超昂大戦SS 決戦・ルビーVSアメイズ! そして魔女は真の仲間に   作:環 藍河

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§4 紅蓮の本能! ルビー、魂の一撃!

蛇の淫毒が消えたわけではない。今なお両肩は震え、膝はがたがた。

一瞬でも気を抜けば崩れ落ちるほどの、ぎりぎりで体躯を支えていた。

それでも。

「…エスカ・ルビー、再出撃します!」

 

(牙の毒なんかに、負けない…っ!)

自分に言い聞かせて。

「いく、ぞおおおおーーーーっっ!!」

長い咆哮の終わりを合図に、紅い弾丸は再び紫水晶めがけてはじけ飛ぶ。

「でやあああああーーーーっっ!!」

 

「ヒュドラ! やあっ!」

アメイズがウィップを一閃すると、再び九体の蛇がルビーに正対し、次々に波状突撃を開始する。

切り込み隊長が落とされても、影から心臓を、脇から喉笛を。

我等がうち一体が必ずや、この蛮勇なる戦士にとどめの牙を突き立て、今度こそ自慢の淫毒で蕩かしてみせよう。

 

だが。

ルビーの繰り放つ迎撃弾は、最初の蛇たちが容易くかい潜った、様子伺いの手刀や受け身のローキックとは全く違った。

全てが鋭く、そして重い。

 

ぐしゃっ。ぼとっ。

最初の一頭は正拳で鼻ごと牙を潰される。

ぶちっ。べちゃっ。

次の一頭は拳の甲で進撃を断ち切られ、側壁に叩きつけられる。

 

(そ…そんなっ、ヒュドラがたった一撃で潰されていくなんてっ…!!)

エキドナに全てを捧げて遣わされた、伝説の毒蛇が、いともたやすく。

ルビーの拳が、蹴りが。

一撃、一撃ごとに、星の煌めきを纏い、破壊力を増していく。

 

ばきっ…ぐちゃっ。

びしゅうっ…どぼっ。

蹴撃に天井を仰ぎ、廻し蹴りの踵で頭を飛ばされ、一頭、また一頭とヒュドラが地に墜とされる。

 

しゅっ。

最後の一頭に放ったルビーのストレートが、空を切った。

一触、わずかに頭の脇をかすめたものの、すんでのところでかわすことができた。

 

(!! しめたっ、ラストチャンス!)とばかりに反転。

ルビーの首筋目がけ、とどめのひと咬みをと大きな口を開け…

 

「きゅっ…くきゅ~~っっ!!」

ぼとっ。びくんびくん。

牙は虚空を掴み、力なく堕ちた。

拳に乗った衝撃波が、空を切ったはずのヒュドラの平衡器を既に焼き尽くしていた。

最後の一頭は空と勘違いして地べたを這いつくばり、復活を許されなかった。

 

かつて神話の時代、伝説の勇者は落としたヒュドラの首を松明で焼き、再生を阻んだという。

ルビーの拳は、その神話の再現のように、九頭の淫蛇にとどめをお見舞いした。

 

「ルビーは…この戦いの中で、成長したというのか…!」

「と…特訓回ナシでパワーアップとか、ホントはズルだけど、今は許すわよっ!

ルビーっ! いっけええええーーーっ!!」

 

「まっ…まだよっ! スキュラ!!」

再び突撃しようと両足に力を入れ直すルビーを、身の丈を凌駕する螺旋が再び包んでしまった。

「きゃ…あっ!」

ぎゅるん。ぎゅううううっ、ぐりっごりっ。

妹の仇討ちとばかりに、ルビーの肢体全てを隙間なく巻き取り、無慈悲にねじり、絞り上げていく。

 

「ああっ! や…やっぱりダメだっ…終わりだ…!」

「や…やめなさいよーっ!! ルビーが壊れちゃうーっ!!」

 

ぐじゅっ。ごりっ。ぎゅうううっ。

…サファイアの絶望とトパーズの懇願は、大蛇スキュラに届くこともなかった。

もはや、最後の悲鳴を吐き出す力さえ、ルビーには残っていないだろう。

激闘の終焉は…敗者の断末魔が響くこともなく、静寂の中で迎える…はずだった。

 

(…ぐきゅっ? …ぐぽっ?)

微かな違和感。

絶対支配者のはずのスキュラが、苦悶に顔を歪め、色を失う。

 

「…ガッツ…全開…。」

(ごぐぼっ…!?)

 

「全力…フルパワー…。」

(ぐ…ぐるぷおぴきゃっ…!!)

