超昂大戦SS 決戦・ルビーVSアメイズ! そして魔女は真の仲間に 作:環 藍河
時間軸は少し戻り、スパーリング直後と、その晩の話。
持てる力の全てを出し尽くし、アメイズに勝利したルビーは、トキサダの腕の中でまどろみ、救護室へ運ばれる。
(こんなに、ぼろぼろになって…。)
トキサダがルビーの負傷具合を観察する。
両肩・両腕・両足に、痣として、戦闘スーツのちぎれとして、痛々しく残るスキュラの締め跡。
胸に腹に首筋に、ルビーの戦闘スーツ越しに全身くまなく残る、ヒュドラの噛み跡。
そのどれもが痛々しいが、勝利した今は、すべて誇らしいルビーの勲章。回復ユニットなら跡も残さず、元通りの素肌まで治療できるだろう。
後に『接続者』『吊られた男』として、魔女の魔力供給を頼まれることになるトキサダは、アメイズの魔力の性質にも親和性を持っている。だからトキサダには、ルビーに注ぎ込まれた淫毒がいかに強力かがわかっていた。
「…あれだけのヒュドラの淫毒を注ぎ込まれて、なお立ち上がるとはな…。」
ベッドで小康を取り戻すルビーの傍で、トキサダが思わずこぼす。
たとえ超昂戦士であろうと、九頭ものヒュドラから全身くまなく、魔力の込められた毒牙を突き立てられては、正気を保つことすら困難であったろうに…!
「…もう、とろとろ、でした…。」
(…ルビー?)
「蛇に全身を…噛まれて…、魔力をとくとく、注がれて…。
そうしたら、だんだんうっとりとしてきて、意識がふわっとしてきて…。
…私、もう、ダメかな、って…。
このまま倒れて、眠っちゃうのかな、って…。」
不意に、まだ眠りから醒めないと思われたルビーが、うわ言で返す。
予想外の応答に戸惑うトキサダだった…が。
「でも、私…。
意識が飛ぶ前に…私を見つめる長官が、見えたんです…。」
(俺が…?)
確かにあの時、トキサダはダウンしたルビーを見据え、君の力は…闘志はこんなものじゃないと、固唾を呑んで見守った。
「そうしたら…。
長官に、もっと…ほしいなあって…、
長官…なら、もっと…。
そう思ったら、力が湧いて、立ち上がれたんですよ…。」
(なっ…!?)
どくん。
どくん。どくん。
どくっどくっどくっどくっ!
ルビーのうわ言が、トキサダにクリティカルヒット。
…ルビーとしては、
「長官にもっと(見つめて)ほしいなあ…。」
「長官(が応援してくれる)なら、もっと(戦える)…!」の意味だったのだが。
トキサダは、
「長官にもっと(Dチャージして)ほしいなあ…」
「長官(のDチャージ)なら、(ヒュドラの淫毒より)もっと(気持ちよくしてくれる)…!」
…と誤解。
意識が朦朧として、ニュアンスが飛躍し、【てにをは】が覚束なかったから、仕方ない部分はあるのだが…。
…
……
その夜、スパーリングでD2エナジーを使い果たしたルビーに、早速Dチャージが施された。
「はあっ…んっ…んくっ…、ぷはっ…。」
「ルビー…今日はよく頑張ったな。」
「長官…!」
「君の望み通り、今夜はいくらでも俺をくれてやる。好きなだけ、受け止めてくれ。」
「…え? 『望み、通り』…?」
ルビーの期待に応えるべく、持てる技をあらん限り駆使してやるんだ、と張り切るせいか、トキサダのピロートークの端々が、どうもおかしい。
「…だって、言っただろう?
《蛇の淫毒でとろとろだけど…俺が欲しい。俺なら、もっと…》って。」
「…えっ?」
…。
……?
………!!!
