婚約破棄された公爵令嬢は田舎の醜男貴族に嫁ぎますが幸せになるようです   作:品☆美

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第80章 断首

 背中に衝撃を感じ爆音が塞いだはずの鼓膜を揺らす。

 鉄製の大箱を盾にして体を屈めても狭い通路の中じゃ衝撃を完全に防ぐのは無理だ。

 体の上に誰かが乗って圧し潰されるような息苦しさに呼吸が乱れる。

 頭も強く殴られた時みたいに脳みそが揺れて気持ち悪い、今にも吐きそう。

 体が揺れるのが爆発の衝撃か、それとも五感が麻痺してるせいなのか判別が難しい。

 それでも気合を入れて立ち上がる、このまま終わるとは思えなかった。

 

 大型を通常爆弾を使った罠に嵌める為に幾つもの布石を打った。

 手持ちの武器じゃ大型を倒すのは難しい、頼みの綱だった魔弾や魔爆弾は魔法障壁で無効化される。

 通常弾は大型拳銃なら多少は効果はあるが小型拳銃とライフルじゃ今ひとつ、爆弾は効果があるが数に限りがあるし仕留めきれない。

 だから相手の隙を狙って確実に当てる必要がある。

 それもただの一撃じゃダメだ、意外な方向からの強烈な一発だ。

 大して効きもしない狙撃や正面から攻撃を繰り返したのは油断を誘う為。

 攻撃や防御が何一つ通用しなくて絶望する敵を蹂躙するのは誰もが持っている残虐性だ。

 俺の焦りを見たこいつは獲物を狩る愉しさを覚える、対人戦闘の経験が低かったのも有利に働いた。

 何度も発煙弾を使って逃走したのは俺の居場所を誤魔化す意味もあるけど、一番の理由は攻撃手段の刷り込み。

 煙幕を使った後は逃走か姿を隠した攻撃、通常弾は大して効かず魔弾や魔爆弾は魔法障壁に阻まれる。

 なら障壁を張り続け俺を追うのが一番効率が良い方法だとこいつは考えるだろう。

 そこに付け込んで罠を仕掛けた。

 狭い通路、煙幕で足元が見えない状況、魔法障壁で攻撃が無効されるという油断。

 繰り返してきた状況の中だからこそ俺が忍ばせた初体験の罠をまともに受けてしまう。

 

 こいつの学習能力は確かに凄い、半端な攻撃を続ければすぐに対応して時間が経つほど俺の勝算は減る。

 驕るのも納得な学習能力、だけど戦場じゃそれは命取りになる。

 賢いから自分の思考が誘導されている事に気付かない、驕っているから隙が出来る。

 歴史書に名を刻んだ名将が信じられない敗北で殺されるのはその典型例だ、強い奴ほど自分の強さを過信する。

 大した事ない蜂の毒だって何度も刺されたら全身が腫れて死ぬ、鼠に噛まれたのが原因で熱病に犯されくたばる。

 相手が弱いからといって見縊るのは命取りだ。

 俺は弱い、普通より多少は優れてるけど俺より強くて賢い人間は山ほど見てきた。

 そして俺より優れた人間が死ぬのも同じぐらい見ている。

 今も生き延びているのは俺が臆病で相手の嫌がる事をやりまくって倒したからだ。

 嬉しくもない外道騎士の称号はそんな俺に相応しい称号だろう。

 

 発煙弾による煙、通常爆弾で発生した粉塵、脳みそを揺らす衝撃波。

 罠が原因で起きた諸々の影響で視界は最悪だ。

 半ば役に立たない視覚を頼りに鉄箱の近くを手探りで漁る。

 指先に当たったのは布と金属の感触、どうやら当たりだ。

 動きの妨げになるから俺の装備は大型との戦闘に必要な物だけを持ち運んでいた。

 邪魔になりそうな装備や持ち運べない重量物は罠の近くに隠してある。

 仕留めきれなかった場合の用心だけど戦闘なんて過剰な用意をしておくぐらいが丁度いいもんだ。

「用心し過ぎて余計な金と時間を使いました」なら挽回可能だけど「準備を怠ったせいで負けました」なんて笑い話にもならない。

 指先に当たった金属の塊を撫でて確かめた後に腰に差した。

 剣なんて大型に通用するとは思ってない、思ってないけど銃弾も爆弾もかなり消耗している。

 もし近接戦闘になった場合に素手で大型に対抗できる手段は必要だ。

 

