超昂大戦SS 決戦・ルビーVSアメイズ! そして魔女は真の仲間に 作:環 藍河
「全く、深謀遠慮であるべき我らが恋人が、かくも捨て身の直情径行とは、いやはや、実に危うい。」
「誰のせいよ、わからず屋の皇帝様。」
ルビーとアメイズのバトルから間もなく開かれた、箱船会合。その開会前、皇帝ニルはご機嫌そうにエリーをからかう。
イレーナが基地の自動録画システムから編集し、送付していたスパーリングの様子を、すでに視聴済。
「それにしても…ふっ、ふはっ、ふははははは!」
「ちょっ…何よ、私がボコボコのコテンパンなのが、そんなにおかしいの?! 悪趣味ー!」
「ほう? 私は加虐嗜好ではないぞ。
いやな、さしもの私にも、これは見通せぬなと。」
「…何が?」
「検分した際は、まだまだ尻に殻のついた、卵から孵ったばかりのひよっこ戦士、児戯にも等しい戦だったが、なかなかどうしてあの紅き戦士殿、スキュラとヒュドラを屠るブレイブ・ソルジャーだったとはな! 実に愉快!」
「…あっ。」
ニルとエリーは、この二体を始め数々の魔物を討伐してきた、伝説の勇者の名を思い出していた。
…
……
そして、会合は開かれた。
魔女たちの真の敵・オルタナスタインは間もなくその牙を剥く。その運命の刻に先んじて…。
エリーはダイビートが共闘に足る組織であることを証明するべく、箱船メンバーにルビーのスパーリングの情報と映像を開示した。
「みんな。迫る危機は逆に、私たち魔女が新たな未来を切り拓くチャンスでもあるわ!
そして私は、ダイビートこそがそのパートナーだと確信しているの!
既に戦い始めた、新進気鋭の超昂戦士。
その強さを、刮目して見てちょうだいっ!!」
ばきっ…ぐちゃっ。
びしゅうっ…どぼっ。
《きゅっ…くきゅ~~っっ!!》
〘ぐるおわえああおぎやあ〜! ぶぐるっ〙
ぼとっ。びくんびくん。
「みんな、どう?
これが私のパートナー、エスカ・ルビーよっ!
どう? 凄いでしょう?」
『こ…』
(…こ?)
『【〘〈恋人さまあああーーーっっ!!〉〙】』
「なっ…何?!」
参加メンバーが一同に青ざめていた。
『な…何なのよ何なのよ、この狂戦士はあ!?』
【ヒュドラ九頭を悉く撃墜、スキュラを逆に引きちぎるなんて…っ!】
〘ダイビートの超昂戦士は、神話級なの…?!〙
〈あ…あああっ、敵でなくて良かった…!〉
《はああああーーーっ!!
ストライクうーーっ! エスカレーションっっ!!》
『ひいいいいっ、吼えてる、吼えてるううっ!』
【ぎゃああああっ、眼が、眼が緑に光ったああっ!!】
…
「…あ…あれっ…?」
…その日、箱船会議は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「あはははははっ、エリマルのパートナーって、マジヤバいねー!」
「ストナ…!」
「ウチは友達になれそうだけどー、うちの吸血鬼とか、おばーちゃんたちはヒくかもねー?
なんなら、ルビーの紹介写真、鬼モリにデコって、やわらかイメージにしとくー?」
「や…やめてええっ!」
「あははっ、ウソウソっ。ルビマルに会えるの、ウチも楽しみっ!」
保守派の魔女・ヴィクトリア派のホープ、死神のストナ。彼女の伝達しだいでは、箱船の一大勢力が付くか離れるかの命運が決まる…?
