婚約破棄された公爵令嬢は田舎の醜男貴族に嫁ぎますが幸せになるようです 作:品☆美
寝息を立て始めたアンジェが起きない事を確認してからベッドを抜け出す。
体が子供になっても混乱のあまり泣き出さないのはアンジェが気丈だからだろう。
それでも不安を抑えきれず俺に縋ってしまうアンジェを拒むのはどうしても無理だ。
取り敢えず今は落ち着いているがこれからどうなるか分からない。
最悪の場合、アンジェはこのまま元に戻る事も出来ず人目を避けて生きていく事になる。
そうならない為にも素早い行動が必要だ。
「はぁ」
思わず溜め息を漏らしてしまう。
既にアンジェを救い出してから半日以上が経過している。
護衛という名目で同行させた部下達に幾つかの命令を下しているが圧倒的に人手が足りてないのが本音だった。
不安を抱えながら部屋を出ると扉の脇で待機している老いた兵長に声を掛けられる。
この兵長は父さんがまだ男爵位を継ぐ前からバルトファルト家に仕え続けてる老騎士だ。
俺とは親子ほどの年齢差があり幼い頃は坊ちゃんと呼ばれてよく頭を撫でられた記憶がある。
男爵家時代から領地を襲う空賊の討伐やモンスターの退治、俺が叙爵されてからは旧ファンオース公国との戦争でも活躍してくれた。
豊富な戦闘経験と作戦遂行力の為に現在はバルトファルト領軍の参謀的な立ち位置に就任してる。
その親子同然の長い付き合いをしてる相手に対して球っころについては何も伝えてないのは少し心苦しい。
今回の件で否応無しに子供達へ俺がロストアイテムと協力関係にある事がバレた。
これから子供達の人生に変な影響が出ないのを祈るしかない。
「御当主、奥方様のご様子は?」
「今は落ち着いて眠ってる、何か異常が起きないか目を配ってくれ」
「はッ」
そう答えると扉の近くに控えていた若い護衛達に声を掛け始める。
今回の任務に同行させた部下達は合計で六人、バルトファルト領軍の中でも特に秀でた選りすぐり連中だった。
俺達が泊っている二部屋の隣の部屋は護衛任務に就いてる部下達の待機所として借りている。
子供達六人と球っころが待機している部屋へすぐには戻れなかった、俺達の状況だけじゃなくエルフの里全体の現状を把握する為にはとにかく情報が必要だ。
普段は知恵も力も備えて頼りになるアンジェだけど今回に限っては当てに出来ない。
何しろ今のアンジェは十歳ぐらいの肉体な上に精神もその位まで幼くなった印象がある。
とてもじゃないが戦闘はもちろん何か妙案を思いつく事さえ覚束ないだろう。
こうなってくると最も頼りになるのは今まで培った自分の経験と頼れる部下だ。
子供達が居る部屋に戻りたい気持ちをどうにか我慢して、護衛達の待機所として借りてる部屋に向かう。
貴族や豪商向けに建てられた高級宿の一室の中はどう見ても似合わない荷物が乱雑に置かれていた。
ベッドの上には大きめの鞄や細長い筒が置かれ、一家が居住できそうな広さの室内は小さめの木箱が幾つも積まれ圧迫感がある。
取りあえず空いてたソファーの上に腰掛けると兵長も真っ正面の席に座る。
部下の手前なら咎められる振る舞いだけど人目が無い今ならこの程度は許されるだろ。
半ば身内同然の兵長はバルトファルト家の家族を除けば心を許せる相手の一人だ、成人してる嫁が幼女になるとかいう非常事態に腹を割って相談できる相手は貴重だ。
「しかしまた、大変な事になりましたなぁ」
「あまり手伝えなくて悪かった、アンジェの容態が心配だった」
「お気になさらず、まさか御当主に肉体労働を課す訳にもいきますまい」
「飛行船内に保管してあった銃火器を可能な限り持ち込めたのは皆のお陰だ、感謝する」
「その御言葉こそ仕える者達の誉れとなりましょう」
「もちろん恩賞も出すぞ、何せ非常事態だからな。ここで金を惜しんだらアンジェに怒られちまう」
「……やはり実行なさるつもりですか?」
「言いたい事があるなら言ってくれ、今の俺は頭が回らないからこうやって話し合いの場を作ったんだし」
「では言わせて頂きます。奥方様ならびに御子息と御息女達を連れ里を離れるべきです」
「率直に言い過ぎだぞ」
「こうも強く言わねば御当主は無理を為さるかと」
兵長が有無を言わさない語気で忠告してくる、その意見の正しさは俺自身も認めていた。
エルフの里を敵地と考えればこの場に留まり続ける事に得は一つも無い。
すぐに敵地から脱出し態勢を整えた後で援軍を待つなり別の攻略手段を考えるのが戦術的にも戦略的に最も正しいやり方だ。