 剣と一緒に置いてあった布袋も腰に下げたらライフルを構えて振り返る。

 罠の発動からどれだけ時間が経ったのか見当もつかない。

 数秒か、数十秒か、それとも数百秒か。

 

ギィ…… ギギッ……

 

 瓦礫が床に落ちる反響音に紛れて金属同士が擦れる嫌な音が通路に響く。

 大型にくたばって欲しいと恐れ慄く心がある一方で仕留めきれていないという確信があった。

 そもそも罠に使用した通常爆弾の数は相当減らてあるし、一極集中じゃなくて左右の壁にまんべんなく配置さた。

 全ての爆弾を使用したら巻き込まれる俺もただじゃすまないからな。

 左右の壁に仕掛けた爆発で大型が圧し潰されるようにしたけど、どれだけ通用するかは判断材料がとても足りない。

 

 煙や粉塵や収まってくると点滅して光る何かが動いてる。

 怖い、そう思っているのに体は反射的にライフルを構えた。

 さらに煙が薄くなると目の前から感じる圧迫感の正体が曝される。

 

健在、大型健在。

 

 絶望と同時に何処か納得していた。

 今まで戦って仕留めきれないこいつが単純な罠に引っ掛かってくたばる訳がない。

 そんな安心感を感じるのは強敵だからこそだ。

 ある種の神々しさや敬意すら感じてしまう。

 でも動きはかなり鈍くなってる。

 さっきまでみたいに宙に浮いてる訳じゃなくて必死に倒れないよう両手を床に押し付けて懸命に堪えてた。

 異音の正体は手をついた床が擦れる音か。

 体のあちこちに焦げ跡やついて爆発の損傷か外観が歪んでいる部分もある。

 お喋りな大型が悪態を吐かないのはそれだけ状況に戸惑っているからだ。

 動きの鈍さが恒常的な物か、それとも一時的な物かは分からないがやっと俺に訪れた好機なのは間違いない。

 

今しかない。

 

 そう思った時には駆け出していた。

 狭い通路を塞ぐような大型の巨体に体が触れそうなぐらい接近して真横を通り過ぎる。

 

『……ッ? ……!』

 

 呻きか罵声か分からないが呼吸音みたいな声を大型が発してるけど気にしない、気にする余裕も無い。

 大型の横を通り過ぎ、後ろを取った所で振り返る。

 何度も狙撃した大型の背中が何処となく縮んだように見えた。

 それだけ相手の力が弱まったと俺の本能が察したんだろう、攻めるなら今しかない。

 布袋に手を突っ込んでそれを取り出す。

 炎の魔爆弾と通常爆弾をテープで数本束ねた特製の爆弾だ。

 これを作ったせいでただでさえ持ち込んだ数が少ない爆発物で大型に対抗する羽目になった。

 その分の威力も桁違い、安全装置を解除して全力で逃げ切っても爆発に巻き込まれる。

 時限装置を作れたら良いけど俺には工兵みたいな専門知識も無きゃ材料も持ち合わせていない。

 大型の手の届かない場所に貼りつけ攻撃して爆破する以外の方法は考えつけなかった。

 幸いな事に大型は罠のおかげで動きが鈍い、今ならいけるはずだ。

 

 目の前に晒された大型の背中に向けて駆け出す。

 今の大型はうつ伏せに近い状態だ、背中に乗る程度ならやれるぞ。

 下半身にあたるスカート状の部分に手を伸ばして昇り始める。

 昔から木登りは得意だし、兵士時代は偵察や哨戒で建造物をよじ登る事も多かった。

 兵士に必要な動きは走る・跳ぶ・登るだ、これが劣る兵士は戦場で生き残れない。

 

