超昂大戦SS 決戦・ルビーVSアメイズ! そして魔女は真の仲間に   作:環 藍河

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§2 哀しき決意! アメイズの捧げた代償

「うぐ…うっ…!」

ダウンしたままのルビーは時おりわずかに呻き、びくんっ、びくんっ、と痙攣するばかり。

だが、アメイズは構えを解かず、その行動とは裏腹な祈りをルビーに送る。

 

(ルビー…立ちなさいよ…。

でなきゃ、私がここまでした意味が無いじゃない…。

スキュラにヒュドラまで連れ出したのに、ぜんぶ水の泡じゃない…!!)

 

……

それは、数日前までさかのぼる。

 

「足りんな。あれしきの力で、我らが手を取る意義を、何処に見出だせるものか。」

 

魔女を束ねる上位組織「箱船」の会合の一角。

時に国家さえも動かし、紛争さえも鎮めてしまう、魔女にとっての脅威を排除する実行部隊・ジークフリート派を束ねる『皇帝』ファヴニルは、エリーの提言を一蹴する。

 

「だーかーらー、結成間もないダイビートで、あなたが酷評するルビーは戦士になって1ヶ月そこらなのっ!

むしろ、ニルと対等で戦えるような戦士がルーキーで所属してる方が、おかしいでしょー!」

アメイズは弁明するも、ニルは一顧だにしない。

 

エリーが見込むほどの組織・ダイビートとは如何なるものか、ニルは超昂戦士の強さを見定めようと、自ら戦場に赴いていた。

だが、その戦いでは皮肉にも、エリーに心乱されたルビーが空回りを繰り返し、普段の三分の一も実力が出せず…。

ニルは苦笑し、失望した。

 

そしてニルは、エリーを無情に突き放す。

「見込みと希望的観測で組む相手を選ぶな、『恋人』よ。

浅慮に釣り合うほど、我ら箱船の命運は軽くないぞ。」

「ぐうっ…うううっ…!!」

 

言い返せないエリーが、やっとの思いで絞り出した一言。

 

「…証明があれば、いいのね。ダイビートの、ルビーの実力の証明が…!」

 

……

「エキドナ! ちょっとだけ私の美味しいとこ、しゃぶらせてあげる。

だから、あなたの娘たちを何体か、私に預けてちょうだい!」

 

エリーがこの国で居住する、魔女の館の地下室。

メイドにもボディガードにもこれからしようとすることは一切告げず、エリーは単身で部屋にこもり、蛇を召喚して取引を持ちかける。

 

エキドナ…エリーが纏う、母なる淫蛇。

伝説では蛇のみならず、地獄の門番たる三つ頭の猟犬ケルベロスや、山羊の胴に獅子の頭と蛇の尾を持つ淫欲の怪獣キマイラなど、いくつもの獣を仔となす、美しくも業深き、邪の蛇である。

 

ぺちゃっ。じゅるじゅるっ。ちゅううっ。

「くう…っ…、あんまり、がっつかないの…!」

隙を見せれば、即座にエリーの魔眼は丸呑みされ、二度と戻してはくれないだろう。

先が割れた舌でねぶらせ、その生唾にまみれさせ、少しずつ魔眼の魔力をエキドナに供物と捧げる。

 

じゅぶっ。れろれろっ。ずぶぶぶぶっ…!

(あ…ああっ…。やだ…!

しゃぶられてるのは…私の魔眼だけのっ、はずなのに…。

私っ…全身をねぶられてるっ…。

力を…直接っ、ゾクゾクッと…吸われてる…っ!)

 

確かにエキドナは、エリーに強大な魔力を授ける主。

だがその狡猾で老獪な淫蛇は、決してエリーに無償で力を授けるお人好しな守護神ではない。

むしろいつだって、エリーが駆け引きをしくじれば、またとないチャンスとばかりにエリーの魔眼を吸い尽くし、何の愛着も無くその抜け殻を無慈悲に吐き捨てるだろう。

 

じゅぶっ。こりっ。じゅううううっ。

「あ…あぐうううっ! あーっ! ああああ~~~っっ!!!」

奪われる魔力に悶え、歯を食いしばるエリー。

この苦痛こそが、スキュラとヒュドラ、二頭の娘を貸し出す担保。

 

(あ…あああっ…、かふ…ううっ…!)

どさっ。

 

エキドナにねぶり尽くされたエリーが、力なく大地に崩れ落ちる。母なる淫蛇は差し出された贄を堪能し、満足気に舌舐めずりを二度、三度。

 

「…はあっ、かは…っ! …あふう…っ…。」

(ちょっとは…遠慮…しなさいよっ…。

…でもっ…、これで、ルビーを…!)

そのままエリーは意識を失い…。

次に目覚めたとき、側には強大な相棒が二頭、寄り添っていた。

 

かくしてアメイズは、奉納と引換にレンタルに成功した猛獣を、ルビーにけしかける。

ダイビートの、エスカ・ルビーの真の実力を引き出し、ニルの評価を一転させるために。

 

しかし…エリーはなぜ、ここまでするのか…?

 

……

エリーは焦っていた。

 

箱船の沈没を目論み、今も暗躍しているであろう真の敵・オルタナスタインは、近くいよいよその牙を剥き出しにするだろう。それまでに、箱船が対抗するための異能の力…ダイビートと手を携えなければ、魔女の未来は無い。

エリーはそう確信し、箱船会議でその必要性を繰り返し繰り返し主張した。

 

…だが、一枚岩ではない箱船を束ねるには、自分は未だ力不足だった。

保守派のヴィクトリア派も、最強を自負するジークフリート派も、何らエリーに耳を貸さなかったのだ。

 

(…みんなの、わからず屋っ…!!)

だからこそ、エリーは我が身を省みず、この無謀な作戦を敢行する。

 

……

エリーは普段から、その見た目の可愛らしさに似合わず、大人びた言動と、賢い決断をとる。若くして、叩き上げの知性と帝王学でエリザベス派の魔女を導き、若くして複合企業体NAUの舵を執るエリー。

でも、今日に限っては…目の前の総てを見通すエリーの知性や深謀遠慮は、そこには無かった。

 

(ルビー…、私、おかしいよね。あなたと手を取って戦うためなのに、やってることは、こうやってあなたを痛めつけて、打ちのめして…。

あとで全部を話したって、許してくれだなんて、言えないよね…。)

 

アメイズの鞭と、二頭の蛇は…。

まるで、仲違いする父母を取り持ちたいのに、何を言ってもわかってくれないパパとママに振り下ろす、少女の小さな握り拳のように、哀しくルビーに撃ち込まれる。

 

寄る瀬なき自らの想いが、大切な人を傷つけてしまう。

そのジレンマに心を焼かれる痛みこそが、エリーの捧げた真の代償だった。

 

(でも…!

お願い、ルビー。立って…!

ダメなら私たちは、ダイビートと手を切って、箱船だけで戦わなくちゃいけないの…。

あなたの闘志に、私たちの未来が…かかっているんだから…!!)

 

エリーの裏腹な祈りも空しく、いまだルビーは冷たい床に倒れ続けていた。

 

 




筆者の環です。
このパートでは主に、アメイズの心象を加筆してます。
僕の中で、この半年間でエリーへの理解や好感が深まった分を織り込んだつもりですが…いかがでしょう?
ではまた、§3、ルビーサイドもご期待ください。
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