ストナ自身はルビーをちゃんと認めてくれた様子だけど…この分では、ヴィクトリア派でも怖がる魔女が出るだろうか。
ともかく。
エリーとしては、キュートで勇敢なサラブレッドを紹介したつもりだったが…。
幹部には、チートで獰猛な蛇喰い虎にしか見えなかった…らしい。
…そして、その結果。
「ふははははっ、ヘラクレス殿! これから是非とも、お手合わせ願いたい!」
「へ…ヘラクレスって…、わ、私いいっ!?」
箱船とダイビートが手を組んだ直後から、アカリはしばらくの間、スキュラとヒュドラを退治した神話の英雄・ヘラクレスの二つ名で呼ばれることとなる。
「あ…あのねっ、アカリ…。
ウチの慣例でねっ、箱船メンバーにはアルカナの二つ名がつくの。私なら『恋人』雪城エリー、ニルなら『皇帝』ファヴニル、みたいに…。」
「そ…それで私に…?」
「そう、『ヘラクレス』園崎アカリ、または『ヘラクレス』エスカ・ルビー…。
…やっぱり、ダメ?」
「あ…あはは…っ…。」
それにしても、よりによってヘラクレス…。
「ダイビートの紅き悪魔」だの「蛇殺しのルビー」だのよりはマシとしても、少なくとも女の子に付けて喜ばれるニックネームではない。
「…相手がヘラクレスでも…護り切る…!」
ニルやレヴィは、アカリに逢うたび腕試しを挑み。
「アっカリちゃ〜ん、感動映画観いひん? ほんで、流した涙をぜひ、実験サンプルに…!」
「甘いなあ弟子よ。ここは一気に本命の採取だろう? というわけで、洋モノAVを用意した。それとも、ご同輩を呼ぶかね?」
ルカやプカルルは研究対象として興味津々。
(ア…アカリに魔力因子は無いわよーーっ!!)
そして…。
「クラリス、紹介するね。こちらが園崎アカリ。私の背中を預ける、とーっても大事なパートナー、エスカ・ルビーよっ!」
「ひっ! ヘラクレス…様…!!」
穏健派の魔女からは…恐れられる存在となってしまった。
がくがくがく…ぶるぶるぶるっ。
「…も…もう逆らいません…私、美味しくないですから…っ!
八つ裂きは…ゼリーウナギだけは…ヘラクレスさま、お慈悲を…!!」
ことに、下半身に水蛇、腹に六頭の犬を従える魔女・スキュラの魔力因子を持つ、NAUの金庫番・節制のクラリスの怯えようは著しかった。
《ぐるおわえああおぎやあ〜! ぶぐるっ。》
「ひいいっ!!」
どすん。びくんっ! どくんっ!
「あ…あああっ、そんな…!!」
クラリスには、スパーリングで悲鳴を上げる大蛇スキュラの映像が、まるで我が身のことのように突き刺さってしまった。
生来の穏やかさが災いして、クラリスは完全にルビー恐怖症に陥り、アカリのワンコ系・人たらしパワーを以てしても、打ち解けるまでに少しの時間を要したという。
「お…落ち着こっか、クラリス…? 大体、あなたのスキュラは蛇じゃなくて犬でしょ?
ほら、ガラテイア…?」
「イヤっ…ガ…ガラテイアまで、はらわたを引きずり出されて、ハ…ハギスに詰められちゃう…!
ああ…っ、もう…、ダメです…っ!!」
「だーかーらー!
アカリはそんなバーサーカーじゃ、ないからーっ!」
(ねえ、エリーちゃん? 私って魔女さんたちに何かヒドいこと、しちゃったのかなあ? 何だかみんな、ヨソヨソしいような…)
(…あー…アカリはぜんっぜん、悪くないよー。…ゴメンねっ、ホンっトに…!)
筆者の環です。おはようございます。§6をお届けします。
登場する魔女を大幅増、賑やかな章にしてみました。
初稿執筆時は赴任2ヶ月の新人トキサダ、箱船勢力のメンバーへの理解が浅かったなあ…。
明日投稿の§7も大幅加筆、ギャグであっさりだった初稿から、純愛ドキドキ方面にかなり変えます。乞うご期待。