『……何…をっ…し……て』

 

 大型の声が途切れ途切れで聞き取れない、積み重ねた攻撃に意味があった事実に満足感を覚えた。

 下半身、腰、背中の順に手を掛けて昇る目標の場所はすぐそこだ。

 大型の背中に乗ると抱えていた爆弾の束を押し付け張り付ける。

 不格好な出来だがどうせ爆発させるんだ、見た目なんて拘る必要はない。

 後は降りて距離をとって狙撃で爆破させる。

 そう思って降りようしていると大型の体が大きく揺れ体勢が崩れた。

 何とか腰の辺りまで降りたらまた大型の体が傾く。

 堪えようとした次の瞬間、大きな影が視界の隅から迫って来た。

 

 迫り来るそれが大型の手だと気付けたのは感覚が引き延ばされたせいだ。

 今まで何度も同じ体験をした事がある。

 ファンオース公国との戦争で死にかけた時、誘拐事件で襲ってくる空賊に銃を向けられた時、殿下との決闘で追い詰められた時。

 命の危機になると俺の意識が覚醒して世界全体が緩慢に感じるんだ。

 

 それをまた感じてる、つまり死にかけてるって事じゃねえか!

 

 ゆっくりと迫る大型の腕は俺の体よりもデカい。

 あんな金属の塊に殴られたら跡形も残らず挽き肉になっちまう。

 足腰に力を込めて後ろに跳躍。

 数秒前にいた場所を腕が薙ぐ。

 無理やり体を捻って反らし回避。

 目の前に迫っていた大型の掌から延びた指が頭に触れるのをどうにか躱す。

 だが不完全だ、頭を掠めた指先が左肩に触れる。

 子供が昆虫を指で突くような他愛無い動き。

 その程度の接触をされた瞬間、俺の意識は闇に堕ちた。

 

 

ドォン!

 

 背中に衝撃を感じて意識を取り戻す。

 何が起きたかは分からない、ただ背中と左肩が痛い。

 周囲を見渡し必死に記憶を辿る。

 俺は金属製の床に寝ている、そして目の前で大きな金属の塊が必死に起き上がろうと手をついて蠢いていた。

 そこで漸く何が起きたのか思い出す。

 なんて事はない、大型が背中に昇った俺を振り払おうとして大雑把に腕を振っただけだ。

 無理な体勢からの一撃を避けられなかった俺は無様に床に這い蹲った。

 単純明快過ぎて笑えてくる。

 相手を罠に嵌めたくせに勝利を確信して逆転の一撃を喰らうなんて間抜けもいいとこだ。

 左肩の一撃を受けて床に転げ落ちるまで数秒間意識を失った。

 そのまま気絶していてもおかしくなかったのにすぐ覚醒したのは幸運以外の何物でもない。

 無様に床に転がってる俺達のどっちが先に起き上がれるか?

 それでこの闘いの勝敗が決まる。

 

 必死に手足を動かして転がると猛烈な痛みが襲って来た息が止まりそうになる。

 背嚢のお陰で床に落ちた時の衝撃が和らいだ、頭を強打しなかったのも良かった。

 問題は大型の指が当たった左肩だ。

 左肩の激痛で息が止まりそうになって汗が噴き出す。

 下唇を噛み締めてライフルを杖替わりにして立ち上がる。

 

 痛い、とにかく痛い。

 鎖骨か胸骨、或いは上腕骨を痛めた感じだ。

 戦場の経験から考えて完全骨折じゃなさそうだ、ただ罅が入っているかもしれないな。

 打撲は間違いないだろう、脱いで傷を確かめたいが今は時間が惜しい。

 必死に起き上がり無様な姿のまま必死に通路を走るが思った以上に速度が出ない。

 足を一歩踏み出す度に激痛に襲われて息が止まりそうになる、それでも逃げなきゃ死ぬのは俺の方だ。

 指と言っても大型の指は俺の腕ぐらい太い金属の棒だ、そんな凶器が当たった人体は無事じゃすまない。

 頭に当たったら即死だし、足に当たれば走るどころか歩行さえ不可能になる。

 この程度の軽傷で済んだのは奇跡だ、この好機は絶対に逃がせない。

 後ろから何かが這いずるような音が聞こえるけど怖くて振り向けなかった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 ろくに傷を確かめる事も出来ないまま通路から飛行船近くの開けた場所に到着し身を隠す。

