王の採るべき行動ではない」
ですよね~、俺もそう思ってる。
バカみたいに派手な格好で『仮面の騎士』を名乗って戦場を荒し回ったのは伏せておく。
公爵が聞いたらまた叛乱を起こしかねないし。
そうやって戦場を駆け抜ける王様を描いた物語や劇があるけど、あんなのは空想だから良いんだ。
「バルトファルト卿、其方にも忠告しておく。立場ある者は最後まで生き残らねばならん。例え部下を犠牲にし、泥水を啜ってでも死ぬ事は罷り成らん」
「それは義父としての忠告でしょうか?」
「違う。一族の長として、一軍の長としての諫言だ」
「……お聞きします」
「最初に長が死ねば戦に負けた後に誰が責任を取るのかね?一族の処断、領民の安全、領地の未来。それらを担うのが領主だ。自らの身命を交渉の道具として使うなら領主は最後まで死んではならんのだ」
「自分が討たれて一族と領地を護れるなら安い取引ですね」
「そうだ、死んではならん。最期まで生き足掻いくのも領主の務めだ。それらは怯懦ではなく貴族の責務と心得よ」
「……ありがとうございます、深く心に刻みました」
いや、俺だって死ぬのは嫌ですよ。
嫌だけど凡人な俺は努力しても越えられない壁があるから、情報を集めて駆けずり回って勝つ為の最善策を選んでるだけです。
それが傍から見ると死にたがりに見えてるだけで、俺としては勝算があるんです。
もう少しこう、俺を信用してください。
「此度の論功行賞で伯爵位となれば否が応でも宮廷との関りが増える。そうなれば腹芸の一つも覚えなけばつらいままだぞ」
「……陞爵は取り消しになりませんか?」
「諦めたまえ、君を陞爵させなければ他の者はただでさえ少ない恩賞を削られる。王国としても、貴族としても君の陞爵は決定事項だ」
あぁ、出世したくねえ。
頼むから陞爵させるなよ。
どれだけ権力が増しても責任や義務と釣り合いが取れてないんだよ。
公爵家は俺の出世に乗り気だし、王家も俺を上手く使いたい魂胆が見え見えだ。
いっそ出奔した方がマシかもしれねぇ。
もしかしてご先祖様も俺と同じ気持ちでわざと追放されたんじゃないのか?
「立場が人を作るとも言う。伯爵位ともなれば迂闊な行動はとれん、卿を野放しに出来ないのは我々と王家の共通認識だ」
「アンジェは君がいつも過激な方法をすると嘆いていたぞ。あの子は不満を溜め込むからちゃんと仲直りするんだな」
「俺の前だと言いたい放題ですけど」
「ここ数日は特に不機嫌だった。卿が訪ねて来ない事に苛立って不満を隠そうともしない程だ」
「コーデリアによると君の手紙を日に何回も読み返し無聊を慰めていたらしい。君が思っている以上にアンジェは君を愛している。余計な心配をさせるのは控えたまえ」
何か義父と義兄からずっと責められてる。
あの騒動で俺の事を認めてくれたみたいだけど、話に遠慮が無くなってる。
これからずっと王都を訪ねる度にこんな目に会うの俺?
もうヤだ、
「それとな……」
「まだ何か?」
「若いのは分かるが、もう少し控えたまえ」
「正妻の子が八人は流石に多過ぎる。アンジェの負担を考えよ」
「………………はい」
言われちゃったよ。
理路整然と俺を追い詰めていくのは流石アンジェの父親と兄貴だ。
コレ、俺だけが悪いの?
アンジェの方にだって問題があるんじゃないか?
微妙な空気のまま部屋が静かになった。
双子は菓子をたらふく食ったせいかさっきから眠そうに瞼を擦ってる。
アンジェの出産が終わるまでどれくらいかかるか分からない。
こんな時、男はひたすら待つしかない。
――――――っあ…
何かが聞こえたような気がする。
しばらくして扉の外で慌ただしい物音が始まった。
覚悟を決めて向き直ると部屋の扉がゆっくりと開く。
アンジェと親しいメイドが嬉しそうに入ってきた。
「……御誕生おめでとうございます」
返事をする間もなく俺はライオネルとアリエルを脇に抱えて走り出す。
頭の中が幸せ過ぎて狂いそうだ。
今回で公爵家との本格的な和解が成立と相成りました。
コミック版などではわりと面白おかしいレッドグレイブ家ですが今回は割愛。
原作小説とも乙女ゲーとも違う今作はミリアリス達が留学しない代わりに戦争は起きなさそう。
ルクシオンは頼もしい相棒ですが、その存在が騒動の原因でもあります。
マスターになれなかったリオンは王に為れない代わりに心労が軽め(当社比)の人生になりそうです。
追記:依頼主様のリクエストによりrobota様にイラストを描いていただきました。
ありがとうございます。
robota様 https://www.pixiv.net/artworks/122483005(成人向け注意
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