俺自身だってそれが最善だと頭の中じゃ理解してる、理解してるけどそれを選べない理由があった。
まずアンジェを元に戻す手段が分からない、分かったとしても実現可能かという疑問のせいでエルフの里から離れられない。
もし球っころがアンジェを元通りに出来るなら真っ先にエルフの里を離れる選択を採っていたはず。
だけどあいつには不可能だとさっきの会話で確定したから他の選択は選べなくなった。
アンジェが眠っている間にもその辺の可能性は何となく示唆されてたけど、小さくされた本人の話だから疑いようも無い。
デカい水槽に入れられたアンジェを救出した時に落ち着いてあの遺跡から情報を聞き出せてれば良かったが、何しろ俺自身が動揺してた上に時間も全く足りなかった。
おかけでまた遺跡に行く二度手間が発生した訳だ、面倒くさい事この上ないな。
「起きたアンジェから話を聞いた、元に戻す方法が無いかもう一度だけ遺跡を探索する必要がある」
「援軍を待つ訳にはいきませんので」
「王都と神殿へ緊急の使いを出してどれぐらい経った?」
「御当主に命じられ最も若い護衛を小型艇に乗せてから約半日ですな」
「無茶するな、交代で小型艇を飛ばしても王都まで二日はかかるぞ」
「過労で死にたくなければ早く王都へ到着しろと物資はそれなりに持たせています」
「若い奴を苦しめると後が怖いぞ」
「それで音を上げて恨む奴なら其処で成長が止まります、御当主や坊ちゃま達にお仕えするには不適格かと」
兵長は見込みがある若手を鍛える為に無茶をさせたのと、同時に経験の少なさから戦闘で負傷する可能性を考慮して任務をあたえたらしい。
伝令ってのは危険が大きい反面、成功すれば周囲が羨む賞賛を得られる。
まして王都へ謀反の可能性を知らせる任務だ、その重要度は計り知れない。
特別な恩賞を与えれば他の若手もやる気を見せ始めるだろう、こういった後進育成に関しては俺自身がまだ領主として若いせいでなかなか気が回らない部分だった。
「しかし救援を呼ぶなら王都よりもバルトファルト領の方が早く到着する上に領兵の招集がすぐにでも可能です。御当主の危機ともなれば領軍悉く馳せ参じ敵を討ち滅ぼすでしょう」
「今の王国でそれが出来るならやってる。今回の件に関しては王家の方から俺に打診してきた仕事だ。俺の一存だけで勝手にうちの軍を動かして良い権限までは与えられてない」
「何とも口惜しい事で」
「旧ファンオース公国との戦争からもう十年以上が経ってる、貴族同士の争いは禁止されるし勝手な領軍の軍備拡張だって制限が設けられるご時世さ」
俺が子供の頃までは貴族が気に食わない相手の領地に対し領軍を用いた嫌がらせ、見世物紛いな決闘騒ぎもホルファート王国じゃ珍しくなかった。
それこそ敵対する貴族同士が取り決めた政略結婚が気に食わないからと、派閥の貴族を巻き込み大軍を率いて攻め込んだ事例さえ存在している。
下手すりゃ内乱に発展しかねない貴族同士の派閥争いが起きても、王家に近し宮廷敗貴族や腐敗官僚に多額の賄賂を積めば黙認されちまう。
法律も倫理も常識も通用しない、家柄と力と金さえあればどんな横暴も肯定される。
俺が幼い頃のホルファート王国は全体的にそんな風潮だった、あの当時を俺自身思い返したくもなかった。
そんなホルファート王国が変わったのは間違いなく旧ファンオース公国との戦争と聖女になったオリヴィア様の影響と考えて間違いない。
腐敗貴族や女尊男卑政策に護られていた横暴な貴族女は悉く処罰された。
法律や軍は入念な制度改革を検討され、一方的な政略結婚で泣かされる貴族の当主は激減し一刻も早く戦後復興を求められた結果。
ホルファート王国は見事に立ち直る事が出来た、領地や経済の規模を考えれば過去最高の繁栄を迎えてるかもしれない。
問題は国がまともになり過ぎた結果として、何かを為すのに必要な審査が増えて初動が遅くなるって事だ。
伝令に渡した機密文書には今回の件に関する情報を記載した上で一刻も早い救援要請を促す内容ではある。
だがジルクが所属してる情報機関はあくまで諜報活動が主な仕事だ、戦力もそれなりに保有しているが上層部の許可も無いまま勝手に動かす訳にはいかない。
オリヴィア様の場合は神殿の権威として兵の派遣を促せば神官達も無視できないだろう。
だが国民の殆どは聖女が国を護る存在だと思い崇めているのが現状だ、自分から兵を率いたら聖女に対して悪印象を持つ奴は必ず出てくる。
