超昂大戦SS 決戦・ルビーVSアメイズ! そして魔女は真の仲間に   作:環 藍河

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§3 立ち上がれルビー! 護りたい人のために

アメイズがこの日の為に用意した、淫蛇エキドナの二体の愛娘・スキュラとヒュドラ。

その繰り出す縛鎖と淫毒に、エスカ・ルビーは全身の力を奪われ、重力に支配された四肢を床になげうつ。

 

びくっ、びくん、どくん。

(あ…か…くはっ…!)

痺れる両手を微かな力で前に伸ばし、大地から体を引き剥がそうと拳を握る。

 

だが、姉たる大蛇・スキュラに両胸ごと潰されかけたルビーの両腕は、痙攣を止めない。

さらに、妹たる九姉妹の雌蛇・ヒュドラが打ち込んだ淫毒が、ルビーの五体を隅々まで巡り、すっかりルビーを誑し込んでしまった。

 

ヴァーミリオンレッドとパールホワイトに輝く、ルビーの戦闘服。

その勇気の証は、今や無惨にスキュラの拘束で千切られ、ヒュドラの毒牙で血に染められ、全身から伝う冷汗でぐしょ濡れとなっていた。

かろうじて原形をとどめているものの、これ以上は妖蛇の牙に耐える力を残してはいない。

もはや官能的ですらある、満身創痍の坩堝に呑まれ、ルビーは未だ闇の中にあった。

 

(…アメイズ…エリーちゃん…どうして…?)

 

……

数日前、アカリは初めての感情に戸惑っていた。

 

(どうして…? 長官と…今までみたいに、普通に話せない…。

話すだけなのに…ドキドキして、苦しくて…。

雪城さんが、来たから…?)

トキサダに上目遣いで積極的アプローチを繰り返すエリーが来てから、アカリは自分のペースをすっかり見失っていた。

 

(でも、それじゃ私は…こんな気持ちのために…。

長官とベタベタしたくて、自分がドキドキしたいから…気持ちよくなりたいから、戦っているだけなの…?)

 

振り払えない、消せない胸の痛みは、考えれば考えるほど、ますます強くなる。

そして、認めれば認めるほど…自分の戦いが、やましく不純なものに思えてくる。

 

(みんなを護りたいって思って、超昂戦士に志願したはずなのに…。

そんなの、ズルい言い訳だったの…?

ホントの私は…こんなに自分勝手で、わがままだったの…?!)

 

「アカリちゃん…心が揺らいでるでしょ?」

「!!」

「狩人の…戦士の素質があるのに、曇っちゃったんだ。困ったわね…。」

 

誰にも言えない感情を、よりによってこの子に看破されてしまった。

…アカリは、ついに爆発する。

 

「あ…あなただって人のこと、言えないじゃない! 長官にベタベタしてっ…!」

「んー、私はね、ちょっとアカリちゃんのとは、目的が違うかな?

たくさんの人の運命がかかっているから…ね。」

「えっ…? それ…どういうことっ?」

「ふふっ、ちょっと喋りすぎたかな。またねっ。」

 

いざこざの中でアカリは、エリーの背負う業の…NAUの何千、何万人という護るべき人のために戦っている、エリーの重い責任の一端を知った。

 

……

(エリーちゃんには…護るべき人たちがいるって、言っていた…。

じゃあ、この模擬戦も…エリーちゃんが…誰かを護るための…?)

頭を回すも、疲労とダメージと毒に支配された思考回路は、結論を返してくれない。

 

ぼんやり、霞む視界に覗く、二人の仲間。

(ヒビキちゃん…あんなに狼狽えて…)

エリーに中からロックされた扉の向こう、届かない助太刀の拳を悔しく握り締め、防弾ガラスを叩くことしかできない、サファイアとトパーズ。

(うららちゃんは…ヒーローの心得を…私に叫んでくれてるんだろうな…)

 

…どぷっ、どぷっ、ごぷっ…

刻一刻と、光届かぬ海の深淵へと、体の全てが鉛のように沈む。

遂に瞳もとろりと弛緩し、意識混濁となるルビー。

 

(このまま…負けても…いいのかな…)

私が負ければ、エリーが護りたい人たちが救われるのかもしれない…。

そんな考えに心を侵略される。

 

 

 (…護りたい…、ひと…?!)

 

 そのとき、ルビーの視界の端に、その人が映り込む。諦めるなと諭すように自分を見据える、その強い眼差し。

 瞬間、とろけて霞んでいたルビーの瞳に、熱い炎が灯される。

 

(そうだ…!

エリーちゃんだけじゃない。

私にだって、護りたい人が、いるんだ…!)

 

やはり、僅か数日前。

エリーに心乱され、ついに大義のために拳を握れなくなった自分の弱い心を嘆き、立ち上がれなくなったルビー。

だがその止めどない落涙を拭ってくれたのは、ルビーが憧れる戦士・エスカレイヤー。

彼女が気づかせてくれた、大切なこと。

 

超昂戦士がふるうべきは、正義。

でも、それは地球のため、人類みんなのためとか、街のみんなのためとか、大きな単位じゃなくたっていいんだ。

清廉潔白、公平でも、公正でなくてもいいんだ。

救いたい人がたった一人でも…よこしまだって、えこひいきだって、構うもんか。

 

…だって。

 

(私の…護りたい人は…!!)

みんなが持つ平凡な幸せを、未だ知らない人。

命を繋ぐだけで精一杯だったから、その先にある命の喜びを、まだ知らない人。

 

笑うことの素晴らしさ。語り合う喜び。繋がることの温もり。

…アカリはみんなから当然のように貰えた、そんなありふれた小さな幸せ。

だがそれさえも知らず、ただ生き延びることだけを願って、この時代まで来た人。

 

エリーの術でその凄惨な生い立ちを知り…そして、アカリの心に灯った、熱い思い。

(私、長官に…もっと伝えたい…! もっと見せたい…!

長官が護りたいこの世界が、どんなに素敵で、どんなに素晴らしいか…!)

 

してあげたいことが、たくさんできた。

してほしいことも、たくさんできた。

自分の全部を、この人には惜しみなく渡したい。

貴方の全部を、もっともっと知りたくて心が震える。

 

私の護りたい人。

アカリが心の底から、そう思える人。

 

(だから…!)

たとえ、エリーの護りたい誰かを、傷つけることになろうとも。

この気持ちが、やましくたって、不純だって、構うもんか…!

 

(私だって…!)

負けたら、誰も護れない。

弱いままじゃ、この思いは叶わない。

 

(負けられ…ないんだっ…!)

 

「…ふふっ。」

 

満身創痍の紅き戦士が、ついに這い上がる。

エスカ・ルビーのADDDが、燃え上がる闘志に応え、最後の、そして最大のD2エナジーを放つ。

胸から腕へ、指先へ。脚へ、つま先へ。

輝きを失いかけた瞳は、今や眩しい翠を力強く灯す。

心の翼を再び広げ、ルビーの五体がエナジーで満たされていく。

 

「…まだ、できるよね。ルビー」

「…うん、まだ、負けない…!」

震える両手足を振り絞り、ファイティングポーズを取る、紅蓮の超昂戦士。

「私だって、ダイビートの超昂戦士、エスカ・ルビーだから…。

何もしないまま、負けたくない…!」

 




第3話、お届けしました。
初稿から、アカリの心象(特にトキサダへの気持ちの変化と、負けられない理由)を重点的に加筆しました。
いつか原作本編の中で、アカリの願いが叶う日が描かれますように…。

次話、バトル決着です(リメイクだからバレバレですが)。
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