 大型がどれくらいの時間で俺に追いつくか分からない、それまでに最後の準備をしておく必要があった。

 ライフルに炎の魔弾を装填しようとしたら床に落とした。

 慌てて拾おうとするが上手くいかない、左肩が痛くて指先が痺れる。

 普段の何倍の時間をかけて装填を終わらせる、左肩の痛みは増すばかりだ。

 

 ダメだ、移動しながらの射撃は出来そうにない、そもそも痛みのせいで素早い動きが無理だ。

 腹を括って右脚を曲げて左脚を立てる、左肘を左膝の上に置いて固定し座射の体勢に移る。

 左肩はまだ痛い、ただ動かなければ多少はマシになるからこのまま狙撃する。

 銃の射程圏内で爆弾の余波が少ない、そのギリギリを見極めて爆弾を狙い撃つ、これしか今の俺に採れる一番確実な方法だ。

 いつだって戦いは不条理で思い通りに進む事は滅多に無い。

 そんな状況で足掻いて勝利を掴み取るしか俺の生き延びる道は無かった。

 左肩の怪我に熱が籠って全身が熱い、熱病に罹ったみたいに意識が遠退く。

 

ギキィィィィイィィィ……

 

 不快な金属音が通路から聞こえてきた。

 あともう少しで大型が此処に現れる、そう思っただけで鼓動が速まる。

 体は恐怖を感じていろんな反応をしている。

 発汗、動悸、目眩、頭痛、その他諸々。

 集中できる状況じゃないはずなのにどこか心は穏やかだ。

 直感と経験が闘いの終わりが近いと告げている。

 

 大型がゆっくりと通路から現れる。

 殊更ゆっくりな動きは周囲を威圧するようにも見えるがそうじゃない。

 蓄積された損傷は確実に大型を弱らせている、最初に出会った時のあいつならちょっと探せば分かる位置に潜んでいる俺に気付いただろう。

 目を細めて大型の背中を見る、もし爆弾が外れていたらその時点で俺の敗北だ。

 注意深く見つめると黒い塊が大型の背中に貼り付いている、第一段階は成功。

 人間でも関節が固ければ背中に手を回せない、人を象ってるとは言っても腕が胴体に近い太さな大型じゃ関節や装飾が干渉して背中を触るの不可能だと思ったぞ。

 そこから更に攻撃を加える、今の俺に出来る最大火力だ。

 

 床から浮いた大型が前に進んで行く、進んだ分だけ俺の位置から遠ざかり命中率は下がる。

 だけど近過ぎたら爆発に巻き込まれ共倒れだ、その見極めが難しい。

 俺の射撃能力は平均以上だ、英雄様達と違って遠くの敵の頭を撃ち抜くなんて器用な真似は不可能だ。

 稚拙な技量で怪我までしている、普段の俺ならあの爆弾に命中させるのは無理だと思う。

 普段の俺ならもうダメだと諦めている。

 