しかもオリヴィア様はエルフの融和政策を主導した一人だ、もしエルフの叛乱を認めれば聖女が間違いを犯したと受け取られ聖女と神殿の権威に傷が付く。
「どれだけ急いでも伝令が王都に到着するのに二日、審議で一日、兵の準備と派遣は更に二日かかる。場合によってはそれ以上だ」
「救援の到着が待ち遠しいですな、まず御身とご家族が生き延びる事に専念した方がよろしいかと存じます」
「逆に救援が遅い方がやりやすいかもしれないな」
「……は?」
「何でもない、政治的な話だから構わず聞き流してくれ」
「了解しました」
俺の言葉はどう解釈したのかは分からないけど兵長はそれ以上問い詰めようとはしなかった。
足りない脳みそを必死に使って考えてるのは遺跡を説得してアンジェを元通りにする為にどれだけの手間と時間がかかるか、球っころと遺跡が接触したらどんな結論が出るかの二つだ。
まず遺跡を説得してアンジェを戻す、これ自体は比較的上手くいきそうに思える。
俺との会話やアンジェから得た情報を纏めるとすぐに世界を滅ぼそうなんて考えは持っていないように感じた。
アンジェを元通りにしてくれと懇切丁寧に頼み込めば聞き入れてくれるかもしれない、あくまで俺の主観になるけど。
問題は遺跡と手を組んでるエルフ達の方だ。
人間の排斥を企む前村長の一味がアンジェの体を変えた方法を使って怪物を生み出してるのは確実だろう。
子供達の証言からアンジェは二匹を仕留めて一匹を取り逃がしたらしいが、ぶっちゃけ身体能力・格闘術・銃器の取り扱いを除けば俺よりアンジェの方が強い。
結婚してからアンジェが使えるようになった火の魔法は本気になれば人間を燃やし尽くすのも十分可能な火力を備えてる。
それでも殺傷力が高い火の魔法を上手く当てられなきゃ致命傷を負わせられない怪物があのダンジョンと遺跡に何匹いるかさえ分からない。
エルフも遺跡に近付く相手を傍観だけしてる訳が無い、アンジェが倒した怪物の死骸が無くなっていたのがその証明だ。
これだけ敵対者の相手にしてアンジェを戻すのにどれだけ時間がかかるか分からない。
そんな状況を打破できるのが球っころという訳なんだが、こっちはこっちで厄介な相手だ。
あいつとの出会いから十数年、協力してホルファート王国の裏事情を解決したり国内だけじゃなくアルゼル共和国や他の場所にある旧人類の痕跡の調査を行ってきた。
信頼関係はそれなりに築けているんだけど、球っころは今の世界を滅ぼそうとする考えを捨てきれない。
遺跡の方も直接会話してアンジェからの情報も加えたら同じ事が言えた、思った以上に旧人類側の恨みつらみは根深くて隙在れば物騒な物言いをしてきやがる。
もしも球っころと遺跡が手を組んだら聖女や英雄達でも手が負えない、本当に世界最後の日が始まっちまう。
こんな状況でホルファート王国や神殿に関与して欲しくなかった、下手すりゃ火に油を注ぐだけで状況が悪化する一方だ。
アンジェは小っちゃくなった影響で力も知恵も衰えて今回は頼れないし、エルフの里をどうにか出来るだけの兵力は同行させていない。
何をするにも足りない物が多過ぎる、加えて時間も限られていた。
「里の様子はどうなってる?」
「ダンジョンで騒ぎが起きてから半日は動揺が見えていましたが、現在は街も空港も落ち着いたものです」
「エルフ達の動向に変化は起きてないか?」
「里長がいる村は静かな物です、前村長が築いた砦にも目立った動きは見られません」
「こっちの予想以上に静かなもんだ、この機会に現村長と前村長が争ってくれたならこっちも仕事がやりやすくなるんだけど」
「混乱に乗じて流言を広めようとしましたが不首尾に終わりました。人員が足りず情報の攪乱も思うようにいかなかったのが原因かと」
「あとエルフが多いのも原因だな、観光客や冒険者に空港の作業員や街の官吏を加えてもこの浮島に居るエルフの総数より少ない。出所が怪しい情報に踊らされない上にエルフは人間へ不信感が強いし」
「いっそ火付けでもしますか?」
「止めろ、流石に嫁を救おうとして他の領地を焼き払う領主とか外聞が悪過ぎる」
貴族としての外聞を気にして兵長を止めたが本当の理由は別にあった。
火付けや爆破みたいな拠点への破壊活動で相手の動揺をさせた後に偽情報や流言を広め相手の行動を制限する、或いは仲間同士の諍いを起こした隙を狙って攻撃する。
