仮面ライダー鎧武 エピソードゼロ ~もう一つの世界~ 作:エクシ
前編
戒斗は死んだ。ミッチも死んだ。貴虎も。みんな…。そして…舞も…。おれも今命を落とそうとしている。
「この程度か。葛葉紘汰、お前は知恵の実を得るにふさわしくない。このフェムシンムの王、ロシュオに挑んだこと、後悔しながら死ぬといい。」
ロシュオの大剣がおれの体を斬った。とても止血出来る状況ではない。それどころかもう体も動かない。おれは禁断の果実を手に入れることは出来なかった…。
「人類で我々に歯向かった最後の戦士、鎧武よ。せめてこの世界が終わるのと同時に命を尽きさせてやろう。」
ロシュオはそういうとおれの視界から消えた。ヘルヘイムの森はより活性化し、おれたちの世界の世界の物体はほぼ残らなくなった。おれは目を閉じた。「ごめん、みんな…。」
「なんだ、結局お前でもロシュオは倒せなかったのか。」
おれは再び目を開けるとそこにはサガラが立っていた。
「お前にいくつもの力を与えてきたが意味はなかったみたいだな。おれの見当違いか。あーあ、残念だったぜ。」
「サ…ガラ…。」
「すでに声もろくに出ないか。ロシュオは今森をさらに活性化させている。そうだな、あと15分でこの世界はヘルヘイムの森の一部と化す。もう終わりだ。」
「じ…だ…ね…ぇ…」
「ん?」
「じょうだん…じゃ…ねぇ!」
「おお、声出るじゃねえか。ハハ、やはり相変わらず面白い奴だ。」
「お…れは…まだ…諦め…たく…ない!!」
おれがそういうとサガラは眉をひそめた。しばらくするとサガラは真面目な声のトーンで再び俺に話しはじめた。
「お前はかつて『人じゃなくなってもみんなを守る』。そう言ったな?」
おれは黙ってうなずく。
「ならば屍として皆を救う気はあるか?」
「しかばね…?」
「お前はもう死ぬだろう。その命は諦めろ。ロシュオにやられたんじゃオレでも回復は出来ない。だがお前に与えたカチドキロックシードと極ロックシードでもう一つ命を作ることは出来る。」
「じゃ…じゃあ!」
「だが、それは人としての命じゃない。2つのロックシードから作られた命はかなり不便なものになる。いくつか面倒なことがあるが…、1つ目はその命が具現化されロックシードになる。ロックシードがドライバーから外されればお前は死ぬ。2つ目はその命だけでは生きてはいけない。森の果実を摂取し続けなくてはダメだ。」
「か…まわ…ない。」
「あとな、そのロックシードはアーマードライダーとしてのお前には何にも力をもたらさない。ただの形だけのアームズを与えるくらいだ。当然、ロシュオには勝てない。」
「…。」
「いいのか?」
おれは一度黙り込んでしまった。でも…。
「おれは…もう迷わ…ない!」
「…そうか。じゃあ始めるぞ。」
サガラは俺の戦極ドライバーについていたカチドキロックシードと極ロックシードに触れた。あっという間に2つのロックシードはリンゴの形をした物体に変化し、すぐに1つのロックシードへと変わった。すると体は楽になり、痛みをあまり感じなくなった。サガラはおれに果実をもぎ取るように言った。果実をもぎ取ると黄金の光へと変わり、おれの体に染み渡った。さらに体は楽になり、傷もみるみると癒えていく。
「ありがとう、サガラ。」
「これからどうする気だ?」
「もう一度ロシュオに挑んでくる。」
サガラはため息をついた。
「お前、オレがさっき言っていたことを忘れたのか?勝ち目はない。」
「でも…それしかないだろ!」
サガラはおれに失望したようだった。だがしばらくすると笑いだし、手を上へ挙げた。するとサガラの頭上に渦のようなオーラが現れる。
「ここまで馬鹿だと逆に期待しちまう。いいだろう、本当に最後のサポートをお前にしてやろう。お前をロシュオがロシュオになる前の世界へ連れて行ってやろう。」
「ロシュオが…ロシュオに?」