 なのに今の俺は何処かこの状況を愉しんでいた。

 目眩を起こしてる体の熱、額から滴り落ちる汗、思考を遮る激痛、耳障りでうるさい心音。

 それら総てを遠くに感じる。

 感覚が研ぎ澄まされて肉体から魂が肉体が離れて遠ざかっていく。

 余計な物がどんどん俺の中から削ぎ落され単純になる。

 今の俺はリオン・フォウ・バルトファルトじゃなくて一丁の銃、一発の弾丸だ。

 あと一歩進めば大型は俺がライフルで当てられる射程距離から外れる。

 いつもは慌てて引き金を引くが今の俺は何処か人事のように落ち着いている。

 その場所に大型が辿り着いた瞬間、ゆっくりと優しく引き金に掛けた指を動かす。

 撃鉄が落ちてライフルに装填された魔弾の雷管を叩き火薬が燃焼していく。

 銃身内の力が一方向に収束して弾頭が発射されるのが研ぎ澄まされ感覚によって伝わってきた。

 宙を駆け抜ける弾丸が刻まれた魔法を帯びて空気を裂く。

 束ねられた爆弾に穴が空いた、着弾と同時に炎魔法が発動し連鎖的に爆弾に引火している。

 

 

ドオォアアアアアァァァァァァァッッッッンンンン!!!!!

 

 

 爆発の閃光が目を灼いた数瞬後、今までの人生で体験した事の無い大きな爆音と衝撃に襲われて床の上を転がった。

 爆発の衝撃を受けて鈍化していた感覚が一気に体を襲って来て呻き声を吐き出す。

 再び体を蝕む熱と痛みに身悶えしながら必死に立ち上がった。

 大型が居た場所からは黒い煙と紅い炎が吹き上げ恐ろしい有様だ。

 炎の魔爆弾に加えて通常爆弾、そこに炎の魔弾をぶち込めばこうなるとは思ってた。

 予想以上の破壊力に背筋が凍る。

 手持ちの爆弾を全部注ぎ込まなくて正解だったな、こりゃ。

 ぼんやりそんな事を考えながらライフルを床に置く。

 懐の大型拳銃を取り出して弾丸を装填、うち二発は特別製だ。

 延焼するような物が無い限り魔法の炎は込められた魔力が尽きればすぐに鎮火する。

 炎が燃える間、俺は銃を突き付けながら残心し続けた。

 

 煙と炎が収まると黒焦げになった金属の塊が見えてくる。

 仰向けで寝ている子供みたいな恰好のそれは今まで戦い続けた大型だった。

 一歩、もう一歩と近付いて様子を窺う。

 これで倒しきれなきゃ本当に打つ手なしだ。

 人型の腕が範囲に足を踏み入れてみる、人型は動かない。

 もう一歩と足を踏み出したその時、

 

ガカァ! ゴァ!

 

 人型が突然動き出して腕を振り上げる。

 

「やっぱそう来たか」

 

ダァァン!! ヴァチィ!

 

 大型拳銃から射出された弾丸が人型に当たると紫色の雷光が周囲に落ちる。

 筋肉馬鹿(グレッグ)から貰った大型拳銃はもともとホルファート王国の武器開発部門の試作品だ。

 武器開発部門とは言っているが、その中には魔法関係の発明品も含まれてる。

 この大型拳銃は元々魔弾の小型化の試作品として作られた。

 ライフルよりも小型で持ち運びが便利な魔弾用の銃が作れないか?という設計思想の基に作られたらしい。

 その結果が大型で一般兵には扱いきれない大型銃とか笑えないぞ。

 

『……?! ……!!?』

「痛ってぇ!」

 

 大型は魔法弾が当たった損傷で、俺は大型拳銃の反動で呻き声を上げる。

 多少は名の知れた俺ですら通常時は両手で撃たなきゃいけない危険物を負傷した状態で撃ったんだ。

 反動は左肩に伝わって脳みそをこねくり回すみたいな激痛が襲って来た。

 それでも大型は損傷して動きが止まる、でも魔弾ほどじゃない。

 大型拳銃の弾丸は通常の拳銃よりデカいと言ってもライフル弾よりも短くて小さい。

 威力は控えめ、小型化の影響で加工が難しく弾一発のお値段は倍以上という問題がありまくりな兵器だと大型拳銃と一緒に郵送された説明書に書いてあった。

 ひょっとして筋肉馬鹿(グレッグ)の奴、俺に譲るって形で不良品を体よく処分したんじゃないか?