飛行船同士の砲戦や鎧を使った戦闘じゃ使われない情報戦や拠点占領に使われるやり方だ。
エルフの里を実際に訪れ体感したが人間との融和を求めている里長の派閥と現村長の派閥、そして人間排斥の前村長の過激派は共通して何処かよそよそしい部分を持っている。
極論になるがエルフに対して友好的な人間と初対面のエルフなら後者を選びそうな雰囲気だ。
こういった同族意識や集団への帰属意識って物は厳しい環境を生き抜くには強い絆になる。
今の状況で下手に攻撃すれば人間との融和を望んでいるエルフまで敵に回しかねない。
逆を言えば効果があるならそういった汚い手を使う事も俺は辞さない、だから『外道騎士』なんて悪評が付いて回るんだが。
「里でこれ以上の騒ぎを起こすのは無理だな」
「ダンジョンでモンスターが襲われてから昨晩までならどうにか出来たかもしれません。今となっては観光客や冒険者を鎮める隙に乗じて武器を持ち込めたのが幸いでしたな」
「思った以上に騒動が沈静化するのが早い。金をばら撒いたのか、騒ぎ立てる奴の口を封じたのかは分からんが上手い具合に揉み消してる。王都にまで報告が届くのが遅い訳だ」
「不躾ながら撤退を進言いたします。少なくともこの場所に留まり続けるのは悪手と存じます」
「アンジェを救出する時に目立っちまったからなぁ。俺達がどの宿に泊まってるかなんて調べればすぐ分かるだろうな」
「流石に昼間は周囲の目があるので仕掛けてくる可能性は低いでしょうな」
「事を起こすなら夜になってからか」
「はい、ですから日が暮れるまでにご家族全員を飛行船へ移した方がよろしいかと」
「それは分かってる、分かってるんだよ」
俺だってそれが一番正しい選択なのは理解してる。
問題なのはアンジェの容態が急変する可能性が捨てきれないって所だ。
内心じゃ全知全能とさえ思ってた球っころでさえアンジェの体を元に戻せない。
或いは旧人類の設備か情報さえ用意すれば球っころにも出来るかもしれないが、そんなロストアイテム同然な代物をそう簡単に用意できるなら苦労しねぇよ。
王都からの救援による、エルフ達の鎮圧を待つのが一番手堅いやり方だけど、ここでも問題はある。
鎮圧軍を率いるホルファート王家や神殿騎士の派兵を認める神殿がどう動くか分からなかった。
もしも怪物の量産が可能と分かれば上層部の連中が遺跡の確保を優先する可能性が高い、場合によっちゃ怪物を軍に組み込んで他国への侵攻を始める可能性すら存在してる。
もちろん聖女様や王太后様がそんな人達じゃないのは分かってるつもりだ、だけど組織ってもんは一番偉い奴だけが居れば上手く事が進む訳じゃない。
書類仕事が得意な奴が居れば現場で働くのが上手い奴もいる、慎重論を唱える奴が居れば反対に過激な行動を採る奴も同じぐらい居る。
何処か俺は他人を信じきれない、意思を持ったロストアイテムと手を組んでるなんて秘密を持ってるからこそ人との触れ合いで疑いの目を持たざるを得ない。
人間は何かに酔うとバカげた行動を選ぶ、有能なくせに女と酒が大好きで危うく国を滅ぼしかけた阿呆な王を良く知ってた。
だけど酒色なんて可愛いもんだ、人間を一番惑わせるのは手に余るぐらいデカ過ぎる力だと俺は考えてる。
俺が忘れ去られた浮島の移籍で球っころの本体を発見した時に感じたのはこの世界の滅びを目の当たりにしたような怖ろしさだった。
世界が滅びる悪夢を見なけりゃあの危険物を嬉々として使い王に成り上がってたかもしれない。
そして同じような事は王国の上層部や神殿のお偉方にも言える。
簡単に国を滅ぼせる、王位を狙える力を持ったら自制心って奴は余りに頼りない鎖だ。
或いは俺を従わせる人質としてアンジェを元に戻す方法を交換条件にする可能性もある。
アンジェが貴重な生きた参考資料扱いでもされたら俺は怒りを抑える自信が無い。
俺にとって最良の結末は『王都からの救援が来る前にアンジェを元通りにして遺跡を破壊する』だ。
これを『家族を巻き込まない』って条件まで付け加えると難易度は途轍もなく上がっちまう。
「いざとなりゃ
「
兵長が訝しげな表情を浮かべて俺を見つめる。
分かってるよ、
出来れば使わないに越した事はないけど状況を打破する為に無茶をやらなきゃいけない時がある。
今の状況は厄介だけど最悪じゃない、あくまで『現状では』で『これからの未来』がそうならないと断言できないのがつらい。
俺は家族と平和を愛する平々凡々な男なのにどうしてこうも厄介事に巻き込まれるんだ?