「つまりロシュオがオーバーロードになる前の世界ってわけだ。すなわち禁断の果実を得る前の世界。」
「本当か!?そんなことが…本当に!?」
「だがオレはロシュオになるフェムシンムが誰なのか知らない。おそらく強い戦士で王になりそうな人物ってとこだろうな。そいつをお前は片っ端から倒せるのか?」
「当たり前だ!みんなのために…!」
「ロシュオになる人物以外も殺せるのか?」
「え?」
「そりゃそうだろう。一発でロシュオを引き当てることなんて不可能だ。」
「…おれは…」
「どうする?」
「おれはもう迷わない。」
「…そうか。」
サガラは挙げた手で指を鳴らした。渦のようなオーラはおれを包み、辺り一面をを真っ白へと変えた。
龍玄は豪快に振り上げた無双セイバーによって鎧武の戦極ドライバーをリンゴロックシードごと切り裂いた。鎧武は倒れながら変身解除する。
「コウタ…さん?」
龍玄は紘汰の顔を見て驚きを隠せなかった。怯んでいた斬月・真も起き、変身を解除してから紘汰であったことにショックを受ける。ミツザネは龍玄の姿に戻ると膝をついてしまった。
「…ミッチ…。貴虎…。」
「コウタ…さん?コウタさんなんですか?」
「おれは…この世界のコウタじゃない…。ヘルヘイムがこの世界を支配…したあと…新たに支配のターゲットにされた世界の…紘汰だ…。」
「なんだと…。どういうことだ!」
「二人とも…この世界では仲がいいんだな…。よかった…。そんな二人を…おれは殺さなきゃいけなかった…。最低の人間だ…!でも…おれは…世界を…救いたかった…。この世界で…禁断の果実や…王になろうと…するやつを…倒せば…未来に…ロシュオにな…グハッ…なるやつを…消すことが…」
「紘汰さん…」
ミツザネは命が尽きようとしている紘汰を泣きながら抱きしめた。タカトラも涙を流し二人を見ていた。
「この世界の…おれが…王だって聞いたから…城に忍び込んで消そうと…したけど…なぜか毎回ばれちまって…おれバカだから何度も…ハハ…」
「紘汰さん、今すぐ助けますから!!」
「無駄だよ…ミッチ…。おれはもう本来なら…死んでるんだ…。ロシュオに…ゴホッ…やら…グ…。サガラに…頼んで…命を繋いでた…だけなんだ…。リンゴ…には…人を操る力なんて…ない…。」
「では…この世界のコウタはなぜあんな風に…!」
「この世界のおれは…はじめっからあんな…ひどいやつじゃ…なかったんだ…。よかった…。それなら…たぶん…誰かが…操っているんだ…近くにいる…やつが…。」
「紘汰さん!もうしゃべっちゃだめです!」
おれは意識が朦朧としていた。「まさか…ミッチにやられちゃうとはな…。この世界には…おれの世界で仲間だった奴に似たやつがいっぱいいた…。でもおれはそいつらを殺そうと…自分の世界のことだけ考えて…だから…天罰なのかな…。おれは…何のためにここに来たのだろう…。おれは…何も変えられなかった。でも…でも!正しくなくても、間違っていても、おれはみんなを救いたかったんだ…!!」声に出す気にもならないことをおれは考えていた。でもせめてこの世界のミッチとタカトラに伝えたいことがあった。
「だから…もう…無駄なんだ…。ありがとう…ミッチ…。おれ…ミッチも…貴虎も…救い…たか…た…」
「あとこの世界のミッチとタカトラもな…。」最後のセリフはほとんど声にはなっていなかった。でも冷静になっていたタカトラは発狂しているミッチと違って聞こえていたらしい。「よかった…伝えられて…」おれの体は枯れたヘルヘイムの植物のようになり、風に吹かれミッチの腕から消えた。
少しだけお久しぶりです。エクシです。
紘汰について本編で触れることが出来なかったのでこの外伝だけやってしまおうと思い、再び書きました。少しでも本編で「?」だったところが「!」になっていただけたら嬉しいです。
後編もよろしくお願いします!