 まぁいい、今は大型との決着が優先だ。

 

ダァン!! バチィ!

 

 魔弾をもう一発撃ち込むと大型の動きが鈍る、俺も痛いけど悠長な事は言ってられない。

 緩慢な大型の腕を避けて頭部に近付く。

 大型は腕で頭部を護ろうとするが間に合わない。

 

ガァン! バァァン!! ダァン!! ガァァン!!

 

 大型の頭部へ打ち込む度に眼と思う光が弱々しく点滅している。

 弾丸が当たった場所は拉げるが致命傷にはまだ遠い。

 こうなりゃ最終手段だ、腰に差してあった剣を抜き放つ。

 何回も爆発や魔弾によって大型の装甲はあちこち歪んで亀裂も生じてる。

 下半身に重要そうな器官は無さそう、腕部は装甲が分厚くて歯が立たず、胴体部はデカすぎて刀身が置く深くまで届かない。

 なら攻撃箇所は頭部ぐらいしかない。

 モンスターの中には頭が無かったり、頭と胴が別な奴もいるが大型がそんな感じじゃない事を祈るばかりだ。

 拉げた首元の装甲、接合面らしき場所に出来た亀裂に剣を突き立てる。

 剣というよりも斧とか槍を使う感じだ。

 真上から体重をかけて刃先で首の中をグチャグチャにしていく。

 頭部の光の点滅はどんどん激しくなる、同時に大型が激しく体を揺らす。

 

グオォゥ

 

 大型の掌が俺の背に当たった、大した衝撃じゃないが左肩の怪我に響いて痛い。

 必死に俺を止めようとしているのか、大型の両腕を震わせるが緩慢な動きで力も弱い。

 

グュウゥ!  ブチッ!  ガッ!

 

 刃先に何かが当たって潰れる感触や何かが千切れる音が聞こえる。

 人間に例えたら首の動脈や気道や脊髄を潰して斬ってるようなもんか?

 そりゃ苦しいだろう、罪人の苦痛を和らげる目的で処刑人が専門職なのがよく分かる。

 

『止ッ… め… リオ… バ… …ルット』

 

 大型の必死の抵抗か、俺の名前らしき言葉を呟いている。

 何で俺はこんな事してんだろう?

 殺し合う意味なんて何処にも無い、恨んでもいない相手を傷付けて楽しくもない事を続けてる。 

 余計な思考が頭を巡るが止めておく。

 そもそもこいつが話を聞かないのが悪い、話を聞いてもらう為にまずは抵抗する力を削ぐ。

 話し合いはそこから先だ。

 刀身はかなり進んでる、このまま行けば貫通するだろう。

 そう思っていたら大型の手が俺の体を掴んで必死に引き剥がそうと腕を振ってきた。

 最期の抵抗か、思った以上に込められた力に命の危機を感じる

 仕方ない、最後の手段だ。

 剣の柄、鍔に近い箇所に隠された仕掛けを思いっきり叩く。

 

バシュッ!!

 

 柄の内部に仕込まれた少量の火薬とばね機構が起動して刀身が射出される。

 

ガァンッ…!

 

 射出された刀身は大型の首の奥深くまで突き刺さり反対側の装甲に当たって止まった。

 同時に俺を掴んでいた大型の腕の力が弱くなり床に落ちる。

 その光景を見終えてから握り締めた右拳を突き出す。

 

「勝ったぞ」

 

 俺の胸を満たすのは勝利の喜びじゃなくて闘いの虚しさだけだった。




ルクシオン戦決着となります。
原作リオンとの勝敗の違いは戦闘経験と体格の良さです。
少し短めなのは前編後編の戦闘回が延びた影響です。
お喋りなルクシオンのセリフが少ないのは戦闘に徹してる+ダメージが大きい影響です。
次回でリオンのルクシオン捜索のお話は終わり、また別の視点でのお話になります。

追記:依頼主様のリクエストによりDanZr様にイラストを描いていただきました、ありがとうございます。

DanZr様 https://www.pixiv.net/artworks/118174268

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