あれか、ご先祖様が国祖や初代聖女と関わりあるせいでホルファート王国の問題が俺に降りかかってくんのか。
せめて俺の代で終わらせないとな、子々孫々まで苦労をかけるのはいくら何でも嫌過ぎる。
「ダメかね?」
「御当主の命令ならば下々は従うしか出来ません、ですが…」
「ですが?」
「先程発案した火付けよりも数十倍過激です」
「それを言うなって」
「昔からリオン
「昔の話だ」
「今もですよ、奥方とお子様達の為に自重してください」
兵長が親みたいな事を言いやがる、実際に物心がついた頃以来の付き合いで親戚のおじさんみたいなもんだが。
仕方ないだろ、厄介な問題を次々持ち込まれるんだし。
ホルファート王国の裏事情とか、旧人類のロストアイテム関連とか俺の手に余る。
上手くやるつもりがアンジェの力を借りるようになって、今回の騒動で球っころの存在が子供達にもバレちまった。
独りでやろうとすればするほど手が足りなくなって無理が出て、そして一番面倒な時に膨れ上がった問題が皆を巻き込んで大事になる。
大切な人を危険から遠ざけ護ろうとしても結末は一緒に地獄へ堕ちる事になっちまう。
つくづく俺は不器用で才能が足りない男だ。
「しかし、ご家族をこのままにしておいては徒に危険な目に遭わせるだけでしょう。せめて場所を移されるべきです」
「場所、場所ねぇ……」
エルフの里にそんな都合が良い隠れ家なんてあるはずが…。
そこまで考えていたらある場所が思い浮かぶ。
上手くいく可能性はそう高くない、でもこの宿へ滞在を続けるよりはマシなはずだ。
どうせダメならやるだけやってみた方が納得できる。いつだって俺は足りない頭で考えて、やれる事をやるしか活路を見出せない不器用な男なんだ。
少なくともこの部屋で燻ぶってるよりマシだろう。
「今すぐ出掛けてくるぞ、取り敢えず伝手を辿ってみよう」
「お待ちを、御当主自らお出向きに?」
「人手が足りないからな、あと先方を警戒させたくない。人員は砦の偵察、飛行船の警備、アンジェと子供の護衛だ」
「お戻りはいつ頃の予定で?」
「すぐに、と言いたいが話がどう転ぶか分からない。俺の不在中に何か起きたら家族全員を飛行船へ運べ、最悪の場合は俺を置き去りにして浮島から逃げろ」
「了解しました」
アンジェが小っちゃくなってから、頭を覆っていた靄がやっと晴れた気分になる。やっぱり俺に策略なんて性に合わない。
行動しまくった先に結果が残る、後はそれに向かって邁進するだけだ。
兵長へ命令を下した次の瞬間には宿の廊下を駆けていた。
悩んでたリオンが行動開始、妻子の為に頑張ります。
アンジェが縮んだ為に頭脳担当を独りで熟す必要があり、ルクシオンもそこまで頼れない。
兵長は初出ですがそれっぽいキャラは第四部に居ます。(当時は設定が固まってなかった
次章はバイオレンス多め、外道騎士の面目躍如。
追記:依頼主様のリクエストによりAnn様にイラストを描いていただきました。
また9430様に以前描いて頂いた挿絵イラストがpixivに投稿されたました、本当にありがとうございます。
Ann様 https://www.pixiv.net/artworks/130311130(肌色多め注意
9430様 https://www.pixiv.net/artworks/130356184、https://www.pixiv.net/artworks/130206676、https://www.pixiv.net/artworks/130206458
ご意見・ご感想を戴ければ今後の励みにしたいと思います。