「あっ…、
…ああっ、うええええっっっ!!?」
自らのうわ言のダブル・ミーニングに気づき、赤面し悶えるルビー。
「い…いや…っ、そんな…!
…ち、違いますーっ! 違うんですう〜〜っ!!
ちょ、長官に、へ、蛇よりも気持ちよくして、ほしいなんて…!」
「えっ…?」
「せ、戦闘中に、そんな理由で立ち上がるパワーが湧くんですかっ、私…!!
…そ、それじゃ私、ただの欲しがりの、淫乱ヘンタイさんじゃないですかああーーっ!!
や…やだあ〜〜〜っっ!!」
だが。
困ったことに、極限状態で口にするうわ言は、絶対に言っていない、そういう意味じゃない、とは、当の本人ですら、なかなか断言できないものである。
なまじ人柄ができすぎたルビーは、トキサダの勘違いを激怒して切り捨てても良いところを、自責の念に囚われてしまった。
(…で、でも私、心のどこかで、ホントにそんな期待を…してた…の?!)
……!!
「…あっ、ああっ…あああああっ、あ〜っ!!」
両手で頭を抱え込み、羞恥でもんどり打つルビー。
「ルビー…?」
「み…見ないでくださいっ、長官…!
違うのにっ、私、そんなじゃないのにっ…!
ああっ…もう、ダメですっ、ムリです〜っ!!」
自分の中に、こんなとんでもない気持ちが…恥ずかしい本心が潜んでいたなんて…!
ルビーはうろたえ、顔を背ける…が。
ぎゅっ…ぐいっ。
「ルビー…君が欲しい。」
「えっ…? …あっ…!!」
ガードする手を除けると、恥ずかしさに上気するルビーの、潤む眼差し、頬、唇。
どきっ、どきっ、どくんっ!
(ちょ…長官の顔が、近いよおっ…)
荒ぶる吐息が、昂ぶる鼓動が、もう隠せない。
…ちゅっ。
「んっ…、んん〜〜っ! 」
トキサダはルビーの頬を寄せ、唇を重ねる。
さっきまで勇敢に、雄々しくバトルに挑んでいた凛々しい超昂戦士が、いまはあどけなく、腕の中で子どものように悶える。
そのギャップも、可愛く…愛おしい。
(は…恥ずかしいのに…!)
ルビーに芽生えた、初めての感情。
(嬉しい…!
私、長官に求められて…、
こんなに、嬉しいんだ…!)
昨日までは、まともに話せなくなるほどの、苦しいとしか感じられなかった胸の鼓動。
それが今は、ルビーの心を甘く溶かしていく。
きっかけは、うわ言の勘違い。
でも、今は…。
このドキドキは、振り払わなくてもいいんだ。
ありのままに受け入れて、いいんだ。
やっとわかった、ドキドキの正体は…。
初めての、ときめき。
「ルビー…、ルビー…っ…!」
「ああっ…長官っ、長官っ…!
あっ、ああっ、あんっ、…っ!!
…ああーーーっっ!!」
…
……
(アルダークを倒すまでは…
長官は、ダイビートみんなの長官で…
私も、駆け出しの超昂戦士で…。)
芽生えた気持ちは、今はまだ、正義と大義のため、秘めて閉じ込めるべきものだけど。
(でも…今日だけは…)
高鳴る鼓動と湧き上がる熱い想いを、包み隠さずトキサダに預けたルビー。
彼女の戦いは、始まったばかり。
だが、この日彼女の心に灯された、小さくも強い炎。それは、長きに渡るこの後の戦いで、常にこの小さな超昂戦士を熱く滾らせる、希望と勇気の源となる。
やがて、その力でついには人類滅亡の危機から世界を救うこととなるのだが…。今はまだ誰も…本人ですら、その未来を知らない。
筆者です。第7話、お届けしました。
初稿ではDチャージを単にルビーの羞恥プレイとしてまとめたギャグ章でしたが、改訂で純愛章にいたしました。
次話でリメイク版は完結となります。