 

螺旋の中心軸から湧き上がる、希望の朱光。

スキュラの胴体は逆に内側から広げられ、自慢の腹筋を引きちぎられる。

 

「離れろっ、大蛇あああっ!!!」

「ぐるおわえああおぎやあ〜! ぶぐるっ」

 

どすん。

びくんっ! どくんっ!

力比べに敗れ、戦意を喪失しルビーを開放するも、倍返しのダメージに悶えるスキュラ。

もはや反撃の意志は断ち切られ、地を這いつくばり、己の必殺技を破った少女に畏怖するよりなかった。

 

はあっ…、はあっ…、はあっ…!

「はああああーーーっ!!」

呼吸を整え、自らを鼓舞するように咆哮し、蛇使いに正対する紅蓮の超昂戦士。

「あ…ああっ…!」

エスカ・アメイズは…万全を期して用意した淫蛇を全て失った紫光の超昂戦士は、なすすべ無くたたずむ。

 

「ストライクーッ!」

二頭の防壁を失ったアメイズを急襲し、ルビーが繰り出す左右からの廻し蹴り。

 

がしいっ!

「くっ…うああっ!」

とっさにウィップの柄で防ぐも、一撃目で痺れた右手は握力を失い、二発目には耐えきれない。

 

びしいっ!

「ああっ!」

からからからからからっ…。

ついにウィップが蹴り飛ばされ、宙を舞い、地べたを転がる。

 

「くうっ…、…?!」

武器を手放してしまった右手に、一瞬意識をやってしまう。アメイズがきびすを返すと、ルビーはそこにいない。

 

(…! 上っ!?)

息を呑み、見上げる空。

跳躍競技のアスリートのようにルビーが空に描く、虹の軌跡。

「エスカレーション!!」

背面跳びから、右脚首のパルシオンが翠光を放ち、ルビーの脚に爆発的なエネルギーを蓄積している。

全てに幕を下ろす、蹴撃一閃。

 

「ひっ…、きゃあああああーーーっ!!」

本能で恐怖し、心の防壁も破られてしまったアメイズは、両目をつぶり、親に怒られた少女のように両手で頭をかばう。

 

……

(…?)

衝撃が来ない。

アメイズが恐る恐る目を開けると、ルビーはずっと左にへたり込んでいた。

「…長官…くん…?」

「…長官…?」

アメイズの魔力で封緘されたトレーニングルームの扉であったが、戦闘でその魔力が衰弱し、解除に成功。すぐさまトキサダと、サファイア・トパーズが二人にレフェリーストップを掛けに割り込んでいた。

 

ルビーの勢いを横からいなし、トキサダはルビーもろとも転がり込む。

トキサダが止めきれないときはストライク・エスカレーションを二人がかりで受け止めようと、サファイアとトパーズは、アメイズを庇う形で左右に並び立つ。

 

「スパーリングは終わりだ、ルビー、アメイズ。」

(あっ…?)

…へたっ。

かくっ…かたかたかた…っ!

 

バトル終了を告げられたアメイズは、力が抜け、その場にへたり込み、そして背筋を凍らせる。

もしもトキサダの割り込みなしに、あのままルビーのストライク・エスカレーションを、まともに食らっていたら…?

 

「勝敗は…言うまでもないな。」

トキサダは目線をアメイズにやり、異論が無いか確かめる。

 

「…認めるっ。あーあ、残念。」

戦慄しながらも、やれやれ仕方ないなあ、と強がりのポーカーフェイスで返すアメイズ。

 

「あはは…もう、立てません…。」

こてっ…。

かろうじて支えていた上半身すら維持できなくなり、トキサダの胸に崩れ落ちるルビー。

「お…おいっ、ルビー!」

思わずトキサダが取ったルビーの手が、判定勝ちを告げるように天へ伸びていた。

 

ヒュドラの淫毒の源は魔力。バトルが終われば浄化され、文字通り魔法が解けた状態となる。

それでも、精魂尽き果てたルビーは意識を失う。

「ユーノ、ルビーを救護室に運ぶ。回復ユニットの空きを確保してくれ。」

《了解、救護室に連絡しておくわよ。》

 

こうして、波乱のスパーリングは決着した。

 




筆者の環です。第4話をお届けしました。
連日お読みいただき、ありがとうございます。
バトル後半戦、このリメイク版ではアメイズやルビーたちのセリフを差し込んだのが改訂のメインです。初出ではバトルの動きの表現ばかり書いてしまって、心の動きも伝えなきゃ…という反省点から、こうなりました。
明日は第5話、バトル直後のエピソードをお届けします。
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